OJTとは、「On-The-Job Training」の略称。「実務を通した教育」という意味で使われることが多いです。「それなら自社でもやっている」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、OJTはただ実務をやらせるだけでは上手くいかないことも多いのです。
「どうやったらOJTがうまくいくのだろう?」「OJTを進めるときに気にしたほうがよいことは?」「リモート・在宅が多くなった今、OJTってどう進めるべきなの?」など、頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、OJTのメリットが・デメリット、OJTに向いている業務とそうでない業務、導入する際のポイントなどを解説しました。OJT導入・改善に、ぜひお役立てください。
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- OJTとは?
- OJTが普及した背景・どのようにして広まったのか
- OJTを導入する企業が増えている
- OJT育成に適しているターゲットと業務例
- OJTのメリット
- OJTのデメリット
- 人材育成で失敗する企業は少なくない
- OJT実施方法と進め方
- トレーナーの役割
- 【上司に知ってほしい】OJTを成功に導く方法は?
- 部下を伸ばすOJTでの上手な褒め方・叱り方
- マニュアル社員を育てない!主体性を引き出すOJTとは?
- リモートワーク中のOJTは、雑談が大事
- 時代の変遷に合わせた育成が求められる
OJTとは?
OJTとは、実務を通して仕事の進め方などを教える社員育成の方法の一つです。実際に担当する仕事を経験してもらいながら、業務フローや業務遂行に必要なスキルを身に着けてもらいます。OJTのポイントは「教育計画」をあらかじめ考えておくことです。
「現場で教える」のと「現場任せにする」のとは違います。ただやみくもに仕事を任せるだけだと、教育担当によって教える内容に差が出てしまうことも。詳細は後ほど解説ですが、事前に「どのように教えていくか」指針を示すことで、より効果的な教育訓練となるはずです。
実際の職場で行なわれる教育であるため、教育を担当するのは、新入社員の上司や先輩社員。場合によってはOJTトレーナーやOJTリーダーと呼ばれる専任担当が配属されることもあります。実際の業務を経験しているので、OJT終了後には即戦力としての活躍にも期待できるため、多くの企業がこのOJTに関心を寄せています。
OJTとOFF‐JTの違いは?
OJTと対をなすのは、OFF-JTという言葉。あまり耳慣れないかもしれませんが「Off-The-Job Training」の略称で、実務から離れた機会で行なう教育研修のこと。「座学研修」もOFF-JTのひとつです。
以下の図を見ていただくと、OJTとOFF-JTの違いが分かりやすいでしょう。
OJT | OFF-JT | |
研修スタイル | ・実務を通しての研修 | ・座学での研修 |
習得するスキル・能力 | ・習熟・経験を必要とする能力 ・状況に応じた複雑な判断を要するスキル |
・知識習得など経験をあまり必要としない能力 ・機械的な判断が可能なスキル |
育成方法の特徴 | ・同時に指導可能な人数が少ない ・業務と並行して指導できるため効率が良い ・現場状況をみながら実演して教えられる ・フィードバックによる習熟が可能 |
・同時に多人数を対象とした指導が可能 ・業務と並行できないため時間的なコストがかかる |
実務を通して教育を行なうOJTに比べ、OFF-JTは座学の研修。そして研修内容にも違いがあります。実際の仕事を経験しながら学ぶOJTでは習熟・経験を必要とする能力が磨かれます。
たとえば、機械加工などの職人の技術は、繰り返し業務を経験する中で覚えることに適しています。また、仕事の中で発生する様々なイレギュラーを適切に処理するスキルも、OJTで実際に業務を経験することで学べます。
基礎知識をつけてからのほうがスキルが習熟しやすいため、機械的に判断ができるものはOJTには合っていません。また、基礎知識がないと教える側にも負担になりやすいです。たとえば、事務や経理など基礎知識が必要なものがその代表例と言えます。
逆にOFF-JTは、経験を必要としない知識習得に向いています。代表的なところで言えば、ビジネスマナー研修やロジカルシンキング研修。ベーシックスキル向上につながるため、OJTを始める前にOFF-JTを行なうことでより実務で活躍しやすくなります。
OJTが合っている業務 | OJTが合わない業務 |
・勘や経験など習熟を必要とする業務 (例:機械工) ・状況に応じた判断を必要とする業務 (例:営業) |
・機械的に判断できる業務 (例:事務) ・専門的な基礎知識が求められる業務 (例:経理) |
OJTにもOFF-JTにもそれぞれメリットやデメリット、向き不向きなどがあるため、教育の課題や狙いなどに合わせて両者をバランス良く組み合わせることが大切です。
OJTが普及した背景・どのようにして広まったのか
「OJT」は日本で浸透している教育方法ですが、なぜここまで普及したのでしょうか。普及した理由を知ることで、OJTの魅力が見えてきます。
起源はアメリカで生まれた、早期育成を可能にした教育方法
OJTの起源は、第一次世界大戦時のアメリカにあります。当時のアメリカは造船ニーズが急拡大したことで、短期間で造船所の職人を育成しなければなりませんでした。そこで責任者であるチャールズ・R・アレン氏が提唱したのが、実地訓練主体の教育方法。これがOJTのはしりとなりました。
「やってみせる⇒説明する⇒やらせてみせる⇒確認、追加指導」といった、4段階職業指導法が開発されるのです。さらにそれは「TWI研修(監督者のための企業内訓練)」へと発展しました。
このTWI研修が高度経済成長期の日本に輸入されます。社団法人日本産業訓練協会(現一般社団法人日本産業訓練協会)をはじめとする研修機関によって整備され、日本におけるOJTの基本となりました。
より効果的な教育への進化を遂げた、日本のOJT
高度経済成長期の日本は、集団主義の時代と言われています。新卒一括採用で人材を確保するため、集団教育に適したフォーマットが活用されるようになりました。代表的なものに、PDCAサイクルがあります。こうした集団育成方法の基本の一つとして、OJT教育は市民権を得るようになります。
しかし、バブル期には企業間の競争も激化。組織の成長は、企業の成長に直結します。教育方法の見直しが、企業の生き残りをかけた戦略の一つとなり、各々独自の進化を遂げていきました。
その中で旧来のOJTを拡大解釈し、より発展していくこととなったのです。その結果、「トップダウン型からコミュニケーション型の教育へ」「育成計画やマニュアルの体系化」「指導者育成の重要性の顕在化」「評価システムの導入」などの進化を遂げました。
OJTを導入する企業が増えている
厚生労働省の調査によると、近年従業員の育成にOJTを導入する企業がゆるやかに増加しています。(コロナ禍により一時的に減少していますが、継続して緩やかな増加傾向です。)
OJTを導入する企業が増えた要因として、考えられる要因は2つあります。
1つ目は、少子化やバブル世代の定年退職など生産年齢人口の減少といった、人材不足が考えられます。人手不足による人的リソース・時間的リソースが減少したことにより、「時間をとってじっくり教えるスタイル」から「実際に体験しながら教えるOJTスタイル」に教育方式が変わっていると考えられます。
また、2つ目の理由として考えられるのは、若者の定着率向上を目的として、OJTを導入する企業が増えたことが考えられます。
若手社員の離職率は日本全体の課題です。退職してしまう理由は、「人間関係が悪かった」「給与が低かった」「仕事にやりがいを感じない」「風土が合わない」などいくつもあります。
参照:退職理由のホンネと建前[2022年版]のデータをもとに採用ガイドで編集
しかし、離職者が感じていることを総括して言えることは「思っていたのと違った!」ということです。この「思っていたのと違った!」を放置すると退職へとつながってしまいます。OJT教育で、実際に働きながら先輩トレーナーが「思ってたのと違った」を払拭し、丁寧に仕事と向き合える環境を整えることで、企業への定着率が高まっていきます。
昔ながらの「習うより慣れろ」はZ世代の若者たちには適さない教育手法だと言えます。このように、OJTへの投資効果と採用数や定着率といった点に明確な相関関係が見られることが判明しています。つまり「OJTの質」が魅力となり、採用活動における武器となったり、社員の定着率向上につながっております。
採用時には「自社に入社すれば、スキルアップにつながる」ことをアピールした企業の採用力が向上したというデータも。その結果、採用意欲が旺盛な企業の一部は、OJTのあり方に様々な工夫を凝らしました。
OJTをただの「職場内研修」と捉えていた経営者や人事担当もその考えを改める人が増えています。これが、現在OJTの実施数が増えている背景と言えるでしょう。
OJT育成に適しているターゲットと業務例
前項で「OJTを導入する企業が増えている」ことについて触れましたが、すべての育成において「OJT」という手法が優れているというわけではありません。OJTでの教育に適しているターゲットやスキルがあります。
そこでここからは、OJT育成に適しているターゲットとスキルについて触れていきます。OJT育成に適しているターゲットには以下の対象が挙げられます。
OJT育成に適している対象
- 基本的な業務を学ぶ新入社員
- 専門スキルトレーニングする専門職
- 重要なプロジェクトや業務に関連するトレーニングする新プロジェクト担当 など
OJTというと新入社員教育に使われることが多いですが、それ以外にも専門的な知識や技術が必要な業務や、初めて挑戦する重要なプロジェクトなどは先輩社員が実務業務を通じて教育した方がスキルや知識の習得が早いことからOJTで教育することが挙げられます。
また、OJT育成が適しているスキルは以下が該当します。
適用例
- プロジェクトマネージャーに対して、プロジェクト計画やリーダーシップスキル
- 新しいソフトウェアやツールを使うスキル
- カスタマーサポート担当者に対して、効果的なコミュニケーションや問題解決のスキル
- 生産ラインの作業員に、製造工程や品質管理の手順スキル
- 販売担当者に対して、顧客へのアプローチや交渉スキル など
OJTトレーニングでは、実際の業務に密接に関連したトピックを選定し、参加者が実践的な経験を積むことができるようにするのが重要です。
OJTのメリット
これまで解説してきたOJTですが、導入するメリットは大きく分けると、以下の3つに集約されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
座学研修の手間やコストがかからない
忙しい人事担当者・採用担当者にとっては、もっとも重要な観点かもしれません。OJTの場合は実務を通して教育を行なうため、OFF-JTで発生する講師や研修を外注するコストなどは発生しません。
自身で座学の研修内容を考える必要もありません。また、一定の規模ともなれば必要な、会議室やセミナールームといった場所の確保も必要なし。時間外で研修を行なえば残業代などのコストも発生してしまいますが、OJTの場合は業務時間内で完結するように計画さえすれば、そのコストが発生する心配も不要になるのです。
個人のペースに合わせた実務経験がつめる
人によって習熟のスピードは異なります。OJTの場合、個人の能力や業務の習熟度によって内容や教育のペースを調整することが可能です。
しかし、OFF-JTではこうはいきません。ある程度の人数を集めて行なう必要がありますし、研修内容はあらかじめ用意されているものになります。受講者の理解度などは考慮しづらいため、きめ細やかさといった点ではOJTに軍配が上がるでしょう。
社内コミュニケーションが活性化する
OFF-JTでは講師から受講者に向けた一方的なコミュニケーションになりがちですが、OJTでは社員同士の双方向のコミュニケーションが生まれやすいというメリットがあります。
たとえば、部下が上司や先輩社員に質問をしたり、あるいは教える側が新入社員に不明点などの確認を行なったり。この繰り返しが、教わる側と教える側の間に信頼関係を築くことになり、業務を遂行するために必要な関係性を構築してくれることになります。
また、教わる側も新入社員に対してわかりやすく説明すようとすることで、知識やノウハウの棚卸しや論理的なコミュニケーション力が磨かれる…といった副次的な効果にも期待できるのです。
OJTのデメリット
もちろん、OJTにもデメリットはあります。ここでは、代表的な3つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
教える側のスキル・能力によって、育成にばらつきがでる
教える側は専任講師ではないため、育成スキルという面ではどうしてもばらつきがでてしまいがちです。その差次第では、育成の成否が変わってしまうほど。
特に教える側が知識やノウハウを一般化・抽象化できていなかったり、言語化するのが苦手だったりすることで、育成のスピードや習熟度に差が生まれてしまうのです。
この問題を未然に防ぐためにも、教える側の育成スキルを一定上の質にするための研修も必要です。
教える側の負担が増えすぎてしまう
実務を通して仕事を教えるため、OJT期間中は教える側の負担が増えます。その結果、「この資料読んでおいて!」「とりあえず待機してて!」といった、新入社員が放置されてしまう状況が生まれてしまうことも。
せっかく入社した人が早期離職してしまう危険性もあります。教える側に負担がかかりすぎるようであれば、一時的に業務量を減らしたり、目標を下げたりするなど、配慮を行なうと良いでしょう。
教育計画の作成に手間がかかってしまう
「座学研修の手間」はかかりませんが、OJTによる教育の質を一定以上にしようとすると「教育計画」を作成する手間がかかります。
「何をどのような順番で教えていくか、教える側はどんな点に注意するべきか」などある程度教育方針やルールが定まっていることで、育成の質はグンと増すはずです。経営者・人事がすべて考えるのではなく、OJTリーダーなど各配属先に教育計画を考える人を用意すると負担を軽減できるかもしれません。
人材育成で失敗する企業は少なくない
「OJT」を既に導入されている企業の中で、「OJTが上手くいっていない」と感じる方は少なくないのではないでしょうか?OJTはやみくもに実務を経験させるだけでは成功しません。OJTを改善するためにも、「上手くいかない原因」について理解を深めておきましょう。
ここまで読んだ方の中には「OJTはメリットが多いのだな」と感じている方も多いと思います。しかし、実はOJTを導入したものの課題を感じている企業は少なくないのです。
出典:厚生労働省「人材育成に関する問題がある事業所」をもとにエンゲージ採用ガイドがグラフを作成
グラフからも見て取れるように、課題に感じている人の割合は75%を超えます。特にここ3年間で見ると増加傾向にあるのです。
人材育成が上手くいかない原因は?
出典:厚生労働省「人材育成に関する問題点の内訳(複数回答)」 をもとにエンゲージ採用ガイドがグラフを作成
その原因をさらに探ってみると、「指導する人材が不足している」(58.1%)が最も高く、「人材を育成しても辞めてしまう」(53.7%)、「人材育成を行なう時間がない」(49.7%)」と続きます。なかには、「新人・未経験者が入社した直後、放置してしまって早期離職につながってしまった」というケースも。
つまり、教育を行なうための制度・体制づくりが、効果的なOJTを行なう上では不可欠だと言えるでしょう。
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OJT実施方法と進め方
OJT(On-the-Job Training)育成を行うためには、以下のプロセスを踏みながら計画を立てるとよいでしょう。
OJT育成の目標と目的の設定
OJT育成の計画策定第一歩目は、「トレーニングの目標と目的」を明確に設定することです。
「新入社員にOJTを通じて、業務に必要な基本的なスキルを身につけてもらいたい」
「転職や昇進によって新しい職務に就く社員が、すぐ新しい役割に適応できるようにしてほしい」
「実戦形式でトップ営業マンから営業ノウハウを吸収してもらう」 など
OJTを通じて習得するスキルや知識を特定し、どのように習得をサポートするかを計画します。
トレーニングプランの構築
OJTでの目標と目的を明確にしたら、達成するためのトレーニングプランを構築していきます。OJT育成の計画には、トレーニング期間や内容、進め方を詳細に詰めていき、トレーニングのスケジュールや、実践的なタスクやプロジェクトをどのように割り振るか計画します。
営業マンを例にすると、
「先輩との営業同行では顧客へのヒアリングを学ぶ」
「上司との同行で提案時の懸念点の払拭方法を見て学ぶ」
「金融業界の現場を知り、顧客の全体像を把握する」 など
トピックごとにどのようなスキルをどのように教えるかを考え、内容や順序を定めていきます。
トレーナーの選定
また、OJTトレーニングを最大化するためにトレーナーの選定も重要な計画事項です。OJTのトレーナーは、不慣れな人を一人前に育て上げるために、適切なスキルと知識を持っている必要があります。細かくいうともっとたくさん必要ですが、最低限下記能力を保有している人がトレーナーにならないとOJT育成の効果は最大化することができないでしょう。
- 業務に必要な専門知識
- コミュニケーションスキル
- リーダーシップ
- 指導力
- フィードバック力 など
フィードバックのプロセス
OJT育成ではトレーナーからのフィードバックが一番の学びポイントです。そのため、トレーナーは下記要素を意識しながら振り返りとフィードバックを行うようにしましょう。
- 具体的なフィードバックを提供する
- ポジティブなフィードバックを強調する
- 目標と進捗に基づいたフィードバックを行う
- フィードバックは建設的であることを心がける
OJTの対象者は今まさに学びをしている最中です。できていないこともたくさんあるでしょう。その中で育成速度を速めるためには、参加者に対して具体的な行動や結果についてのフィードバックを行ったり、できていないところだけではなく成功や良い結果に対してもポジティブなフィードバックを与えることが重要だと言えます。改善のための提案や具体的なアドバイスを建設的に行うことで、参加者が成長できるようにサポートするのが、フィードバックの一番の目的です。
トレーナーの役割
OJTで教育するためには「業務を通じて指導する」トレーナーが必要です。前述した役割を含めOJTトレーナーには上記のような役割があります。ここからは一つずつOJTトレーナーの役割について確認していきましょう。
ガイドとしての役割
OJTを担当するトレーナーは育成対象者のガイドとして、指導し、トレーニングの進行をサポートする役割を果たします。
初めて体験する業務に早く慣れてもらうために、トレーナーが育成対象者に理解しやすいよう説明し、業務の具体的な手順やプロセスを教えます。もちろんOJTなので、育成対象者は実践から学びを得ますが、最初の導入部分の説明などはトレーナーの役割と言えます。
モチベーターとしての役割
OJTトレーナーは、育成対象者をリードし、モチベーションを高める役割を担います。
慣れてない業務を実践経験を通じて慣れていきます。最初はできないことが多かったり、ミスが発生してしまったりと上手くいかないことがあります。特に新入社員向けのOJT研修では、たくさんの失敗があります。失敗はもちろん悪いことではなく、そこから学びを得ることも大事です。
しかし、上手くいかないことが続くとモチベーションが下がり、業務に対する姿勢が後ろ向きになってしまうこともしばしば。そのようなときにトレーナーがモチベーターとして育成対象者をリードし、モチベーションを高めてあげましょう。
育成対象者のモチベーション管理もトレーナーの大事な役割の一つです。
フィードバック担当としての役割
トレーナーはフィードバック担当としての役割を担います。
育成対象者の進捗状況をモニタリングしながら、必要に応じてよかった点・悪かった点をフィードバックしていきます。フィードバックを行う際は、前述した点を意識しながら行うのが好ましいです。
- 具体的なフィードバックを提供する
- ポジティブなフィードバックを強調する
- 目標と進捗に基づいたフィードバックを行う
- フィードバックは建設的であることを心がける など
育成対象者が早期に一人立ちできるように建設的なフォードバックを行うことがトレーナーの役割です。
問題解決とサポートとしての役割
トレーナーは、育成対象者がトレーニング中に直面する問題を解決し、必要なサポートを提供する役割を果たします。
育成対象者は慣れていない業務を実践形式で学んでいくため、自分ひとりの力では解決できない壁にぶつかるときがあります。そのようなときに育成対象者がスムーズに壁を乗り越えていけるように問題解決をサポートします。
もちろん、過保護になってしまっては育成対象者の実践経験機会を奪ってしまうので、アドバイスとフィードバックを駆使して問題解決できるようにサポートしてあげましょう。
【上司に知ってほしい】OJTを成功に導く方法は?
OJTを成功させる方法は、4段階職業指導法の「Show(やってみせる)」「Tell(説明・解説する)」「Do(やらせてみる)」「Check(評価・指導をする)」です。この流れをきちんと踏んで行なうことが、OJTを効果的にする上で重要になってきます。それでは、ひとつずつ解説していきます。
Show(やってみせる)
まず仕事をやって見せます。このステップを踏むことで、仕事の全体像を理解しやすくなるでしょう。実際に手本を見せることで具体的なイメージを持ってもらい、「できそう」だと感じてもらうことが大切です。
ちなみに、「やってみせる部分」は動画に残しておくことも有効。アクションする手間が省けますし、何度も視聴することができるので復習にも役立ちます。
Tell(説明・解説する)
仕事をやってみせたのちに、その仕事の目的や背景をきちんと理解してもらうことが重要です。一方的に説明するだけでなく、ときには質問を投げかけ、理解度を確認しましょう。教わる側も、自ら言語化することで理解が深まります。
こちらについても、動画で手本を残し、さらにeラーニングで共有する…という流れをつくっている企業も近年増加傾向にあります。動画化することで、教育の均一化にもつながるはずです。
Do(やらせてみる)
このステップになって、ようやく実際にその仕事をやってもらう段になります。大切なのは、一人でやらせてみること。一人でやらせることに不安を感じるでしょうが、その分しっかりと横について見守り、思い切って任せましょう。
そうすることで、自尊心や責任感も芽生えます。見守る際に大切なのは、失敗を責めることでなく、安心感を与えることです。
Check(評価・指導をする)
やらせてみたら、その結果を評価します。できていなかったことについてフィードバックするだけでは、モチベーションの低下に繋がりかねません。できていたことへの感想なども重要です。その内容は具体であるほど効果が上がります。
「褒める」ことが苦手な方も多いですが、これができるようになると成長速度にも目に見えて違いが出るので、教える側は意識したいところです。評価にもとづいて次の計画を立て、成長実感を得られるようにしましょう。
部下を伸ばすOJTでの上手な褒め方・叱り方
ここからはOJT育成を担当している方が知っておくと良い「上手な褒め方・叱り方」についてまとめていきます。
“褒める”ことは心の原動力(モチベーション)として、「アクセル」の役割を持っています。上手にアクセルを踏んであげることで、OJTの成長速度を上げることができます。
反対に、叱るは「ブレーキ」。行き過ぎた行動や間違ったやり方にストップをかけることです。上手にアクセルとブレーキを使い分けて、一人前の人材に育てられるようにOJT教育を行っていきましょう。
OJT教育で部下を伸ばす上手な褒め方
連合艦隊司令長官の山本五十六の名言で「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」ということ言葉があります。
前述したようにOJTで部下を育成するためには、まずはやって見せ、説明して、やらせてみることが大事です。しかし、最後のピースである褒めるがうまくできないとOJTの効果を最大限発揮することはできません。
OJTの効果を最大限発揮するための上手な褒め方について、ちょっとしたコツを知っておきましょう。部下を伸ばす褒め方をするために、具体的には以下3つのポイントを意識しましょう。
- 成果を褒める
- プロセスを褒める
- 感謝を伝える
成果を褒める
- 営業の売り上げ目標を達成できた
- 経理申請の業務効率を早くして工数を20%削減できた
- 新規獲得のリード数を先月比110%にすることができた
など、実際に出した成果に対して褒めてあげます。
プロセスを褒める
- 売上目標達成のために1週間で20商談設定した
- 経費申請にかかる工数を可視化するために現在のフローチャートを作成した
- 新規リードを獲得するためにPDCA を回して複数の施策を試している
など、まだ成果に繋がっていないことや、成果は出せなかったが、成果を出すために頑張って行動をしたことを褒めてあげます。プロセスを褒めてあげるためには日常的にコミュニケーションをとり、日々の行動をしっかりと見てあげることが重要です。
コミュニケーション頻度が低い上司から急に褒められても「何も見ていないくせに!」と表面しか見ていないと思われてしまうので、日常的に会話をすること大事にしましょう。
感謝を伝える
- 会議の準備をしてくれてありがとう
- 資料作成をしてくれてありがとう
- 新しい施策のアイデアを出してくれてありがとう
など、成果やプロセスで褒める場所が見つからなかったら感謝を伝えましょう。
OJT教育で部下を伸ばす上手な叱り方
次は上手な叱り方についてポイントを解説していきます。
叱り方のポイントは大きく5つです。
- 人ではなくて、事を改善させる
- 叱ると怒るを混同させない
- 批判するのではな、要望を伝える
- 指示や命令ではなく、共に考える姿勢で
- 長々した説教ではなく、短いメッセージで
人ではなくて、事を改善させる
○「確認せずに勝手に行動したらダメだからね」
✕「勝手に行動するのはお前はのよくないところだ!!」
叱る場合はその人自身のことを叱るのではなく、起こしてしまった事象、行った行動に対して叱るようにしましょう。
叱ると怒るを混同させない
叱るは「相手のためにする行為」
怒るは「自分のため、自分のイライラを発散するためにする行為」
叱ると怒るを混同させては部下との信頼関係を築くことはできません。
批判するのではな、要望を伝える
○「危ないから気を付けてこの作業を行ってください」
✕「これをやってはいけません」
ちょっとした言葉の使い方ですが、受けてからすると批判されているのか、次回に向けた要望なのか、だいぶ印象が違います。
指示や命令ではなく、共に考える姿勢で
○「次の施策に向けて現状の確認と課題を把握していこうか! 」
✕「今回の施策は失敗だったみたいだね!現状と課題、次回の改善案をもってきて」
OJTのコツでも触れたように、まずは上司がやって見せることが成功のポイントです。
指示や命令だけではなく、共に考える姿勢を見せながら叱る(指摘)してあげることが大事です。
長々した説教ではなく、短いメッセージで
○「今回はここがよくない行動だった。次回は気を付けて行動しよう 」
✕「今回はよくなかったね~(中略)だから~(中略)、、、結局のところ(中略)次から気を付けてね」
長々とした説教を聞いた後にやる気を出す部下はいません。端的に問題の箇所。次に向けた改善点・注意点を伝えてあげましょう。
マニュアル社員を育てない!主体性を引き出すOJTとは?
ここまでOJTの成功の秘訣を解説してきましたが、企業と教える側がどれだけ工夫しようとも、教えられる側が受け身の姿勢のままでは習熟度は上がりづらいでしょう。ここでは、教えられる側の主体性を引き出す心構えをご紹介します。
主体性を引き出すためには、「自分で意思決定して行動をした」と感じてもらうことが大切です。課題に対してすぐに答えを与えてはいけません。問いを与え、「どうしたらいいだろうか」と考えさせることが大切です。
たとえば「途中で自分の意見を言わない」「共感しながら聞く(相手の立場に立つ)」「評価(善し悪しの判断)をしない」「アドバイス(自分の意見の押しつけ)や誘導をしない」ということ。そうすることで、自分で意思決定をし、行動しているという自覚を与え、モチベーションを維持させることができます。
とはいえ、知識や情報がないために自発的に考えることができない、ということもあります。そのため、まずは情報や知識をあたえることで、自分で決められるように支援することが大切です。
最初はルールやマニュアルまで落とし込んだり、具体的に伝えることが必要ですが、これをいつまでも続けていては「マニュアル人間」になってしまいます。これでは逆に主体性が身につきません。慣れてきたら抽象度・要望度を上げ、「問い」を与えるようにしていきましょう。
リモートワーク中のOJTは、雑談が大事
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令された2020年。三密を避けるために、新入社員研修や出社が少なくなりオンライン開催になり、同期や同じ部署の人と会うことなく新生活がスタートした方も多いでしょう。そんな人間関係の構築が難しい中でいかにしてOJTをうまく進めていくか。注目されているのは「雑談」です。
雑談に注目が集まる背景
オフィスで働いていた時は近くに上司・同僚がいるので、自然と会話が生まれ、関係性が構築されやすい環境でした。しかしリモートワークになると、こうした会話が激減。気が付けば、仕事の話しかしていない…ということにもなりやすい状況です。
じつは何気ない会話は「チームワークの醸成」や「心理的距離を近づける」といった効果もあります。効果的なOJTになるためにはお互いに信頼関係があり、相談しあえる関係を作ることも大切なポイント。リモートワークでは特に意識する必要があります。
意識的に雑談時間を設ける
効率化を重視する上司ほど雑談が少なくなりやすい傾向にあるようです。だからこそ、あえてミーティングの前やランチ・リモート飲みなどを活用して雑談を取り入れてみてください。
また、ランチやリモート飲みが難しい場合は、下記のような仮想オフィスの活用も注目されています。エン・ジャパンでの活用事例についてもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
時代の変遷に合わせた育成が求められる
日本における育成や教育のあり方は、時代の流れとともに変化してきました。そして今、時代はさらに大きな変化の只中にあると言えるでしょう。
日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長は、「1つの会社でキャリアを積んでいく日本型の雇用を見直すべき」と提言するなど、新しい雇用やキャリアの築き方に注目が集まっています。
そのなかで、優秀な人材を育成・雇用していくことは、今後も変わらず企業の課題となるでしょう。だからこそ、時代の変遷にあわせてOJTとOFF-JTをうまく活用し、人材を育成していくことの重要性がますます増しているのです。
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engage採用ガイド編集部は、人材業界で長く活躍している複数のメンバーで構成されています。人材業界で営業や求人広告ライターなどを経験したメンバーが、それぞれの得意領域を担当し、専門的な知識に基づき執筆を行っています。
engage採用ガイド編集部は「採用に悩む経営者・人事担当者の頼れる相談先」としてこれからも日々情報をお届けしていきます。 ※engage採用ガイドはエン・ジャパン株式会社が運営している情報サイトです。