ブラザーシスター制度とは?新入社員の離職防止に役立てる方法を解説

人材の流動化が進んでいる昨今。転職の一般化が進み、従業員の定着は企業にとって大きな課題となりました。膨大な時間やコストをかけて採用し、教育した新入社員が1年も経たないうちに退職してしまうことは、企業にとってできる限り避けたいものであるはず。「入社後にフォローをしているつもりなのになぜか辞めてしまう」「新入社員がなかなか会社に馴染まない」こういった悩みはもしかしたら、「ブラザーシスター制度」の導入によって解決できるかもしれません。

 

そこで本記事では、「ブラザーシスター制度」が注目を集める背景や導入を成功させるためのポイント、実際に制度を活用している企業事例まで詳しく解説していきます。制度の導入を検討、ないしは導入したけど上手く活用できていないといった際にお役立ていただければ幸いです。

 

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ブラザーシスター制度とは?

ブラザーシスター制度とは、新入社員に同じ部署の年齢の近い先輩がつき、業務やメンタル面における幅広いフォローを行なう制度のこと。基本的には新入社員ひとりに対してひとりのブラザー、もしくはシスターがつく「一対一」の指導となることが多いですが、企業によっては指導役が複数となることもあります。

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OJT制度、メンター制度との違い

ブラザーシスター制度と混同されやすいのが、OJT制度とメンター制度です。OJT制度は新人に限らず他部署から移動してきた従業員など、すべての従業員が対象になります。実務面のみのフォローを行なう制度であるため、同じ部署の先輩が指導に当たり、指導に当たる先輩の年齢・年次は特に考慮されません。

 

メンター制度は新入社員を主とした、全従業員が対象です。先輩社員が社内の人間関係やキャリアに関する相談に乗る制度で、本音をざっくばらんに話せるよう、普段の業務では関わりのない別部署の先輩が指導を担当することが多いです。

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なぜブラザーシスター制度が注目されつつあるのか?

令和2年卒の新入社員の離職率は10%となっており、10人にひとりが1年以内に退職している計算に。理想と現実とのギャップや初めてのことに対する戸惑いなど、新入社員がぶつかる壁は多くあります。そういった悩みをひとりで抱え込んでしまった結果、離職を決断したケースは少なくないはず。新入社員に対して定期的に人事面談などを行なっている企業も多いですが、社会に出たばかりの新入社員にとって上司は遠い存在。なかなか悩みを打ち明けられないこともあるでしょう。

 

さらに、コロナ禍によりリモートワークや時差出勤が普及したことで、社員同士の直接的な交流がしづらくなったことも一因と考えられます。人間関係の希薄化は、まだ社内に居場所のない新入社員にとって、「困ったときに誰に相談すべきか分からない」といったリスクをもたらすことに。そこで、会社として「悩みを相談できる身近な先輩」を用意する「ブラザーシスター制度」が注目を集めているのです。

ブラザーシスター制度導入のメリット

ブラザーシスター制度のメリット・デメリット

ブラザーシスター制度が注目される背景を踏まえた上で本章では、ブラザーシスター制度を導入した場合の企業側のメリットを解説していきます。

新入社員の悩みを早期発見できる

社会に出たばかりの新入社員にとって、年の離れた上司に悩みを相談することはハードルが高いもの。「話をしても、分かってもらえないのでは」といった不安もあるでしょう。また、相手が評価に関係する人であれば、なおさら本音で話すことは難しくなります。一方で、年齢の近いブラザーシスターは少し前まで似た立場で同じような悩みを持っていたケースも多く、新入社員が本音を打ち明けやすくなる存在に。

 

職場の人間関係や仕事への心構えなどを相談し、共感やアドバイスをもらうことは新入社員にとって大きな心の支えとなります。頼れるブラザーシスターの存在が、悩みを早期発見し、解消するための糸口になるでしょう。職場への不安や不満が積み重なる前に対応ができることは、新入社員の定着において大きなメリットになるといえます。

若手社員の成長にもつながる

ブラザーシスターとなる若手社員は新人社員のよき相談相手として「業務をどう教えたら良いか」「どうやって悩みごとにアドバイスをすればよいか」といったことを自然と真剣に考えるようになります。これは将来、部下を持つことになったときに役立つほか、人に教えることで業務に対する自身の理解を深めるきっかけにもなり、ブラザーシスターの大きな成長につながります。新入社員から頼りにされることで、責任感や主体性も身につき、より意欲を持って業務に励むようになるでしょう。後輩の良きお手本であろうとすることは、先輩社員自身を成長させるのです。

新入社員のロールモデルになる

企業の行動指針となる「組織文化」は経営側が従業員に指示しても、本質的な浸透は難しいものです。特に右も左も分からない状態の新入社員は、組織文化を頭では理解しても、どう行動に落とし込めばよいか迷ってしまうこともあるでしょう。そこで、一番身近な存在であるブラザーシスターが良き手本となることで、新入社員はそれを自然と受け入れ、自身の行動にも体現しやすくなります。ブラザーシスターは新入社員に対して、「自分が先輩にしてもらったこと」を引き継ぎます。それにより、組織文化が自然と継承されることになるでしょう。

ブラザーシスター制度導入のデメリット

先述の通り、ブラザーシスター制度には様々なメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。導入の検討を正確に行なうために、デメリットも把握しておきましょう。

先輩社員の業務負荷が増える

ブラザーシスターとなる先輩社員は、通常業務を行ないながら新入社員のフォローを任されるため、業務負担や心理的負担が大きく増えることになります。それにより、先輩社員が疲弊してしまうと、新入社員へのフォローがうまく行なえなくなることにつながりかねません。

 

新入社員の不安やストレスが増えては、制度としては本末転倒に。最悪の場合、双方の大きな負担増や離職につながる可能性も出てきます。そういったことを防ぐためには、通常業務のフォローを行なったり、残業時間を確認したりと、ブラザーシスターの負担が大きくなりすぎていないか常に気を配りましょう。

教育効果に差が生じやすい

ブラザーシスター制度は基本的には一対一の教育となることから、指導役一人ひとりの個性や考えに頼る面も大きくなります。業務面の教育方法はマニュアルを整えることである程度均質化できますが、メンタル面のフォローはマニュアル化や数値化ができるものではないため、ブラザーシスターの対応によって大きく差が出ることも。

 

どのブラザーシスターに当たるかによって質問や相談のしやすさに違いが出てしまうと、新入社員にとっての不満やモチベーションの低下につながる恐れもあります。そういった状態を防ぐためには、指導を最低限均質化すべく、事前の研修でベースとなる考え方を教えておくとよいでしょう。

依存しすぎると、自ら考える習慣が身につかなくなる

先輩社員を頼れる環境があるのは心強いものですが、あまりに先輩に依存しすぎてしまうと、新入社員の成長を妨げる恐れもあります。新入社員の自立のためには、なんでも先輩に相談すればよいと思わせるのではなく、自分の考えや意見を持たせることも重要です。もちろん最初から自立させようとせず、必要なことは丁寧に教えた上で、ある程度業務への理解が深まった頃に、自分なりの工夫ができるよう見守る姿勢も大切です。

 

慣れてきた頃には、質問をする前に自分で一度考える習慣をつけさせるなど、サポートの仕方を工夫しましょう。教育期間後の自立に向けて、自分ひとりでもできるといった成功体験をさせ、自信を持たせることもブラザーシスターの重要な役割です。

相性が合わない場合、新入社員の離職につながるリスクも

ブラザーシスターと新人社員の関係がこじれてしまった場合は、制度本来の目的を果たせないどころか、新入社員の離職原因となってしまうことも。一番身近な存在であるブラザーシスターとうまくいっていない場合、誰に相談したらよいか分からず、悩んでしまうケースもあるでしょう。

 

そうして悩みを抱え込んだ結果、メンタル面に支障をきたし、休職や離職につながることすらありえます。そういった状況を防ぐため、第三者の立場から「双方が良好な信頼関係を築けているのか」を確認し、フォローができるような場を設けるとよいでしょう。ブラザーシスターと新入社員が、閉ざされた関係性にならないことが重要です。

ブラザーシスター制度導入を成功させる5つのポイント

ブラザーシスター制度導入を成功させる5つのポイント

ブラザーシスター制度のメリットとデメリットを確認した上で導入に関するポイントを把握すれば、導入の検討もしやすくなります。ここからは導入の際に基本となる5つのポイントを紹介していきますので、ぜひお役立てください。

制度の目的やガイドラインを明確化する

まずは、ブラザーシスター制度導入の目的や最終的なゴールを決めます。これにより、指導やフォローの仕方など次のアクションが決まってくるため、できる限り具体的に決めることが大切です。その後いつからいつまで、どんな内容をサポートするかを決めた上で指導マニュアルを作成しましょう。

 

これがあいまいなままスタートしてしまうと、ブラザーシスターとなる従業員が迷ってしまったり、負担が大きくなったりしてしまうため、できる限り会社としての方針を固めるべきです。重要なのは、ブラザーシスターとなる従業員に丸投げをしないこと。任せきりにしてしまうと先輩社員の負担が増すだけでなく、新入社員の育成にもバラつきが出てしまうため、ある程度均質化できるようにしましょう。

ブラザーシスターとして適切な対象者を選ぶ

ブラザーシスターは業務成績や能力だけではなく、人格も含め「新入社員のフォロー役にふさわしい人物」を選ぶべきです。成績のよい従業員が必ずしも指導役に適しているとは限りません。また、適任と思われる人物であっても、本人の意思を無視してブラザーシスターに任命してしまうことは避けるべき。

 

ブラザーシスターに新入社員をフォローしたい気持ちがない場合、それが新入社員に伝わり、質問や相談がしづらくなります。こういった状態では、双方の信頼関係を築くことは難しいでしょう。ふさわしい人物であっても、無理にブラザーシスターを任せるのではなく、あくまでも本人の意思を確認することが重要です。

ブラザーシスターと新入社員双方に説明する

制度については、指導役となるブラザーシスターだけでなく新入社員にも「目的やゴール」をしっかりと説明しましょう。これがきちんと伝わっていないと、新入社員もブラザーシスターをどう頼っていいのか分からず、制度本来の効果が発揮できにくくなります。

 

新入社員にはまず、ブラザーシスターを「頼れる存在」として認識づけることが重要です。雑談も交えた自己紹介の時間を設ける、またはランチ会の補助費を出すなど、双方がスムーズに打ち解ける場を会社として用意するのもひとつの方法。良い関係性を築くためのサポートはしっかりと行なってください。

社内全体への周知を行なう

ブラザーシスター制度の導入には、既存社員の理解と協力が必要不可欠。新入社員とブラザーシスターだけの問題ではなく、会社全体の取り組みとして意識させることが重要です。導入の目的やゴール、フォロー内容をしっかりと理解してもらい、必要なときにはいつでもサポートできる体制を整えておくことで、ブラザーシスターは新入社員とじっくり向き合うことができます。

 

社会に出て間もない新入社員の教育には、想定できないトラブルやハプニングがつきもの。その際、周りの手助けがあれば、早急な問題解決だけでなく、その後のメンタル面のフォローなど新入社員に対して丁寧なサポートを行なうことができます。ブラザーシスター以外の従業員もフォローに加わることで、「周囲から大切にされている」と新入社員が実感し、会社への愛着も深まるでしょう。

定期的に進捗確認をし、適宜フォローを行なう

教育期間において、新入社員の業務習熟度を定期的に確認することも重要。その際、ブラザーシスターだけで抱え込むことないよう、周囲もしっかりとフォローするようにしましょう。成長度合いや進捗が思わしくない場合は、ブラザーシスターの上司などと相談して教育のやり方を変えたり、復習の時間を設けたりするなどして、対策を打っていきましょう。また、ブラザーシスターと新入社員の関係性に問題がないか・信頼関係が築けているかを確認することも忘れてはいけません。新入社員からの定期的なフィードバックをもとに、制度そのもののブラッシュアップをしていくことで、より効果のある制度設計を実現できるでしょう。

ブラザーシスター制度の導入事例

ここからは、実際にブラザーシスター制度を導入している企業事例を紹介していきます。制度設計をする際の参考にしてみてください。

アサヒビール株式会社

アサヒビールでは、所定の研修を修了した先輩社員が新入社員の教育を行なっています。ブラザーシスター制度を通して社員同士が助け合う文化の醸成や、計画的な育成による「基礎知識の平準化」などを実現すべく制度を活用しています。ブラザーシスターは、自ら「やりたい」と志願した若手社員を任命。

 

これにより、やる気のある社員同士が協力し、助け合う雰囲気が生まれています。新人を育成することでブラザーシスター自身の成長にもつなげているほか、「先輩から学んだことを後輩にも受け継いでいきたい」といった思いが、アサヒビールの社風を形成しています。

参考リンク:https://www.asahibeer.co.jp/saiyo/category/blog/post-12.html

三井住友海上火災保険株式会社

三井住友海上では、新入社員を自分たちの「ファミリー」の一員として迎え入れています。新入社員それぞれに「ファーストブラザー」「ファーストシスター」をつけるだけでなく、それ以外の社員も含めみんなで「新入社員を成長させたい」という意識を持って業務に臨んでいます。上司や職場メンバーへ育成プランを共有することで、職場メンバー一体となったサポート活動を実現しています。教育をファーストブラザーやシスターだけに任せないことを重要視し、多くの人が関わりながら、新入社員の成長を促しています。

参考リンク:https://www.msig-saiyou.com/career/hrd/

株式会社はたらクリエイト

はたらクリエイトでは、先輩社員を「姉」、新人社員を「妹」とする「シスター制度」を導入しています。この制度は新人だけでなく、産休・育休明けのスタッフにも適用。長期的に職場を離れた後でもスムーズに仕事復帰できるよう、丁寧にフォローする体制を整えています。毎週15分程度のコーヒーブレイクで悩みを相談できる時間をつくり、悩みに関する相談や緊張感をほぐすための雑談などをしています。

 

ときには先輩社員同士で、新入社員への対応方法などについての情報共有を行なうことも。新人のスキルアップ速度を速めたり、先輩社員のマネジメントスキルが向上したりするなど、双方のスキルアップにつながっています。また、三ヶ月のフォロー期間が終わっても一緒にランチに行くなど、よい関係性が継続しています。

参考リンク:https://hatakuri.jp/blog/sister_system_staff/

ブラザーシスター制度は採用活動のアピールポイントにもなる

ここまで見てきたように、ブラザーシスター制度には、きめ細かな新入社員のフォローはもちろんのこと、先輩社員の成長や組織文化の継承など、新入社員・先輩社員双方にメリットがあります。実務面にとどまらず、働く上での悩みや困りごとを一緒に考えてくれる先輩がいることは新入社員の大きな安心感にもつながるため、長く働き続けてもらうモチベーションになることが期待できるでしょう。さらには、会社に対して悩みや不安がなく働き続けられる社員が多いと、採用の際のアピールポイントにも。新入社員への手厚いサポート体制が整っていることを前面に打ち出し、「人材」を大事にする企業であると求職者に訴求することができるはずです。

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まとめ

少子高齢化による労働人口の減少が深刻化し、採用の難易度は年々上昇しています。また、せっかく採用できても、入社後ギャップなどの理由による早期離職を問題視している人も多いはず。今後は、人材を採用できるだけでなく、「定着させ」「育てる」力のある企業だけが競争力を保つことができるでしょう。したがって、新入社員の育成は企業の未来を左右すると言っても過言ではありません。悩みや困りごとを新入社員一人で抱えさせず、能力を引き出せる環境を整えることが、企業としての重要な役割となります。新入社員の定着や企業価値を向上させる一環として、ブラザーシスター制度を導入してみる価値はあるのではないでしょうか。

 

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