ピアボーナスとは?褒め合う文化で組織力を高めるポイントを解説

最近、企業の福利厚生として「ピアボーナス」という言葉をよく耳にするようになりました。アメリカではすでに主流になりつつある人事評価制度の一つですが、日本企業でも現在、中小・ベンチャー企業を中心に導入する企業が増えており、注目が集まっています。ピアボーナスを簡単に説明すると、賞与や昇給とは別の形の報酬を意味し、「従業員に向けた第三の報酬」とも言われています。

 

人材の流動性が高まっている中で、いかに既存社員に長く働き続けてもらえるかと課題にしている人事担当者も多いのではないでしょうか。ピアボーナスは、その打ち手の一つになるかもしれません。

 

そこで本記事では、具体的にピアボーナスとはどのようなものかについてご紹介。ピアボーナスの定義や仕組みから、導入におけるメリット、導入を成功させるポイントなどについて詳細に解説していきます。ぜひ御社の人事施策の一つとして役立ててもらえたら嬉しいです。

(注)「ピアボーナス」は、Unipos株式会社が商標権を取得しています。本記事における「ピアボーナス」は、Unipos株式会社の使用許諾の下で使用しております。

 

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ピアボーナスとは?

ピアボーナスとは、「peer」と「bonus」を組み合わせてできた言葉。もう少し詳しく説明すると、「Peer=従業員同士」、「bonus=社内における貢献に対する感謝や称賛とそれに付随した成果給(少額のインセンティブなど)を贈り合える仕組み」といえます。賞与や昇給などのような会社からの報酬ではなく、従業員同士で送り合う報酬なのです。

 

そのため、「誰に評価されるのか」が賞与や昇給と大きく異なる点です。業務の成果や貢献に対して上司が部下を評価する形ではなく、従業員同士がお互いに評価をするもの。この仕組みを取り入れることで、上司や他部署からは見えなかった貢献や頑張りを可視化でき、従業員同士のコミュニケーションが活性化したり、感謝や称賛のカルチャーが生まれたりします。従業員同士で評価するという、これまでにはなかった新しい人事評価・報酬制度として注目を集めているのです。

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メインはポイント制とメッセージ送付

ピアボーナスの運用には、大きく2つの方法があります。

  • ポイント制
    相手への感謝や評価を「ポイント」で贈り合う方法。たとえば、評価につき1ポイント、評価の度合いに応じて複数ポイントなどを設定する場合もあります。ポイント制のメリットは、送り手の労力や時間などの負担が少なく、評価が数という目に見える形で貯まっていくのでわかりやすい点です。
  • メッセージ送付
    相手への感謝や賞賛の気持ちを短いメッセージにして贈る方法。メッセージ送付のメリットは、どんな行動に対してどのような感謝・称賛の気持ちがあるのかといった、送り手の気持ちが伝わりやすい点にあります。贈られた人の満足度も高くなり、コミュニケーションが活発になったり、運用が浸透したりすることで社内風土の改善にも役立つと考えられます。

大きく採用されているのはこの2つですが、ポイント制とメッセージ送付を併用しているケースも多いようです。たとえば、「メッセージにポイントを付与して贈る」「誰かが贈ったメッセージに対して”いいね”をするとポイントに換算される」など、様々な運用方法・仕組みをつくることができます。

ピアボーナスが注目されている背景

世界的な大手企業が先駆けて、ピアボーナス制度を従業員の評価指標としても活用したことで話題を集めました。ピアボーナスの導入により、売上や成果など数字に表れない業務をしているバックオフィス業務も企業成長にしっかり貢献しているということが可視化でき、その認識が広まりました。それ以降、日本でも取り入れる企業が増えてきたのです。

 

日本では働き方改革によって、雇用形態や働く環境、働くことに対する価値観が多様化し、転職市場が活性化して人材の流動性が高まっています。そのため、各企業では人材の定着や育成に向けて、新たな施策を実施する必要が出てきました。

 

また、昨今のリモートワークの普及で社員同士のコミュニケーションが不足しがちになっている状態を課題とする企業も増えており、帰属意識を維持したり、お互いの仕事に目を向けたりする施策も、これまで以上に重要視されています。

 

こうした新たな価値観に柔軟に対応したり、自社の魅力付けとして従来の人事評価制度の足りない部分を補ったりする目的で、ピアボーナスを導入する企業が増えているようです。また、SNSが普及している中で、仲間内で褒めたり認めあったりする行為は若い年代が重視する価値観の一つにも。そうした背景から、特にベンチャー企業などでは積極的にピアボーナスを取り入れているようです。

ピアボーナスを導入するメリット

導入が進んでいるというピアボーナスですが、実際に導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主に、4つのメリットを挙げてみます。

  1. 社内コミュニケーションの活性化
  2. モチベーション・エンゲージメントの向上
  3. 優秀な人材の流出防止、社員の定着率向上
  4. 企業文化の醸成や理念・行動指針の浸透
社内コミュニケーションが活性化される

従業員同士が感謝の気持ちを伝え合ったり、褒め合ったりすることで、単純にコミュニケーションの回数が増えます。あまり交流のなかった従業員と接する機会が生まれ、部署やポジション・立場などを超えた人間関係の構築が期待できるでしょう。

 

その結果、自分の所属する部署内だけではなく、他部署の従業員やその人が従事している仕事に関心が向くようになることも。

 

業務上でやり取りはしたことはあるけれど、いつも何気なくやってくれていたことに感謝の気持ちを伝えることはできなかったという人も多いはず。ピアボーナスがあれば、それを利用して気持ちを伝えることができるのです。

 

そのような交流が増えることで、普段からコミュニケーションがとりやすくなり、結果的に社内全体のコミュニケーションが活性化されます。

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従業員のモチベーション・エンゲージメントが高まる

ピアボーナスの特長の一つとして、自分が所属する部署以外から自分の仕事に対する評価がもらえる点があります。

 

上司や同部署内のメンバーだけではなく、色々な方面から自分を褒めてもらえたり、感謝されたりすることでモチベーションが上がるでしょう。経営陣や管理職の目が行き届かないような細かな業務や、評価制度の基準に無いような成果が数字では表せない業務なども、会社を経営していくためには必要な仕事です。

 

そうした貢献を評価されると嬉しいですし、小さな日々の仕事が他の人から評価してもらえることでやりがいにもつながり、エンゲージメントの向上が期待できます。

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優秀な人材の流出を防ぎ、社員定着率が向上する

ピアボーナスによって、従来の評価制度では表面化しにくかった成果が評価されやすくなると、従業員の満足度や意欲の向上にもつながると考えられます。

 

一方的な上長からの評価だけだと、数字面の成果や上司から見える仕事ぶりのみがフォーカスされがち。結局、数字や目立つ行動などだけが評価されやすく、上司と部下との間に評価に対する乖離が生まれることもあるでしょう。それにより、従業員のモチベーションが下がってしまうリスクもあります。

 

優秀な人材とは、単に営業成績が良い・目標数字を達成する・リーダーシップがあるなどだけでは測れません。仕事に対して熱心に取り組んだり、見えないところで貢献したりするような人材も会社にとっては欠かせない存在。ピアボーナスを導入することで、これまででは評価しにくかった成果が正当に評価しやすくなり、そのような優秀な人材の離職を抑制することができます。

企業文化の醸成や理念・行動指針の浸透につなげられる

お互いを褒め合う・感謝の気持ちを伝え合う・尊重し合うという文化を、企業カルチャーとして醸成できます。会社に対する従業員の愛着やエンゲージメントが向上すれば、会社の理想とする姿や行動指針なども浸透しやすくなるはず。組織が同じ方向を向いて活性化できれば、良い結果を生みやすくなり、結果的に会社の成長につなげることができるでしょう。

 

そして、そのようなカルチャーがあることを自社の魅力として、採用活動の際にアピールすることができます。

ピアボーナスを導入する際の注意点

前章でお伝えしたように、ピアボーナス制度は企業に多くのメリットをもたらしてくれますが、より効果を発揮できるような運用を目指すためにも知っておくべき注意点があります。本章で、詳細に見ていきましょう。

導入や運用にコストがかかる

ピアボーナスを導入するにあたって、大半の企業が専用のサービスを利用しています。システムやツールを利用することになれば、当然のことながら初期費用や運用していくための利用料などのコストが発生します。

 

また、報酬の形は各企業で設定します。商品券やギフト・食事券、書籍やPayポイントなどを報酬としている企業が多いですが、少額ながら現金報酬を支給するシステムも。その場合、報酬の原資が必要になってくるでしょう。従業員数が増えて活用度が上がれば、その分かかるコストは増えていきます。

評価を得ることに固執してしまう社員が出る可能性がある

ピアボーナスは、従業員にとって第三の給与とも言えます。そのため、ピアボーナスでの評価を得ることに固執してしまう従業員が生まれるリスクも。ピアボーナスが欲しいがために本業に集中しなくなったり、ピアボーナスでも評価されない業務をやらなくなったり、内部のやり取りに夢中になってしまったりする社員も出てくるかもしれません。

 

そのような社員が増えると、ピアボーナス導入の本来の目的からかけ離れてしまいます。そうならないためにも、運用体制やガイドラインをしっかりつくることが大事です。

ピアボーナスを成功させるポイント

上記では注意点についてお伝えしましたが、実際にピアボーナスを導入しても、うまく浸透させることができずにコストや工数がかかるだけになってしまうと意味がありません。どうしたら失敗せずに上手く運用していけるのか。ピアボーナス導入を成功させるポイントについていくつかお教えしますので、ぜひ役立ててください。

  • 手軽に贈れる仕組みやシステムを構築する
  • 従業員全員が対象になるよう運用設計を工夫する
  • 定期的に運用の周知や効果検証を行う
手軽に贈れる仕組みやシステムを構築する

ピアボーナスは、従業員に自発的に参加したいと思ってもらえるようにすることが大前提です。そのためにも、まずは「参加しやすさ」が重要になります。

 

たとえば、ピアボーナスを贈る際に時間がかかるような仕組みだと、本業に費やす時間が減り、贈る作業自体が面倒くさくなって参加しなくなるでしょう。ピアボーナスを贈る行為自体を負担だと感じられてしまうと、当然ながら浸透しません。業務のスキマ時間や移動中でも手軽に贈れるようにすることがポイントです。

 

最近は、Slackなどのビジネスチャットとの連携や、スマホから簡単に作業できるシステムも増えています。

従業員全員が対象になるよう運用設計を工夫する

いくら従業員全員が対象といっても、普段から目立つ社員や業務上で関わる人が多いポジションの従業員に評価が集中してしまうことも。一部の従業員に集中してしまうと、あまり社内で目立たない従業員や他部署との交流が少ない従業員の参加意欲が低下してしまいます。

 

そうなれば、ピアボーナス制度本来の効果や導入の意図から外れてしまいますし、結果的に従業員全体のモチベーション向上にもつながりません。導入当初は特に、まだお互い知らない社員も多いので偏りがちになる可能性も。

 

だからこそ、運用の設計を工夫することが重要です。たとえば、期間を設けて評価対象や称賛内容を絞ったり、贈る方法を工夫したりするなど独自の施策を考えていく必要があるでしょう。

定期的に運用の周知や効果検証を行なう

ピアボーナス制度の導入を告知しても、その内容がわかりづらければ自発的に参加したいとは思わないもの。制度をわかりやすい形で周知するようにしましょう。社員全員にきちんと伝わるよう、定期的に参加を促すメッセージを送るなど、複数名で色々な方法で周知することを続けていくことが大事です。

 

また、ポイントを贈る行為はすぐできても、報酬に交換するまでにはタイムラグが発生します。制度の効果をしっかり実感してもらうためにも、定期的に周知したり、メッセージや報酬の内容などの共有を行なったりすることが重要です。定期的に活用状況をチェックすることはもちろん、運用やシステムなどの不満や要望などを集めて継続的に改善していくと良いでしょう。

ピアボーナス導入の成果を出している企業例

ではここで、ピアボーナスのシステムを導入して良い成果を挙げている例をご紹介します。従業員の満足度だけではなく、社内のITリテラシーを向上させることにもつながった企業です。自社に合った仕組みやシステムを導入することが大事ですが、導入の際に参考にしてみてはいかがでしょうか。

社員のITリテラシーも向上させることに成功した「カクイチ」

【課題】

創業130年を超える老舗企業でもあることから高年齢の社員が多く、数年前まで個人メールアドレスやWi-Fi環境がなかった。そのため、社員のITリテラシーが低い、部署の垣根を超えた交流がない、職場で認められる機会が少ない、など複数の課題があった。

 

【課題解決のための工夫】

ピアボーナスシステムのツールをSlackと共に導入。その際、デジタルツールに慣れていない社員への対策として、ITリテラシーの高い社員やコミュニケーションが得意な社員を「ITアンバサダー」に任命し、拠点ごとに設置。ツールを活用してもらうために積極的に働きかける施策を実行してもらった。

 

【導入後の変化】

ITリテラシーに不安があった50代以上の社員のほうがむしろ活発に活用しており、部署の垣根を超えた交流が盛んに。「ありがとう」という言葉に紐づく語彙が多ければ多いチームほど生産性が高い、部署外からポイントを贈られることが多い社員はエンゲージメントが高い、という効果検証の結果が出ている。

参考リンク①:https://blog.unipos.me/2018/12/12/kakuichi/

参考リンク②:https://boxil.jp/mag/a6504/

「褒め合う」文化をつくり、従業員がいきいき活躍できる職場に

ピアボーナスについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。従業員同士で気軽に「褒め合う」コミュニケーションの場を設けることで、今まで見えなかった貢献や頑張りを可視化できたり、部署間を超えたコミュニケーションが生まれたり、密かに努力している従業員にスポットが当たったりするなど、組織全体の活性化につながります。

 

また、従業員のエンゲージメントを高めて、人材の流出を防ぐ施策としての効果も。これまで当たり前にしてきた業務に感謝してもらえたり、地道な作業が評価されたりするなど、報酬だけではない「褒められる喜び」も社員にとっては大きなメリットではないでしょうか。

 

ただし、制度を導入すれば必ず効果が得られるわけではないことも心得ておくべきです。ピアボーナスは、従業員が自発的に参加し、きちんと活用していけるものにしないと意味がありません。

 

そのためにも、自社に合ったツールを選び、効果的な運用体制の構築を考える必要があります。組織課題の解決にぜひピアボーナス制度を上手く利用して、「褒め合う」職場づくりをしていきましょう。従業員がモチベーションを持っていきいきと働ける会社を目指してください。

 

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