人材流出を防ぐために取り組むべきことは?1万人の声から原因と対策を分析

人材流出を防ぐために  取り組むべきことは?1万人の声から原因と対策を分析

「主戦力だった社員が、来月辞めたいと言ってきた。将来幹部を任せる予定だったのに…」「新卒で入ってきた社員がなかなか定着しない。一体どうしてなのだろう。」人材の流動化が叫ばれて久しい昨今において、「急に人材が辞めてしまうリスク」は避けては通れないもの。しかし人材が辞めてしまうと企業の生産性は落ちてしまい、最悪業務に支障が出てしまうこともありえます。

 

今回は、そんな人材流出の概要や、人材流出を防ぐために企業ができることなどについてまとめました。「社員を定着化させたい」「人材流出の防止に力を入れたい」とお考えの方は、ぜひご一読ください。

※この記事は2022年5月13日に公開した記事を再編集しています

 

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人材流出とは

人材流出とは文字どおり、人材が自社から他社に流出してしまうことです。従来の日本では、新卒で入社した企業で定年まで働く終身雇用制が主流であり、企業における人材流出のリスクも低い傾向にありました。しかし、近年は終身雇用制が崩壊。より働きやすく、より働きがいのある職場を求めて転職する人材も増えています。2019年には経団連も「今後、企業が終身雇用を維持していくことは難しい」と述べ、新しい雇用の在り方を作っていく必要性を指摘しました。

 

以上のような背景から、企業は人材流出のリスクに、今までよりも備えていく必要が強まったといえるでしょう。特に、自社の主力となっている優秀な人材を流出させないために、多くの企業が様々な対策を打ち出しています。

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人材流出の防止に多くの企業が注力している背景

人材流出の防止に多くの企業が注力している背景としては、先に述べた終身雇用制の崩壊や、労働力の確保そのものが難しくなっていることが挙げられるでしょう。まず少子高齢化により、国内の労働人口が減少。主力労働者が高齢化によって定年を迎え、少子化によって新卒の応募もなかなか集まらないという企業も多いです。

 

また、働き方の多様化により、人材は「より自分らしく、働きやすい環境」を職場に求める傾向にあります。企業として安定性があり、従業員の働きやすさをしっかり整えている企業が人気を集める一方で、労働環境の整備が遅れている中小企業は人手不足に陥りやすいのが現状です。このように、昨今は労働力の確保が従来よりも難しくなっているため、人材流出を防ぎ、組織の生産性を維持しようとする企業が多くなっているのです。

日本から海外へ人材が流出

また、社外への人材流出だけでなく、日本から海外への人材流出も問題視されています。外務省が発表したデーターによると、日本人の海外の「永住者」は年々増え続け、2022年10月時点では55万7034人と過去最高を更新しました。

日本から海外へ人材流出

出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」のデータをもとに採用ガイドが編集  

長期滞在者も含めると、2022年10月1日時点で海外に住む日本人は130万8,515人に上ります。令和元年を過ぎると海外移住者の人数は減少傾向になっていますが、コロナ禍の影響で一時的なものとなっております。


日本から海外へ人材流出が続いている理由としては、文化や言葉、考え方、価値観の違いなど様々ありますが、大きな要因としては「賃金」が考えられます。


経済協力開発機構(OECD)の2022年の調査によれば、日本の平均賃金は41509USドル。 経済協力開発機構(OECD)の平均が53416USドルなので、約12000USドル(1ドル=120円とすると約150万円)の差があります。

日本から海外へ人材流出する理由は賃金

出典: 経済協力開発機構(OECD)「平均賃金」のデータをもとに採用ガイドが編集 


そのため、優秀な人材ほど日本から海外へ流出してしまう傾向があると言えそうです。

人材流出に伴うリスク3選

では、人材流出は企業にはどんなリスクがあるのでしょうか。具体的なリスクを3つ見てみましょう。

人材流出に伴うリスク3選

ノウハウが流出する

人材は、自社の業務を通して身につけたノウハウを有しています。人材が流出し、仮に競合企業などに転職した場合、人材が自社で得た様々なノウハウも流出してしまう点が、人材流出のリスクです。また、企業でなく特定の社員に顧客が付いていた場合や、社員が顧客情報を企業に共有せずに退職してしまった場合、本来企業が獲得できていたはずの人脈も使えなくなる可能性があります。ノウハウだけでなく、人脈も流出してしまう可能性がある点がリスクといえるでしょう。

後継者が不在になることがある

今まで後継者として育ててきた人材が退職してしまった場合、次の後継者候補を急いで育成する必要性が出てきます。中小企業の場合は後継者が見つからずに廃業となるケースも多いため、後継者の流出は人材流出の中でも大きなリスクのひとつです。もちろん後継者だけでなく、幹部候補のようなリーダー格の社員や、精力的に活躍してくれる社員を失うことも企業にとっては痛手となります。現場の人材が不足すれば企業全体の生産性も低下しやすく、人員が補充されるまで現場にも負担を強いてしまうことがリスクといえるでしょう。

人材・教育コストの増加

人材が流出すると、新たな人材を採用するためのコストや、新入社員を育成するための教育コストが発生します。場合によっては欠けた人員の業務を一時的にカバーするため、他の人員に残業や、休日出勤をお願いする必要性も出てくるでしょう。会社にとって様々なコストがかかるため、人材流出はできるだけ最小限に抑えたいリスクといえます。

1万人の回答結果から見る「人材が流出してしまう原因」

人材が流出してしまう理由には、定年退職や契約期間の満了、家庭の事情(介護のための退職など)など、やむを得ない事情も含まれます。しかし、中には会社側にある何らかの要因のために、退職を選ぶ人も多いです。会社としては社員が退職してしまう理由を明らかにし、対策を取ることが重要といえます。

 

『エン転職』ユーザーアンケートの「退職のきっかけ」実態調査によると、退職のきっかけとして多くの人が挙げたのは「やりがいの欠如」。また、20代などの若手層は、給与の低さから退職を考えたという意見が目立ちます。

社員が退職を考えたきっかけについてトップ3をさらに詳しく見ていきましょう。

人材が流出してしまう理由・原因

参考:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―

やりがいが感じられない

年代を問わず多くの人が退職を考え始めやすいきっかけとして挙げたのが、「今の会社にやりがいや達成感を得られない」という点です。「やりがいや達成感がない」と一口にいっても、仕事のやりがいを削いでいる原因は人によって異なります。

・仕事内容そのものに飽きてしまった

仕事そのものに飽き、モチベーションを失っている状態です。個人の問題である可能性もありますが、「職場の評価が正当ではない」「誰かの役に立っている実感がない」など、会社の評価制度が原因になっていることもあります。

 

・上司とそりが合わない

職場の人間関係の悪さから、仕事のモチベーションをなくす人も珍しくありません。「職場の人からいじめを受けている」といった直接的なトラブルはもちろん、上司からの威圧感や、周囲とのコミュニケーションの希薄さから、職場にいる意味を見失い、退職を選ぶ人もいます。

仕事にやりがいを感じられなくなる理由は、上記のように人によって異なります。ただ理由がどうであれ、やりがいを失った社員は生産性が落ちてしまう傾向にある点に注意が必要です。「やりがいがない会社」と多くの従業員が感じているのであれば、人材流出という目に見える結果に表れなくても、組織にとって働きがいの改善などに向き合うべきといえるでしょう。

報酬が見合っていない

業務量と報酬が見合っていない場合、社員のモチベーションが低下し、離職にも繋がりやすくなります。ちなみに報酬には給与のほか、年間休日数や残業の有無、休日出勤の有無などの労働環境も含まれます。これらの報酬が業務量に見合っていないと、社員はより好ましい条件の職場を求め、転職を視野に入れやすくなり、結果的に人材流出に繋がりがちです。

 

また、報酬への不満だけでなく、職場にいるフリーライダー社員が目に付くあまり、本来なら満足していた報酬に不満を感じてしまうケースもあるようです。フリーライダー社員とは、楽な仕事ばかりをしつつ給料はしっかり受け取る社員のこと。仕事が遅く、スキルアップにも消極的な傾向にあります。中には他の社員の成果に便乗して自分もしっかり仕事をしたように見せるなど、周囲の意欲を削ぐようなことをする人もいます。

 

このような社員が多い職場は、仕事をさぼっている社員と報酬が同額であることに不満を持つ人が増える傾向にあります。不満を持った人が現場の改善に向けて動く場合もありますが、改善の見込みがないと判断した場合は離職を選ぶこともあるため、注意が必要です。

企業に将来性がない

企業の業績が落ちこんでいるときや、職場の業務効率化が極めて遅れているとき、社員へのスキルアップ支援が欠けているときなどは、企業の将来性について不安視されてしまうケースがあります。多くの人材は職場に安定性や成長性を求める傾向にあり、企業に将来性が感じられないと転職を検討してしまうこともあるといえるでしょう。

人材流出を防止するために企業ができること

人材流出のリスクや、人材が退職を考えるきっかけなどについて紹介しましたが、企業として適切な対策を取ることができれば、人材流出を最小限に抑えることは可能です。人材流出を防止するために、企業が取り得る対策についてご紹介します。

社員にとって納得感のある人事評価制度を整える

『エン転職』ユーザーアンケートの「退職のきっかけ」実態調査によると退職理由に「給与が低い」「評価・人事制度に不満があった」が挙げられています。

人材が流出してしまう理由・原因 給与

参考:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―

そのため人材の流出を防ぐ対策として1つめに考えられるのは、「社員にとって納得感のある人事評価制度を整える」ことです。


納得感のある人事制度とは、社員にとって「自分は正当に評価されている」と感じられる制度のこと。昇進や昇給の度合いが社員から見て妥当であり、他の従業員の評価にもある程度は納得がいっているような状態を指します。このような「納得感のある人事制度」を作るための指針としては、評価制度の公平性や透明性を確保することが大切です。

 

まず明らかにしたいのが、評価制度の内情です。どのような評価基準で、誰が、いつ評価を下しているのかを従業員に明らかにし、「どうすれば昇進・昇給・昇格に繋がるのか」がわかるようにしておく必要があるでしょう。評価制度の内容をはっきり示すことで、社員は「昇進するためには〇〇をすればよさそうだ」という目標を持ちやすくなります。また、他の社員が昇給・昇格などの好ましい評価を得たときも、公開されている評価制度の指針に沿っていれば人事に納得することが可能です。

 

では逆に、「納得感の低い人事制度の特徴」とはどのようなものでしょうか。具体例を挙げるなら、「上司によって評価が違う」「仕事の結果ばかり重視され、成果を出すための過程にいる社員が評価されない」「上司の私情によって特定の社員が贔屓されている」などが挙げられます。評価基準があいまいであるほど、社員は人事制度の正当性を感じにくくなります。


結果的に「何をやっても評価されない」というように、仕事のモチベーションも低下してしまいかねません。経営陣も評価基準を把握・管理し、従業員から不満があがっているようなら修正を行なうのがおすすめといえるでしょう。

「働きやすさ」や「働きがい」を整える

また、同様に『エン転職』ユーザーアンケートによると「やりがい・達成感を感じない」「残業・休日出勤など拘束時間が長かった」など退職理由に挙げられています。

人材が流出してしまう理由・原因 働き甲斐
参考:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―

そのため人材の流出を防ぐ対策として考えられるの2つめの対策法は、「働きやすさ」や「働きがい」を整えることです。


人材は働きがいや、働きやすさのある職場に定着しやすい傾向にあります。まずは社員が今、どれくらい「働きやすさ」や「働きがい」を感じているのかを確認した上で、課題の改善から始めてみるのがおすすめです。

 

たとえば働きやすさの改善については、長時間労働の見直しや、フレックスタイム制、リモートワークの導入、育児・介護制度の整備などが例として挙げられます。働きがいの改善については、社内のスタッフ同士でしっかり交流を図り、現状の課題点を洗い出すことからスタートする企業が多いです。

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働きがいや働きやすさの改善というと身構えてしまいがちですが、身近な課題の解決から始めても構いません。たとえば社員へのヒアリングの結果、野菜不足に悩む社員が多い場合は、「野菜を手軽に摂れるオフィスづくり」をしてみる…。という試みでもよいでしょう。実際に大手企業のマクドナルドは従業員の多くが野菜不足であることに着目し、「OFFICE DE YASAI」というサービスの導入を決めています。

参考:従業員が輝くための環境づくりに挑む 日本マクドナルドの働き方改善ための取り組みとは / 日本マクドナルド株式会社

 

昨今は厚生労働省が働き方改革を推奨していることもあり、社会人一人ひとりが自分の能力を存分に発揮できる職場づくりを目指す企業も増えています。多くの企業が社員の働きやすさや働きがいの改善に向けて動いている中、企業として社員の声に耳を傾けないまま放置してしまうと、社員に懸念を抱かせてしまう可能性も否めません。企業の大切な資産である人材の「こうありたい」という気持ちに、小さなことからでも向き合う姿勢が求められているといえるでしょう。

コミュニケーション機会を増やす

また、同様に『エン転職』ユーザーアンケートによると「社員間の関係性が悪い」「社員と経営人とのコミュニケーションがとれていない」など退職理由に挙げられています。

人材が流出してしまう対策 コミュニケーション
参考:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―

業務が多忙になると必要最低限の会話しかせず、社員間での関係性は良好とはいい難い状態が続きます。そんな状態では出社するのも楽しくないですし、長く働きたいと思うこともありません。そのため、社員間のコミュニケーションを促進できる仕組み(交流会や昼会など)を企画する必要があります。


また、社員と経営陣のコミュニケーションが取れていないことにより、社員は会社の将来性や事業の展望について不安を感じます。先ほどふれたように2019年には経団連も「今後、企業が終身雇用を維持していくことは難しい」と述べており、不安がある会社に残り続ける選択をする人材は多くないようです。特に優秀な人材ほど自分の居場所を開拓していくため、経営陣は率先して社員とコミュニケーション機会を作るようにしましょう。

成長・スキルアップの機会を与える

最後に『エン転職』ユーザーアンケートによる退職理由に「自分の成長が止まった・成長感がない」などが挙げられています。

人材が流出してしまう対策 成長・スキルアップ
参考:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―

入社したばかりはすべてのことが新しく毎日が学びです。しかし、時間が経ち業務に慣れてくると成長を感じづらくなります。そのため、成長意欲が高い優秀な人材はさらなる成長を求めて、新しい環境を探しています。

成長できる環境が社内にあれば問題ありませんが、社内にない場合は社外へと成長できる環境を求めて出て行ってしまいます。優秀な人材が社外へ流出するのを防ぐために、成長やスキルアップできる環境や仕組みを整えてあげるとよいでしょう。

まとめ

人材流出の概要や、人材が流出してしまう理由、人材流出を防ぐために企業ができることなどについてご紹介しました。人材流出は、企業の対策次第で最小限に抑えることもできるリスクです。「社員を定着化させたい」「人材流出の防止に力を入れたい」とお考えの方は、まず社員が今、企業に対してどう考えているのかを汲み取ったうえで、対策を講じてみてはいかがでしょうか。

 

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