交通費とは?法的義務やトラブル、在宅勤務での支給見直しもご紹介

育児と仕事の両立や副業・Wワークの増加、コロナ禍の影響などから、多くの企業でテレワークの導入が進みました。出勤日数が減ったことによって、見直しが検討される福利厚生の一つとして「交通費」が上げられます。

 

「交通費の規定変更の手順はどうすれば良いのだろうか?」「そもそも、会社の交通費規定について詳しく知らない…」もしそのようなお悩みをお持ちでしたら、この記事をご覧ください。交通費の基本的な知識の説明から、就業規則や雇用契約書などへの規定といった導入のポイント、従業員との間での交通費のトラブルを防ぐ方法などを、ご紹介しています。ぜひお役立ていただければ幸いです。

 

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交通費とは?

一般的に交通費とは、下記の2つを指す場合が多いです。

  1. 従業員に支払われる通勤手当。
  2. 出張や営業での移動費(電車やバスを利用して顧客先に出向く際に発生するもの)。

会社の交通費、通勤費、出張費の違い

なお、従業員に支払う「通勤手当」と仕事での「出張費」分けず、まとめて「交通費」と呼ぶ会社もあります。

通勤手当と出張費の違い

「通勤手当」は、従業員の通勤にかかる費用を会社が負担して支給するものです。一方「出張費」は、仕事上でのクライアント訪問や出張などの際に発生した移動費用を会社が支払うこと。この記事では主に「通勤のための交通費(通勤手当)」について述べ、「通勤手当」「出張費」として区別します。

交通費の法的義務

交通費(通勤手当)は多くの企業で導入されていますが、法的な義務はありません。労働基準法などでも、通勤手当の支給は必須とされておらず、通勤にかかる費用は従業員負担で問題はないとされています。ただし、出張など「業務上」で発生する費用は、支給条件に従って支払う義務があります。そのため、営業職など移動の多い従業員には、支給ルールをきちんと説明しておくのが良いでしょう。

交通費は課税?非課税?

交通費は給与と一緒に支払われることが多いため課税対象と思われがちですが、「通勤のための交通費」は、定められた限度額以下であれば、所得税がかからないという非課税限度額があります。

 

地下鉄やバスといった公共交通機関を利用した場合の非課税限度額は1ヶ月15万円まで。新幹線の定期代も通勤距離や時間を考慮し、合理性が認められれば非課税扱いです。自動車やバイクなどの場合は通勤距離(片道)によって、全額課税(2km未満)~3万1600円(55km以上)と、非課税枠の上限が決まっています。なお、出張の移動費など、仕事において必要と認められる費用は「業務上の交通費」として非課税です。

 

通勤手当の非課税限度額

参考:国税庁 マイカー・自転車通勤者の通勤手当

交通費(通勤手当)の種類と支払い方法

ここでは「交通費(通勤手当)」の詳細について、その種類や交通手段別の支給方法を具体的に説明します。

交通費(通勤手当)の3つのパターン

交通費(通勤手当)には「規定内支給」「全額支給」「一律支給」の3つの種類があります。

3種類の交通費

 

■規定内支給

「1日500円まで」「月2万円まで」といった規定を設け、支払い金額の上限を定めて支給します。「全額支給」のデメリットを回避する方法として、「規定内支給」を導入する企業も多いようです。

■全額支給

通勤にかかるすべての費用を支給。従業員にとっては負担が一切ないという点がメリットですが、企業にとっては従業員に多額の交通費を支払うデメリットがあると言えるでしょう。

■一律支給

設定された交通費(通勤手当)をすべての従業員に支給するパターン。企業にとっては、従業員ごとに交通費を計算する手間がかからないメリットがあります。従業員にも、出社日数が少ない月など交通費が安く済んだ場合でも決まった金額が支払われるメリットがある半面、交通費が高くなった時には負担額が大きくなるデメリットがあります。

交通手段別の支給例

交通費(通勤手当)の支給方法は、どの交通手段を使って通勤するかによって異なります。

■公共交通機関のみを利用した場合

一般的には、利用区間の1ヶ月の定期代を支給することが多いようです。場合によっては、3ヶ月や6ヶ月の定期券を一括購入するケースもあるため、3ヶ月や6ヶ月分の定期代金を通勤手当として支給しても問題はありません。

■自動車・バイクのみを利用した場合

就業規則で会社ごとにルールが決められていることが多いですが、一般的には「自宅からの会社までの往復距離×1ヶ月の平均労働日数×ガソリン代÷平均燃費」から通勤手当を算出しています。なお、ガソリン代は変動するため、就業規則を頻繁に変更する手間を考えて、従業員に有利になるように事前に設定すると良いでしょう。また、自動車とバイクでは燃費の差が大きいので、燃費は別にしても問題はありません。

■公共交通機関と自動車などを併用する場合

「地下鉄+自動車」などの場合、公共交通機関の定期代や会社までの距離やルートを従業員に確認し、それらを合算した金額を支給します。

業務上の交通費(出張費)の支払い方法

ここでは、通勤手当以外の交通費にあたる「業務上の交通費(出張費)」について、その種類と支払い方法についてご紹介します。

 

■電車・バス、タクシー代

クライアント企業への訪問など、業務において発生する「移動費」。経理業務を効率的に進めるために、PASMOなどのICカードや経費精算システムを導入する企業も増えています。

 

■駐車場料金

コインパーキングなどの料金も交通費として扱います。

 

■高速道路など有料道路料金

遠方への出張や首都高利用など、高速道路を利用した場合も有料道路料金として交通費に含まれます。

 

■旅費交通費

出張先への移動費も交通費として扱うため、非課税となります。

 

■宿泊費

泊りがけの出張などの際に発生する宿泊代も交通費として扱います。なお、旅費規定に該当しない支給は、個人所得として扱われます。

ルールを明確に定めるべき

非課税限度額や決まったルートに基づいて支給される通勤手当と比べて、業務上の交通費は従業員が立て替えるケースもあります。従業員が頻繁に経費を立て替えていると、経費なのか個人の支出なのかの区別がつかなくなり、不正が起きやすくなるため、注意が必要です。

 

トラブルの発生を防止するためにも、「経費発生から5日以内に申請する」など、締め日をしっかりと設けることが重要。また、出張報告書や営業報告書と一緒に提出した伝票しか受理しないといったルールを決めると、不正な経費計上を防ぐことにも繋がります。

 

締め日の設定や決められた形式での提出などルール通りの運用を社内で徹底すると共に、従業員が長く立て替えている状態が危険だという認識が会社側に必要です。

交通費(通勤手当)導入のポイント

交通費(通勤手当)には法的な決まりがないため、会社ごとに自由に設定することができます。しかし、ある程度しっかりした決まりを設けて常識的な就業規則を作成しておかなければ、監督官庁に認めてもらえない場合も。ここでは、就業規則に交通費(通勤手当)を記載する際に大切なポイントをご紹介します。 

就業規則や雇用契約書などへの規定

交通費について就業規則などで書いている企業が一般的だと思うので、ここでは就業規則の記載例を紹介します。

■就業規則への記載例

(通勤手当)

第●条 公共交通機関の利用者にのみ、1ヶ月の通勤定期券の実費を支給。なお、最も合理的なルートだと認めた場合に限る。

 1 通勤手当は、自宅から勤務地まで3km以上距離がある場合に支給する。

 2 通勤手当は、月額5万円を支給限度とする。

なお、交通費の支給要件を就業規則に記したものを、労働基準監督署に届け出る必要があります。

就業規則で決めておく3つのこと

交通費(通勤手当)は法律で定められていないため、就業規則に記しておく必要があります。従業員に平等・公平に支給するために、就業規則では以下の3点を決めておくと良いでしょう。

就業規則で決めておく会社の交通費ルール

■支給する交通手段

公共交通機関利用のみか、自動車・バイク通勤にも支給するのか。

 

■支給限度額

全額支給ではない場合の限度額はいくらまで支給するのか。

 

■アルバイト・パートタイムへの支給

アルバイト・パートにも正社員や契約社員と同じ規定で支給するのか、日額など異なる規定で支給するのか。

 

交通費を公平に支給するためには、「交通費の非課税枠」を基準に従業員ごとの交通費を決定する方法がおすすめです。

交通費のトラブルを防ぐためにすべきこと

従業員による交通費(通勤手当)の横領・不正受給、会社が支給条件や規定の見直しに必要な事柄を知らずに問題になるなど、交通費に関するトラブルに繋がることもあります。ここでは、特に注意が必要なケースをご紹介します。

交通費(通勤手当)の不正受給

交通費(通勤手当)の不正受給とは、申告と異なる通勤手段を使ったり、居住地の虚偽申告をするなどして、悪意的・故意的に交通費を不正受給することです。具体的には、下記のようなケースがあります。

 

■申告と異なる通勤手段

通勤のために電車区間の交通費を申請して受給していたにも関わらず、交通機関を利用せずに徒歩や自転車で通勤していた。

 

■居住地の虚偽申告

引っ越ししたにも関わらず新しい通勤経路の届け出をしなかったり、実際の住所よりも遠い場所に住んでいることにして、高額の交通費を受給し続けていた。

 

このような悪質な不正受給が発覚した際には、会社は交通費(通勤手当)の返還請求ができます。また、場合によっては懲戒処分ができるケースも。定期的に通勤経路や通勤手段を確認するなどして、会社側のチェック体制を強化することも大切です。

パート・アルバイトの交通費支給条件

交通費(通勤手当)は、基本的に業務や部署によって区別せず、従業員一律で支給されるものです。そのため、雇用形態により違った基準を設けるのは禁じられています。厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでも「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤のための交通費および業務上の交通費を支給しなければならない」と記載があります。

 

一方で、出勤日数で支給額を定める場合は、雇用形態で条件を変えるのは問題ありません。たとえば、勤務日数が週4日以上の従業員には、1ヶ月の定期分の金額を支給しているが、勤務日数が週3日以下の従業員には、日額の交通費に相当する額を支給している場合などです。いずれにしても、雇用形態での不公平感などを避けるために、就業規則などで明確な基準を設けるのが良いでしょう。

 

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在宅勤務の増加による交通費の見直し

新型コロナウイルス感染症の流行によるリモートワークの急増によって、1ヶ月のうちほとんどが在宅勤務になったり、週2~3日だけの出勤といった勤務状況の変化から、交通費(通勤手当)の見直しが必要となっているケースが多くなっているようです。

 

これまでの交通費(通勤手当)は、「全額支給」「一部支給」「一律支給」の3種類でしたが、在宅勤務の日数が増えたことで、出勤日数に応じて支給する「実費支給」に切り替える企業が増えています。「実費支給」を導入する際は、従業員の在宅勤務の割合を確認し、定期代の支給と実費での支給ではどちらが安いかを計算するのがポイントです。また、実費支給を導入する場合は、就業規則の変更も忘れずに行ないましょう。

 

そのほかの方法として、交通費(通勤手当)とは別の手当を支給する動きもあります。たとえば、水道・光熱費の負担や、在宅勤務に必要な通信費、リモートワークに活用できるグッズの購入費用などを、「在宅勤務手当」として月5000円~1万5000円程度支給している企業が多いようです。ちなみに、この手当は課税対象になります。

 

十分な準備ができないまま、リモートワークを導入した企業も多いでしょう。そんな中で、見直すべきものを変えずにいると、従業員が不満を感じる原因にもなりかねません。交通費の見直しや在宅勤務の環境を良くする手当の支給を検討・導入することは、会社への信頼感を高め、従業員のモチベーションアップにも繋がります。

 

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適切な交通費の導入で人材の確保と定着に繋げよう

従業員への交通費(通勤手当)の支給は、法律で義務づけられていません。そのため、会社によっては支給しないという選択も可能です。

 

しかし、通勤手当が支給されなければ、毎日自費で出社することになり、できればそれは避けたいと考える求職者が多いでしょう。その結果、会社から離れた地域に住んでいる人を採用するのが難しくなることも。つまり、通勤手当を支給することは、人材の確保の範囲を広げることにもつながります。採用活動などをする際には、交通費の支給や範囲などを見直すと効果的です。

まとめ

リモートワークの増加で通勤の必要がなくなるといった変化があり、企業は交通費やそのほかの手当の見直しを迫られるケースが増えてきています。福利厚生の一つとして、しっかり交通費が支給されることは、社員の定着やより良い採用にもつながります。この記事で交通費に対する認識を深め、会社の実情に合った対応をするきっかけとなれば幸いです。

 

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