ジョブローテーションって何?導入のメリットや活用のコツが分かる!

人材を育成させるうえで、日本で普及しているのは「ジョブローテーション」という制度だと思います。とはいえ、すべての企業が導入しているわけではありません。馴染みのない方にとっては、

「ジョブローテーションって、どのくらいの企業が実施しているの?」

「うちの会社も実施したほうがいいかな!」

「ジョブローテーション導入のメリット・デメリットは?」

こういったことを知りたい方もいらっしゃると思います。この記事では、ジョブローテーションの概要から、メリット・デメリット、導入手順などを徹底解説。「社員教育に失敗したくない」という方は、ぜひ本記事をお役立てください。

 

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ジョブローテーションとは?

ジョブローテーションとは、計画的かつ定期的に職務や職種の変更を行ない、経験やスキルを身に着けてもらう制度のこと。つまり社員の能力開発を目的としている制度です。

 

部署や勤務地が変わったり、部署はそのままで仕事の中身だけが変わったりと、様々なケースがあり、その期間も数ヶ月から数年とさまざま。たとえば、営業からマーケティング、マーケティングから経理などを数年おきに様々な部署を経験し、最終的に幹部になるというようなケースが代表的で、多様な経験・スキルを身につけ、キャリアを磨いていくことができます。

人事異動との違い

では、ジョブローテーションと人事異動の違いは何でしょうか。ジョブローテーションと人事異動の違いは、一言でいえば、目的が異なることです。

 

人事異動の目的は、経営戦略にもとづく部署強化や欠員補充、組織活性です。戦略に応じて昇格や降格、昇進、昇格、降格、降職、社外への出向、新規の採用、解雇など社員の役割(地位や職務など)を変えること全般を指します。そのため、即戦力となる人材を他の部署から引っ張ってくるなど、短期的に事業が前に進むことを目的としています。

 

一方でジョブローテーションの目的は、長期的な人材育成の意味が大きいです。即戦力人材を迎えるというよりも、様々な経験をさせ、人材を長い目で育成させることで、会社の幹部を育てていく。こういった意味合いが強くなります。

社内公募との違い

社内公募とは、部署で必要なポジションを社内で公募し、それを希望する人を配属するシステムです。一方、ジョブローテーションは全社員の中から適切な人材を選ぶ制度になります。本人が手を挙げて希望して応募するのと、人事などで選定するという選定方法が大きく異なる部分です。

 

ジョブローテーション、人事異動、社内公募の意味と目的をまとめると下記のようになります。

 

  意味 目的
ジョブローテーション 計画的かつ定期的に職務や職種の変更を行ない、経験やスキルを身に着けてもらう制度のこと 社員の能力開発・長期的な人材育成
人事異動 会社の取り決めによって、配置や地位、勤務形態などを変更すること 経営戦略にもとづく部署強化や欠員補充、組織活性
社内公募 部署で必要なポジションを社内で公募し、それを希望する人を配属すること 社員の能力開発・モチベーションアップ

ジョブローテーションの目的は?

ジョブローテーションには、大きく3つの目的があります。

様々な部署を経験し、自社理解を深めてもらう

1つは、様々な部署を経験することで、自社の理解を深めてもらうことです。1つの部署だけにいると、会社の一部分しか見ることができないので、他部署や各職種が何をしているのか、会社としてどのように動いているのか分からないことが少なくありません。

 

大きな企業になればなるほどこの傾向は顕著になっていきます。しかし、複数の部署を経験することで業務全体の理解も深まり、俯瞰して会社を見れるようになります。これまで関わりのなかった部署へ異動することで知ることは少なくありません。こうした経験を通じ、会社全体がどのように動いているのか経営視点が身に着きます。

幹部候補となる人材の育成

多様な専門性を身につけた人材の育成や、次世代の幹部候補育成という目的で行なわれることもあります。ゼネラリストのように様々な部署、職種を経験することで、幅広い知識を身につけ、事業を推進していく知識を身に着けることができます。

 

複数の職種、部署を経験することでバランス感覚が身に着き、さらに様々な立場で物事を考えられるようになるので、部署のリーダーなど、幹部候補として育て上げることができます。

 

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業務の属人化を防止するため

3つ目の目的が業務の属人化を防止することです。同じ社員が一つの業務を長く続けると、業務の属人化が避けられません。ノウハウの一般化が行われれば良いですが、担当者だけが分かるやり方になってしまうと、担当者が退職や休職した場合には、業務に支障をきたすこともありますし、業務を拡大させていくことができません。このようにジョブローテーションには、リスクを回避する役割もあります。

ジョブローテーションが進んだ背景は?

 

ジョブローテーションはどのようにして普及したのでしょうか?その背景には日本の終身雇用制度が関係しています。1つの会社で定年まで働くことが前提の社会では、計画的に人材を育成することが可能でした。

 

新卒で入社してから定年まで35年ほどの時間があるので、じっくりと育成することが可能。特に経営幹部を育成する場合は、会社や社内事情などを理解させたり、人脈を築き上げていくことが有効でした。長い間時間をかけて社内のノウハウを学ばせることができるジョブローテーションは、定年まで働くことを前提にした社会では最適だったのです。

 

ちなみに海外では、日本とは違い、仕事やポジションごとに採用する「ジョブ型雇用」が一般的。そのため、ジョブローテーション制度は、ほとんど活用されていません。

 

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企業にとってのメリット

ジョブローテーションを導入することで、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。

部門を超えたコミュニケーションが活発になる

同じ会社であっても、部署が異なるだけでコミュニケーションは取りづらくなりがちです。協力してほしいことでも依頼がしづらかったり、気軽に話しかけられなかったりと壁が生じることもあります。しかし、ジョブローテーションがあれば、異動者が入ることで、部署間のコミュニケーションがとりやすくなります。

 

また部署の新陳代謝がよくなることで、新しい風が吹き込み、コミュニケーションが活発になったり、新しいアイデアが生まれることもあります。このように社員間の交流が生まれてくれば、より一体感のある組織をつくることができます。

長期的かつ、計画的に人材を育成していくことができる

新卒一括採用をした場合、最初の配属先が必ずしも適しているとはわかりません。しかし、ジョブローテーションによって複数の業務を経験すれば、強みや弱みを見極めることが可能です。また、終身雇用が前提となっている場合、短期的ではなく、長期的に育成をしていくことが可能になります。たとえば、幹部候補の場合は、営業から、マーケティング、経理などを10年程度かけて経験させて育成し、経営視点を身に着けさせるといった計画的な育成も可能です。

企業にとってのデメリット

とはいえ、メリットばかりではありません。ジョブローテーションにはデメリットも存在します。ここをしっかり理解することが大切です。

異動をするたびに、教育・育成のコストがかかる

ジョブローテーションは即戦力を迎え入れるわけではないので、イチから専門性を身につけてもらう必要があります。つまり、教育担当者を配置する必要が出てくるため教育コストが必ず発生します。またジョブローテーションを実施した際に、すぐに辞めてしまう場合は、教育コストだけがかかってしまうことになり、逆に育成費用が多くかかってしまう可能性もあります。

 

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異動が不満となり、退職リスクへとつながる可能性がある

新しい仕事では、これまでの経験を活かせないことが少なくありません。また、新たに人間関係を構築していかなければならないなど、配置された社員は様々な場面でイチからのスタートが求められます。

 

そのため業務についていけなくなったり、異動先の部署の人間関係がうまくいかず、不満を募らせる社員も一定数存在します。また定期的に異動をすることで「じっくりと業務を経験できない」など不満を感じる社員も出てくるでしょう。これらの理由により、ジョブローテーション後に退職につながるケースもありますので、異動後のケアなどをしっかり行わないと、損失が大きくなってしまいます。

 

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ジョブローテーションに向いている企業・向いていない企業

ジョブローテーションには向いている会社・職種があります。ここからは、どのような企業がジョブローテーションに向いているのか解説します。

ジョブローテーションに向いている企業

基本的にジョブローテーションが向いているのは、新卒採用を実施していて、終身雇用を前提としている大きな会社です。その中でも、メーカーなど社内の各部署が一気通貫でつながっている場合は、ジョブローテーションはうまく機能するでしょう。人脈をつけ、別の部署の視点を持ちながら他部署に関われば、様々な問題点も見えてき、事業にインパクトを与える仕事を期待できます。

ジョブローテーションに向いていない企業

ジョブローテーションは、そもそも、少数精鋭で終身雇用ではない企業は向いていません。なぜなら毎年新入社員が多く入ってくるわけでなく、限られた人員で業務を兼務することも少なくないからです。また即戦力として採用された中途入社者が多い企業もジョブローテーションに不向きと言われています。たとえば、少数精鋭の専門性の高い集団などは、ジョブローテーションをすると、強みである専門性が発揮できなくなってしまいます。

ジョブローテーションでつまずきやすい点は?

 ジョブローテーションを導入する際は、下記の点をご注意ください。

転換できる職種が少ない場合

職務のバリエーションが少ない場合、幅広いスキルが身につくジョブローテーションならではのメリットが享受しづらくなります。たとえば、多くの仕事を外注に頼っていて業務の幅が狭い、営業と事務しかいない会社などは、導入するメリットがあまりありません。また専門性が高い職種が多い企業も、ジョブローテーションをすることで強みが発揮できなくなってしまいます。

ジョブローテーションにより給与が変わる場合

異動によって給与が大きく変動する場合は注意が必要です。また、異動者の給与が変動しない場合でも、異動者と異動先の社員との間で給与が大きく異なる場合は、社員に不満に生じやすいため注意をする必要があります。

ジョブローテーションの導入の流れ

実際にジョブローテーションを実施するにはどうしたら良いのか、実施までの流れと、重要ポイントをまとめました。

ジョブローテーション導入の流れ

(1)活躍する社員の分析

まずは、ジョブローテーションを行なった結果活躍する社員の行動特性、考え方などを分析しましょう。優秀な社員が過去に「どのような部署で、どんな業務を経験しているか」を調べてみてください。そこからジョブローテーションで活躍してくれる人材の要素が見つかるかもしれません。

(2)対象者を選定する

上記である程度、どのような人材が適しているのか把握できたら、年齢や社歴、最新のキャリアの志向性を確認して、対象者を選定します。特に対象者が「どのようなキャリアを形成したいのか」把握することが重要です。 スペシャリストを目指しているのか、ジェネラリストを目指しているのか、キャリア志向を確認しましょう。ここがズレてしまうと、退職につながる可能性もあります。

(3)配属先を決定

どのような配属先が適しているのかを決めていきます。配属先のニーズなどを考慮しながら、最適な配置を考えていきます。社員のキャリアなどを無視した配属にならないように進めていくことが大事です。

(4)対象者に納得してもらう

異動者が納得しなければ、退職のリスクが高まってしまいますので、しっかり意図などを伝え納得してもらうことが大事です。また、「期待していること」をはっきり伝え、不安を解消できるようにしましょう。 

(5)フォローする

配属したら終わりではありません。定期的にフォローし、目標の進捗状況やモチベーションなどを確認して、問題がないか、改善できる部分がないか確認していきましょう。意図・目的があってジョブローテーションを行なうので、定期的にチェックし、パフォーマンスを発揮できるように支援するのも大事な役割です。

ジョブローテーションを成功させるポイント 

ここからは、ジョブローテーションを成功させるポイントをお伝えします。人材育成につながるよう、一人ひとりに適したローテーションが求められます。

 

ジョブローテーションを成功させるポイント

社員にどのように役立つのかという視点から設計すること

まず、一番重要なことは、企業本意な異動を行なわないことです。たった数ヶ月でも、異動する社員にはストレスがかかります。ジョブローテーションは幅広い知識や俯瞰的な視野が身につくメリットはありますが、希望する社員を対象者に選ぶことです。自身の望むキャリアにつながると分かれば、モチベーション高く仕事に取り組めるはずです。

ジョブローテーションの目的の明確化

目的があいまいな場合は、モチベーション低下やキャリア形成を妨げてしまいます。また、目的をはっきりとさせた後は、現場に目的を伝えることが大事です。どんなにきめ細かに設計をしても、現場でズレてしまえば、効果を上げにくくなりますので注意してください。

対象者の納得度があるかを確認する

ジョブローテーションを実施する際には、納得度を確認しましょう。特定の職種を希望した社員や、配属された仕事を続けていきたい方は少なくありません。希望する業務を一定期間、または、今後一切行なわないこともあります。そのため、「なぜ異動しなければならないのか」不満を抱く社員も出てきます。仕事へのモチベーション低下だけでなく、最悪の場合は退職につながります。だからこそ、ジョブローテーションする社員の気持ちを必ず確認しましょう。

ジョブローテーションの導入事例

それでは実際にジョブローテーションを導入している企業を紹介します。

日本郵船株式会社

日本郵船株式会社では、多角的な視野をもてる人材に成長できるよう、ジョブローテーション制度を導入し、人材育成をしています。

 

職種は、大きく「陸上職」「海上職」に分かれていて、 陸上職は、部門間を異動しながら様々なビジネススキルを身につけ、海上職は海上勤務と陸上勤務の双方を経験しながら、「包容力と柔軟性」「マネジメント力」「リーダーシップ」の3つのスキルを身につけます。

 

様々な職種を経験し、幅広い事業を見て、あらゆる立場を経験することで、全世界の日本郵船グループを束ねる存在として活躍するためには不可欠と考えているようです。

 

参考:日本郵船株式会社 採用サイト

大成建設株式会社

大成建設の事務社員は、4~6年次、9~11年次の2回のジョブローテーションで、様々な業務を経験します。11年次までの業務を通して、適性に応じて専門性を高め、各分野でのプロフェッショナルになっていく人材育成が導入されています。長い時間をかけて適性を判断することができ、納得感をもって仕事に取り組むことができそうです。

 

参考:大成建設株式会社 採用情報サイト

東宝株式会社

東宝株式会社は、新入社員として入社した後、2年間で2部署を必ず経験します。配属部署も様々で「営業系部門」「管理系部門」「劇場部門」のうち2部門を1年ずつ経験する仕組み。こうしたジョブ・ローテーション制度を「GYUTT」と名付けています。

 

目的は、多様な職務経験を積むことで能力・適性の幅を広げ、入社3年目からはより大きな役割を果たして活躍してもらうこと。異動の前には自己申告書の提出と面談を実施しています。様々な職場を見ることで、立体的に会社のことが理解でき、より納得感を持って仕事に取り組んだり、自分の仕事の意義を理解できるようになっています。

 

参考:東宝株式会社 新卒採用2021

株式会社ヤクルト本社

株式会社ヤクルト本社は、総合計事務職・海外系のみ対象になりますが、入社後10年間で3つの部署を経験するジョブローテーション制度を導入しています。首都圏・地方/営業・管理のそれぞれの部署に配属されるのが基本パターンです。

 

第一次ローテーションは3年9ヶ月で、第二次ローテーションが4年、第三次ローテーションが年次を区切らず実施。職種も様々。たとえば、経理部から営業、そして国際部で海外出向というように、多様な経験が積めるように設計されています。

 

参考:ヤクルト本社株式会社 採用サイト

今の時代、ジョブローテーションは合っているのか

前述したように、日本企業でジョブローテーションが導入されてきた理由は、長期雇用、つまり終身雇用を前提として考え方があったからです。

 

しかし、経済は低迷しはじめ、終身雇用を維持することが難しくなっている今、ジョブローテーションを今までのように実施するのが難しくなる会社も出てくるでしょう。もちろん、今もなおジョブローテーションが適している企業もたくさんあるので、良いか悪いかという二元論で話をするのは得策ではありません。

 

大事なのは、こうした人事の手法はすべて会社の売上・利益を最大化させるためにあるということ。ジョブローテーションという「手段」にとらわれるのではなく、どうすれば今の時代に適した人事制度になるのか考え、社員を育成していくかという本質と向き合うことが大切なのだと考えます。

 

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