地域限定社員とは?多様な人材の確保・定着につなげる方法をご紹介

勤務する地域を限定した「地域限定社員」。これは「転勤がない」といった従業員側のメリットだけでなく、実は企業側にも大きなメリットがあります。慢性的な人手不足が深刻となっているなか、地域限定社員制度の導入は人材獲得だけでなく企業価値の向上や企業成長の大きな鍵にもなるのです。

 

この記事では、地域限定社員のメリットや、待遇の決め方、導入の際に押さえるべきポイントまで詳しく解説していきます。貴社の人材活用にお役立ていただければ幸いです。

※この記事は2022年3月3日に公開した記事を再編集しています
 
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地域限定社員とは?

従業員にとっては転勤は引継ぎや引っ越しの手続き、住む環境の変化や友人・知人との物理的な距離の発生など、仕事とプライベート両方で多くの負担がかかります。

地域限定社員の導入前は負担が大きい

そのような負担を無くしたい従業員が、勤務する地域を限定して働く契約を地域限定社員と言います。地域限定社員は転勤の負担がなく、特定の地域で働ける点がメリットです。

地域限定社員は負担がなくなる

また、契約社員とは違い、「正社員」として扱うため雇用の期間に定めはありません。

地域限定社員が注目されつつある背景

少子高齢化が進み、企業の人手不足は今後より深刻化する見込みです。人材の確保が急務となるなか、採用活動において、これまでにない層にアプローチする必要が出てきました。そこで注目され始めたのが、勤務する地域を限定した地域限定社員です。

 

地域限定社員制度の導入は、これまで転勤をハードルに「契約・パート」といった働き方を選択していた人材を確保し、活躍してもらうチャンスになりました。厚生労働省のサイトにおいても「多様な正社員」として地域限定社員の記載があり、制度の活用が推奨されています。慢性的な人材不足解消のため、今後は導入する企業も増えてゆくでしょう。

地域限定社員と正社員・契約社員との違い

地域限定社員について知る上で、「正社員」「契約社員」との違いも明確にしておきましょう。正社員と地域限定社員は「勤務地が限定される以外の基本的な待遇は同じです。

地域限定社員と正社員の違い

対して契約社員は労働契約の期間に定めがある「非正規雇用」。契約で勤続期間が設定されており、契約満了の時点で更新がある点において、正社員・地域限定社員とは大きく異なります。さらに契約社員は職務内容や休日などもすべて契約に準じて決まります。

地域限定社員と契約社員の違い

地域限定社員の待遇の決め方は?

実際に地域限定社員制度を導入する場合、給与・待遇はどのようにしたらよいか迷う場合もあるでしょう。基本的な考え方として、下記をご参考ください。

■月給
基本給に関しては同じ業務・ポジションの正社員への支給額をベースとし、労働条件に合わせて減給を行なう。手当に関しては、手当の目的や支給基準をもとに金額を検討する。
 
■賞与
賞与は正社員と同じ基準で支給を行なう。
 
■退職金
自社の制度で退職金の支給に勤続年数が考慮される場合は、原則として地域限定社員としての勤務期間も年数に加える。
 
■評価
地域限定社員に対してどのように活躍してほしいかを決めた上で、評価を行なう。

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地域限定社員制度導入のメリット

ここからは、地域限定社員制度を導入した場合の企業側の以下メリットを解説していきます。

地域限定社員導入のメリット

幅広い業務を任せられる

地域限定社員は、勤務する地域が限定されること以外は正社員と同じ扱いのため、幅広い業務を任せられます。よって、ふさわしい能力を持つ場合は、マネージャーなどのポジションを任せることも可能。パート社員の場合、基本的には特定の業務しか任せられないため、地域限定社員制度の導入は、より裁量を持って働く従業員の獲得につながります。キャリアアップを目指す従業員のニーズに応えられる意味でも、メリットは大きいでしょう。

多様な人材の確保ができる

地域限定社員制度の導入により、これまでアプローチできなかった層の採用が見込めることもメリットです。転勤がハードルとなり、契約社員・パート社員などの働き方を選択していた人材の活躍を促進できます。また、さまざまな価値観や考え方を持った従業員がいることは、新たなアイデアの創出や、ユーザーの隠れたニーズの発見にもつながります。ダイバーシティが重視される時代において、多様な人材を確保し、互いに刺激し合って新たなサービスを生み出せれば、企業にとっての大きな強みになるでしょう。

人材の定着につなげられる

全国転勤型の従業員が、子育てや家族の介護といったライフスタイルの変化を理由に離職してしまうケースもあるかもしれません。地域限定社員制度の導入は、そういった従業員の離職を防ぎ、長く活躍する環境を整えられるでしょう。

 

さらに、長期的な視点で従業員の育成を行なえる点も大きなメリット。ベテランの従業員が増えることは、拠点のスムーズな運営のほか、スキルやノウハウの蓄積にも効果的です。地域のニーズに根付いたスキルを蓄積し、継承できる従業員を育てることは、企業にとって大きな財産となるでしょう。

希望の働き方を叶えることで、意欲向上が図れる

馴染みのある地域で長く働けることは、従業員にとって大きな安心になります。異動による身体的・精神的な負担がない分、より落ち着いて業務に集中できるでしょう。さらに、自身の望む働き方を叶えられることは、従業員のモチベーションにもつながります。待遇に対する満足度が高ければ、企業へのエンゲージメントや貢献意欲も高まり、よりよい成果を生み出せるでしょう。

地域限定社員制度導入のデメリット

先述の通り、地域限定社員制度導入には様々なメリットがありますが、デメリットも存在します。導入の検討を正確に行なうために、以下のデメリットも把握しておきましょう。

地域限定社員制度導入のデメリット

人事管理が複雑になる

雇用形態が増えると、それだけ人事管理は複雑になり、負担が増えるもの。正社員、パート、アルバイトなどすでに複数の雇用形態がある場合、業務管理のコストが増すことは免れません。制度のスムーズな導入のためにも、かかるコストを見据えた人員や時間の確保をしておきましょう。

待遇差が不満につながる可能性がある

全国転勤のある正社員に比べて給与が低くなる、昇進しにくくなるといった待遇の差があると、地域限定社員の不満につながる恐れがあります。基本的に「転勤がないこと」以外は正社員と変わらないため、地域限定社員のモチベーションが維持できるような配慮が必要です。給与、評価、昇格においては「転勤がない」といった条件に応じて設定し、正社員と地域限定社員の双方が納得できるような制度設計を行ないましょう。

拠点の廃止や配置転換が行ないにくい

事業の方向性が変わった際や事業規模を縮小する際、配置転換や拠点の廃止が行ないにくい点もデメリットと言えるでしょう。転勤が可能な場合は柔軟な対応がしやすいですが、地域のみの採用であるとその点の融通は利きません。また、地域限定社員は「無期雇用の正社員」扱いのため、人員整理の必要が出た際も、解雇はしにくいです。制度導入の際は、そういった点も踏まえて慎重に進めましょう。

地域限定社員制度を導入するときに押さえておきたいポイント

地域限定社員制度導入のメリットとデメリットを確認した上で、押さえるべきポイントを把握すれば、導入の検討もしやすくなります。ここからは、そのポイントもチェックしていきましょう。

制度導入の目的を従業員に周知する

スムーズな制度導入のためには、従業員の理解が必要不可欠。決定した内容については就業規則に記載した上で、従業員に丁寧に周知する機会を設けましょう。その際は制度のメリット、デメリットのほか、従業員のキャリア形成についてもしっかりと説明し、制度の目的を理解してもらうことが重要です。不満や誤解が生まれないよう、従業員の疑問に応える質疑応答の時間も設けるとよいでしょう。

拠点ごとの教育体制を整える

地域限定社員は特定の地域のみの採用となるため、教育やマネジメントに関しても拠点内で行なう必要があります。業務をスムーズに行なえるよう、適切な指導者を配置したり、丁寧な研修を用意したりと、その拠点だけで教育が完結する体制を整えておくこと。さらにマネジメント層には、地域限定社員の教育だけでなく、評価方法も含めて研修の機会を設けるとよいでしょう。教育・マネジメント体制をしっかりと整えておくことで、地域限定社員の安心感につながり、長期的な活躍を促せます。

昇進や仕事内容が限定されすぎないようにする

地域限定社員が行なう業務の幅を狭め過ぎたり、昇進のチャンスが少なかったりすると、従業員のモチベーション低下の原因に。意欲をそぐことのないよう、能力に応じてキャリアアップできる環境を用意しましょう。経験を積めば業務の幅を広げられる・管理側に回れるといった明確なステップがあれば、従業員の意欲はおのずと高まります。従業員一人ひとりが目標を持って業務に励めるよう、適切な体制を整えた上で制度の導入を行ないましょう。

人間関係やコンプライアンス上の問題に配慮する

同じ勤務地で長く働く従業員が増えることは、人間関係が固定化する、トラブルが起きた際にその問題が可視化されにくくなるといったデメリットもあります。パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどもその一例です。ほかにも閉鎖的な職場環境では、新たに入った従業員がなじみづらくなったり、仕事がしにくくなったりといった側面も。定期的に拠点の様子を確認する、従業員に無記名式のアンケートを取るなど、問題をできる限り早期発見できるよう注意を払いましょう。

転勤を伴う正社員への移行について検討する

地域限定社員として勤務していた従業員も、育児や介護が終わったタイミングで「転勤のある正社員」への復帰を希望する可能性があります。さまざまな従業員のニーズに応えるため、地域限定社員と正社員の各コース間で転換ができるよう検討してもよいでしょう。また、コース間で転換できる制度を作っても、転換へのハードルがあまりにも高いと従業員に敬遠され、制度として意味をなさなくなる場合も。できる限り柔軟な制度設計に配慮しましょう。

実際に地域限定社員制度を導入した事例

広がりつつある地域限定社員制度ですが、すでに導入に成功している企業も。ここからは、その具体的な事例を紹介します。

ユニクロ

ユニクロは2007年から店舗に勤務する非正社員の契約社員・準社員を対象に契約変更を行なう「地域限定正社員制度」を導入しています。それまでユニクロの店舗で働く正社員は全国転勤が前提となっており、転勤がハードルとなって優秀な人材を正社員として雇用できないことが課題でした。また、店舗を全国展開していくにあたって人材の確保・育成を行なう必要があったことも制度導入のきっかけに。自社で働きたい人材に長く安心して勤務してほしいといった思いから、ユニクロの人事制度を大きく変える革新的な出来事となりました。

参考:地域限定正社員制度の運用開始に関するお知らせ

三井住友信託銀行

三井住友信託銀行では、従業員一人ひとりが望む働き方を実現するために、転居の有無により「Gコース(全国転勤型)」「Aコース(地域限定型)」を設定。コースによって業務の限定はしていないため、どちらのコースを選んでもキャリアアップが叶う環境となっています。また、会社の認定を受ければ各コース間の転換も可能に。勤務地の変更がないAコースの従業員についても結婚、配偶者の転勤、親族の介護などで転居が必要となった場合、勤務地域を変更可能とする取り組みも開始しています。

参考:君のやり方で"君の"未来を創る。多様な働き方とその支援制度

地域限定社員を募集する求人の書き方:条件やメリットを明確にする

制度導入の際は、既存の従業員への丁寧な説明はもちろんのこと、新規採用の方法にも工夫すべきです。地域限定社員ならではのメリットを明確化するため、募集を行なう際は正社員とは分けて求人原稿を作成しましょう。「慣れ親しんだ地域で働ける」「家族との時間を大切にできる」「キャリアアップも目指せる」など、求職者にとって訴求となるポイントをわかりやすく明示すること。ただ「転勤がない」と記載するのではなく、より具体的なメリットに落とし込んだ表現や、ターゲット層に響く内容に工夫しましょう。

まとめ

人手不足が深刻化するなか、企業は「選ぶ側」から「選ばれる側」に。優秀な人材を獲得し、長く働いてもらうためには、従業員に多様な選択肢を与える必要があります。転勤ができなくても幅広い業務に関われる、キャリアアップが望める環境があれば、成長意欲の高い優秀な人材の採用につなげられるでしょう。従業員を確保し、定着させる手段のひとつとして、導入する価値があるのではないでしょうか。

 

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