介護離職とは?従業員が安心して長く働ける組織作りのヒントを解説

「介護離職が課題になっている企業の話を見聞きしたことがある」

「あるいは、自社で介護離職が起こってしまい、対応に追われている…」

 

そんな人事担当の方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが、同じような経験をしたことがあるのは、きっとあなただけではありません。実は昨今、介護離職が大きな問題に。しかも、その問題は今後ますます深刻化していくと見られているのです。

 

そこで本記事では、介護離職という課題に対して、企業がどのような対策をしていけばいいのかというポイントを解説。介護離職に関する調査結果からその要因や背景を見つつ、介護離職を防ぎ、従業員が働きやすい環境をつくっていきましょう。

 

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介護離職とは?

介護離職とはその言葉通り、「介護が理由で会社を辞めること」を指します。介護の状況は人によって様々ですが、介護離職に至ってしまう主な理由としては、「家族の介護と仕事の両立が困難になったから」というのが挙げられます。「仕事を続けたい意欲はあるのに、やむを得ず離職してしまう人」が多く、今企業にとって問題となっているわけです。

 

また、介護離職を問題視しているのは、企業だけではありません。2019年に公表された大和総研による調査によれば、同年の介護離職による経済的損失の見込みは約6500億円と想定されています。実は、2019年時点でこれほどの損失が予測されるほどの社会問題にまで発展しているのです。

参考:大和総研「介護離職の現状と課題

介護離職の現状

もはや一企業の問題ではなく、社会問題にまでなっている介護離職。実際のところはどのような状況になっているのでしょうか。ここではいくつかのデータをもとに、介護離職の現状や実態を見ていきます。

1年で約10万人が介護を理由に離職している

ここで改めて大和総研の調査を見てみると、介護を理由に離職した労働者は2017年に約9万人。2007年の調査と比べると、約2倍にまで増加しています。

 

また、内訳を確認してみると、介護をしている正規雇用者の7割が40代・50代であり、ベテラン従業員が介護を理由に離職せざるを得ない状況にあるといえます。さらに、少子高齢化により、要介護者の人数自体も年々増え続けていることが分かっています。

 

内閣府が発表した「令和3年版 高齢社会白書」では、2009年から2018年の9年間で、要介護・要支援の認定を受けた人が175万人以上増加しているというデータが示されています。

 

こうした調査結果から、介護離職者は今後ますます増加し、どんな会社であっても、自社の従業員が介護をしなければならないタイミングが増えていくと予想されます。企業としても、将来を見据えて対策していく必要性が高まっているわけです。

参考:内閣府「令和3年版 高齢社会白書

介護離職が増加している背景

年々増えていくことが予測されている介護離職。仕事と介護の両立が困難であることが主な理由であると先ほど述べましたが、困難になってしまう背景には個々の状況だけではなく、社内の状況や社会的な実情もあります。企業がどのように介護離職に向き合っていくべきかを考えるためにも、個々の状況以外の背景についても確認していきましょう。

介護について会社に相談できない人が多い

実際に自社で介護離職が起こった際、「介護と仕事の両立で困っているなら、離職する前に会社に相談してくれればいいのに…」と思った経験はありませんか?

 

確かに、会社側としては、あらかじめ相談してもらったほうが対応しやすくなりますよね。しかし、従業員の方は、人事担当者や経営者が想定しているよりも相談しづらいと感じているかもしれません。

 

実際に会社に相談できずに負担を感じながら働き続けている人や、結局会社に相談できないまま離職を選んでしまう人も少なくないのが現状としてあります。

介護している人のほとんどが国の制度を利用できていない

介護離職は社会問題となっているため、国も「介護離職ゼロ」を掲げた上で、介護休業制度など複数の制度を準備しています。

 

しかしながら、介護をしている方の多くは、この制度を利用しきれていないのが実情のようです。日本総合福祉アカデミーのアンケートでも、介護保険は37.4%の人が利用したことがある一方、ほかの制度を利用したことのある人はいずれも5%以下。どれも利用したことがない人が57.3%という結果が出ています。

 

規模が30人以上の事業所のうち7-10割が介護休業・休暇制度などの規定を設けているようですが利用率は低く、制度が十分に活用されていないというのが現状です。

 

こうしたデータから、介護と仕事の両立を実現しやすくするために制定された制度が、必要とする人のほとんどに利用されていないという厳しい現状が見えてきます。国が対策を続けていく方針を掲げているものの、浸透するまでにはまだまだ時間がかかると考えるべきでしょう。

 

早期に介護離職を防止していきたい場合には、まず企業側から国の取り組みを周知したり、社内で介護をサポートする体制を整えたりといった工夫が求められると考えてよさそうです。

参考:大和総研「介護離職の現状と課題

介護離職によって企業側に起こり得る問題

介護離職による企業側に起こりうる問題

ここまで、介護離職の現状や実態を見てきました。それを踏まえて、企業が取るべき対策について解説していきます。まずは、介護離職が企業にどんな影響を与えるのかを、改めておさらいしていきましょう。

人手不足に陥る

まず挙げられる問題点は、退職によって純粋に人材が不足し、企業全体の生産性などが低下してしまうことでしょう。少子高齢化にともなって労働人口が減少し、ただでさえ採用難に陥っている企業が多い昨今において、既存社員の退社はそれだけでリスクとなり得ます。そうした状況で介護離職者まで増えてしまえば、経営にダメージが及んでしまう事態は避けられなくなってしまうでしょう。

ベテラン人材の流出

先に見た調査でも明らかにされていたように、介護離職者の多くは40代・50代のベテラン従業員です。彼らは社内でも豊富な経験や知識、人脈といったリソースを多く持つ人材であり、管理職などの従業員をまとめる立場や、会社にとって重要な役割を担当しているケースも珍しくありません。

 

また、後任育成の観点でも、スキルや知識を持ったベテランが突然抜けてしまうことで、思うように育成できないといった課題も出てくるはず。このようにベテランが介護離職をしてしまうと、社内に培われてきたノウハウが失われ、事業にとって大きな損失となるおそれがあります。

余分な採用・育成コストの負担

従業員の育成は、いわば将来的に企業の売上に貢献してもらえることを見込んだ投資です。したがって、育成にかかったコストの回収は、長期的な視点で見ていく必要があります。

 

しかし、介護離職が起こると、その投資コストが回収されないうちに人材が退社してしまう可能性も。それだけでなく、補充人員の雇用や教育のコストが追加でかかってしまうため、結果として人材育成のコストがマイナスになってしまいます。こうした事態が続けば、企業全体の経営にも大きく響いてきてしまうのです。

介護離職を予防する3つのポイント

介護離職を予防する3つのポイント

介護離職により直面する可能性のある問題に対し、企業はどのように向き合っていくべきなのでしょうか。本章では、自社で介護離職を防止するために取り組むべきポイントを3点ご紹介していきます。

介護に関する国の支援について理解する

先ほども触れたように、国は「育児・介護休業法」において複数の制度を定め、労働者の仕事と介護の両立を支援しています。これらの制度は、介護を行なっている従業員本人が利用するだけではありません。なかには、企業側に措置を求めるものも存在します。いくつか例を挙げますと、

  • 「短時間勤務制度等の措置」
    短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤制度、介護サービス費用助成のいずれかの措置を、事業者が労働者に対して講じる必要がある
  • 「不利益取り扱いの禁止」
    介護休業などの介護に関することを理由に、解雇などの不利益な扱いをしてはならない

といったものです。自社内で制度をつくる前に、まずは、こうした法に基づいた措置ができているかをしっかりとチェックしましょう。

 

また、対象の労働者本人が利用する介護休業制度などの制度についても、企業側も理解を深めておくといいでしょう。介護を行なっている個人がどんな制度を利用できるのかを知っておくことで、従業員をサポートしやすくなり、離職を防げる可能性が高まります。

柔軟な働き方ができるように制度や措置を見直す

介護離職を抑えたいのであれば、自社内の制度の見直しにも着手していくべき。ここでポイントとなるのが、「従業員が、介護と無理なく両立しながら働ける環境を整えられるかどうか」にあります。

 

介護との両立が難しくなる主な要因としては、勤務時間と介護に要する時間のバランスや、勤務地と介護による場所的拘束との兼ね合いが挙げられます。そのため、勤務時間や勤務地に柔軟性を持たせることが、両立を実現しやすくなるための有効打となり得るのです。

 

たとえば、短時間勤務を可能にする、業務内容によっては一部でもリモートワークを許可する、といったことが考えられます。また、介護休暇などを活かして休暇日数を増やしたり、介護休業制度を整えたりするのも1つの手です。

 

ただし、単に制度を整備するだけでは、十分に対策ができているとは言えません。従業員に活用してもらい、双方が満足のいく形で制度を運用できるよう、制度の周知や、定期的な効果観測・改善を欠かさないようにしましょう。

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従業員のための相談窓口を設ける

仕事と介護の両立は肉体的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいもの。勤務時間や勤務地に柔軟性を持たせることと同時に、メンタル面でのケアもサポートしていきましょう。

 

そこで検討をオススメしたいのが、社内や国の介護に関する制度の利用や介護における不安などを相談できる窓口の設置です。相談窓口を設けることで、現に介護を行なっている従業員の悩みや不安に寄り添うことができます。

 

その上、窓口の存在自体が介護への取り組みのアピールになるため、制度に関する周知にもつながるでしょう。なお、相談窓口を設置する場合には、匿名で相談できる形にするのがベター。個人情報への配慮になるほか、従業員にとっての相談のハードルを下げる効果も期待できます。

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介護離職の予防策が、ほかの従業員の働きやすさにもつながる

社会問題となっており、将来的にますます深刻な課題になっていくと見られる介護離職。その課題に対策するポイントとして、柔軟な働き方ができるような環境を整えていくことを紹介してきました。

 

また、こうした取り組みは、介護をしなければならない従業員だけでなく、ほかの従業員にとっての働きやすさにもつながります。働きやすい職場環境は求職者にとっての魅力にもなり、採用活動における他社と差別化できる自社の強みにもなり得るのです。

 

これを機に、介護離職防止だけでなく、従業員が長く働き続けられる環境も視野に入れて、整備を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

将来的には、少子高齢化によって介護離職がますます増加すると予測されています。

 

また、介護をしなければならない労働者の高齢化も進むと考えられているため、会社を支えるベテランがやむを得ず離職してしまう事態も今後増えていくと思われます。

 

だからこそ、長い目で見て取り組んでいき、多くの従業員にとって働きやすい柔軟な環境を整えることが、企業を長く存続させていくための大きなポイントとなります。介護離職が課題となっていない企業であっても、「まだ自社では起こっていないから大丈夫」と楽観視するのではなく、未来に備えた対策を考えていくべきでしょう。

 

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