この記事では時短勤務制度について詳しく解説しています。時短勤務の対象になる人の条件や、導入時に気を付けるべきポイント、給与・残業代・賞与などの支払いなどについて、分かりやすく解説をしていきます。
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- 時短勤務とは?
- 短時間勤務の対象者
- 時短勤務制度を導入する企業側のメリット
- 時短勤務制度の利用者側のメリット
- 時短勤務の導入はどれくらい進んでいるのか?
- 時短勤務導入の手順
- 時短勤務を導入する際の注意点
- 時短勤務での給与はどのように支払うべきか
- 時短勤務の活用を成功させるために
- 時短勤務を導入する企業の事例
- まとめ
時短勤務とは?
時短勤務とは、フルタイムよりも短い時間で働く「短時間勤務制度」のことを指します。対象は3歳に満たない子を養育する労働者で、1日の労働時間を原則6時間以内とするという制度です。育児、介護休業法の改正によって企業での導入が義務化されました。
育児・介護休業法とは、「仕事」と「育児・介護」の両立ができる、充実して調和のとれた生活をサポートすることを趣旨とする制度です。育児や介護をしなければならない労働者が、仕事と育児・介護を両立しながら働き続けられるように支援を行なうためにできました。
短時間勤務の対象者
どのような条件を満たせば対象となるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
時短勤務の対象となる条件
短時間勤務の対象となるのは、下記の条件に当てはまる労働者です。
・3歳に満たない子を養育する労働者であること
・1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
・日々雇用される者ではないこと
・短時間勤務制度が適用される期間に、育児休業をしていないこと
・労使協定により、適用除外とされた労働者でないこと
時短勤務の対象外となる条件
労使協定によって短時間勤務制度の対象外とすることができる労働者は以下になります。
・入社してかた1年に満たない労働者
・1週間あたりの所定労働時間が2日以下の労働者
・短時間勤務制度の適用が困難な業務に就いている労働者
(客観的に困難と認められないと対象外にならない)
ただし、配偶者が専業主婦や、育児休業中である場合など、労使協定を結んでいても短時間勤務の対象外とされない場合もあります。というのも、短時間勤務は、働きながらの子育てを可能にするための制度ですので、できる限り対象となるように動くことが企業には求められているからです。
時短勤務の対象外となった場合の代替措置
短時間勤務の対象外となってしまった場合には、次のいずれかの措置をとらなければなりません。
・育児休業に関する制度に準ずる措置
・フレックスタイム制の導入
従業員が自由に、出勤・退勤時間を決定できる制度のことです。企業は、会社に必ずいなければいけないコアタイムを設定することが可能です。
・始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げ(時差出勤の制度)
たとえば保育園へ送り届けてから出社できるように、出社時間を9時~18時から10時~19時にズラすという時差出勤もこれに該当します。1日の労働時間はそのままに、出勤・退勤時間を調整することで、短時間勤務の代わりとして導入します。
・会社に保育施設を設けるなど育児サポート
保育施設・託児所を企業が運営することで、労働者の子どもを預けられるようにする育児サポートなどが挙げられます。ベビーシッターを雇う費用を一部補助するなど、育児の助けとなるような制度を設ける必要があります。
時短勤務制度を導入する企業側のメリット
これまで説明してきた時短勤務。導入すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。下記で説明していきます。
採用競争力がつき、優秀な人材を確保できるようになる
時短勤務が導入されることで、採用競争力がつき、人材の確保が可能になります。国で「働き方改革」が叫ばれているように、いかに働きやすい職場であるかどうかが今まで以上に求職者に見られるようになりました。
共働き世帯の増加や、高齢化社会による親の介護など、今まで以上に柔軟な働き方が求められる時代に。時短勤務制度などを導入していれば、こうした働き方に理解のある会社であることをアピールできますし、そこに魅力を感じてもらえます。結果、採用競争力があがり、優秀な人材の確保につながります。
従業員が長く働いてくれるようになる
時短勤務を導入することで、新たに採用する人だけではなく、すでに働いている社員の定着率向上につながります。入社時はバリバリ働いていた人もライフイベントなどを通じて考え方は変化するもの。こうした時に時短勤務制度があれば、将来的にも長く働けると安心できるのです。結果、長期的に働いてくれる社員が増え、人材流出などを防ぎ、ノウハウをためていくことができます。
時短勤務制度の利用者側のメリット
では、時短勤務制度を利用する労働者にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。改めて整理していきましょう。
長期的な視点でのキャリア形成が実現できるようになる
メリットとして大きいのは、長期的なキャリアを考えられることです。ライフイベントがあっても仕事を辞める必要はなく、長く働ける選択肢があれば、自分のキャリアを長い目で考えることができます。
一方で時短勤務制度などが導入されていないと、たとえば子どもが生まれた後に、産前と同じように働くのは難しい場合もあり、子育てとの両立が難しくなり会社を辞める選択になってしまうことも。これまで築いてきたキャリアがリセットされてしまい、自分が描くキャリアを歩むことが難しくなってしまう場合もあります。
時短勤務の導入はどれくらい進んでいるのか?
多くの企業が導入しているという短時間勤務。実際、導入はどのくらい進んでいるのでしょうか?厚生労働省が発表しているグラフを元に紹介をします。
約4割の企業が時短勤務制度を利用している
こちらは、短時間勤務制度がある事業所の事業所別の割合を表す数字です。利用状況を見てみると、平成27年は「利用者あり」の事業所が43.7%、平成28年は33.6%、平成29年は40.1%になっています。まだ半分まではいきませんが、利用者は4割程度になっていることが分かります。
出典:厚生労働省 「平成 29 年度雇用均等基本調査」の結果概要
女性活躍の推進策として時短勤務制度を導入する企業も多い
エン・ジャパンが運営する人事のミカタによると、女性社員の定着・活躍に取り組んでいる企業は53%で、取り組んでいない企業が13%と、多くの企業が女性社員の定着・活躍に取り組んでいることが分かりました。
また、女性活躍の推進策として、短時間勤務を導入する企業も増加。女性活躍推進支援として「出産・育児をサポートする福利厚生制度の充実」をさせている企業は、67%。次いで、「短時間勤務・テレワークなどの勤務形態の多様化」52%という結果になりました。ワークライフバランスを整えるためのサポートを会社が行なうことは、女性活躍の推進にもつながります。
時短勤務導入の手順
時短勤務制度の全体像が見えてきたと思うので、ここで導入するためのステップについて説明していきたいと思います。下記が全体像です。ステップごとに説明していきます。
目的を明確化する
まずは「なぜ時短勤務制度を導入したいのか」目的を明確にする必要があります。なぜなら導入には部署だけの意志決定だけではなく、経営陣などの賛同を得る必要があるからです。
その際、しっかり現状の課題を把握することが大切です。たとえば「人材が長く定着しない」「戦力になっている人材の退職が続いている」「社員から働き方について要望があり、現状に不満を感じている人が多い」など、今起きていることを正しく把握しましょう。
課題を特定できれば、時短制度を導入する目的が明確化でき、上層部へ説得力をもって提案できます。ここが決まっていないと、多くの人を巻き込んで導入していくのが難しくなるので、社員にヒアリングをするなどして現状の課題の把握を丁寧に進めていきましょう。
従業員の仕事内容と仕事量を検討する
大事なことは、自社の正社員の仕事の領域や業務内容を把握することです。短時間勤務は、勤務する時間は短くなりますが、担当する仕事はフルタイムの時と同一であることが多いので、まずはフルタイムの業務内容をチェックします。
そのうえで、勤務時間が短くなることで遂行するのが難しい業務などを洗い出し、それらを調整していきましょう。あとは本人と面談などをしながら、どの業務を担い、どの業務を切り出すか話し合いながら決めていくと良いです。時短勤務であっても本人のキャリア形成は続いていますので、一緒に話し合いながら納得感を醸成して決めていくことが重要です。
短時間正社員制度の設計
短期間正社員制度を利用するにあたっての条件や適用期間、労働時間などを決めていきます。短時間勤務の条件は豊富にそろえておいておいたほうが良いでしょう。なぜなら育児だけではなく、介護、私傷病の治療など様々なケースが考えられるからです。
一般的には適用期間に定めを設けますが、必ずしも適用期間が満了にならないと復帰できないわけではなく、本人の希望により期間中であっても復帰できるような柔軟な体制にしておくほうが良いでしょう。
また、1日にどのくらい働くのか労働時間も決めておく必要があります。注意すべきは、育児・介護休業法に沿う形で勤務時間を決める必要があることです。3歳未満の子を養育するために1日6時間の労働が法律で義務付けられているので、法令守りながら決めていく必要があります。
短時間正社員の処遇の検討
基本的にはフルタイムの社員と同じ仕事内容を担うので、勤務時間分だけ減額するのが一般的。月給20万円のフルタイム社員の8割の時間を働くことになれば、20×0.8=月給16万円になるイメージです。
注意すべき点としては、労働時間の短縮による減額は必ずしも不利益な取り扱いに該当しませんが、短縮された労働時間を超えて減額することは不利益な取り扱いになり禁止されているということ。制度導入にあたってはここが重要になります。
就業規則の変更、社員へ周知する
短時間勤務を導入する際には、対象となる労働者だけでなく、社員へ就業規則の変更内容や導入の目的を周知することも大切です。たとえば「子育て期にあたる人の離職を防ぎたい」「スムーズな職場復帰を促したい」などの課題があり改善したいなど、目的・目標を共有していきましょう。社員全員へ周知を行なうことで理解が得られ、制度の浸透にもつながります。
時短勤務を導入する際の注意点
短時間勤務を取り入れるには、どんな点に注意したら良いのでしょうか。
不利益取り扱いは法律違反になる
育児休業法では、育児休業を申請した人に対して育児休業を与え、労働時間を短くしなければならないとしています。そのため、育児休暇をとり、短時間勤務になったために解雇・雇止め・減給などの不利益となる行為を行なうことを禁止しています。
時短勤務での給与はどのように支払うべきか
短時間勤務の際、給与や残業代、賞与はどうなるのでしょうか?それぞれ詳しく紹介します。
基本給について
短時間勤務に伴い、給与もその短縮分減らすことが可能です。たとえば、働く時間が3/4になった場合、基本給も3/4となります。この給与の縮小は、短時間勤務を導入しているほとんどの会社で行なわれています。ただ、仕事の成果に応じて報酬の支払われる歩合給の場合、成果によっては給与が変わらないことがあります。
残業代について
短時間勤務者の残業は、法定労働時間を超えた場合です。たとえば時短勤務で6時間労働というルールであり、8時間労働したとしても、2時間分の割増賃金が支給されるわけではなく、通常の給料が支払われるだけです。とはいえ、短時間勤務制度を利用しながら残業を行なうのでは意味がないので、残業をしない「所定外労働の免除」を労働者に申請してもらうのが良いでしょう。
賞与について
賞与の支給は企業ごとに決めることができるので、違法とはなりません。たとえば、基本給と同じように、基本給3/4にあわせて賞与が3/4になる場合もあります。ただ育児休暇の人にも賞与を支給すると定めながら、賞与を支給しないというのは契約違反。賞与は企業によって異なるため、短時間勤務を導入する際は、賞与に関しても決定することが大切です。
時短勤務の活用を成功させるために
設計・導入を進めていった時短勤務を活用できる環境にするためには、ただ制度を用意するだけでは不十分です。制度を本格的に活用できるようにするために、必要なことをいくつか紹介します。
制度を実際に活用するうえで想定される問題に対策する
制度は存在するだけでは活用されません。たとえば、前述したフレックスタイム制ですが、仕組みとしては1980年代後半から存在していますが、普及率は決して高くなく、過半数の企業では導入に至っていません。
「フレックスタイム制が会社に合わなかった」「コアタイム以外でも出社してほしい時間がある」など理由は様々考えられますが、制度はただ導入するだけでは活用されません。制度を実際に運用するにあたり想定される問題を洗い出し、1つ1つ対処していくことが重要です。
制度利用を相談しやすい環境づくり
制度を実際に利用する従業員が、上司に相談できる環境を整えることも重要です。周知したルールに基づいて、制度利用したい従業員と対応する上司のそれぞれやるべきことを明確にしましょう。そして、利用を検討している従業員が引け目を感じないように、制度利用に対して会社としてもポジティブな対応をしていきましょう。そうすることで、成功事例が増えていき、時短勤務が名実ともに会社に定着していくことでしょう。
時短勤務を導入する企業の事例
エン・ジャパン株式会社
人材大手エン・ジャパン株式会社では、「時短勤務制度」のほかに、育児や介護を行なう総合職の社員に対して「スマートグロース制度」という人事制度を設けています。この制度の詳細は以下。
・給与
フルタイム勤務の社員動揺、みなし残業代を一定含んだ金額の、時短分を支給
※一定のみなし残業代が含まれる分、通常の短時間勤務よりも給与が高くなる。
・期間
育児の場合、末の子が小学校が3年生になるまでが対象
・勤務時間
最長6時間。1日2時間まで短縮可能。
・働き方
フレックスタイム制
この制度を導入した背景にあるのは、「働く時間にかかわらず、成果を出し続ける社員を応援したい」という想いです。スマートグロース制度では、短時間勤務であっても、フルタイムで働く社員と同じように責任のある仕事を担うことができます。というのも、この制度はフルタイムで働く社員と同じ給与・評価制度の短縮版であるから。エン・ジャパンでは実績・能力に応じたグレードで評価を行なっています。
スマートグロース制度では、グレードはそのままに、短縮した時間分の給与を支払います。評価や担当できる職務はフルタイムと一緒なので、短時間で働きながらリーダー業務などもできるのです。社員のサポートは企業によって様々。今後より多様な働き方が必要とされる中で、自社に合う仕組みを作ることも大切です。スマートグロース制度もぜひ参考にしてみてください。
まとめ
働き方改革によって、職場の働きやすさは無視できない事柄になっています。こういった問題に取り組めていない場合は、採用力、定着率の低下などにもつながっていき、事業を展開するうえでネックとなってしまいます。
もし優秀な人材を採用したい…、人材流出を防ぎたい…、とお考えであれば、社員が長期的に働けるような時短勤務制度の導入を考えてみるのはいかがでしょうか。導入することで、企業としての見え方お変わりますし、力のある社員がしっかり定着してくれる会社になるでしょう。また、もし制度を導入したのであれば、求人でも思いっきりその旨アピールしてください。
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