正社員登用制度はどう活用する?組織に与える効果や制度を作るコツも解説

労働人口の減少などにより、人材の確保が難しくなっている昨今では、現状の社内メンバーを活用した生産性向上は各企業にとって大きな課題です。さらに、働き方に対する価値観が多様化している背景から、個々を尊重しながらも組織を活性化していくことが求められているともいえます。

 

そこで検討すべきなのが、非正規雇用スタッフの積極的な活用。そのうちの1つとして考えられるのが、パートやアルバイトなどの正社員登用です。今回はこの正社員登用について、各企業でどのように導入していくべきなのか、詳しく解説していきます。

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正社員登用制度とは?

正社員登用とは、非正規雇用(アルバイトやパート、派遣など)の人材を正規雇用に転換する制度のことです。特に登用方法に決まりはなく、基本的には各企業で柔軟に運用していくことで、適切な人材活用を促す目的があります。なお、派遣社員を正社員化する場合には、もともとは派遣会社に雇用されている人材を自社で雇うことになるため、注意が必要です。登用したい本人だけでなく、現状の派遣会社と調整した上で、雇用契約を締結し直さなければなりません。

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正社員登用の実態

では実際に、社会全体として正社員登用がどのように活用されているのかを、各企業の現状も見ていきましょう。

約8割の企業が正社員登用を導入

厚生労働省による「労働経済動向調査(2021年2月)の概況」の資料によると、各企業における正社員登用制度の導入率は77%であることが分かりました。その中でも、2020年2月~2021年1月の1年間で、実際に登用実績があったのは47%。実績がなかった企業における要因としては、「必要としていたが従業員からの応募がなかった」という回答が多くを占めました。この情報からは、高い割合で正社員登用制度を設けているにも関わらず、半数ほどの企業において、自ら正規雇用を希望する従業員がいなかったということが読み取れます。では本来正社員を希望している潜在的な非正規雇用の人材は、一体どれくらい存在しているのでしょうか。

参考:厚生労働省「労働経済動向調査(令和3年2月)の概況

実際に正社員になりたい人材は約2割

同じく厚生労働省の「有期労働契約に関する実態調査(個人調査)」によると、2021年の時点で、「正社員として働き口がなかった」としている有期雇用の労働者は、全体の17.7%です。ちなみに最も割合が高かったのは「仕事内容や責任の程度が自分に合っていた」という回答で、全体の43.8%を占めました。次いで多かったのは、「勤務日数や時間が希望どおりだった」という層(33.3%)で、この3つの要因だけで9割以上にも上ります。ここまでで分かるように、一定数は正規雇用を望んでいるものの、あえて非正規雇用で働いている人材もいるのが現状です。

参考:厚生労働省「令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)

正社員登用制度を取り入れるメリット

正社員登用制度を取り入れるメリット

それでは、正社員登用を導入することで組織にどのような効果をもたらすのかについて、詳しく紹介していきます。

採用コストを削減することができる

当然ながら、もともと社内で活躍している人材を活用することになるため、新たに採用するコストや労力を省略することが可能です。たとえば、正社員登用後に担当する仕事について、今までの上位業務や実務経験が活かせるものであれば、ゼロベースから育成する必要もありません。企業の風土や慣習も、ある程度は理解しているパートやアルバイトスタッフを正社員にすることで、組織を管理する上でのあらゆる手間を軽減することにつながるでしょう。従業員側にとっても慣れた環境から再スタートができるため、心身の負担も少ないと考えられます。

従業員のモチベーションを高めることができる

パートやアルバイトなどから正社員になれるキャリアパスを用意しておくことで、確かなモチベーションを持って働くことにもつながります。正社員としての安定性や待遇を求めている人材は、一定数存在しているのが現状。わざわざ転職しなくても自社で目指せることを明確に示しておけば、業務に対する意欲的な姿勢を促すことにもなるでしょう。また正社員登用に向けて、積極的に必要なスキル習得の支援をしていけば、組織全体としてのパフォーマンス向上にも直結する効果に期待できます。

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人材の定着が期待できる

パート・アルバイト・契約社員といった有期雇用であっても、契約更新が継続しているケースは多く、実質的には正規雇用と同様に期間の定めなく働いている例は少なくありません。もちろん、労働契約の安定性から見れば無期雇用という選択肢もありますが、正規雇用という立場になるからこそ、会社から認められたと感じる人材も多々存在しています。企業に対する愛着心を持ってもらう意味でも、正社員登用によって「きちんと評価している」という姿勢を示すことは有効的。その結果、各従業員のエンゲージメントを高めることにつながり、人材も定着するというメリットがあるでしょう。

正社員登用制度における注意点

正社員登用制度における注意点

先ほど紹介した実態からも分かるように、正規雇用を希望している人材は一定数いるものの、何らかの事情で非正規雇用のままで働きたい層も存在している状況にあります。そこで、自社にて正社員登用を行なう際に、気を付けておきたいポイントも見ていきましょう。

個人の意思を尊重する

仮に企業側として正社員に登用したくとも、無理に促すのは避けたほうが良いでしょう。もし現状よりも充実した待遇になったとしても、生活環境や仕事への考え方によっては、非正規のままでいたいと感じるスタッフもいます。たとえば、「残業に対応できないから正社員は難しい」「大人数をまとめるのが苦手だからこのままでいたい」など。場合によっては本人の不安を解消することで、正社員になりたい気持ちに変わる可能性もあります。押し付ける形で正社員になってもらったとしても、すぐに離職してしまうケースも考えられるため、まずは本人の意思を尊重することが重要です。

互いの認識を十分にすり合わせる

そもそも正社員登用の制度を設けたとしても、従業員側が正規雇用を望まなければ意味がありません。よく見られるケースとしては、パートやアルバイトなどの非正規スタッフに、正社員として働くメリットが伝わっていないなどがあります。実際に現状からどのように変わるのかイメージできなければ、各従業員の意欲も促進できないでしょう。そのため正社員登用を積極的に進めたいのであれば、正社員に登用されることで何が変わるのかを事前に示しておく必要があります。また正社員登用後に、互いの認識のズレからトラブルになる例は少なくありません。単純に利点ばかりだけではなく、懸念点もあわせて伝えて判断してもらうようにしましょう。

入念な事前準備を行なう

正社員に登用される上で不安に感じる要素の1つとして、今までの業務内容が大きく変わることも考えられるでしょう。一般的には「責任が重くなりそう」「求められる役割のハードルが高くなりそう」などのイメージもあり、その懸念から正社員登用を避ける非正規雇用者もいます。優秀な人材を正社員登用するにあたり、あらためて十分な準備をしておくことが欠かせません。もし、さほど仕事内容に変わりがない場合でも、心構えをつくってもらう時間を設けるのがベストです。

正社員登用の制度化に向けたステップ

正社員登用の制度化に向けたステップ

それでは、正社員登用の制度を整えるにあたって、具体的にどのような取り組みをしていくべきなのかについて、詳しく解説していきます。

費用対効果の算出

大前提として、正社員登用の制度を取り入れるべきなのかを的確に判断することが不可欠です。採用活動のコストはかからないものの、正社員に登用することで手当など待遇における経費が増すケースも考えられます。できるだけ有効に正社員登用制度を活用していくためにも、そもそも自社で適切な運用ができるのかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。きちんと費用対効果を見極めた上で、正社員登用制度を導入していくのが無難でしょう。

社内の状況確認

正社員登用の導入が妥当だとすれば、次は制度の内容を具体的にしていくために、現状を把握することも欠かせません。たとえば、正社員と非正規雇用の従業員とのギャップ感や、どれくらいの人材が正社員登用を求めているかなど。細かく現場をリサーチしていくことで、正社員に登用する対象や方法が見えてくるようになるでしょう。こうして制度化に向けた方向性を明確にしていきます。

運用方法のプランニング

正社員登用の制度化に向けた土台が固まったら、最終的に社内で運用していく細かな規定を設定していきます。たとえば、上司からの推薦や公募、登用対象者の決め方など。正社員になるための等級を設けた人事評価や、登用のための試験といった明確な基準があれば、従業員としても日々の目標が立てやすくなります。また、正社員登用時のフローを明確にしておけば、社内のスタッフにも周知しやすくなるメリットも。正社員登用が進まない原因として、「そもそも制度があることを知らなかった」というケースも中にはあるので、きちんとした形式にして各従業員に伝えておくことも重要です。

「多様な正社員」に注目した登用制度も検討するのがおすすめ

現在は働き方改革が進んでいることもあり、厚生労働省では「多様な正社員」を活用した職場づくりの支援を行なっています。正社員登用の制度を設ける際にも有効と考えられる要素があるため、より効果的な人材活用の方法として、ぜひ以下も参考にしてみてください。

「多様な正社員」とは

「多様な正社員」とは、従来の正社員の認識よりも幅を広げた考え方で、さまざまな働き方を促す体制を確立するのに有効な雇用形態を指します。基本的に労働者に対して「期間の定めのない労働契約を結ぶ」ことを正規雇用と呼び、正社員の法律的な基準はありません。雇用形態の名称は各企業で自由に設定できるため、たとえば勤務時間が短い従業員でも「正社員」とすることには全く問題がないのです。

 

ただ一般的には、正規雇用の規定に加えて、フルタイムで働く人材を「正社員」とする認識が広まっています。そこで今までの形式にとらわれずに、あらゆる正社員のスタイルをつくっていくことで、優秀な人材の確保や定着につなげるのが「多様な正社員」を取り入れる目的。その具体的な事例として提示されているのが、以下の3つです。

  • 勤務地限定正社員:勤務先の地域が特定エリアに限定されている正社員
  • 職務限定正社員:業務内容の明確な区分が設けられている正社員
  • 勤務時間限定正社員:残業の免除や短めの所定労働時間が設定されている正社員

このように正社員の中でもタイプ分けすることで、より適切な労働環境につながると考えられています。

参考:厚生労働省「多様な人材活用で輝く企業応援サイト

「多様な正社員」の活用状況

実際にこの「多様な正社員」の考え方を活用した制度は、あらゆる規模や業種の企業で導入されています。正社員登用制度でも、「転勤の有無によって2つのポジションを用意する」などが挙げられるでしょう。そのほかにも職務の範囲によって、正社員の扱いながらも別の名称を付けてランク分けするといった方法もあり、正社員登用そのものを段階的にするのも1つの手です。またこうした正社員登用制度の設置や処遇改善には、国からの「キャリアアップ助成金」の活用もできます。

より有効な運用に向けた支援も

「多様な正社員」に関連する制度を取り入れるにあたっては、社会保険労務士などの導入支援員によるサポートが実施されています。さらにこうした支援の申込に向けたオンラインでの説明会や質問会もあり、もし正社員登用として「多様な正社員」の制度を導入する際には一度参加してみるのもおすすめです。費用は無料で時間も30分ほどなので、試しに話を聞いてみるだけでも良いかもしれません。

まとめ

正社員登用は、有効な人材活用がしやすいなど企業側のメリットがあるだけでなく、従業員にとっても待遇の改善といった利点があるものです。ただし現状は正社員登用を希望しないパートやアルバイトの方も一定数おり、個人の生活背景によってはデメリットになる可能性もあります。一方で最近では、「多様な正社員」という新たな働き方も広まってきており、正社員登用においても上手く取り入れることで、より強い組織を構築する戦略にも使える見込みも。正社員登用の制度を整える際には、今回ご紹介した内容も参考に、じっくりと検討してみてはいかがでしょうか。

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