定年退職とは?70歳までの定年引上げが努力義務に!知っておくべき内容を解説!

これまで日本のスタンダードだった雇用の仕組みのひとつ「定年制」。しかし、少子高齢化が進んでいたり、人生100年時代と言わるなかでこれまでの定年退職のあり方が変わってきています。

 

時代と共に少しずつ変化しているため、正直細かいところまでは理解していない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしこれは、人を雇用するうえで理解しておくべきことです。

 

そこで本記事では定年退職の定義や仕組み、法律を基礎から丁寧に解説。また定年退職時に必要となる手続きなども詳しく見ていきます。

 

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定年退職とは

従業員が企業の設定した年齢に達した際に雇用解約となり、退職することを定年退職といいます。この年齢は通常、就業規則などで明確に定められており、かつては60歳定年制が一般的でした。新卒で入社し、定年まで勤めあげる。少し前までの日本の雇用のあり方としては一般的なモデルでした。

 

しかし、少子高齢化など人口減少による影響を受け、働ける意欲がある人が60歳以降も働ける環境をつくる必要が出てきたため、2013年に高年齢者雇用安定法の一部が改正。定年制の基準や年齢が見直されることになりました。

 

その結果、「65歳までの雇用」が実現されることになりました。(ただしこれは、企業に「必ず従業員を65歳まで雇うこと」を義務づけているわけではありません)詳しくは「定年退職にまつわる法律や制度」でも解説します。 

日本での定年退職の現状

それでは日本での「定年退職」の現状や推移を細かく見ていきましょう。

 

まず前述した「高年齢者雇用安定法の一部改正」により、定年退職の年齢を65歳未満に定めている事業主は「定年の引き上げ」「定年制の廃止」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を取るように義務づけられました。これを「高年齢者雇用確保措置」といいます。

 

この背景を踏まえたうえで2019年、厚生労働省が16万1378社の企業に調査を実施したところ、大手企業・中小企業共にほぼ100%の企業が高年齢者雇用確保措置を実施しているという結果になりました。

 

高年齢者雇用確保措置の実施状況

 出典:厚生労働省 令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果

 

さらに詳しく見てみると、「定年の引き上げ」を実施した企業は全体の19.4%、「定年制の廃止」を実施した企業は全体の2.7%、「継続雇用制度の導入」を実施した企業は全体の77.9%という結果に。

 

また、過去1年間(2018年6月1日~2019年5月31日)の中で、定年年齢である60歳に到達した人 36万2232人に「継続雇用」の希望の有無を調査したところ、8割以上の人が継続雇用を希望する結果となりました。 

定年退職にまつわる法律や制度

次に、前項でも触れた「高年齢者雇用安定法」を含む、定年退職に関係する法律や制度について詳しく解説します。

高年齢者雇用安定法

「高年齢者雇用安定法」は高齢者の雇用を促す法律のひとつで、本人の意欲や能力に応じて、高齢者が働き続けられる環境を整えることを目的としています。2013年には同法律の一部改正が行なわれ、高年齢者雇用確保措置が義務づけられました。

 

それが先ほども触れた「定年の引き上げ」「定年制の廃止」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を取らなければいけない、という義務です。

 

令和3年4月1日には法改正が行なわれ、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高齢者就業確保措置が新設されました。それでは、義務のものと、今回の法改正で加わった、努力義務の2つに分けて説明します。 

 

<高齢者雇用確保措置…65歳までの義務>

①65歳までの定年の引き上げ

定年年齢を65歳まで引き上げる措置です。中には、定年年齢を選択できる「選択定年制度」を取り入れている企業もあります。

 

②定年制の廃止

定年制自体を廃止する措置です。現状この措置を取った企業のほとんどが、従業員の業務成果に見合った給料を支払っています。

 

③65歳までの継続雇用制度の導入

従業員が定年年齢を迎えた後も、本人の希望があれば雇用を続ける措置です。この措置を取る場合、事業主は「再雇用制度」「勤務延長制度」のいずれかの制度にのっとって雇用を継続しなければいけません。(詳しくは次項で解説します) 

 

<高年齢者就業確保措置…新設 70歳までの努力義務>

①70歳までの定年引上げ

②定年廃止

③70歳までの継続雇用制度の導入

(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)

④高齢者が希望する時は、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤高齢者が希望する時は、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

b.事業主が委託、出資などする団体が行う社会貢献事業

※④、⑤については創業支援等措置として過半数労働組合等の同意を得て導入する必要があります。

 

高齢者雇用安定法

参考:厚生労働省 高齢者雇用安定法改正の概要

継続雇用制度(再雇用制度/勤務延長制度)

続いて「継続雇用制度の導入」を行なう際、事業主が選択しなければならない「再雇用制度」と「勤務延長制度」について詳しく解説します。 

■再雇用制度

従業員が定年年齢を迎えた後、一度退職扱いにしてから再び雇用するのが「再雇用制度」です。なお事業主は、従業員をこれまでと異なる立場や雇用形態で再雇用しても構いません。

 

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■勤務延長制度

こちらは再雇用制度と違い、従業員を退職扱いせずに雇用を維持できる制度です。定年年齢を迎えた後もそのまま継続雇用でき、退職金は延長期間が終了する際に支払うことになります。

定年延長の企業側のメリット・デメリット

それでは、定年年齢を引き上げることによる企業側のメリット・デメリットとは何でしょう?

メリットは労働力確保により業績維持、向上を目指せる

定年年齢を引き上げると、企業は長きにわたって活躍してきた優秀な従業員の労働力を手放す必要がなくなります。これは事業の成長には欠かせないことです。特に非常な優秀な社員、技術力がある社員などに退職されてしまうのは企業にとっては痛手です。

 

特に彼らのノウハウなどに依存していた場合、ダメージは大きなものになるでしょう。定年延長になることで、貴重な労働力を確保できるため、業績の維持、向上を目指していけるのは企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

デメリットは、非優秀層の人件費もかさむこと

当たり前ですが、定年年齢を引き上げたぶんだけ人件費の負担も増えてしまいます。優秀な人材の確保はメリットになる一方、思わしくないスキルの人材でも、希望があれば継続雇用する必要があるというのもデメリットになります。新陳代謝が良くなくなり、さらに人件費がかさんでしまうのは、企業にとっては痛いところでしょう。

 

現在は70歳までの高齢者を受け入れるのは努力義務ですが、義務化されるかもしれません。そうなった時、高齢者をどのように活用し、能力を発揮してもらうかを企業は考えなければならないでしょう。また活躍が難しい人材をどのように育成していくのかも考えなければならない部分です。

定年延長の今後について

次に、定年延長の実施によって予想される今後の動向について、詳しく見ていきます。

定年延長の開始時期

日本は少子高齢化が進んでおり、この先も働き手は減少に一途をたどる見込み。働き手が減るということは、生産性が向上できなければ、日本の経済は縮小してしまうことを意味します。

 

そこで、日本では働き手を確保できるように、政策を進めているのです。希望者が65歳まで働くことのできる「65歳定年制」は、まさにその一つ。具体的には、2025年4月より全企業に義務づけられる予定です。

 

また、政府は、2013年4月より3年ごとに「厚生年金の支給開始年齢」を1歳ずつ引き上げることをスタート。これは本来年金を受給できる年齢だったにも関わらず年金をもらえない無収入の期間を発生させないための取り組みで、この年齢は2025年で65歳に到達します。

 

つまり、厚生年金の支給開始年齢が65歳になるタイミングに合わせて、2025年に65歳定年制がスタートするように調整しているのです。 

公務員の定年延長

政府は現在、民間企業だけでなく「公務員」の定年延長も検討しています。まずは国家公務員の定年年齢を65歳に延長、それから地方公務員にも徐々に定年延長を広げていこうと考えているのです。

 

これまで定年年齢の60歳を迎えた国家公務員には、”無収入期間”が発生しないための措置として「再任用制度」があるのが一般的でした。今後公務員にも定年延長が適応されるようになる場合、再任用制度を廃止したうえで定年年齢を引き上げる考えだといいます。

 

なお欧米では、日本よりも国家公務員の定年延長、定年制の廃止に積極的。すでに65歳定年制を実施している国や、定年制を廃止している国もあります。

定年延長によって予想される問題

 賃金の制度見直しなど新たに着手すべきことはありますが、一番問題になるのは、定年延長した人材にどのように活躍してもらうか。ここの設計をしっかり行わないと、企業にとって負担になってしまう可能性もあります。

 

たとえば、定年延長で雇用したものの、まったく活躍してもらえない、成果を出してもらえない…ということになれば、企業にとっては大きな負担になります。正直な話、生産性が低い社員を定年延長して雇用する余裕はどの企業にもあまりないはずです。だからこそ、高齢の人材の活用方法は一番考えなければならない部分でしょう。

 

経験が豊富な社員が活躍できる分野はどこか考えることも重要ですし、彼らがモチベーションを維持できるような配置も重要です。またどのように生産性をあげればいいのか。今後はこうした高齢者の活用が日本にとって重要になってくるのではないでしょうか。

定年延長によって企業が取り組むべきこと

企業が具体的に見直すべきことや取り組むべきことをご紹介します。

 

まず見直しが必要なのが「雇用契約」と「賃金制度」です。特に、労働条件やポストに変更がある場合は、新たな雇用契約を結ぶことが必須となるため、労働契約書といった必要書類を再作成しましょう。

 

また、賃金制度においても同様で、たとえ高齢者従業員にこれまでと同様の業務を任せるとしても、その従業員と同じ仕事を担当する仲間たちが納得する賃金制度を整える必要があります。現状の賃金設定のままにするのか、高齢者従業員のみに適応される新たな賃金制度を作るのかなど、企業に合った賃金制度をもう一度見直すことをお勧めします。

 

このほか、就業規則や退職金制度、人事関係の制度なども高齢者従業員に合わせて見直す必要があるでしょう。 

定年退職/再雇用の手続き

それでは最後に、実際に従業員が定年退職、または再雇用となった際の手続きについてご紹介します。

定年退職の場合

まずは従業員に「再雇用の希望」があるかどうか、意思確認をしましょう。従業員へ個別に意思確認の通達をし、再雇用の希望がなければ定年退職の手続きを取ります。なお、具体的な手続きは下記の通りです。

 

■社会保険の資格喪失に伴う手続き

まずは健康保険や厚生年金保険といった社会保険の資格喪失手続きを行なう必要があります。人事担当者は、各種保険の「保険被保険者資格喪失届」を作成し、期限内に該当する健康保険組合や年金事務所、公共職業安定所に提出しましょう。

 

■住民税の手続き

どの期間まで住民税を徴収しているのか、未徴収残額はいくらなのか、また残額はどのように納付するのか、といった情報を記載したうえで、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を各自治体に提出します。

 

■物品の返還

従業員が使っていた物品や書類などの返還を求めるのも忘れてはなりません。このほか、従業員のメールアカウントやアクセス権の停止も必要ですが、顧客とやり取りが必要な場合などは一時的にアカウント・権限を付与するのもいいでしょう。

継続雇用の場合

従業員に再雇用の希望があれば、継続雇用を行なうための雇用条件等のすり合わせを行ないましょう。特にポジションや給与、仕事内容が変わる場合は、就業条件をきちんと提示することが大切です。このすり合わせに問題がなければ、具体的に下記の手続きを行ないましょう。

 

■社会保険の資格喪失・資格取得手続き

再雇用で注意すべき点は、従業員が一度”定年退職扱い”になることです。そのため企業側は、従業員の健康保険や厚生年金保険といった社会保険の「資格喪失届」「資格取得届」を同時に各所へ提出しなければなりません。なお、例外として雇用保険・労災保険は再雇用後も資格を引き継ぐことができます。

 

■退職金の準備

前述したように、従業員が一度”定年退職扱い”となることから、当然退職金も支払う必要があります。再雇用をする前の定年退職時に退職金を支払う場合が多く、その後改めて雇用契約を結ぶことになります。

 

■有給休暇の設定

従業員が継続雇用となる場合は、定年退職以前の有給休暇数も引き継がれることになります。たとえ以前と異なった雇用形態で従業員を再雇用したとしても、これは変わりません。

 

「定年退職」と「継続雇用」どちらのケースだとしても、不十分な説明・案内にならないよう、従業員としっかりとコミュニケーションを取ることが大切です。

まとめ

少子高齢化によって人材獲得競争が激化している現在の日本では、従来の企業の在り方にとらわれない柔軟性が求められています。中でも「60歳以上の人材をいかに有効活用できるか」がポイントです。

 

とはいえ、せっかく雇用延長に踏み切ったのに、実際に活躍してもらえなければ、これほどもったいないことはないでしょう。

 

だからこそ企業は「いかに優秀な人材を雇用できるか」「これまでの経験を活かしてもらうには、どうすればいいか」「再雇用後は、どのような業務を担当してもらうべきなのか」を明確化することが重要です。

 

加えて、定年年齢に達したときに雇用継続の意思確認をするのではなく、それ以前から従業員の意思・希望を確認しておくと、組織構築も手続きもスムーズに進められるでしょう。

 

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