雇用条件通知書とは?採用後のトラブルを避けるための注意点を解説

労働者との雇用契約の際に必要な書類として、その交付が法律で義務づけられている雇用条件通知書。とはいえ、その内容については、「雇用する上での条件や待遇が一通り記載されていればよい」といった程度にしか認識していない方もいるのではないでしょうか。

 

しかし、実は雇用条件通知書は記載する内容に関しても一定のルールが存在し、内容が不十分なままに交付すればトラブルに発展する可能性もある非常にデリケートなものとなっています。そのため、一名でも労働者を雇う場合には、雇用条件通知書に関して正しい知識を持っておくことが大切なのです。

 

この記事で紹介するのは、そんな雇用条件通知書の交付にあたり記載すべき内容やその注意すべきポイントです。また、実際の交付時にそのまま活用できるテンプレートも紹介していますので、ぜひ役立ててみてください。

 

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「雇用条件通知書」とは?

雇用条件通知書とは、企業が労働者と雇用契約を結ぶ際に、労働者に向けて労働条件や待遇を明示するために交付する書類のことです。名称について決まりはありませんが、一般に「労働条件通知書」との名で呼ばれることが多いため、以降この記事の本文ではこちらの名称を使用します。

 

この労働条件通知書の交付は、労働基準法第15条第1項の「労働契約の締結時における条件の明示義務」にもとづくものです。というのも、同法では明示すべき労働条件のいくつかに関して「書面で発行しなければならない」とされており、その義務を果たすために労働条件通知書の交付が必須となっているのです。なお、この明示義務は労働者の雇用形態には関係なく生じるため、正社員以外の労働者、たとえば契約社員やパートタイム労働者などを雇用する際にも労働条件通知書の交付は必要となります。

「労働条件通知書」と「雇用契約書」の違い

労働条件を明示することが目的の労働条件通知書に対し、「雇用契約書」と呼ばれるものがあります。こちらは、企業と労働者の両者が、結ばれた雇用契約に合意したことの確認として取り交わされる書類を指します。

 

労働条件通知書と雇用契約書の大きな違いとしては、雇用契約書は民法第623条によりその交付が推奨されているものの、あくまで義務ではないため罰則規定が存在しないという点にあります。とはいえ、トラブルを回避するという観点から、一般的には雇用契約書も労働条件通知書と合わせて多くの企業で交付が行なわれています。また、雇用条件通知書は企業が一方的に交付するのに対し、雇用契約書は企業と労働者の両者による署名・捺印が必要というのも重要な違いのひとつです。

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労働条件通知書の重要性

給与や休日などの労働条件を通知することは、労働者にとってただ安心をもたらすだけでなく、生活の見通しを立てる上でも非常に重要な取り組みとなります。そのため、労働条件通知書の交付は義務だからと形式的に行なうのではなく、きちんと労働条件を相手に理解してもらい、納得を得ることを意識して実施しなければなりません。

 

さらに、口頭での通知とは違い書面という形で残る労働条件通知書は、仮に雇用後に労働者との間でトラブルが発生した際にも大きな証拠として機能することになります。よって、労働条件通知書の内容を作成する上では、正確かつ実態に即した情報を記載することが大切です。次章で、労働条件通知書をより正しい形で交付するために必要となる知識を紹介していきます。

労働条件通知書に記載すべき内容

労働条件通知書に記載すべき項目は数多くあるものの、それらの優先順位には違いがあります。それに基づいて各項目を、「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」のふたつに分類しています。

 

中でも絶対的明示事項は、雇用形態や企業の実態に関わらず、すべての労働条件通知書に必ず記載しなければならない項目です。こちらには、大きく分けて5つの項目が含まれます。その他の項目は相対的明示事項とされ、こちらは企業が該当の条件を定めていない場合には記載の必要はありません。言い換えれば、相対的明示事項は企業ごとに異なる対応が求められるため、きちんとその内容を確認し、自社の状況と照らし合わせながら記載すべきかどうかを判断しましょう。

労働条件通知書の絶対的明示事項

労働条件通知書の絶対的明示事項

労働条件通知書に記載する条件のうち、まずは必ず明示しなければならない絶対的明示事項について紹介していきます。

①雇用契約の期間・更新の基準

雇用契約の中には、正社員のように雇用期間の定めのないものと、パート・アルバイトのように期限が存在するものがあります。そのため、労働条件通知書では、まず対象となる労働者との雇用契約がどちらに該当するかをきちんと明示しなければなりません。もし期限がある雇用契約ならば、その期間についても記載しましょう。さらに、雇用に期限がある契約では、その更新があるか否かも重要な情報となります。自動的に更新される場合はその旨を、条件つきで更新されるものはその条件の記載が必要です。

②就業場所・業務内容

労働者にとって「就業場所がどこになるのか」という条件は早くに知っておきたい情報であり、こちらも労働条件通知書の絶対的明示事項に含まれます。なお、転勤などで今後勤務地が変更になる可能性がある場合もあるため、ひとまずは就業開始直後の勤務地を記載すれば問題ありません。とはいえ、将来的に勤務地が変わる可能性があるのであれば、その点についても補足して記載しておくことが望ましいでしょう。記載の形式は事業所の所在地を正確に記載するのがベターですが、部署の名前などを記すことも可能です。

 

また、就業場所と同様に記載が必須とされているのが業務内容です。こちらについても、基本的には労働者が実際に担当する業務を簡潔に記載するだけで構いませんが、もし将来的に出向や異動の可能性が存在するのであれば、トラブルを避けるためにもその旨をきちんと明示するのがよいでしょう。

③労働時間・休日

労働条件通知書の絶対的明示事項には始業・就業時刻も含まれますが、ここで注意したいのは業務の開始前に朝礼や準備などが存在しており、定時と実際の出社時刻が異なっている場合です。そうした場合には、実際に出社しなければならない時刻を優先的に記載しましょう。

 

また、労働時間に関してはシフト制やフレックス制といった勤務形態、所定労働時間や休憩時間も明示が必要です。労働者ごとの希望に応じて働き方を選べる場合には、その点も記載しておくことが安心につながります。

 

加えて必ず記載しなくてはならないのが、休日・休暇に関する情報です。こちらは週休制やシフト制といった通常の休日に加え、年次有給休暇の内容についても忘れずに付記してください。年次有給休暇を取得することはあらゆる労働者に与えられた権利であり、2019年4月に施行された働き方改革の関連法では、企業は有給休暇について年10日のうち必ず5日は時期を指定して取得させなくてはならないと定められています。パートタイム労働者の場合でも、勤務日数に応じて年次有給休暇が発生するため記載時には注意しましょう。

④賃金・昇給

労働者の生活に関わる賃金についての条件が、絶対的明示事項のひとつであることは言うまでもありません。特に支給額は、都道府県ごとに異なる最低賃金を参照しつつそれを下回らない額を記載しましょう。

 

また、支給額だけでなく、基本給の決定・計算方法、締切日や支払日などをしっかりと明示することも大切です。計算方法には、残業時や深夜の勤務の際などに考慮される割増賃金率なども種別に応じて補足してください。ちなみに、昇給に関する情報も絶対的明示事項のひとつとされているものの、こちらは企業ごとの評価基準を公表することの難しさから、絶対的明示事項の中では唯一書面ではなく口頭での明示でも構わないとされています。

⑤退職・解雇事由

絶対的明示事項に含まれる「退職に関する事項」とは、退職を希望する際に労働者がとるべき手続きや、定年制度・再雇用制度の有無などのことを指しています。退職届の受理に関して「何日前までに出さなければならない」といった就業規則が存在する場合、そちらも併せて記載してください。

 

これらにプラスして重要となるのが、解雇に至る事由の明示です。労働者を解雇するというのは極めて重い処分のため、納得の得られない方法や基準で行なえば裁判などに発展する場合もあります。そうした事態を避けるためにも、解雇に関する情報は契約開始の時点でしっかりと労働者と共有しておきましょう。

労働条件通知書の相対的明示事項

上記の絶対的明示事項の他に、条件に応じて記載が必要な相対的明示事項は以下の通りです。

  • 退職手当に関する事項
  • その他の臨時に発生する賃金についての事項
  • 労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
  • 安全、衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

なお、これらの項目に関して明示方法は必ずしも労働条件通知書である必要はなく、口頭での明示も可能とされています。とはいえ、トラブルの原因になりそうなものに関しては、きちんと書面で残しておくことが望ましいでしょう。

正社員以外の労働条件通知書

雇用契約を行なう労働者の雇用形態が正社員の場合、労働条件通知書は上記の項目に沿って作成すれば問題はありません。しかし、その他の雇用形態の労働者に対して労働条件通知書を交付する際には、以下のような個別の対応が必要となります。

パート・アルバイトの場合は必須事項が4つ増える

正社員が得られる待遇や福利厚生の中には、雇用期間に定めがあることを理由にパートタイム労働者には一部適用されないものがあります。よってパートタイム労働者に向けて労働条件通知書を交付する際は、「正社員と同様の条件が適用されるか」を明らかにする目的から、記載しなくてはならない項目が一部追加されます。

 

具体的には、上記の絶対的明示事項にプラスして「昇給」「退職手当」「賞与」の3つの福利厚生の有無と、そうした待遇の違いについて問い合わせることができる「相談窓口」の記載が必要となっています。これらの明示義務はパートタイム労働法第6条に定められており、労働者の不安や不満を解消するためにもしっかりと記載しましょう。

派遣社員の場合は「就業条件明示書」が必要

労働者派遣法34条では、派遣労働者に対しても労働条件の明示を義務づけています。しかし他の雇用条件と大きく異なるのは、派遣労働者の場合は労働基準法にもとづく労働条件通知書の他に、労働者派遣法にもとづく「就業条件明示書」の交付が必要となる点です。

 

この就業条件明示書の交付義務は、その労働者が籍を置いている派遣元の企業に対して発生するものとなっています。そのため、場合によっては派遣元の企業が就業条件明示書と労働条件通知書のふたつをひとまとめにし、「労働条件通知書兼就業条件明示書」というひとつの書類として交付するケースもあります。

 

なお、2012年の労働者派遣法改正では、派遣労働者に対して明示すべき事項として、

  • 派遣労働者本人の派遣料金
  • 派遣労働者が所属する事業所における派遣料金の一人あたりの平均額

の二点が追加されました。よって「派遣元は就業条件明示書を、派遣先は労働条件通知書をそれぞれ作成する」という場合、派遣先の企業は上記の二点を忘れずに記載しましょう。

労働条件通知書の注意すべきポイント

ここまでは労働条件通知書の「記載すべき内容」に関して解説してきましたが、ここからはその作成・交付時に企業側が注意しておきたいポイントを紹介していきます。労働条件通知書は企業が労働者へ一方的に交付するものではありますが、後で問題の原因になることのないよう以下の点を意識しながら取り扱いましょう。

書面以外の方法でも発行できる

これまで、労働条件通知書は書面での交付が必須とされてきました。しかし、2019年の労働基準法改正により、施行規則第5条のもとで現在は一部電子メールやファクシミリでの交付も可能となっています。

 

しかし、これらの方法での交付は対象者が希望する場合のみ可能であり、企業の都合ですべての労働条件通知書を電子化することはできません。あくまで状況に応じた措置であることを忘れないようにしましょう。また、電子メールなどの電気通信のみによる交付にはその他にも条件があります。具体的には、不特定多数が閲覧できるブログなどでの明示は不可とされており、必ず特定の受信者に宛てて送信された、印刷などの方法で書面として出力できる形式のものでなくてはなりません。

様式に決まりはないがテンプレートを使うのが無難

法律で交付が義務化されている労働条件通知書ですが、その書式には特に決まりは存在せず、明示事項さえきちんと記載されていれば企業独自のものでも問題はないとされています。しかし、一から書式を作成するのはコストがかかるため、企業として決まった形式を持っていないのであれば、インターネットなどから自社に合った形のものを探して導入することをおすすめします。特に、現在は厚生労働省や労働局のホームページから自由に利用できるテンプレートを数多く配布しているため、そちらを活用するのもよいでしょう。

発行後から5年は保管する必要がある

雇用に関するトラブルは、実際に労働者を雇用している間だけでなく、労働者の退職・解雇後にも起こり得ます。そのため、労働条件通知書の保管義務は「その労働者が現在も雇用されているかどうか」に関係なく定められています。具体的には、労働基準法第109条が定める書類の保管義務により、これまで企業は労働条件通知書を発行後3年間にわたって保管しなければなりませんでした。

 

しかし、2020年の法改正により、この保存期間はさらに5年へと延長されています。無論、その間に労働者との契約が終了した場合でもこの保管義務は継続します。また、トラブル発生などでいつ必要になっても構わないよう、労働条件通知書は期間を守ることに加え、保管方法についても気を配るようにしましょう。

労働条件通知書に関する罰則

労働条件の明示義務を果たさない企業に対しては、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科されます。その他、労働基準法第15条では、明示された労働条件が実態と大きく異なる場合、労働者はその時点で即座に契約を解除できると定められています。このように、労働条件通知書はその重要性の高さから、正しい形で交付されない事態を防ぐためにさまざまな罰則が存在しています。これらの法律に抵触しないためにも、労働者を雇用する際には、企業は迅速かつ正確に労働条件通知書の交付を行ないましょう。

労働条件通知書は「きちんと伝わる」ことが大切

労働条件通知書にはトラブルへの備えというだけでなく、労働者に自らの労働条件を納得してもらい、より安心して働いてもらうという役割も存在します。よって作成時に意識すべきなのが、「労働者にとっての分かりやすさ」です。

 

たとえば、日本では現在多くの外国人労働者や障がいのある労働者が働いており、当然彼らを雇用する際にも労働条件通知書の交付は必要となります。しかしその場合、通常の労働者と同じ内容で労働条件通知書を作成しても相手には十分に伝わりません。そのため、企業側は労働者のニーズに応じて母国語への翻訳や点字の付記といった、内容を理解してもらうための工夫を行なうことが大切です。そうした取り組みを通じて企業側の真摯な姿勢が伝われば、労働者もきっと企業を信頼して末永く働いてくれることでしょう。

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もし現時点で労働条件通知書の交付を行ないたいのであれば、エン・ジャパン株式会社が運営している採用ツール「engage」が提供するテンプレートの利用がおすすめ。求人広告が掲載できるengageでは、DM(ダイレクトメッセージ)やスケジュール管理といった便利機能も多く、かつ「無料」での利用が可能です。

 

労働条件通知書に関しても、「正社員用」と「有期雇用社員用」のふたつが存在しており、いずれもダウンロードしてすぐに使用することができます。その他にも、engageでは採用通知書や雇用契約書など、採用時に必要となる書類のテンプレートを豊富に揃えているため、採用活動をスタートしたばかりの方にとって大きな助けとなることでしょう。

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まとめ

労働者と雇用契約を結ぶ際に必須となっている労働条件通知書ですが、その内容は従業員の雇用形態や企業の実態によっても異なり、状況に応じて正しい内容で作成する必要があります。また、労働条件通知書はただルールに沿っていればよいというものではなく、受け取った労働者がきちんと内容を理解し、受け入れてもらえるような形で交付することが大切です。もちろん、その後の5年間の保管義務についても怠ってはなりません。

 

労働条件通知書の交付は、これから就業する労働者にとって、会社に対する印象を大きく左右するイベントでもあります。自社の人材を大切にするための最初のステップとして、あなたの会社でも労働条件通知書の交付にこの記事の内容を活かしてみてください。

 

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