雇用契約書とは?記載内容から作成方法まで解説<テンプレート付き>

「これから中途採用を始めるのに、雇用契約書についてよく知らないな…」とお困りではありませんか?

 

雇用契約書は、法的には作成する義務はありませんが、雇用契約書が無いことでトラブルに発展してしまうこともあるほど、実は重要な書類です。特に現代はSNSで色々な情報を収集する時代。何かマイナスな情報が広まってしまうと、会社のイメージダウンにもつながりかねません。

 

トラブルが起きてから「知らなかった」では済まされないこと。雇用契約書の正しい知識を学んで、しっかり理解しておくことはとても大切なことなのです。

 

この記事では、雇用契約書とは?といった基本的なことから、記載内容や作成方法まで解説していきます。初めて作成する方にもすぐ慣れていただけるよう、ダウンロードできるテンプレートもついていますので、ぜひ活用してみてください。

 

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雇用契約書とは

雇用契約書とは、雇用主(企業/経営者)と雇用される労働者の両者間で交わす契約書のことです。雇用契約に双方が合意したことを証明するものです。記載する内容は、「勤務場所」「業務内容」「勤務時間」「給与」「休日」など、内定者の労働条件です。

 

雇用契約書は法律上では、書面での交付は義務づけられていません。そのため口頭でも契約できますが、口頭で伝えたことによって、のちのち「言った、言わない」のトラブルになりかねません。そうならないためにも、きちんと書面にして2枚作成し、双方が署名または記名押印をしたものを、お互いで1枚ずつ保管しておくことが良いでしょう。法的にも「できる限り書面により確認する」ことが求められています。

労働条件通知書との違い

労働条件通知書との違いは、双方で交わすか、企業側から提示するものかの違いです。雇用契約書は、企業と労働者が双方で交わす契約書(交付義務はない書類)であるのに対して、労働条件通知書は、企業側が労働者に明示する書類です。立場の弱い労働者を保護するために交付が法律で義務づけられています。また労働条件通知書では、企業が労働者に対して明示しなければならない「絶対的明示事項」が定められています。(労働基準法第15条による)

労働契約書との違い

結論、雇用契約書と労働契約書に大きな違いはありません。「雇用契約書」は民法に書かれている契約の書面で、「労働契約書」は労働契約法に書かれている契約の書面です。内容としては同じような契約になります。

 

では労働契約書と雇用契約書は、結局どちらが必要なのでしょうか。結論としては、雇用契約書ひとつを用意すれば大丈夫です。これは、雇用契約書で、労働契約法と民法の双方の条件を満たすことができるからです。また、雇用契約書は企業と労働者の双方の署名捺印が必須となるため、合意の確認を取ることもできます。

雇用契約書に記載すべき内容

雇用契約書が労働条件通知書の内容も兼ねることができるとわかりました。それでは次に、雇用契約書には何を記載すべきなのか、その内容を見ていきましょう。 

絶対的明示事項と相対的明示事項

前項でもお伝えしたように、労働条件通知書には、記載する内容には必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」と、該当する項目があれば明示する必要のある「相対的明示事項」があります。

 

「絶対的明示事項」は口頭での説明だけでは認められないもので、必ず書面に記載しなければなりません。「相対的明示事項」は口頭でもよいとされていますが、トラブル防止のためにも書面化しておくほうが望ましいでしょう。その他にも、就業規則などの中で、重要な事項について記載している企業も多いです。たとえば、労働基準法では、減給や処分など罰則など制裁の規定がある場合は、従業員にきちんと周知することを求めています。

絶対的明示事項と相対的明示事項

出典:厚生労働省 兵庫労働局 労働契約等・労働条件の明示をもとにengage採用ガイドが作成

絶対的明示事項の内容

まずは、絶対的明示事項の内容を一つずつ説明していきます。上記の図に記載されていることを、分解していくと、下記のような内容になります。すべて働く上では欠かせない要素ですね。

・労働契約の期間

正社員で無期の場合は「無」、契約社員やパートなど契約を結ぶ期間がある場合はその期間

 

・就業場所

基本的に仕事をする会社や店舗などの住所

 

・業務内容

従事する仕事内容を書きますが、業務範囲が広い場合は1つでなくても構いません。

 

・始業時刻と終業時刻

決まっている場合はその時刻を書き、シフト制など決まっていない場合やフレックス制などの場合は、決め方や決まっていることだけでも構いません。

 

・所定労働時間を超える労働の有無

会社が決めた労働時間(所定労働時間)をオーバーして仕事をすることがあるか、可能性がある場合も書きます。

 

・休憩時間

所定労働時間内での休憩時間。労働基準法では、6時間以上の労働時間に対し休憩時間が義務づけられています。

 

・交替制勤務

労働者を2組以上に分けて就業させる場合、交替時間やそれぞれの始業・終業・休憩時間

 

・休日休暇

休日と会社で定められている休暇

 

・賃金計算方法や支払時期

年俸・月給・時給・日給などの賃金の計算方法や支払い方法の銀行振込、何日から何日までのものを何日に支払うかといった締切と支払時期

 

・昇給

昇給が無い場合は「無」、昇給がある場合はその基準や時期などを書きますが、書面での明示は不要です。

相対的明示事項の内容

次に、相対的明示事項の内容を一つずつ説明していきます。こちらは口頭の明示でもよいとされていますが、書面化することを推奨します。

・退職

定年退職の年齢、自己都合の退職の場合、いつまでに申出が必要なのかなど。また、解雇される理由など

 

・退職手当

制度として退職手当がある場合は、いつ、誰に、どのくらいの金額を、どのような方法で支払うか

 

・臨時の賃金や賞与

ボーナスや報奨金など臨時の賃金がある場合は、どのような基準で、いつ、どのように支払うか

 

・労働者負担となる食費、作業用品その他に関する事項

社員食堂などがあり、食費を社員に払ってもらう場合の決まりや金額、購入が必要な制服や作業着などの費用

 

・安全及び衛生

保護具の着用や機械の点検、災害の補償、健康診断の回数や時期、受動喫煙対策など、安全衛生について

 

・職業訓練

 会社で決められている職業訓練を受ける場合、その内容について

 

・災害補償及び業務外の傷病扶助

労働者が病気や怪我をした場合に、会社として行なう補償について

 

・表彰及び制裁

表彰や罰則など制度がある場合は書きます。

 

・休職

法律で決められている産休や育休などのほかに、会社独自の制度がある場合に書きます。

【正社員】雇用契約書の作成における注意点

正社員の雇用契約書を作成するときに注意すべき点は4つ。それぞれ簡単に説明しますので、しっかり確認していきましょう。

 

・該当の労働時間制の明記

働き方が多様化している昨今、フレックスタイム制や変形労働制などさまざまな労働時間制度がありますが、労働基準法でそれぞれ定められた規定があります。労働時間がその範囲内に収まっているかを確認することが大事です。

 

・転勤有無の明記

労働者の生活にかかわる部分なので、転勤の有無を記載します。ここが記載されていないのに、転勤を命じた場合は、トラブルになりかねませんので注意が必要です。

 

・配置転換有無の明記

転勤のように、人事異動や配置転換などで携わる業務内容が変わる可能性も同じです。「多様な職種への配属の可能性があるか」「専門職など特定の職種に配属になる可能性があるか」などを書いておきましょう。

 

・試用期間の明記

試用期間は、正式に採用するかどうかを見極める期間です。どのくらいの試用期間を設けているのか記載しましょう。個々も記載がないのに、入社後に試用期間があった、また期間も長いとトラブルに発展しかねません。応募者も気にするところなのでしっかり記載をしましょう。

【契約社員】雇用契約書の作成における注意点

・契約期間や契約更新有無の明示

契約の更新については、「自動的に更新する」「更新しない」「検討の上、更新する・しないを決める」といった決まりを書きます。

 

・更新の基準の明示

また、「契約満了時の経営状況によって判断」「労働者の能力・勤怠などによって更新の有無を判断」など、明確な判断基準がある場合は書く必要があります。

 

・期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

契約社員は、通算5年を超えて雇用となるときは契約社員から無期契約への転換希望が出せるようになりました。(労働契約法第18条・平成25年4月1日施行)また、雇用主は無期契約への転換希望に応じなればならないと定められています。 

【アルバイト・パート】雇用契約書の作成における注意点

 ・無期の雇用契約か有期の雇用契約かを明確にする

パート社員の雇用契約には、大きく分けて「無期」「有期」があります。「無期の雇用契約」は、原則労働者からの退職の申し出がない限りは定年まで雇用するものです。長期間仕事を続けてほしい場合は、無期の雇用契約を結ぶことが一般的です。

 

・就業規則、パートタイム労働法、最低賃金法に沿って賃金を決める

契約社員と同じく就業規則はパート社員にも効力があります。また、パートタイム労働法によって、正社員とパート社員の仕事や責任の程度などが同じ場合は、正社員よりも低い賃金とすることが禁止されています。さらに、各自治体で決められている最低賃金を下回ることも禁止です。

 

・始業時刻・終業時刻の記載について注意点を踏まえているか

シフト制などで、出勤の曜日・始業時刻・就業時刻が決まっていない場合は、「勤務の種類ごとの始業時刻と終業時刻、休日の決め方」を示すことは必要です。複数パターンを記載することもできます。

 

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雇用契約書の作成方法・手順

 さて、雇用契約書に記載するべき内容が分かったところで、実際に雇用契約書の運用に向けて、作成方法や手順についてお教えします。

雇用契約書の作成方法・手順

採用目的・計画を明確化する

まず大切なのは、採用する目的と計画を明確にすることです。ここをきちんと決めずにブレたまま採用を始めると、人によって認識が違っていたり、雇用契約書・労働条件通知書の内容を明確に記載できなかったりします。そうすると、雇用契約書を交付した後に「伝えられたことと違う」といったトラブルを生んでしまう可能性も。内定者に不安を与えたり、トラブルになったりしないためにも、採用を行なう前段階で「どんな人を、何の仕事で、どんな条件で」といった目的と計画を明確にしましょう。

雇用契約書・労働条件通知書のテンプレートを用意する

実際に、雇用契約書や労働条件通知書をイチから作るのは大変です。あらかじめ項目が記載されているフォーマットや雛形を活用して、自社用にカスタマイズしていくことをおすすめします。フォーマットにある項目に沿って、記載内容を確認しながら作成していきましょう。

 

雇用契約書・労働条件通知書を試しに記載してみる

フォーマットができたら、まずは実際に採用するターゲットを想定して、一度お試しで記載してみましょう。記載内容を頭では理解していても、採用を開始して内定が出てから初めて作成するとなると、意外と分からないことや曖昧なことが出てくるもの。その都度確認する時間が増えますし、ミスなどがあるとトラブルになってしまう可能性も。本番の前に練習しておけば、曖昧な部分や間違えそうな部分などを事前に確認することができます。スムーズに雇用契約書を締結するためにも、実際に記載しながら慣れておくことが大事です。

運用・管理方法を検討する

最後に、実際に雇用契約書をどのように運用・管理していくかを決めていきます。雇用契約書を渡すタイミングや、どのように回収して社内のどこに保管するのか、といった細かなフローを検討しましょう。交付時期などは法律上で特に決まっていませんが、一般的には、内定から入社までの間、あるいは初出社の日に取り交わすことが多いです。電子メールなどでのやり取りも可能になりましたが、書面で出力できることを大前提に慎重に行なうことが必須です。

 

また、雇用契約書は労働関係に関する重要な書類として、労働基準法第109条にて3年間保存しなければならないとされています。そのため、「労働者が退職した日から3年間」保管することが必要です。

まとめ

雇用契約書は、法律的には交付の義務はありません。しかし、雇用主から交付が義務づけられている労働条件通知書に比べると、「双方の署名捺印がある」「労働条件通知書の内容を満たすことができる」ことから、雇用契約書は作成しておいたほうがよいでしょう。

 

単に「決まりだから」ではなく、内定者や社員とのトラブルを回避するためのリスクヘッジにもなり、社員に安心して長く働いてもらうためにも必要なもの。それが会社への信頼感にもつながっていきます。

 

会社と社員のために、そしてこれから入社する人たちのためにも、雇用契約書についてしっかり内容を理解することは大切です。そして、ミスのないようきちんと作成できるようにしておきましょう。

 

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