エンプロイアビリティとは、どんな能力?今の時代に企業が意識すべき言葉を解説

「エンプロイアビリティ」という言葉を聞いたことがありますか?じつは、転職活動などにおける考え方のひとつとして、最近注目が集まっている言葉です。

 

ご存知の方も、被雇用者の「アビリティ(=能力)」を示す言葉だという知識だけで、「雇う側には関係のない話」という誤解を抱いている方も多いかもしれません。しかしこのエンプロイアビリティ、じつは採用活動を行なう雇用主や採用担当者の方にこそ理解しておいてもらいたい考え方です。

 

そこでこの記事では、今知っておくべきエンプロイアビリティという言葉の説明やその分類、取り入れるうえでのメリットなどを詳しく解説します。この機会に理解を深め、今後の採用活動に活かしてください。

 

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エンプロイアビリティとは

エンプロイアビリティとは、企業や組織に雇われて働く人の「雇われる力」を指す言葉です。言い換えるならば、雇用する側にその人を「『雇いたい』と思わせる力」と表現することもできます。

 

たとえば、不動産営業の職種で人材を雇用する場合、不動産の専門知識を持っている人といない人がいれば、多くの雇用主は専門知識を持っている人の方をより雇用したいと思うことでしょう。この場合、「不動産の専門知識」がエンプロイアビリティということになります。つまり雇用主や採用担当者は、エンプロイアビリティをもとに求職者や従業員の雇用を決めているといえます。

 

その他にも主体的に仕事に取り組む姿勢、そして課題解決能力が高いということも、エンプロイアビリティに該当します。エンプロイアビリティとは、決して特殊な能力ばかりではなく、幅広い能力を指す普遍的な概念なのです。 

なぜ今、注目されているのか

終身雇用が一般的とされていたかつての日本では、エンプロイアビリティは必ずしも重要な観点ではありませんでした。一度採用した人材を最後まで雇用し続けることが当たり前の終身雇用の社会では、多くの場合エンプロイアビリティは最初の採用選考時にしかその価値を発揮しないからです。

 

しかし近年、AIなどの技術の発達や社会状況の変化によって失業者が増加し、以前のような終身雇用はもはや過去のものとなりつつあります。また、その影響で労働者側の意識や雇用形態も多様化し、現在の日本は「今の職場で通用すればいい」という時代から「どの職場でも通用する能力が欲しい」という時代への大きな転換点にあるといえます。

 

そのため、これからの採用活動では、雇用する側も労働市場の存在を強く意識し、エンプロイアビリティのある人材を採用し、育成していくことが大事になっています。 

エンプロイアビリティの要素

厚生労働省が発表した「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について」では、エンプロイアビリティの内容を大きく三要素に分類しています。

 

ひとつめは、特に雇用後の成果に直結する「職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの」です。こちらには目に見える形で表われやすいという特徴があり、例としては国家資格や経験に基づく技術などが挙げられます。

 

次に、「職務遂行にあたり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの」があります。協調性や積極性など、仕事を行なう上での本人の姿勢がこれにあたります。

 

最後に、外部からの判断が最も難しいものとして「潜在的な個人的属性に関するもの」が存在します。こちらには仕事以前に個人が持っている動機や人柄、性格や信念、価値観といったものが含まれます。

 

潜在的な個人属性に関するものは、評価が難しいので、1つ目と、2つ目で評価するのが良いと言われています。

 参考:厚生労働省 エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について

エンプロイアビリティの要素の図

エンプロイアビリティの分類

 これまで紹介してきたエンプロイアビリティは、実はさまざまな視点からさらに細かくカテゴライズすることが可能です。分類の例としては「絶対的」と「相対的」、「外的」と「内的」などに分けることができます。

 

特にエンプロイアビリティを採用活動に取り入れるにあたっては、それらの分類をもとに各エンプロイアビリティの特性をきちんと把握することが効果的な活用につながります。なぜなら、エンプロイアビリティの中には「今の組織でこそ役に立つもの」や「時代によって変化するもの」など、効果が限定的なものや流動的なものも数多く存在するからです。

 

ここでは、そんなエンプロイアビリティの分類の定義と具体例を紹介していきます。

エンプロイアビリティの絶対性・相対性

エンプロイアビリティを考えるうえで気をつけるべきポイントのひとつが、その能力の重要性が「いつの時代でも変わらないか否か」という点です。というのも、エンプロイアビリティの中にはある仕事において時代に関係なく重宝する能力と、世の中や労働市場の状況によって重要性が変動する能力の二種類が存在しているのです。

 

以下の項目では、その二種類を「絶対的なエンプロイアビリティ」「相対的なエンプロイアビリティ」として分類しながら解説していきます。

二種類のエンプロイアビリティ

絶対的なエンプロイアビリティ

絶対的なエンプロイアビリティとは、必要性が時代や状況によって左右されない「いつでも十分な価値がある」能力のことです。機械やAIで代替することが不可能な技術や経験、不況下でも需要や労働環境の変わらない分野に関するノウハウなどがこれにあたります。

 

また、仮に時代によって環境が変化しやすい仕事の場合でも、「すべての業務の基盤となるような必須の専門知識や資格」は絶対的なエンプロイアビリティといえます。これらの能力は習得するだけでキャリア形成に一定のメリットをもたらすため、雇用主だけでなく労働者からもニーズの大きいものが多い傾向にあります。

相対的なエンプロイアビリティ

労働市場の需要と供給がその必要性に大きな影響を与える、「いつでも価値が同じとは限らない」能力が相対的なエンプロイアビリティです。社会の移り変わりが激しく、ニーズが多様化した現代では多くのエンプロイアビリティがこちらに該当します。

 

たとえば、ある仕事が最新設備の普及で自動化され、かつてその作業に必要だった能力の価値が下がるケースは決して珍しくありません。また、最新設備に関連したノウハウも、いずれもっと新しい設備が開発されれば同様に古びていってしまうでしょう。

 

しかし一方で、時代の変化がプラスに作用し、今まではそれほど求められていなかった能力にスポットが当たることもあるかもしれません。よって従業員のエンプロイアビリティを育成する際は、「今どのような能力が必要とされているか」「この先もその能力は必要とされるのか」といったことを考慮する必要があります。

参考:青山学院大学 山本寛研究室

エンプロイアビリティの内的性・外的性

よく誤解されがちなポイントなのですが、エンプロイアビリティは必ずしも「転職に有利な能力」ばかりを指すわけではありません。なぜなら、現在すでに雇用されている人が今の就業先で「雇われ続ける能力」もまたエンプロイアビリティのひとつだからです。

 

よって従業員のエンプロイアビリティを育成する際は、その能力が自社の中でのみ機能するものなのか、それとも他の就業先への転職に活きるものなのかをきちんと考える必要があります。ここではその二種類の能力を、内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティに分けて解説していきます。 

内的・外的エンプロイアビリティの図

内的エンプロイアビリティ

現在の就業先で、従業員がより長く雇用を獲得するための能力は内的エンプロイアビリティに分類されます。その従業員の社内での評価を高め、万が一の場合のリストラを回避する上でも効果を発揮するものが多いです。

 

たとえば、自社の商品に関する知識や、自社の固有の業務形態に関わるスキルはこちらに含まれます。雇用する側にとってもダイレクトに利益となりやすい能力であるのはもちろんのこと、日本では現在も終身雇用を理想とする風潮が残っており、内的エンプロイアビリティの育成には従業員側からも未だに根強いニーズがあります。

参考:青山学院大学 山本寛研究室

外的エンプロイアビリティ

先ほどの内的エンプロイアビリティが「勤続」に有利な能力だとすれば、外的エンプロイアビリティは「転職」に有利な能力です。現在よりも条件の優れた就業先への採用を勝ち取る上で効果を発揮するため、「どの会社でも役に立つ」ものが多い傾向にあります。

 

具体例としては、同じ業種であればどの現場でも必要になる国家資格や、各社共通で使用している設備・システムに関するスキルなどが挙げられます。社会の変化や技術革新の影響により転職市場が年々活発になっている現代において、外的エンプロイアビリティの重要性は今後より大きなものとなっていくことでしょう。

エンプロイアビリティのメリット・デメリット

雇用主がエンプロイアビリティの概念を人材の採用や育成に取り入れることには、実はメリットだけでなくデメリットも存在します。たとえ他社に先がけて従業員のエンプロイアビリティ向上を図ったとしても、それが結果的に自社の損失を生んでしまっては意味がありません。

 

よってエンプロイアビリティの活用にあたっては、導入がもたらす影響を正しく理解することが大切です。ここではそんなエンプロイアビリティのメリットとデメリット、またそのデメリットを回避する方法についても解説していきます。 

エンプロイアビリティのメリット

まず大きなメリットとして挙げられるのは、エンプロイアビリティの考え方を従業員に周知することで、従業員一人ひとりの能力を高めることができる点です。これまでは目の前の仕事にばかり集中していた従業員も、「雇われる能力を身につけることが雇用の安定化につながる」と知れば、より意欲的にスキルの向上に取り組むようになるでしょう。それは結果として業務における生産性を高め、会社の利益を増加させることにもつながります。

 

また、「エンプロイアビリティの育成に積極的な企業である」と対外的に表明することで、優秀な人材が集まりやすくなる点もひとつのメリットです。成長意欲の強い求職者は、必然的に自分のスキルアップを支援してくれる転職先を選びたいと考えます。よって現在の従業員にエンプロイアビリティ教育を実施することは、新しい人材の採用にもプラスの効果をもたらすことになるのです。

 

さらに、終身雇用の崩壊によっていつ転職の必要が生じるか分からない現代においては、働きながら自分の価値を高められる就業先は従業員にとっても非常に魅力的な環境です。そのため「転職に備えられる」という動機から、かえって従業員が定着することもあるでしょう。こうした現在雇用している従業員を囲い込む効果も、エンプロイアビリティの育成に取り組むメリットといえます。

エンプロイアビリティのデメリット

一方、エンプロイアビリティの向上には、従業員の流出が加速するというリスクもあります。エンプロイアビリティが高まって従業員が「魅力的な人材」になるほど、雇用主と従業員の関係性が対等なものになるからです。

 

魅力的な人材はそれだけ転職先の幅が広がるため、現在の就業先にとどめておくためにはより良い条件を提示する必要が生じます。よって従業員側も「雇ってもらっている」というよりは「自分の意思で雇われている」という考え方になり、もし今の就業先に不満があればすぐに転職を選択してしまうかもしれません。

 

そのため、エンプロイアビリティ教育に取り組む際は先んじて就業先としての魅力を高め、「たとえ選択肢が複数あったとしてもここで働きたい」と思ってもらえるような環境づくりを行なっておくことが大切です。逆に言えば、このデメリットは雇用する側に独自の強みや高い競争力があれば十分に防ぐことが可能だと考えることもできます。

「エンプロイメンタビリティの高い企業」とは

エンプロイアビリティ育成に取り組む雇用主の意識や精神を、「エンプロイメンタビリティ」と呼びます。したがって「エンプロイメンタビリティの高い企業」とは、人材流出のリスクを承知の上で従業員のエンプロイアビリティ向上に積極的に取り組む企業のことを指します。

 

エンプロイメンタビリティの高い企業は、従業員を現在の労働力として雇うだけでなくその将来まで見据えて教育を行なっているということであり、そうした企業は従業員や求職者から見ても非常に魅力的な就業先となります。よってエンプロイメンタビリティの高い企業は、それだけ人材を「雇用する能力」が高い企業であるといえます。

 

これからの時代、優秀な人材を獲得して競争力を高めるためには、雇用する側もエンプロイメンタビリティの高い企業を目指すことが求められるでしょう。 

まずは「社会人基礎力」を身につけるところから

エンプロイアビリティ導入の第一歩として、まず従業員に身につけさせるべきなのが「社会人基礎力」です。社会人基礎力とは、経済産業省が提唱する「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」であり、大きく「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三要素で構成されています。

 

中でも「前に踏み出す力」は、さらに主体性・働きかけ力・実行力に分けることができます。これらは物事や他者に対して自分からアクションを起こし、目標を実現していく上で役立ちます。

 

また、「考え抜く力」は課題発見力・解決力・創造力へと細分化できます。現状に疑問を持ち、課題を発見して解決する上で必要となるのがこれらの能力です。

 

そして、「チームで働く力」は発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコントロール力によって成り立ちます。さまざまな人とコミュニケーションをとり合い、協力して仕事に取り組むための力がここに含まれます。

 

終身雇用を保証することの難しい今の時代にあって、雇用主が従業員にできることはこの「社会人基礎力」と職種・業種ごとのスキル、すなわちエンプロイアビリティを身につけさせることに他なりません。従業員一人ひとりにどれだけのエンプロイアビリティを持たせることができるかが、これからの社会における競争力を大きく左右するのです。

社会人基礎力の図

en-gage.net

最後に、エンプロイアビリティをチェックできるシートのURLをご紹介します。こちらも活用しつつ、ぜひ従業員のエンプロイアビリティ向上に取り組んでみてください。

まとめ

一見すると難しい用語に思える「エンプロイアビリティ」ですが、実態は決して複雑なものではなく、それどころか現代の採用活動において基本となるような考え方であることが分かります。

 

また、雇用する側にとってエンプロイアビリティはただ導入すればよいというものではなく、その内容や与える影響をきちんと把握した上で育成に取り組むことが重要となります。

 

雇用を取り巻く環境が大きく変化を続ける中で、エンプロイアビリティを考えることはより優秀な人材を獲得・育成するための必須条件となっていくことでしょう。そのことを理解する上で、この記事がお役に立てれば幸いです。

 

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