絶対評価・相対評価とは?人事評価における強みや短所も徹底解説

従来、日本のビジネスの人事評価制度は、年齢とともに給料や役職が上がっていく「年功序列」が主流でした。しかし、これはあくまで経済が右肩上がりに上がっている時のモデルです。失われた20年という経済低迷を続ける中で、昇給や昇格の基準についても、社員一人ひとりの年齢ではなく仕事ぶりに応じて決める「成果主義」が徐々に浸透していきました。そこで、「個々の仕事をどう評価するか」の判断方針として注目されたのが、相対評価と絶対評価という2つの評価方法です。

 

今回は「相対評価」と「絶対評価」の概要や、双方のメリット・デメリット、昨今の人事評価制度のトレンドなどをご紹介します。ぜひ貴社の評価制度、組織運営にお役に立てれば幸いです。

 

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相対評価とは?

相対評価とは、個人の成果だけで判断するのではなく、他の人と比較をして、良かったのか、そうでなかったのか評価することです。そのため、大きな成果を出していたとしても、他の人がそれ以上の成果を出していた場合は、評価が高くなりにくくなります。また、逆にそこまで成果を出していなかったとしても、他の人がそれ以下の成果だった場合、評価が高くなる場合もあります。属する組織や集団の中でどの位置づけの成果になるのか比較しながら評価をするのが、相対評価になります。

絶対評価との違いは?

相対評価と反対の意味で使われる絶対評価とは、「設定された目標をどれだけ達成できたか」を基準に評価することです。属する組織や集団の成績に、個人の成績が左右されないところが特徴と言えます。つまり、立てた目標を達成していれば評価されますし、目標が達成できていなければ、周りが達成できていなかったとしても評価されないということです。また評価基準をどこに置くかも自由に設定ができます。たとえば、目標だけではなく、プロセスも目標に含むことなどが可能です。

相対評価のメリット

他の人と比較を通じて評価する相対評価は、どんなメリットがあるのでしょうか。下記で説明していきます。

評価する側の負担が少ない

1つめのメリットは、「評価する人の負担が少ない」という点です。相対評価では「組織や集団の中で成績上位10名が評価A、11~30位が評価B、31位以下はC」というように集団内で比較して評価基準で考えるため、絶対的な基準を用意する必要がありません。組織や集団のなかでどこに位置しているのかは基準を設けなくてもおのずと決めるため、評価はしやすくなります。 

人件費の予測を立てやすい

2つめのメリットとして挙げられるのが、「人件費の予測を立てやすい」ことです。相対評価では評価A、B、Cといった各ランクの分布があらかじめ決められているため、社員全員がどれだけすばらしい成績を出したとしても、莫大なボーナスが発生したり昇給額が膨れ上がったりすることはありません。決められた原資を分配しやすいと言えるでしょう。

集団内の競争を活性化できる

3つめのメリットとして「集団内の競争を活性化できる」ことも挙げられます。相対評価では上位成績を取れる人数が限られているため、良い成績を収めるには他の人より上位に入る必要があります。結果、集団内の個が切磋琢磨し、成長に繋がりやすいという見方もあります。相対評価は個々の評価のしやすさや人件費の予測の立てやすさ、集団内の競争性を刺激する点も含め、「運営側の負担を最小限に抑えやすいところ」が一貫したメリットといえるでしょう。

相対評価のデメリット

大きなデメリットとして挙げられるのが、「評価基準が集団のレベルに左右される」という点です。たとえば他企業に転職したときに「相対評価では良かった」と伝える場合、周りはどのような成果だったのか、どのようなレベルの人が属していたのか説明しなければ正確にその人が優秀かどうかを判断することができません。なぜなら、あくまで他者と比較を通じた評価なので、目標を達成できていなくても、周りの成績も低ければ、相対評価は高くなる可能性があるからです。集団の外部の人にとって、当人の評価がわかりにくいところが欠点といえるでしょう。

 

また、評価基準が集団のレベルに左右されるため、いつもより仕事を頑張っても、成績上位を取る優秀な社員が大勢いる集団の中では、特別高い評価にはなりません。逆に、意欲がない人ばかりがいる集団の中では、あまり努力をしなくても成績上位に入れてしまうこともありえます。このように、周囲の人材の実力によって本来と異なる評価がついてしまうリスクがあるところが相対評価のデメリットといえます。

 

さらに、契約や売上などの「目先の結果」だけが成績に反映されやすいところもデメリットのひとつ。個々のチャレンジ精神を抑制してしまう他、個々がワンマンプレイに走り、チームの一体感を阻害しかねないところも注意点です。 

絶対評価のメリット

1つめのメリットとしては、評価基準が明確である点が挙げられます。「設定された課題をこれだけクリアすれば、このくらいの成績になる」と目算も立てやすいため、社員のモチベーションの維持や向上に繋がりやすいところも利点のひとつです。

 

また、絶対評価は評価基準を自由に設定できるため、営業成績のような「数字でわかる成果」だけでなく、一人ひとりの成長過程にも評価を与えやすくなります。評価の査定を通して社員の頑張りを見直したりすることもできるので、コーチングにも役立つでしょう。

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絶対評価のデメリット

人件費の見通しが立てにくい点です。絶対評価では目標達成者の人数を事前に決められないため、社員の頑張りによっては人件費の総額が増える可能性があります。

 

また、絶対評価には評価側の負担が大きいという欠点もあります。評価基準を自由に決められる絶対評価では、部下の行動を把握し正しく評価するために、コミュニケーションを多くとる必要があります。また、そもそも評価基準の設定は簡単ではありません。絶対評価は主に評価者の判断が指針となるため、場合によっては私情が入ってしまうリスクもあります。たとえば、難易度の高すぎる目標にしてしまったり、逆に達成が難しくない目標設定になってしまうことも。

 

絶対評価のほうが部下のモチベーション維持や成長促進に優れているという面はありますが、ただ導入するだけでは「めちゃくちゃな評価基準に沿って給与が決まってしまう」「上司と仲が悪くてまともに評価してもらえない」といった評価体制の崩壊を招いてしまうため、注意が必要です。

 

ここで改めて相対評価と絶対評価の違いをまとめてみました。下記の図を参考にしてください。

相対評価と絶対評価の違い

注目度上昇!ランクづけをしない絶対評価「ノーレイティング」とは

 絶対評価の評価基準の設定は、導入するうえで特に難しい問題です。この課題に向き合う一案として、あえて評価の際に明白なランク付けをしない、「ノーレイティング」という手法もあります。ノーレイティングとは、社員一人ひとりをランク付けするのではなく、個人の「目標設定と達成度」の歩みに向き合うことで段階的に評価する絶対評価の手法のひとつです。

 

たとえば社員が「〇日までにこれくらいの仕事をできるようにしたい」と目標を設定したら、「期間中に目標を達成できたかどうか」だけでなく、「どのように達成したのか」「達成できなかった場合、どこまではできるようになったのか」「達成しなかったが他の目標を立てた場合、どんな効果があったのか」など、目標と過程を細かく評価します。同様に、社員に短期・中期・長期の目標も設定してもらい、成長と結果をチェック。個人の成長をしっかり見守る「専属コーチング」のような評価方法といえるでしょう。

「結果だけ」で評価しない、ノーレイティングの魅力

ノーレイティングのメリットは、主に2つあります。まず社内のコミュニケーション、特に評価する側の上司と、評価される側の部下のコミュニケーションが綿密になりやすい点です。

 

なぜなら、個人の目標の過程と結果を判断するノーレイティングを進めるには、双方のコミュニケーションが不可欠だから。目標の進捗確認や見直しなどを行なう個人面談は月に1度以上の頻度で行なうことが好ましいため、上司と部下の距離が自然と近づき、意見交換などもしやすくなります。

 

また、ノーレイティングは仕事の結果だけでなく過程まで評価されるため、社員のモチベーション向上に繋がるところもメリットのひとつ。目標設定や修正などを評価者と一緒に行なえることから、個人の成長の促進に役立つところも魅力といえるでしょう。

相対評価と絶対評価。人事評価制度では、どちらが良いのか

相対評価と絶対評価にはどちらにもメリットがありますが、昨今は以下の理由から、絶対評価を導入する組織が増えています。

  • 「個を尊重する」という考え方が浸透したため、相対的な評価に不満が生まれやすい
  • 評価の公平性が重視されやすい

絶対評価では、「なぜ自分がそのように評価されたのか」という要因が、自分自身に起因しているケースが主です。対して相対評価は「他人が自分より優秀だったから、今回は評価Bになった」「とても頑張ったが上位の枠が決まっているから、最高評価が取れなかった」など、個人の頑張りではどうにもできないところで評価が決まってしまうことも珍しくありません。このように、相対評価は「個の努力」をなかったものとして切り捨ててしまうリスクがあることから、絶対評価の導入に舵を切る企業が増えています。 

絶対評価を導入すれば会社が必ずよくなるわけではない

ただし、絶対評価を導入すれば会社が必ずよくなるわけではないことに注意が必要です。絶対評価を組織で機能させるためには、まず社員が納得できるような評価基準を用意する必要があります。加えて、評価基準に沿って部下を評価するにも時間がかかるため、上司などのミドルマネージャーに時間的余裕があるかどうかを確認しなければなりません。最後に、評価基準に沿って成された評価が本当に正当だったのかを再確認することも大切です。

 

また、ノーレイティングのような「明白なランク付けを行なわない評価」をする場合は、社員一人ひとりの目標を見守る必要があるため、マネジメント側に求められる時間的リソースや責任がさらに重くなります。ミドルマネージャーを始め、評価者側の負担が極端に重くならないかどうか配慮する必要があるでしょう。 

評価体制を機能させるために

このような確認を怠ると評価体制がうまく機能しにくくなり、形骸化が進んでしまいます。結果、「きちんと頑張っているのに評価されない」「最近目標に手を抜いているけどなぜか評価は落ちていない」というように、部下の評価が正当ではなくなってしまいかねません。

 

それだけではなく、評価する側の上司にとっても骨折り損になってしまいます。機能不全の評価体制を形だけでも動かすために部下と頻繁に面談しなければならず、上からの「部下のやる気をあげなさい」「褒めて伸ばしなさい」という一方的な指示に沿って場当たり的なマネジメントを繰り返すうちに、部下の成長を阻害してしまうリスクも否めません。

 

人事評価の見直しをする際は、「どんな評価方法を使うか」を考えると同時に、「誰が、どれくらいの頻度で、どのように評価していくか」を総合的に考えていく必要があるでしょう。

正しい評価が、従業員の活躍には不可欠

人事における「評価」は、社員の今後のキャリアまで左右しかねない、重要な部分です。また、納得感のいく評価をされているか否かによって仕事への意欲も大きく左右されます。長期的な不満を抱えた場合は、退職や人材流出につながってしまうこともありえます。

 

だからこそ「評価制度に向き合い、見直していくこと」は、組織を運営していく上でとても大切です。絶対評価と相対評価、いずれの評価体制を選ぶにしても、「あなたのことをきちんと、正当に評価します」という姿勢を組織全体で示していくことがポイントとなります。

 

社員が「正しく評価されている」という実感が持てる環境を作り、皆がモチベーション高く、かつ満足感を得ながら働けるようにしていくこと。これが、組織の人事評価の重要な役目といえるでしょう。

まとめ

「相対評価」と「絶対評価」の概要や、双方のメリット・デメリット、昨今の人事評価制度で注目を集めつつあるノーレイティングの魅力などをご紹介しました。整備された人事評価体制は社員のやる気を引き出し、成長させ、組織を活性化させてくれます。「社員のモチベーションがあまり高くないようだ」「社員が評価に不満があるようだ」と感じた際は、一度評価体制の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

 

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