人事考課とは?意味や目的、人事考課に欠かせない3つのポイントを解説

「人事考課」と一口に言っても、職種や業務内容をはじめ、時代の潮流や世代間によっても評価するポイントは大きく異なります。成果として分かりやすい実績だけではなく、目に見えない頑張りも加味する場合もあり、非常に難しい業務と言えるでしょう。

 

評価を行なうには様々なアプローチがありますが、より適切な手段・方法を採用することで、単純に評価をするだけではなく、従業員のモチベーションアップにもつながります。さらには、組織や企業そのものの成長・発展へと繋げることも可能です。

 

そこでこの記事では、人事考課について解説します。用語の説明からうまく従業員のモチベーションをアップさせる方法も紹介します。「どうすれば適切な評価ができるのだろう?」「考え方のポイントや注意すべき点とは?」などについて知りたいとお考えの皆様にとって、この記事が参考になりましたら幸いです。

 

この記事は2021年4月13日に公開した記事を再編集しています

 

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人事考課とは?

人事考課とは、スキルや業務実績、職務態度などの基準をもとに従業員を評価することです。評価結果によって従業員の給与やキャリアプランが決まることが一般的なので、組織にとって人事考課は重要な役割を担っていると言えます。

 

半期に一回、1年に1回など評価をする頻度は企業によって異なりますが、一定の期間内で従業員を評価します。

人事評価との違いは

なお、近い言葉で「人事評価」という言葉があります。
 
人事考課は前述したように、スキルや業務実績、職務態度などの基準をもとに従業員を評価することですが、人事評価は社員のスキルアップや成長、業務遂行能力を上げるための教育や人事異動なども含まれており、より広義な意味合いで使われます。

●人事考課
スキルや業務実績から昇給、昇進の評価をする

●人事評価
社員がより成長するための教育や環境(業務や部署)を評価する

ただ実際には、多くの企業で「人事考課/人事評価」を同義で使用しており、実質同じものと捉えても問題ありません。

人事考課の目的

昇給・賞与額を決定するため

1つは、従業員の昇給や賞与、あるいはインセンティブといった、賃金を支給する上での査定を目的としています。会社が従業員それぞれに対して業務上の成果・実績や日頃の頑張りなどを公平に審査し、金銭やポジションを付与することで評価をします。

頑張りが正しく、給与、昇給、賞与などに反映されれば、意欲が上がるのですが、逆に「頑張っているのに昇給しない」「成果が出ていない人と賞与額が同じ」となってしまうと、従業員のモチベーションは下がってしまう可能性があります。

正しく、成果を評価することは組織の成長を考えるうえでも非常に大切です。

 

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従業員の成長を促すため

人事考課でただ評価を下して終わりであれば、それは非常にもったいないと言えます。なぜなら、人事考課のもう一つの目的は従業員の成長を促すことだからです。従業員の行動を振り返り、良かった点を賞賛し、逆にもう少し強化すべき点、期待している点を伝えることで、次の行動変化を促すことも可能です。

振り返りの機会として活用することで、従業員のモチベーションを高め、成果を出せるように気持ちを向かせてあげるのも重要な目的です。会社は人材でできているので、従業員が成長することが会社の成長につながります。

人事考課制度を考えるうえで大切なこと

人事考課を行なうにあたっては、軸となる一定の基準を設けることが大切です。また、従業員に対し会社としての明確な評価基準を提示するためにも、人事考課を制度化することが大事です。

人事考課制度として明確な社内ルールを設けることで、評価を適切かつスムーズに運用する事が可能になりますし、評価の納得感にもつながるでしょう。

属人的な評価方法ですと、上司の好き嫌いで評価が決まってしまう可能性もあり、不満が出やすくなってしまいます。具体的にどのようなことを評価とするのか、プロセスを評価するのか、成果を評価するのか、また他の要素を評価するのかなどを決め、それに沿った人事考課が重要です。

さらには、評価結果のフィードバックや面談などの機会を通じて、上司・部下とのコミュニケーションを図ることも可能です。今後のキャリアプランを立てたり、目標設定を行なったり、場合によっては従業員の抱える悩み事を解決に導いたりするなど、何かとメリットが大きいと考えられます。

人事考課に欠かせない3つの評価ポイント

人事考課を制度化するということを説明しましたが、人事考課を実施する際は、考課の視点として特に適していると考えられるものを設定し、そのもとで公正な評価を下していく必要があります。

一般的に人事考課を行なう際は「業績考課」「能力考課」「情意考課」の3つを意識することが重要です。ここでは、それぞれについて解説していきます。

人事考課の3つの要素の図

目標到達度と結果までの過程を評価する「業績考課」

まずは「業績考課」です。業績考課は、業務の成績に関する評価です。

ポイントは、結果としての成績のみならず、どのようにその成績に至ったのかというプロセスも評価対象になるということです。もちろんここは、会社によって濃淡はある部分です。プロセスが良くても成果につながっていなければ、全く評価されない会社もあるでしょうし、成果が出ていなくてもプロセスが良ければ、評価される場合もあります。どのバランスで評価するかは各社によります。

たとえば、営業職などは、組織が設定した目標に対する達成度を判断材料とする場合もあるでしょう。また、ノルマのない職種であれば、上司や組織などが目標を提示するのではなく、従業員自らが定めた目標に対して評価を測定する方法もあります。この場合、自ら設定したハードルをクリアするという成長意欲の醸成が期待できるでしょう。

いずれにしても、従業員個人の仕事に対する積極性を向上させることで、組織全体の能力向上にも繋がるとともに、結果として企業全体の業績向上が見込めます。

業務を行なう上で身につけた能力を評価する「能力考課」

続いて「能力考課」です。能力考課は、業務上必要な知識やスキルに対する評価で、同一の職務において難易度やプロセスなどを重視する場合に用います。

能力考課には、業務上必要な資格や技能を評価する「保有能力」をはじめ、保有能力を発揮する際のパフォーマンスを評価する「発揮能力」、また、将来性や成長性を見込んだ「潜在能力」などがあります。たとえ同じ職務でも、よりレベルの高い業務や職務プロセスが難しいものをやり遂げた従業員こそ高く評価すべきである。そうした考えがベースにある査定方法と言えるでしょう。

なお、潜在能力については実際に会社の業績向上に繋がるかどうか不確かな部分も多いため、あえて査定のポイントに含めない企業もあります。ここも前述したように企業によって評価の濃淡が異なる部分です。どこを一番評価するのが合うのかは、会社によって異なります。

仕事に対する考え方を評価する「情意考課」

情意考課は、簡単に言えば考え方のことです。日々の業務に対する取り組み方や向き合い方などに対する評価で、業績考課や能力考課と異なり人間性の部分を重視するのが特徴です。規律性・積極性・責任性・協調性など、様々な項目から多面的・総合的に判断します。

たとえば、「規律性」であれば、組織やチーム内のルールに則って行動できているかという部分を見たり、「積極性」であれば、言われたことだけではなく、自ら業務を見つけ、提案したうえで行動できているかなどを見ます。

「規律性」「積極性」など、評価対象になる要素を言語化しておくと、非常に評価しやすくなります。逆にそうしないと、上司の印象、好き嫌いで評価されてしまう部分があり、納得感に欠けてしまうこともあるので注意が必要です。

人事考課で重要なのは被考課者(従業員)の「納得感」

人事考課で重要なのは納得度

人事考課をするうえで、決して忘れてはならない重要なポイントは、査定される従業員の「納得感」です。ここがズレてしまうと、評価後の従業員の意欲が下がってしまい従業員にとって、ひいては組織にとってマイナスになってしまいます。

そうした事態を回避するためにも、評価のフィードバックを行なう前にまずは従業員本人の思いや考えなどを確認する必要がありますし、そもそも日頃からしっかりコミュニケーションを取り、メンバーのことを理解しておくことが必要です。

どのような意図で業務を行なってきたか、そのプロセスは結果と比例しているか、自身の強み・弱みについて自覚しているかなどについてある程度ヒアリングし、その内容を踏まえた上で評価結果を伝える。納得が得られない場合はどうやって解決していくのか道筋を提示するところまで対応していかなければなりません。

納得感がある人事考課をするためには目標設定が大事

では、被考課者が納得するための人事考課はどのように行えばいいのでしょうか?納得感がある人事考課をするためには以下の2つのポイントを抑える必要があります。

●被考課者が納得いく目標を立てる

●フレームワークを使って測定可能な目標を立てる

もちろん期末の面談も重要ですが、期初の目標設定をないがしろにしてはいけません。

被考課者が納得いく目標を立てる

人事考課で不満が出る要因は、考課者(上司)から被考課者(部下)へのフィードバックに納得ができないことが挙げられます。しかし、納得感がある人事考課を行うためにはフィードバックだけを改善するのではなく、目標設定の段階から工夫をする必要があります。

人事考課では前述した「業績考課」「能力考課」「情意考課」の3つをもとに評価します。

「期初に立てた目標は業績に貢献できる目標なのか」

「半期後に達成可能な目標なのか」

「将来的な自己成長につながる目標なのか」

「キャリアプランにつながる目標なのか」

「達成するためにやる気が出る目標なのか」など

目標設定するタイミングで考課者(上司)が被考課者(部下)に上記の意思確認を行う必要があります

「目標が上から落りてきた」

「達成が難しそう」

「なぜこの目標なのか腹落ちがない」など

懸念点や不信感が残ったまま期が始まってしまうと、人事考課面談の時に不満につながってしまいます。そのため、納得感がある人事考課を行うためには被考課者が納得いく目標を立てる必要があると言えます。

フレームワークを使って測定可能な目標を立てる

では、納得感がある目標を立てるにはどのようにすればいいのでしょうか?おすすめなのはフレームワーク「SMART」を活用した目標設定です。

◆フレームワーク「SMART」とは

Specific(具体的に)
具体的に目標が設定されている


Measurable(測定可能な)
目標が定量的に設定されている


Achievable(達成可能な)
実現不可能ではなく、期間内に達成できる目標になっている


Related(関連した)
設定した目標が自分や部署、会社の目標に関連する内容になっている


Time-bound(期間)
いつまでに目標を達成するか、期限が設定されている

「具体的に」「測定可能な」目標を立てることで期末時点での達成度合いが明確になり、評価基準が不明といった不満が出にくくなります。また、「期間」内で「達成可能な」目標はモチベーションの維持にも繋がるため、「SMART」は目標設定におすすめのフレームワークと言えます。

あってはならない正当ではない評価

原因は担当者の「好き嫌い」?

多くの企業において人事考課を行なう考課者は、上司ではないでしょうか。そのため、意識的ではないにせよ正当な評価ができないということは、十分にあり得ることです。主な要因は「好みの問題」が挙げられます。具体的には、自分が気に入らない従業員に対しては必要以上に厳しい評価を下すとともに、気に入っている従業員には高評価をつけてしまうというケースです。

 

その他、見た目の第一印象や事前情報からの先入観、共通する経験や考えが多いなどの親近感からくる過大評価なども正当な評価を妨げる要因になりやすいため、評価を行なう際には最大限の注意が必要です。

評価基準を策定することが大事

客観的にも明らかに正当ではない評価では、従業員から信頼を得ることはできないでしょう。それどころか、従業員のモチベーション低下を引き起こし、ゆくゆくは企業全体の業績低下を招きかねません。

 

だからこそ考課者は、個人的な感情を抜きに評価基準に則った第三者視点から公正な査定を行なう必要があります。ただし意識しましょうというレベルでは防げるものではありません。そのため、評価項目を明確に設定しておくことが大事です。先ほど述べた情意考課などは特に好き嫌いが入り込みやすい部分です。それを避けるためにも、考え方を構成する項目を分解して設定し、各要素を事実から評価する必要があります。

 

そういう意味では、評価するポイントをすり合わせる必要があることはもちろん、考課者もまた責任ある者として人間的に成長する必要があるかもしれません。評価される側だけでなく「評価する側」の育成も注目されています。最近では外部が主催する人事セミナーなどもあり、積極的に活用する企業も増えています。

適切な評価をするためにやっておきたいこと

企業側が従業員に対して、寸分のズレもなく正しい評価を行なうのは非常に難しい作業です。だからこそ、少しでも適正値に近づけるべくやっておきたいことについてご紹介しましょう。

定期的な面談を行なう

人事考課を行なうタイミングとしては、年度末の1回か多くて上半期・下半期の2回という企業が多いのではないでしょうか。その場合、評価を考慮する期間が半年〜1年と非常に長いため、小さな成果や従業員の僅かな変化はどうしても見落としてしまいがちです。

 

こうした見逃しを防ぐには、部下が日頃何に取り組み、どのように頑張っているか、しっかりと適切なプロセスは踏めているのかなどについて、日頃から把握しておく必要があります。そのため、月に1回などの定期的な面談が効果的です。短いスパンで進捗をこまめに把握し、その都度適切なサポートをしていくことで、納得感の高い評価に繋げていきましょう。

360度評価を導入する

また、部下、メンバーがどのように周囲と関わり、そのふるまいが組織や業績にどう貢献しているかを理解するには、360度評価が有効です。

 

360度評価とは、様々な立場の関係者複数名が1人の従業員について評価するもの。評価は通常、一人の上司によって行われますが、360度評価では上司だけでなく同僚や部下、場合によっては他部署の従業員など、それぞれの関わり方ポジションに応じて評価します。

 

様々な視点から多面的に評価することにより、上司だけでは気づけなかった従業員の活躍を知ることができる他、上司が物足りないと思っていることでも周囲からは高く評価されているなど、多くの気づきを得ることができます。より客観的な判断の大きな参考になるため、納得感の高い評価をするためには、メリットの大きい施策と言えるでしょう。

フィードバックまでしっかり行なうことが大事

あらゆる観点からより適切な評価を行なったとしても、そこで終わってしまってはあまり意味がありません。その結果を従業員にいかに前向きに捉えてもらい、さらなる成長に繋げてもらうことこそが重要なポイントです。そのためにも、従業員に対して納得度の高いフィードバックを行ない、さらなる目標の設定や課題の解決に活かしてもらう必要があります。

 

これまでできていた部分・不十分だったと思われる部分を客観的に伝え、次回に期待していることや伸ばすべき部分を明確にした上で、モチベーションの高い状態を維持することが大事です。従業員が「もっと成長したい!」と自発的に思える状態にできれば、成功と言えるでしょう。

人事考課のポイントの図

まとめ

職種や業務内容はもちろんのこと、時代の流れによって評価するポイントは大きく異なります。また、世代によっては結果の受け止め方にも違いがあるでしょう。そういう意味では、明確な基準を設定することも大切ですが、状況に応じた柔軟な姿勢も必要です。

 

本来は従業員の昇給や賞与額を決定するための「人事考課」ですが、ゆくゆくは組織の成長や会社全体の業績向上に繫がる重要な取り組みです。単なる評価で終わらせず、いかに育成につなげていくか。その視点を持つことが、より有意義な人事考課につながるはずです。

 

納得度の高い評価によって従業員のさらなる成長意欲を引き出すなど、より有効な運用を心がけましょう。

 

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