ダイバーシティとは?これからの企業、組織に必要な考え方を徹底解説

時代が進むと同時に消費者のニーズはどんどん複雑化し、様々なサービスや商品に対しても、フレキシブルさが求められるようになってきました。またコロナ禍の影響もあり、経済成長が厳しくなっている昨今において、企業として新たな価値を生み出す姿勢がなければ事業の発展も難しいでしょう。そこで重要なのが、幅広い人材の活用を通じた、豊かな発想力の創造です。本記事では、現代を生き抜く企業となるためには欠かせない「ダイバーシティ」の考え方について、詳しく解説していきます。

 

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ダイバーシティとは?

ダイバーシティとは、多様な人材を活かすことにより、企業としての成長促進や成果を生み出す戦略のことです。言葉そのものの意味合いは「多様性」ですが、ビジネスシーンでは多くの場合で「ダイバーシティ経営」という使われ方がされており、基本的には経営戦略の1つを指すものとされています。国籍・性別・年齢・学歴などに関わらず、多様な属性の人材を活用することで、社会に新たな価値を創造しようという考え方です。

 

ダイバーシティは、『表層的ダイバーシティ』『深層的ダイバーシティ』の大きく2種類に分けられます。表層的ダイバーシティは、性別、年齢、人種など外見で判断しやすいものを指します。一方で深層的ダイバーシティは、考え方、趣味、習慣、スキル、学歴など外見では判断しにくいものを指します。以前はダイバーシティというものは、ジェンダー、人種、年齢などの表層的ダイバーシティを指していましたが、近年は深層的ダイバーシティも含むようになり、その概念は広がってきています。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティと合わせて使われるのが、インクルージョンという言葉です。ダイバーシティは多様性を意味する言葉で、インクルージョンは、包含するという意味を持つ言葉です。つまり、ダイバーシティ&インクルージョンとは、多様性を受け入れ、尊重し、それぞれの良い点を取り入れる考え方を指します。近年よく耳にするようになった、『ダイバーシティ経営(ダイバーシティマネジメント)』という言葉は、企業がダイバーシティ&インクルージョンの考え方を取り入れて経営を行なうことを指します。

ダイバーシティが注目される背景

近頃「ダイバーシティ」という言葉が注目されている背景には、どのようなものがあるのでしょうか。『少子高齢化による働き手の減少』『ビジネス環境の変化への対応』『多様な雇用形態・働き方への対応』の3つが関係していると言われています。

少子高齢化による働き手の減少

少子高齢化が進む日本において、大きな問題となっているのが労働人口の減少です。労働力の売り手市場が続き、中小企業を中心とした様々な法人で人手不足が課題になっています。特に日本の法人では、男性の正社員の労働力に頼りがちな傾向にあります。しかしそうした古くからの慣習にとらわれるのではなく、多様な価値観を受け入れて様々な人材を確保することで、働き手を増やしていくことを求められているのが現状です。

ビジネス環境の変化に対応するため

近年はビジネスの変化が激しくなっており、今までの常識に固執していると、時代のニーズに置いていかれることが考えられます。さらに現代は「VUCA時代」と呼ばれ、どのような企業であっても先行きが見えない現状にあるとも言われています。そうした中で不可欠なのが、より自社に適した優秀な人材の確保です。本当の意味で能力のある人材を採用するためには、様々な価値観を受け入れた、柔軟な人事に努めることが欠かせません。特に従来のような「男性が外で働き、女性が家庭を守る」というような既存の役割分担意識があっては、通用しない世の中になっているのです。

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多様な雇用形態・働き方への対応

現代では働き方に限らず、人としての生き方に対して、多様な価値観が生まれています。さらに結婚後の共働き層も増加しており、育児や介護と両立しながら仕事をするなど、社会で活躍する労働力の生活背景は様々です。こうした世の動きもあり、より柔軟な人材活用をしていく必要があります。また時代の流れに合った人事を進めることで、各従業員が実力を発揮しやすい職場となり、優秀な人材の獲得にもつながるのです。

企業に求められるダイバーシティ経営(マネジメント)とは?

ダイバーシティ経営とは、先ほども解説しましたが、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方を取り入れた経営を行なうことを指しています。そして多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、新しい価値を生み出す、イノベーションを生み出す経営のことです。

 

説明してきたように、企業として多様な価値観を受け入れる姿勢は重要です。そこで求められるのは、経営陣が多様性についての理解と必要性を感じること、そこから様々な人材が活躍できるシステムを作り出すことです。重要性を感じているだけでは、ダイバーシティ経営を実践できているとは言えません。まずは従業員それぞれのライフスタイルを尊重できる制度を整え、なおかつそうした改革に掛かる費用を惜しまない予算組みが不可欠です。さらに社内制度によっては、勤務体系の複雑化も考えられるため、多様な人材活用に対応できるコミュニケーション体制の確立も求められます。こうした全社を巻き込む取り組みを推進し、効果をあげていくことがダイバーシティ経営(ダイバーシティマネジメント)です。

ダイバーシティ経営の4つの効果

では具体的に、ダイバーシティ経営によってどのようなメリットが生じるのか解説していきます。

ダイバーシティ4つの効果の図

新しいアイデアの創出(プロダクト・イノベーション)

たとえば、多様な人材が自社のサービスや商品の開発に参加することで、今までにはなかった新たな価値が生まれることに期待できます。様々な分野の知識や視点を含めて企画を進めることで、斬新な発想が生まれたり、これまでは気がつかなかった改良点が見つかったりする可能性が高まるのです。多様な人材が活躍することは、社内のアイデアの幅を広げることにつながります。

プロセスの効率化(プロセス・イノベーション)

多様な人材が活躍できる環境を生み出すには、業務フローや作業方法の見直しも欠かせません。幅広い能力や属性の従業員が力を出せる体制を作ることで、余計な過程を省いたり新たな設備やツールを導入したりなど、仕事のプロセスを効率化することにもつながるのです。さらにより良い製造方法やサービスの手法を確立することによって、生産性の向上に期待できるでしょう。

優秀な人材の獲得

多様な人材が活躍し、企業として確かな成果を出すことは、外部からの高い評価につながります。好評を博している分、社会的な認知度も向上し、より幅広い求職者からの注目も集められるでしょう。さらに数多くのクライアントからの支持を得ていることが伝われば、自社を希望する人材も増えていきます。そして応募者の母数が増加することで、優秀な人材に出会える確率も高まるのです。また多様な人材を活用することで、適材適所の人事が叶うだけでなく、結果的にはたくさんの労働力を確保することにも期待できます。

社員のモチベーション向上や職場環境の改善

様々な従業員が柔軟に働ける体制が整えば、それぞれが本来の実力を発揮できるようになり、各々のモチベーションも高められます。さらに働き方や社内制度などの影響によって活躍の場が狭まっている人材にとっては、自分の能力をより幅広く役立てられるようになったら、その分仕事に対する意欲も向上するでしょう。そして多様な人材が力を出せるような仕組み作りは、結果として職場環境を改善することにもなります。柔軟な人材活用に向けた改革は、従業員の働きやすさを生み出す糸口にもなるのです。

ダイバーシティ経営の5つのステージ

ダイバーシティ経営を進めるには、まずは自社がどの段階にいるのか把握し、その状況に合った取り組みを進める必要があります。そこで以下においては、経済産業省が定めるダイバーシティ経営のステージと、解消すべき課題について具体的にご紹介していきます。

ダイバーシティ経営の5つのステージの図

第1ステージ 同質的・画一的な組織

幅広い人材が在籍しているとは言えず、似たような属性の社員が集まっている状態が第1ステージです。たとえば、表層的なダイバーシティだけではなく、深層的なダイバーシティが取り入れられていない状況です。性別、国籍、年齢、キャリア、働き方、考え方などが画一的、同質的な状態です。

 

特に日本企業では終身雇用や年功序列を前提とした人事制度が確立されてきた歴史があり、国全体として経済成長が著しかった時代には、同質的な組織構成が事業の発展を進めてきました。また新卒一括採用や定年制度といった、従来からの人事システムが主軸となっているケースでは、どうしても画一的な価値観が根づいてしまいます。このような状況は、第1ステージと言えるでしょう。

 

改善に向けた動きとしては、まずは柔軟な選考による人材採用から始めることが重要です。表層的ダイバーシティ、深層的ダイバーシティ両方を尊重し、受け入れることが大事です。その上で、様々な人材が継続してキャリアを積める環境を作り、定着させる取り組みを進めるのが良いでしょう。

第1ステージでよくある状態

  • 組織の考え方が固定的で保守的。新しいことに挑戦する姿勢が乏しい
  • 慢性的な人手不足で、事業がうまく進まない。採用活動をしても人が集まらず、採用できたとしても早期離職が起きる
  • 求める人材像が曖昧で明確ではない。また入社後に定着させるために何をすべきか分からない
第2ステージ 多様な人材がいる組織

様々な人材が在籍しているものの、一定の部署に似たような属性の社員が集まっている・性別などによって格差が起きている、上手く多様性を活用できていないという状態が第2ステージです。比較的ここのステージにある企業が多いのではないでしょうか。ただ幅広い人材が働いているだけで、女性の管理職が少なかったり、学歴による昇進差があったりするケースが考えられます。

 

こうした場合に取り組むべきなのは、多様性を認める人事評価システムの確立です。人材の配置を柔軟にする仕組みを整えることで、各従業員が本来の得意分野で実力を出して活躍できたり、新たな発想力の創造につながったりと、組織力の向上に期待できます。また、多様な人材の活躍を促す勤務環境、組織風土も重要です。たとえば子育てをしている従業員が働きやすい勤務制度を設計する、子育てをしている人の活躍を支援し、活躍できるような風土を作るなどが挙げられます。まずは、多様な価値を受け入れる職場環境や組織風土を生み出すことが大切です。

第2ステージでよくある状態

  • 一部のダイバーシティを尊重するために働きやすさを推進した結果、不平等だと感じる社員が生まれている。
  • 心理的安全性が確保されていない。意見を言うことで、居心地が悪くなったり会社に意見できるのは一部の社員のみ。
第3ステージ 多様な人材が活躍している組織

様々な人材が在籍しているかつ各々が適材適所で活躍している状態にはあるものの、組織としての姿勢が統一されていないケースが第3ステージにあたります。たとえば、今後の事業発展に向けて求められる人材が明確化されていない・自社の経営状況や事業の方向性が共有できていない・企業としてのビジョンが社員に浸透していないなど。多様な人材が力を発揮している現状はありながら、それが組織の姿勢として定着していない場合が考えられます。

 

このような第3ステージでは、組織としてどうあるべきか・どんな組織になっていきたいのかといった、戦略や理念を見直す必要があります。そして従業員全体に共通の認識を持ってもらうための工夫をすることが求められるでしょう。

第3ステージでよくある状態

  • 意欲が高い社員が多いが、理念に根差した行動になっていない。会社としての考え方が浸透していない。 
第4ステージ ダイバーシティ経営を実践

第4ステージは、ダイバーシティ経営は進められているものの、まだ企業としての成果にはつながっていない状態です。多様な人材が活躍している現状があり、なおかつ組織としての戦略や理念を叶える人材活用が実現しているケースを指します。ただし結果が数字に表れていない・新たな事業発展はできていない、といった課題がまだ残っている場合には、ダイバーシティ経営として取り組んできた内容の見直しや修正が必要でしょう。どの程度の期間で何をしたらどんな結果が出たのか・それぞれの改革の関連性はどうなのか、というように深く分析して方向転換することが求められます。

第4ステージでよくある状態

  • 多様な働き方は増えているが、ビジネスにその結果が表れていない
  • イノベーションが起こっていない。新しいアイデア、新規事業などの成果が出ていない
第5ステージ ダイバーシティ経営の高度化

ダイバーシティ経営の最終ステージは、実際に多様な人材が活躍していることによって、社内の生産性や競争力が向上しているなどの成果が出ている、イノベーションが起きている状態です。企業としての業績アップはもちろん、自社で働くことによって従業員それぞれが充実した仕事をして、日々の活力につながっているのが理想的でしょう。しかし組織の構成や方向性が変わるごとに、既存のダイバーシティ経営では合わない部分が出てくるのは当然です。第5ステージを継続するためには、現状を見極めつつアップデートしていく必要があります。

ダイバーシティの推進方法

それではダイバーシティを進めるための第一歩として、有効な具体例を一部ご紹介します。

採用方針の策定

まずは現状における社内の人材の洗い出しを行ない、求人によって目指すべき結果や選考の進め方など、採用に関する新たな計画を策定するのも1つの手です。たとえば今の状況を見直すことで、ただ採用して人員を増やすだけでなく、現在の人材配置を変える・社内のポジションを新設するなどの改善方法が見えてきます。また優秀な人材を確保するために、企業としてどのような施策に取り組むべきか、新たなアイデアを生み出すきっかけにもなるでしょう。

経営層や従業員への研修や理解促進

社内全体としてダイバーシティ経営の意識を高めるためには、こうした取り組みによってどのようなメリットがあるのか・どのような課題が解消できるのか、具体的に示すことでしっかりと認識を深めてもらう必要があります。そこでダイバーシティ経営の目的や方向性を明確に伝えられるような研修を行なったり、資料を共有したりなど、理解を得るための計画から始めるのも良い方法です。

ダイバーシティの他社事例

実際にダイバーシティを推進する企業はいくつかありますが、ここからは特に参考になる事例をピックアップしてご紹介していきます。

東京ガス

総合エネルギー企業である東京ガスでは、顧客一人ひとりの幅広いニーズに応えるべく、ダイバーシティ経営を進めています。具体的な取り組み例としては、育児や介護などに関わる法規定を超えた休暇制度・男性社員への育児参加の推奨・テレワーク化の促進のほか様々。そのほかオフィスにおいても、ユニバーサルデザインのトイレを設置するなど、障がいのある従業員が業務に励みやすい環境を整えています。その結果、2018年・2019年の育休取得・復職率は男女ともに100%を達成しており、各社員がライフステージの変化に柔軟に対応しながら活躍できている事例です。

本田技研工業

日本を代表する自動車メーカーでもある本田技研工業では、企業の基本理念である「人間尊重」を基盤としたダイバーシティ経営に取り組んでいます。特に女性の活躍の場を広げる施策に力を入れており、出産や育児に関わる休暇制度や手当を豊富に設定。さらに企業内託児所や祝日稼働日の一時保育なども整え、子育てとの両立を支援しています。こうした施策により、女性従業員の在籍数や採用率は年々増加し、女性管理職の比率は2014年度に比べて2019年度は約2倍にアップ。女性活躍の促進からスタートし、段階的に多様な人材活用を進めている事例です。

ソニー

グローバルに事業を展開する大手電気機器メーカーのソニーグループでは、実際に障がいのあるメンバーから外国籍の社員まで、幅広い人材が活躍しています。そうした中で行なっている代表的な取り組みとしては、出産・介護・病気などの様々なライフイベントとの両立をサポートする「Symphony Plan(シンフォニー・プラン)」。休暇制度の充実・保育園との提携・介護支援金・生活習慣改善の補助といった、各従業員があらゆる支援を受けられる仕組みです。多様な人材が在籍しているからこそ、幅広い働き方ができる施策を進めている事例です。

人材獲得競争が激しくなる日本で企業が取り組むべきこと

人材は企業を成長させるためには不可欠な要素であり、重要な経営資源でもあります。そして組織としての目標を達成するためには、優秀な人材の確保が欠かせません。ビジネスシーンだけでなく社会全体において多様化が進んでいるからこそ、ダイバーシティの考え方を取り入れているかどうかで、優秀な人材を獲得できるかの差も出てくるでしょう。大きく時代が変わっている今、企業も柔軟に変革していくことで、未来のある組織として生き残っていけるのではないでしょうか。

 

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