入社承諾書とは?採用担当者が知っておくべき意味や必要性、内定辞退を減らす方法を解説【テンプレート付き】

「入社承諾書」や「内定承諾書」という言葉を聞いたことはありませんか?これらはいずれも採用活動を行なう上で、欠かせない書類です。

 

しかし、インターネットで調べてみると、採用活動ではほかにも「内定通知書」や「内定誓約書」なんて言葉が出てきたりもします。正直、頭がこんがらがりそうになりますよね。「そもそもなぜ入社承諾書が必要なのか?」という疑問や、それ以前に「入社承諾書がどんな効力を持つ書類なのか分かっていない…」という方も、少なくないのではないかと思います。

 

そこで本記事では、採用担当者や経営者の皆様が知っておくべき入社承諾書の基礎から解説していきます!さらに企業と内定者が、同じ方向を向いてスタートを切るための”内定後のフォローの大切さ”なども、合わせてご紹介します。

 

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入社承諾書とは?

「入社承諾書」とは内定者が貴社への入社を承諾した書類のことで、簡単に言うと、特別な理由がない限りは入社します、という入社意思を示す書類です。

 

企業は採用を決めた学生に、内定したことを知らせる「内定通知書」を発行しますが、この内定通知書を送付する際に入社承諾書を同封することが一般的です。入社承諾書には内定承諾の旨のほか、今後のスケジュール、約束事項などが書かれており、この書類を受け取った内定者は内容を確認後、承諾の意味で署名・捺印をし、企業へ返送します。

 

つまり内定通知書は内定を証拠として残すために企業が内定者へ発行する書類、入社承諾書は内定者が企業へ入社することを誓約する書類ということです。多くの場合、内定決定後の内定者には「内定通知書」「入社承諾書」「労働条件通知書」がワンセットになって届けられます。

 

入社承諾書の図

内定承諾書との違いは?

入社承諾書は「内定承諾書」と呼ばれることもあり、この二つはほぼ同様の役割を果たす書類になります。そのため、内定時にはこのどちらか一方の書類を用意すれば問題ありません。このほかにも「内定誓約書」や「入社誓約書」と呼ばれる書類もありますが、これらも入社承諾書と同じ扱いとなっている場合がほとんどです。いずれの書類も企業側が内定を承諾し、”特別な理由がない限りは入社します”という内定者の入社意思を求める書類になります。 

新卒採用と中途採用で内容に違いがある?

新卒採用でも中途採用でも、入社承諾書が示す内容は同じです。ただし、新卒採用は”卒業”を条件に内定が締結されていることから、内定者が卒業できない場合を想定し、入社承諾書に「内定取消事由」を記載するケースが多くあります。その点をのぞけば、新卒採用と中途採用、どちらも共通した内容になっていることがほとんどです。

入社承諾書は作成しなければならない?

必ず用意しなければならない法的な義務はない

入社者承諾書は、必ず用意しなければいけないという法的ルールはありません。あくまで、内定者の入社意思の表示を書面化した書類という扱いになります。しかし「内定」という事実を書面に残すことには、いくつかのメリットがあるため、可能であれば用意した方がよい書類といえるでしょう。

入社承諾書を作成する意味

作成が法的に義務付けられていないにも関わらず、なぜ多くの企業が入社承諾書を用意するのでしょうか?その理由は主に次の2つです。

  • 内定していることを証明するため
  • 内定辞退を減らすため
内定していることを証明するため

内定者にとって、企業が内定を出しているのか出していないのかは重要な問題。そのため、入社承諾書を作成し、「内定していること」を明確にすれば、内定者に安心してもらうことに繋がります。つまり、入社承諾書は内定通知書の役割も果たしていると言えます。

内定辞退を減らすため

内定とは、内定者と企業がお互いの意思を確認し、労働契約が成立した状態を指しますが、法的拘束力はありません。そこで、内定後の内定辞退を避け、入社を念押しするために入社承諾書が作成するという狙いもあります。

どちらかと言えば、内定辞退を減らすために入社承諾書を作成する企業が多いのではないでしょうか。なぜなら、企業が経営に必要な内定者を確保するのは、簡単ではないからです。もし内定者に辞退されてしまった場合、その欠員を補充するためにさらなる採用コストがかかる可能性があります。最悪の場合、コストに見合った採用活動ができなくなってしまうこともあるでしょう。

 

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入社承諾書に記載する項目

入社承諾書に決まった書式はありませんが、「表題」「宛名」「承諾内容」「日付」「氏名」といった項目が網羅されている必要があります。ここでは入社承諾書を作成する上での必要項目をご紹介します。

<必須項目>

■表題

■日付と宛名/差出人名

(差出人名は代表取締役社長の氏名を記載するのが一般的です)

■時候の挨拶/内定承諾の旨

■ 提出書類で変更等があった場合は連絡する旨

■今後のスケジュール

■内定者本人の氏名と捺印欄

<必要に応じて記載する項目>

■ 内定取消事由に該当する場合は、内定を取り消されても不服申し立てしない旨

(内定取消事由の例:履歴書や面接などで虚偽の情報を提供した場合、病気やけがなどで働くことができない場合、大学を卒業できなかった場合、犯罪を行なっていた場合など)

■保証人氏名と捺印欄

■約束事項

(無断で入社を拒否しない、住所などの変更事項があれば速やかに連絡する、書類は速やかに返送する など)

 

※フォーマットは企業によって多少異なります。

※返送に期日を設けるのであれば、それも明記しておきましょう。

※返信用封筒を同封すると、書類の返送やその後の手続きがスムーズになります。

 

入社承諾書作成時のポイント
  • 曖昧な内容の入社承諾書を作成してしまうと、のちに内定者とのトラブルに発展してしまうリスクがあります。そのため、承諾条件を定める場合などは明確に記載することを心がけましょう。
  • 必ずしも紙媒体で用意する必要はなく、双方の合意があれば電子メールや電子契約で承諾を交わすことも可能です。とはいえ、現在も紙の入社承諾書に署名捺印を必要とする企業が多いといえます。
  • 入社承諾書の内容によっては課税文書に該当し、印紙税がかかる場合があります。事前に弁護士や法務担当者などに確認しておくとなおいいでしょう。

入社承諾書のテンプレート

入社承諾書のテンプレートはこちらから入手できます。必要に応じて加筆・修正し、自社に合った入社承諾書を作成してください。

入社承諾書で「内定辞退」は阻止できない

それでは、入社承諾書を企業が受理すれば、内定者は内定辞退ができないのでしょうか?内定者は民法第627条第1項にもとづき、入社日の14日前までに内定辞退連絡を行なうというタイムリミットさえ守れば、内定承諾書提出後でも内定辞退ができます。入社承諾書に内定辞退を禁止する法的な効力はありませんから、もちろんこれは法律違反にもなりません。同じく、内定式や入社宣誓書、入社契約書などにも内定辞退を防ぐ効力はなく、期限内であれば内定辞退が可能ということになります。

 

ただし例外として、内定者が内定後に研修や備品購入など「会社の費用を使ったあとに内定辞退した場合」は、会社の損害と捉えて損害賠償を請求することができます。なお、過去このように元内定者へ損害賠償を請求した企業のケースはほとんどありません。

 

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企業側からの内定取り消しはできる?

基本的に、内定者へ内定通知を行なった時点で企業が内定取り消しを行なうことはできません。なぜなら、内定は労働契約が成立した状態であり、内定取り消しは「解雇」に相当するからです。そのため、客観的で合理的な理由、また特別な事情がなければ、企業が解雇権を濫用したものと見なされて解雇は無効となってしまいます。内定者は入社承諾書提出後に内定辞退できるからといって、企業も内定を取り消せるわけではないのです。

 

もちろん正当な理由があれば、企業が内定を取り消すことは可能です。ただし、正当な理由がある場合もリスクは避けられません。なぜなら、内定取り消しは一般的にネガティブな意味合いで捉えられるからです。そのため内定取り消しにあった人がSNSで「内定を取り消された」と発信した場合、企業のイメージダウンに繋がってしまうことも。さらにこの内定取り消しが問題化してしまうと、控訴事件に発展してしまうケースもあります。

 

こうしたリスクを防ぐためにも、内定取り消しを行なう際には内定者へ十分な説明を行ない、他の就職先の紹介や補償の用意といった対策を講じ、慎重に進める必要があるでしょう。

入社承諾書の受理後に内定辞退を減らす方法

ここまで入社承諾書の必要性や効力、作成方法などについて説明してきましたが、重要なのは「企業は入社承諾書を内定者から受け取って終わりではない」ということです。繰り返しになりますが、入社承諾書は内定者を安心させたり、内定辞退を抑制したりといった狙いで作成されるケースがほとんどですが、法的な効力はありません。内定者に入社の意思を持ち続けてもらえるかどうかは、企業の細やかなフォローにかかっているのです。

入社承諾書の受理後に内定辞退を減らす方法は次の6つ。1つずつ説明していきます。

  • 内定後も定期的にコミュニケーションを取る
  • 社内のコミュニケーションツールに招待する
  • 内定者同士が交流できる場を設ける
  • 社員と交流できる機会を設ける
  • オフィス見学を通じて働くイメージを持ってもらう
  • 内定者研修を実施する
内定後も定期的にコミュニケーションを取る

内定者とはメールや電話などで定期的にコミュニケーションを取りましょう。というのも、入社に対して緊張や不安を抱えている内定者も少なくないからです。定期的に交流の機会を設けることで緊張や不安がやわらいだり、「この会社で働きたい」という気持ちが強くなることが期待できます。

社内のコミュニケーションツールに招待する

たとえば、Microsoft TeamsやSlackといった、社内で使用しているコミュニケーションツールに内定者を招待するのもいいでしょう。ツールでのコミュニケーションを通じて、社員の人柄や社風を感じてもらうことができます。たとえば、ツール内で順番に自己紹介などを行なえば、将来一緒に働く上司や先輩社員、他の内定者たちへの興味や関心が高まっていくことにもつながります。

内定者同士が交流できる場を設ける

内定者同士の懇親会や食事会などを開催することで、内定者同士の絆が深まっていくでしょう。入社前から交流することで人間関係が築かれるため、入社後に仕事で協力しやすい体制をつくることにもつながります。なお、オンラインで内定者同士の交流の機会をつくってもいいでしょう。

社員と交流できる機会を設ける

上司や先輩社員などの既存の社員が参加する座談会やランチ、社内イベントなどに内定者を招待することもひとつの手。なお、オフィスから遠方の場所に住んでいる内定者がいる場合は、オンラインで参加できるようにするのもいいでしょう。

オフィス見学を通じて働くイメージを持ってもらう

既存の社員と内定者が交流する機会をつくることが難しければ、内定者にオフィスを見学してもらうという方法もあります。実際に先輩社員が仕事をしている姿を目の当たりにすることで、自分もこの会社で働くイメージを持ち、入社意欲の向上を期待できます。

内定者研修を実施する

研修は実務に近いこともあり、内定者研修の実施は内定者の帰属意識の醸成につながります。また、実際の仕事をイメージしやすいため、内定者のモチベーションアップも期待できます。

まとめ

入社後承諾書は法的効力のない、いわば企業と内定者の「約束事」を記した書類です。しかし、この書類があるのとないのとでは、内定者が受ける企業の印象はガラリと変わるはず。入社承諾書は企業が内定者を歓迎し、入社を心待ちにしていると伝える書類でもあるからです。

 

内定通知書や入社承諾書、労働条件通知書など、内定者を迎え入れるにあたって用意しなければならない書類はたくさんあると思います。そんな中でも、未来を担う新たな人材を気持ちよく受け入れるため「入社承諾書」を作成していただければと思います。

 

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採用ガイド編集部

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