縁故採用とは?メリット・デメリットと導入する際のポイントや注意点を解説

縁故採用とは?メリット・デメリットと導入する際のポイントや注意点を解説

人材不足が叫ばれる今、採用活動に頭を悩ませていらっしゃる経営者、採用担当者も多いのではないでしょうか。求人広告や人材紹介などのコストをかける採用手法もありますが、その一方で今までとは異なる新たな採用手法、コストのかからない採用手法を検討されている方もいらっしゃるでしょう。そこで注目されている採用手法のひとつが、「縁故採用」です。

 

このページでは、15年以上にわたり求人広告のコピーライター/プランナーとして活躍してきた筆者が、縁故採用に関する基本的な説明、そのメリット・デメリット、今の時代にあった活用の仕方などについて詳しく解説しています。新たな採用手法のひとつとして、ぜひ参考にしてみてください。

※この記事は2020年6月8日に公開した記事を再編集しています
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縁故採用とは?

縁故採用(えんこさいよう)とは、企業が血縁などのつながりを利用して人材を採用することを言います。古くからある採用手法のひとつであり、「コネ採用」と言われることもあります。縁故採用を禁止する法律はありません。法律で定められているのは、採用時などの性差別を禁じている「男女雇用機会均等法」と、年齢を理由に採用で差別することを禁じている「雇用対策法」の二つです。

 

これらを守っているのであれば、縁故採用を行なうことも問題はないと言えます。しかも採用活動が年々難しくなっている昨今、改めて注目度が高まってきている採用手法でもあるのです。

縁故採用の始まり(歴史と現状)

縁故採用の始まり(歴史と現状)

縁故採用の歴史は古く、中世や欧州時代にさかのぼります。縁故採用は前述したように企業が血縁の繋がりを利用して採用する仕組みです。例えば、中世の欧州の王室や貴族社会では、血縁関係や結婚関係に基づいて重要な地位や役職が与えられることがありました。つまり、歴史的な観点からみると、中世や欧州では特定の組織で古くから縁故採用が行われていました。


現代においては、日本企業がいつ頃縁故採用システムを行い始めたのかは明確ではありませんが、中小企業や家族経営の企業、一部の業界や地域社会では縁故採用が一般的な採用手段として行われていた傾向があります。

縁故採用は法規制されているのか?

縁故採用は法規制されているのか?

前述したように、縁故採用を禁止する法律はありません。しかし、職種によっては縁故採用が法律でNGとなっている場合もあります。


具体的には公務員の場合はNG。民間の場合はOKという認識で大丈夫ですが、以下で詳細について確認していきましょう。

公務員は縁故採用が禁止

日本の法律では民間企業の縁故採用を禁止する法律はありません。しかし、地方公務員及び国家公務員を縁故採用した場合は違法になります。


公務員法では「採用試験や適性検査、面接などの公正な手続きに基づいて採用を行うことが求められています。」と定められており、血縁関係者だからと能力や適性を無視して採用することは違法とされています。

参考:人事院『公務員制度と人事院 10.縁故や政治的影響を排除~人事における公正性の確保~』

これは地方公務員でも国家公務員でも同様に違反になります。

地方公務員:地方公務員法違反

国家公務員:国家公務員法違反

縁故採用によって他の優秀な候補者が不当に不利益を被る場合や、能力や適性に基づく公正な採用が逸脱した場合、国家公務員法及び地方公務員法の違法となります。

民間企業は縁故採用を規制する法律なし

前述したように、日本の民間企業においては、縁故採用を規制する特定の法律は存在しません。ただし、労働法や人権に関する法律、雇用均等法などの一般的な法律に抵触する場合は、縁故採用に制約がかかる場合があります。


例えば、縁故採用によって他の候補者が不当に不利益を被るような場合、労働基準法に基づき制約を受ける可能性があります。


縁故採用が上記のような影響を及ぼす場合、労働法や人権に関する法律に基づいて問題が指摘される可能性があることを覚えておきましょう。

縁故採用を行なう企業側のメリット

いろいろな見方がある「縁故採用」ですが、さまざまなメリット・デメリットがあります。新たな採用手法として導入を検討するにあたり、それぞれの良い点、気になる点を考えていきましょう。まずは、縁故採用のメリットから解説していきます。

縁故採用を行うメリット

採用活動の時間や採用コストを抑えられる

転職サイトに求人広告を掲載する場合も、人材紹介サービスを利用する場合も、一般的には数十万~数百万円のコストがかかります。たくさんの応募者があった場合は、応募者とのやりとりや面接の調整・対応など多くの時間も必要となるでしょう。

 

縁故採用であれば、広告の掲載費用も、人材紹介の成功報酬費用も必要ありません。面接をする人数も限られますから、選考もスムーズに進められるでしょう。採用に至るまでの時間も比較的スピーディーになります。時間もコストも大幅におさえられる可能性があるのです。

求職者の経験・スキルを把握しやすい

血縁や婚姻などのつながりはもちろん、先輩・後輩などからとしても、「誰が紹介してくれるのか?」がハッキリしているのが縁故採用の特徴です。紹介する側の人物としても自身の信頼を落とすことはしたくないため、企業に合わない人物を紹介することはないでしょう。

 

求職者の身元が明確かつ信頼できることが多いため、安心して雇用することができます。求職者の性格や特徴、経験やスキルなどの情報を事前にヒアリングできることも多いため、履歴書と面接だけで判断しなければならない一般の求職者よりもより正確に見きわめることができるでしょう。

社内に紹介者がいるため、フォローがしやすく、定着・活躍につながりやすい

入社後の定着・活躍のためには、適切なフォローが欠かせません。縁故採用では、採用した企業側も採用者の情報をしっかり把握しているため、入社後のコミュニケーションもとりやすく、関係性を築きやすいという特徴があります。また社内に紹介者がいるので、フォローもしやすい特徴があります。事前にどんな人物かをしっかり把握できているため、配属先でのミスマッチも生じにくいでしょう。戦力外でどうにもならなかった、となってしまうケースも少ないようです。

縁故採用を行なう企業側のデメリット

続いて、縁故採用のデメリットについて考えていきましょう。良い点、悪い点をしっかりと把握したうえで、自社の新たな採用手法として導入できるかを検討していけるはずです。

縁故採用を行うデメリット

社内から不満が出てしまう可能性がある

もともとつながりのある人物からの紹介だからこそ、採用か否かの判断をする際、公平さに欠けてしまいます。また入社後も、縁故採用での入社、というのは意外と早く社内で知れ渡ることになるものです。その場合に多いのが、公募など縁故採用以外のルートで入社した社員から「不公平だ」という声があがりやすいこと。

 

縁故採用と聞くだけで、「実力以上の給与を得ている」「本来なら採用にならないような人材が採用されている」などと言われてしまうこともあるでしょう。

 

こうした不公平や、不満の声を生じさせないようにするため、事前に手を打っておくことが大切です。採用基準を明確にし、どのルートからの応募でも同じように選考をする。そのフローを社内にきちんと公開する。このように、透明性と正直性を持った運用を行なうことが重要です。

スキルや能力が足りなくても採用を迫られることも

よく知る人物からの紹介だから、ということで難しいケースもあります。たとえば「採用したいのは即戦力となる営業だけど、縁故採用で紹介されたのが事務職希望の人材」といった事態が生じることもあるでしょう。

 

求める経験やスキルを満たしていないにもかかわらず、紹介者から迫られて採用せざるを得ないケースも出てくるかもしれません。本当に必要な人材を採用できないのであれば、デメリットにもなってしまいます。特に今、多くの企業がギリギリの人材で経営を行なっているからこそ、自社に合わない人材を採用する余裕はありません。こうした事態になってしまわぬよう、求める人物像をオープンにしておくことも大切です。

周囲との軋轢(あつれき)が生じてしまうことがある

縁故採用は、周囲から高い期待を寄せられたり、結果に対するプレッシャーがかかったりすることもあるでしょう。「自分の行動によって紹介者に迷惑を掛けてはいけない」と感じてしまい、余計なプレッシャーを感じてしまう場合もあります。

 

逆に、たとえば「5回無断欠勤したら退職」などと就業規定で決めてあっても、縁故採用で入社した人物という理由で規定を適用できず、既存社員の不満になってしまう可能性もあります。こうした事態が起こらないよう、適切な対応を取っていくことが求められます。

縁故採用の導入フロー

組織の採用プロセスをより効果的かつ効率的に進めるためには、縁故採用を導入することが一つの手段となります。縁故採用は、既存の関係者や従業員のつながりを活用して、組織に適した人材を採用する方法です。


ここからは、縁故採用の一般的な導入フローについて詳しく解説します。具体的には以下4つのフローを定めておきましょう。

縁故採用を組織に導入する際の導入フロー

採用基準の明確化

縁故採用を組織の仕組として組み込み場合、組織内での縁故採用の基準と方針を明確化することが必要です。

「あいつは血縁者だから入社できた」
「能力がないのによく入社できたな」
「血縁者だから評価が甘いよ」 など

縁故採用では、前述したような社内不満や周囲との軋轢が発生してしまう場合があります。そのため、採用基準を明確化し、公正性、透明性、能力主義の原則を尊重しながら、縁故採用したことを周囲に周知しましょう。


縁故採用において採用基準を明確化するためには、職務要件や必要な能力を明確化しておくといいでしょう。職務に必要なスキル、知識、経験、資格などを明確にし、それを採用基準として明確化します。これにより、縁故採用でも採用基準が一定の明示性を持つことが可能であり、前述した不満などがでず、組織への定着・活躍がスムーズになります。

採用プロセスの透明化

縁故採用を導入するためには、採用プロセスを透明かつ公正に行うことが求められます。採用プロセスが不透明だと、前述したような組織内の不満や不和が起こる可能性があります。このような社内不満・不和を起こさないためにも縁故採用する時こそ採用プロセスの透明化が必要です。


プロセスの透明化のためには、以下の手順を行いましょう。

  1. 採用基準の公開( 採用基準や求められるスキル、経験、資格などを公開する)
  2. 採用手順の明示( 採用プロセスの手順や流れを明確に示する)
  3. 選考基準の明示(各選考段階での評価基準や重要視する要素を明示する)
  4. 決定プロセスの透明化( 採用の最終決定が行われるプロセスを透明化する)

これらの手順を実践することで、採用プロセスの透明性が向上します。

内部紹介システムの設立

縁故採用を採用手法に組み込むのであれば、内部紹介のシステムを設立するのもおすすめです。内部の従業員や関係者からの紹介を活用するためのプログラムを設立することで、幅広い人脈から候補者を募ることができます。内部紹介システムを浸透させるためには、従業員に対して縁故採用のポリシーや利点を周知し、適切な候補者を推薦するよう促します。


例えば、紹介者にはインセンティブを与えるなど、紹介者にも候補者にもメリットがある情報を共有しておくと、社内に浸透しやすいです。

縁故採用の成功可否を分析

縁故採用を実際に行った際の効果を定期的測定し、縁故採用が成功だったのか否かを判断します。採用プロセスや結果に関するデータを分析し、透明性、公正性、能力主義の原則に沿って採用戦略を改善していきます。


縁故採用をしたことにより、社内の満足度や定着率が悪化しているので、あれば改善する必要があります。定期的に採用データを分析し、縁故採用を組織の採用手法の一つとして確立させます。

縁故採用に似ている「リファラル採用」とは?

ここまで、縁故採用の基本的な説明、そのメリットやデメリットについて見てきました。続いて説明していきたいのが、「リファラル採用」についてです。ここ最近、「リファラル採用」について耳にする機会も増えてきているのではないでしょうか?

 

リファラルとは、英語で「推薦・紹介」の意味です。つまり、リファラル採用とは、求人で広く募集を募ることとは違い、「人から知り合いの人材を推薦・紹介してもらう」採用方法を指します。

 

「類は友を呼ぶ」と言われるように、優秀な人のまわりには自然と似たような志向やスキルを持った人材が存在するもの。自社の優秀な社員から知人を紹介してもらうことで、優秀な人材に出会える可能性が高いのが、リファラル採用の特長です。

縁故採用とリファラル採用の違い

では、「縁故採用」と「リファラル採用」にはどのような違いがあるのでしょうか?いろんな説があるのですが、そのうちのいくつかを紹介していきましょう。

 

まずひとつ目は、「紹介する人の違い」です。「縁故採用」が、婚姻や血縁などのつながり、大学の教授などの有力者など、その企業に対し何らかの影響力を持っている人からの紹介であるのに対し、「リファラル採用」は、その企業の社員であればだれでも紹介することができます。縁故採用の選考が形式的になりやすい一方で、リファラル採用はあくまで通常の選考フローを利用するため、より公平性を保った採用活動ができるとも言えます。

 

続いてふたつ目は、「採用時に重視することの違い」です。「縁故採用」が、主に“つながり”や“人柄”を重視することが多いのに対し、「リファラル採用」は、“経験やスキル、志向性などへのマッチ度”を重視する傾向にあります。ただこの違いに関しては、あまり明確ではなくなってきているようです。

 

縁故採用とリファラル採用の違いについて、簡単に表にもまとめています。

  縁故採用 リファラル採用
コスト
広告費用や成功報酬費用は必要ないが、リファラル採用は紹介者・入社者へのインセンティブ、顔合わせのためのランチ会費用などが必要になる場合も。
スピード
リファラル採用は、社員の意欲次第となるため、予想より集まらない場合もありうる。
公平性
縁故採用は、選考フローが見えない場合、「コネ入社」などと言われてしまう場合がある。
マッチ度
縁故採用は、紹介者との関係性によっては断りづらいことも。リファラル採用は、求める人物像をオープンにするためミスマッチは生じにくい。
定着・活躍
企業をよく知る人物からの紹介であり、入社後のフォローもしやすいため、定着・活躍につながりやすい。

 

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まとめ

ここまで、縁故採用やリファラル採用について、その特徴などを見てきましたがいかがでしょうか?筆者の個人的な考えとしては、「どちらの採用手法にもメリット・デメリットはあるが、時代に合わせた運用をすれば大いに活用できる」と考えています。

キーワードは、「透明性」と「正直性」

人手不足が叫ばれる今、企業における採用活動は今後ますます難しくなっていくでしょう。転職サイトに求人広告を載せたり、人材紹介サービスに依頼したりしても、以前のように応募者を獲得することも容易ではなくなっていくはずです。かといって、採用にかけられるコストにも上限があると思います。

 

だからこそ、それぞれのデメリットを補うような運用をすることで、より良い採用活動を実現していけるのではないかと考えます。そのキーワードとなるのが、「透明性」「正直性」です。

まず「透明性」については、社内外に対して「求める人物像(任せたい仕事内容、必要な能力・スキル、向いている志向性など)」と「選考の基準やフロー」をオープンにすることです。どんな経路からの候補者にも公平な基準で選考をしていることをアピールすることで、不満や不安を生じないようにすると良いでしょう。

 

続いて「正直性」については、会社や仕事内容に関する情報について、「良いことも悪いこともありのままに開示していく」ということです。縁故採用でもリファラル採用でも、自社のことを誰かに紹介する場合、ついつい良いことばかりを語ってしまいたくなるもの。

 

そうならないよう、事前に良いことも悪いことも企業側が率先して開示しておくことで、「こんなはずじゃなかった」という入社後のミスマッチを未然に防ぐことができるのではないでしょうか。筆者もこれまで、多くの企業の採用活動をご支援してきました。その中でも採用活動がうまくいっている企業は、もちろん企業の魅力や採用条件も関係してくるものの、「透明性」と「正直性」を重視している企業が多いように感じています。これからの時代の採用を考える上でのキーワードとなるでしょう。

 

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採用ガイド編集部

engage採用ガイド編集部は、人材業界で長く活躍している複数のメンバーで構成されています。人材業界で営業や求人広告ライターなどを経験したメンバーが、それぞれの得意領域を担当し、専門的な知識に基づき執筆を行っています。

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