人の記憶に残るモノづくり
正直、最初は自分が作ったパネルがどんな風に使われるのか解らなかった。
親方に付いて、建て込みに行くとあっという間に展示会場が完成した。
勿論、僕の作ったものも展示会場の一部になっている。
僕が今アトリエで製作しているものは、美術館の壁や什器だ。
この壁に10数億円の絵画が飾られる事もあれば、
文化遺産が什器に展示される事もある。
時には現代美術作家のイメージに合わせた美術装置を作って、
誰も見た事のないような展示を行う事だってある。
毎回、違うものを作るから緊張もするけど、その分面白い。
昔、都内の美術館で、ある作家のアトリエを再現しているブースがあった。
作家の絵の世界観に入り込んだみたいで、強く印象に残った。
ここに入社してから知った事だけど
どうやらあのセットは先輩達が作ったものだったみたいだ。
大道具の仕事は誰かから直接拍手や歓声がもらえるものじゃないかもしれない。
でも僕達の作ったものは何百、何千万の人の目に触れる事が出来る。
その人達の記憶の中に刻まれているハズだ。
あの日の僕のように。