2020年。コロナで世界は変わった。
飲食産業全体が「この職業は必要なのか」と神様から天罰でも下されたような気分だった。
私たちも打撃を受けた。去っていく仲間たちを止めることはできなかった。
一方、多くの企業様に雇用の受け入れ支援を頂き、
あの時の感謝は、言葉にはし尽くせないものがあった。
コロナが落ち着き、街に賑わいが戻りつつあるとはいえ、予断は許されない。
今なお、自分たちの仕事の存在意義に、悩み続けている人たちもいる。


コロナは一方で、食が持つ素晴らしい価値をあらためて私たちに教えてもくれた。
たとえば、なんとか目の前の売上を生み出せないかと立ち上げた中食事業では、
外出自粛を余儀なくされていたお客様から
「週に１度でもごちそうを食べられるのはうれしい」という、たくさんの声をいただいた。
その言葉に私たちは励まされてきた。
たとえ外食はできなくても、人が食に感動を求める気持ちに終わりはないのだと。


振り返れば、エー・ピーホールディングスを立ち上げた当時も、
明日が見えていたわけでも、立派な戦略や構想があったわけでもない。
「これ、美味しいだろ」「これが美味しい理由はさ」
自分たちがダイレクトに感じた食の楽しみ、よろこび、感動を、
一人でも多くの方々と共有したい。「やっぱり食って最高だよな」と分かち合いたい。
そうやって、ゼロから道を作ってきただけ。


その途中で、いくつもの違和感に出会い、義憤が生まれ、
中間マージンや流通の無駄といった、業界のナンセンスと対峙してきた。
生販直結というビジネスモデルを世の中に普及させ、
「食のあるべき姿を追求する」という使命の意味を深めてきた。


いま、これからの「食のあるべき姿」とは？
 この使命と向き合うとき、真っ先に目に浮かぶのは、
食産業、特に飲食、外食に関わってきた人たちの姿だ。
私たちがやるべきことは、自分たちだけが生き残ろうとする狡い戦略を立てることではなく、
食産業そのものを大きくしていく、未来への取り組みだ。
食に携わる誰もがそこに希望を抱くことができる、
これからのキャリアを示すことだ。


そして限界を迎えていたチェーンモデルではなく、
全く新しいカルチャーとしての食スタイルを、本当の意味でこの国に根付かせていく。
日本が世界に誇る「食」と「職」。
この2つの掛け算で「食産業のリデザイン」に挑む時がきた。
クレイジーなほどに食が好きで、プロとして向上心にあふれる料理人とその卵のあなたへ。
ぜひ、この私たちが創りだしていく未来を知ってください。

エー・ピーホールディングス
代表取締役会長 兼 ファウンダー 米山久

小さな個店ブランドを無数に想像し、豊かな食の風景を日本中へ。
食べることが人生の楽しみになる会社と、
そこで働く私たちにとっても魅力ある業界の未来をつくる。
本気でそう考える、
私たちの問題意識と展望です。

【魚】
船の上から料理は始まっている。

夜明け前に水揚げされた魚がその日のうちにお店に届く「今朝獲れ」。
水揚げ時のストレスで減退した旨みを生簀でケアしてから出荷する「活越し（いけごし）」。
繊細で確かな技術を要する「神経締め」。徹底的な「血抜き」など、
鮮度保持が適切に叶うよう、漁師が丁寧な下処理を施した素晴らしい質の鮮魚を
私たちは毎日扱うことができます。

「本当に美味しい魚はまだたくさんいる」ということを知っていただくため、
未利用魚の活用にも注力しています。本来美味しいはずなのに、
「知らない」という理由で、獲れても捨てられてしまうか、
練り物にされるのがこれまでは一般的であり、水産業の課題でした。
限りある水産資源を守るため、「美味しいけど知られていない魚」を、
私たちが責任持って買い取り、最適な調理法でお客さまにご提供する。

料理人にとっても、見たことがない魚を
まるごと調理することは、新たなチャレンジの機会です。
それを、漁師とも相談しながら美味しく調理し、お客さまに喜んでもらう。
この取り組みは結果的に、水産業の未来を明るくすることでもあると
私たちは信じています。

【地鶏】
うまい鶏を、科学する。

店舗でご提供する地鶏は、契約農家が飼育したみやざき地頭鶏と黒さつま鶏、
北海道の新得地鶏の三種類。地鶏の飼育は、プロフェッショナルかつ、
私たちのビジョンに共感いただいた農家にひなを譲渡することから始まります。

一番美味しくなる飼育期間を研究するため、大学の試験機関や獣医師の方と連携し、
飼育期間ごとの地鶏の旨味成分、アラキドン酸を科学的に分析したことも。
データ分析と食べ比べを重ね、科学的にも感覚的にもベストな飼育期間の試行錯誤の結果、
お店でお出しする黒さつま鶏は、認定される飼育期間よりはるかに長い
120日～150日をかけてじっくり育てられます。

農家との関係は、育ててもらったら終わりではなく、
日々社内SNSで連携し、どうやって料理したら美味しくなるか、
どんな地鶏を提供したいかなどを相談する間柄。
密な連携の賜物で、生成条件がこれまで不明だった白レバーができる日齢を
突き止めることができたり、これまで捨ててしまっていた希少部位に
注目した新店舗も生まれています。

生販直結のスタイルと、研究熱心な農家の熱い想いがあるからこそ
提供できる美味しい地鶏が私たちの強みです。

【酒】
産地と二人三脚でつくる、
ストーリーあるお酒。

エー・ピーホールディングスと産地・蔵元の間に、
メーカーや市販店を入れず、直接やりとりする。
そうすることで、生産者の方と直接相談し、
マーケットニーズの半歩先を捉えたオリジナル商品の開発を、
どこよりも早く、精度高く行うことができます。

産地・蔵元といい関係を築き、ストーリーをきちんとお客さまにお伝えするため、
直接足を運び、コミュニケーションを取ることも欠かしません。
地道ながら大切なことを続けたおかげで、
蔵元で使い道がなく寝ていた樽の焼酎を見つけ、
今となっては大人気商品になっています。

サワーに入れる果物も国産にこだわり、
市場には出荷できない不揃いのものをちゃんと買い取ることで、
農家の収入を助け、食べごろが分かりづらいものは、旬の状態で冷凍し、
いちばん美味しい状態で提供する。
産地としてのブランド価値の向上や、
現地の雇用を生むことにも貢献しています。

また、料理とのマリアージュを生むお酒の提案をするため、
社内ではソムリエの育成と、商品開発を積極的に行い、
現在では注文されるお酒の2～3割がオリジナル商品に。
今後はノンアルコールのマーケットも見据え、
豊かな食文化を支えるお酒の開発を続けていきます。

食とは、人となりを作り、生活の中の楽しみや、
人と社会の繋がりを育んでくれる、人生に欠かせないもの。
その本質が揺らぎ、変革が必要な場面に、
私たちエー・ピーホールディングスの仕事は存在します。
生産者、料理人、お客様、そして子供たちが生きる
未来の社会のALL-WINまで見据えて。
私たちは、社会が抱える食の課題に先頭に立って挑み、
人々が夢や希望を抱くことができる
「食のあるべき姿」を追求していきます。

時代が求める「あるべき姿」を追求した先に、
私たちが実現したいのは、
誰もが食の持つ素晴らしい価値にふれ、
新しい感動や発見を味わえる社会です。
そのために私たちは、もっと多様なブランドや
事業を開発していきます。

社内外、業種の垣根、あらゆる境界を自由に越え、
食の可能性そのものを広げていきます。
価値ある食体験を、限られた
ひと握りの人たちのものから解放し、
広く世の中に行き渡らせていくために。

私たちは、食の未来を広げる
フードクリエイター集団
＜FOOD CREATIVE FIRM＞ を目指します。