新卒の就活では、同時並行で何社もの選考を受けるケースは珍しくなく、その結果次第では内定辞退をしなければならないこともあるでしょう。しかしせっかく自分を選んでくれた企業に対して、「お断り」の連絡をするのはなかなか気まずいと感じてしまうかもしれません。
だからといって、内定辞退を伝えるのを先延ばしにしてしまうのはNG。すみやかに伝えないと、企業側にとっても多大な迷惑がかかってしまいます。そこでもし内定辞退をするとなった場合に、失礼のないようスムーズに対応するために、覚えておきたい基礎知識をご紹介していきます。
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内定辞退は企業側も想定しているもの
内定辞退はこちらから応募した企業の意向に背くことになるため、そもそも無礼になってしまうのではと心配になるかもしれません。しかし例えば毎年新卒採用をしているような会社では、就活生が複数社に応募しているのは想定した上で内定を出しているケースがほとんどです。内定辞退をしたからといって、企業側から責められたり、大学の印象を悪くしたりすることはありません。応募者が実際に入社する会社が取引先や顧客になる可能性もあるため、基本的には問題なく受け入れてもらえるのが一般的です。
内定辞退をする上で問題なのは、せっかく採用活動に時間を割いてくれた企業に対する感謝がないこと。たとえ入社しないにしても、最後まで丁寧に対応することが大切です。
最大のマナー違反は連絡しないこと
内定辞退をする時に、絶対にしてはいけないのが何の連絡もしないこと。一般的には、内定が決まればその時点で企業側から何かしらの通知が入りますが、これに応答しないのが最大のマナー違反です。企業側としても、もし内定の承諾があれば入社に向けた準備を始めなければならないので、できれば早めに連絡がほしいのが本音でしょう。入社してほしいからこそ返事を待っており、無視されてしまうと身動きが取れなくなってしまいます。
また入社しないからといって、その企業と全く縁がなくなるわけではありません。もし同業他社に入ることになれば、どこかで関係性が生まれる可能性も非常に高いでしょう。さらに無視するなどの失礼な態度を取ってしまうと、出身大学のイメージも下がってしまい、今後の就活生に影響してしまうことも考えられます。内定の通知に対しては、どのような結果であれ、必ず回答するようにしましょう。
内定辞退のタイミング
では実際に内定辞退を決めた場合には、いつ頃までに連絡するのがベストなのか、以下から詳しく解説していきます。
基本的には内定の承諾前に連絡
先ほども出てきたように、基本的に内定辞退をするのは、企業側から内定の通知が来た後です。一般的には内定通知の際に、入社の意向を示す「承諾書」などが送付されてきます。そこでそのまま内定に応じる時には、承諾書にサインをして返信するのが大まかな流れです。
もし入社するにしても内定辞退をするにしても、回答の期限としては2~3日、長くても1週間と考えておくのが無難でしょう。内定の状況によっては、再度採用活動をしなければならないケースもあるので、できるだけ先延ばしにしないように注意します。
やむを得ない時には内定承諾後でも可能
仮に入社を承諾する連絡をしてしまった後でも、応募者側からの内定辞退は特に問題はありません。内定の承諾書に法的な拘束力はなく、労働者には憲法上の「職業選択の自由」があるので、どうしてもやむを得ない事情がある時には内定辞退が可能です。
たとえ企業側が認めないにしても、民法上で2週間後には自動的に契約が解除される規定があり、もちろん入社に応じる必要はありません。ただし内定を承諾することで、雇用契約が結ばれることになるため、形式上では一方的に退職するようなものです。よほど公俗良序に反することでなければ通常はありませんが、場合によっては損害賠償請求がされることも。大きなトラブルにつながりかねないので、なるべく早めに内定辞退の旨は伝えるようにしましょう。
参考:『e-Gov 日本国憲法 第二十二条・第六百二十七条』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
迷っている時には早めに先方へ相談を
もし何社か同時に選考が進んでいる場合には、他社の結果も見てから考えたいというケースも少なくないでしょう。どうしてもすぐに返事ができなさそうであれば、内定通知を受けてから待ってもらうように交渉する方法もあります。もちろん企業側としても限度はあるので、どれくらいまで保留できるのか、十分に確認して認識を合わせておく必要があるでしょう。
結果的に内定辞退を決めたら、当然ながら待ってもらった分、より誠実な対応が欠かせません。内定辞退の連絡をする時には、そのお礼もしっかりと伝えるようにします。
内定辞退の伝え方のマナー
それではここからは、内定辞退の連絡をするにあたって、気をつけておきたいポイントを見ていきましょう
内定辞退の連絡は電話が一般的
内定辞退の旨を連絡する時には、素早く確実に意思が伝わる電話がベストです。もし電話がつながらなかった時には、メールに切り替えることをおすすめします。ただし例外的に、「すべてのやり取りはメールで」などの指定がある際には、それに従って連絡するようにしましょう。
直接話をするのは少し気が引けるかもしれませんが、きちんと誠意を見せる意味でも電話連絡が一般的です。さらになるべく相手の迷惑にならないためには、電話を入れるタイミングも要注意。もちろん営業時間外はもってのほか、例えば出社・退勤の間際や、昼休憩中などは避けたほうが良いでしょう。またあまり手間取らせないためにも、要件は簡潔かつ明確に伝えるようにします。
内定辞退の理由は詳細に言わなくてもOK
当然ながら内定辞退をする要件そのものはハッキリと伝えなければなりませんが、その理由は簡単なものでOKです。もし他社に決めたり条件が合わなかったりする場合には、「検討の結果、御社の内定を辞退するに至りました」など。そのほか健康上や家庭の事情があれば「一身上の都合により」というように、端的に伝えるだけで問題ありません。
ただし場合によっては、「今後の採用活動に活かしたい」といって、詳しい理由を聞かれることも。この際には素直に理由を述べれば良いのですが、「もっと好条件で働けそうな会社があった」といった、相手の企業を下げるような内容はNGです。例えば「より自分の適性に応じた職種に受かった」「自分の将来設計を十分に見直した末に、他社のキャリアのほうが合っていた」など。あくまで自身に原因があることを伝えるのがベストでしょう。
内定や採用活動のお礼は必ず伝える
あまりにダラダラと長話するのは好ましくありませんが、電話にしてもメールにしても、最低でも次のような要素に触れて感謝を伝えるようにします。
- 内定を出してもらったこと
- 選考の時間を作ってもらったこと
- 今この連絡に応じてもらっていること
なおかつ謙虚な姿勢がきちんと見えるように、以下のような例文を参考にしてみると良いでしょう。
- 御社からの内定は大変ありがたく存じますが
- うれしいお知らせだったところ、大変申し上げにくいのですが
- 貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます
- お忙しい中お時間を頂戴し、大変恐れ入ります
なるべく丁寧な口調で、お礼を伝えるのがベストです。
来社には応じなくても問題はない
場合によっては、「再検討してほしい」「詳しく話が聞きたい」など、説得のために来社を要請されることもあります。しかし内定辞退の意思が固いのであれば、来社する必要はないので、断っても問題はありません。例えば次のように、相手に失礼のないよう丁寧かつ明確に伝えます。
- 大変恐縮ではございますが、苦渋の決断の結果ですので、このまま辞退させていただきます
- 誠に恐れ入りますが、御社の内定を辞退いたしますので、お伺いするのは遠慮させていただきます
きちんと自分の強い気持ちが伝われば、基本的に無理に要求されることはありません。
内定辞退の連絡方法【電話編】
では以下からは、内定辞退の連絡をするシミュレーションをしていきましょう。まずは電話での連絡方法から解説します。
まずは自己紹介をして取次をお願いする
電話がつながったら、最初に簡単な挨拶をして、誰にどのような要件があるのか伝えます。
<例>
いつもお世話になっております。先日御社の採用面接にお伺いしました、○○大学の○○と申します。内定通知の件でご連絡差し上げたのですが、採用担当の○○様はいらっしゃいますか?
もし担当者につながらなかった場合には、こちらから改めて連絡する旨を伝えましょう。
<例>
かしこまりました。それではこちらから改めて、採用担当の○○様にメールにてご連絡いたします。
基本的なマナーではありますが、電話だと声が伝わりにくいこともあるので、きちんとハキハキとした口調を心がけておきます。
採用担当者につながったら内定辞退を伝える
採用担当者が出たら、再度簡単に挨拶をして、内定辞退の旨を伝えましょう。結論がはっきりと見えるように、内定辞退の意思は早めの段階で申し出るようにします。
<例>
いつもお世話になっております。先日内定通知をいただきました、○○大学の○○です。この度は内定をいただき、大変感謝申し上げます。御社からの内定は誠にありがたく存じますが、十分に検討いたしましたところ、内定の辞退に至りました。
簡単に挨拶をして電話を切る
内定辞退の意思をハッキリと伝えたら、相手の意向に沿えないことへの謝罪と時間を使ってもらった感謝を必ず伝えましょう。
<例>
今回の選考では、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。またご期待に添える回答ができず、大変申し訳ございません。
先方の採用担当者が内定辞退に承諾したら、簡単に挨拶をして電話を終了します。
<例>
お忙しい中お手数をおかけし、恐れ入ります。それでは、失礼いたします。
相手が電話を切ったのを確認した後で、こちらも通話を終えるのがマナーです。
内定辞退の連絡方法【メール編】
それでは次からは、メールでの内定辞退の連絡方法について、詳しく見ていきましょう。
件名に「内定辞退」の旨を入れる
大前提としてメール連絡で注意したいのが、相手に見逃されないようにすることです。電話のように直接話をするわけではないので、しっかりと相手に届くようにしておく必要があります。そのためにも内定辞退の連絡をする際には、必ず件名に入れておくのがベストです。間違っても無題で送ってしまわないように気をつけておきます。
例えば次のような形式で送信すると良いでしょう。
- 【内定辞退のご連絡】○○大学 □□ △△
- 内定辞退のご報告/○○大学 □□ △△
一目で分かりやすいように、大学名・氏名も併記するほうが無難です。
本文は基本的に電話連絡と同様でOK
メールの本文で伝えることは、基本的に前述にも出てきた電話連絡での内容とさほど変わりはありません。話し言葉から書き言葉に変換して、簡単に結びの挨拶を加えるようにします。
<例文>
○○株式会社 採用担当 ○○様
お世話になっております。先日内定をいただきました、○○大学の□□ △△と申します。
本日お電話いたしましたが、ご不在のようでしたので、メールにてご連絡差し上げます。
この度は内定をいただき、大変感謝申し上げます。御社からの内定は誠にありがたく存じますが、十分に検討いたしましたところ、内定の辞退に至りました。
今回の選考では、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。またご期待に添える回答ができず、大変申し訳ございません。
なお本来なら直接お伝えすべきところ、このような形でのご報告となってしまったことを重ねてお詫び申し上げます。
最後になりましたが、貴社の益々のご盛栄をお祈りしております。
<署名>
企業からの返信が来たら完了
内定辞退のメール連絡では、先方からの承諾の返信を受けるまでは待機するようにします。もし企業側からの連絡がないようであれば、メールがうまく届いていない可能性もあるので、再度電話で確認するべきです。
また承諾の返事を受けたら、何度も連絡する必要はないので、それに対する返信はせずに終了です。ただし再検討や理由を伺う返事が来た時には、必ず早めに回答しましょう。
まとめ
内定辞退をする時には心苦しく感じるかもしれませんが、相手の期待に応えられないからこそ、誠意のある対応をすることが重要です。たとえ自分は入社しない企業であっても、次に同じ大学の後輩が応募したり、将来のクライアントになったりする可能性は十分にあります。内定辞退をするからといって無下にせずに、最後の最後まで丁寧にやり取りすることを心がけておきましょう。
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