Make everyone's future exciting!
~みんなの未来を、ワクワクに!~
君は、僕の最初の生徒だった。
成績はボロボロ。授業態度も悪くて、沢山叱った。宿題をやってこなくて授業後は毎回居残り。
ノートが汚すぎて、何回も書き直しさせた。新聞をおやぶんって読んだ時はさすがにへこんだ。
そんな君にも高校受験の時は来て、二人で相談して志望校を決めた。
「俺、どうしてもこの高校に行きたいんだ」って、真剣な目で君は言った。
僕にはそれがすごく嬉しかった。今までにそんな事はなかったから。
学校の先生からは「無理だ。諦めろ」って言われたね。
努力した。悔しくて泣いた日もあったよね。君は頑張った。
そして、満面の笑みで合格の報告に来てくれた。僕は、君以上にはしゃいで怒られた。
あのね、君には秘密にしていたけど、実はもう一つ嬉しい事があったんだ。
合格の報告に来てくれた時、一緒に教室に入ってきたお客様の為に、
ドアを開けながら、「傘立てそちらですよ」って声をかけた君。
そんな事が出来るとは思っていなかったから、余計嬉しかったよ。
勉強だけじゃなくて、君はいつの間にかに人としても成長していた。
高校では「クラスで一番」を目標にしたね。バイトや恋愛の相談にも乗った。
失恋した時は、「これで忘れろ」って宿題を50ページ出した。ちょっとやりすぎた。
当初の目標通り、君は成績をきちんと取って、推薦で理系の大学に進んだ。
沢山のおめでとうに彩られて、君の塾生活は終わった。卒業の時は、一緒になって泣いた。
それから何年か後、結婚する彼女の親に反対されて、
この仕事を続けようかどうか迷っていた僕は、道端で偶然君に会った。
君は、システムエンジニアになる夢を叶えていた。
「あの頃さ、先生にパソコンの知識褒められたから、この職業に決めたんだよ」と笑う君。
先生に会わなかったら、もしかしたら学校行かなくなってたかも、と小さく呟いて、
「先生に会えてよかったよ、俺」ともう一度笑った。その笑顔は、昔のまんまだった。
違うよ。会えてよかったのは君じゃない。僕なんだ。君のおかげで、僕の気持ちも決まったよ。
このお仕事はやっぱり辞められない。僕も、君に会えてすごくすごくよかった。
とある講師の、ステキな物語でした。
いつかお会いできることを、楽しみにしています。