Interview
2002年新卒入社
常務取締役 北川 辰也
◇これまでの経歴を教えて下さい
私は大学卒業後に新卒で入社し、営業、企画、商品管理など様々な部署を経験させていただき、現在は開発をメインで行っています。恐らく経験した部署の数で言えば私が一番多いのではないかと思います(笑)
両親には申し訳ないですが…大学時代は殆ど勉強せず、遊びに明け暮れていましたが、現在は多くの裁量と責任を持って勉強させていただいています。当社は手を上げれば様々な事にチャレンジでき、年は関係なくやる気がある人が評価されるので、新しい知識が身に付き自己啓発が出来た時や、一つのプロジェクトを終えた時の爽快感は病み付きになりますね。
◇開発を始めたきっかけ
私の開発業務は当時の専務から「デザイナーと組んで展示会までに新商品を1本開発してくれ!」というものすごく無茶振りからスタートしました。苦笑 もちろん「やります」と返事をしたものの、当時は開発などやった事もない訳ですから知識もノウハウも全く無く、もちろん図面を作成する事もできませんでした。ただせっかく重要な仕事を任せてもらったので、どうせなら今までに無かった様なお仏壇を開発しようと決心し、様々なイメージ膨らませましたね。
弊社の社風でもあると思うのですが、相談に対しては親身になって応えてくれますが、基本的に任した仕事に対して余程の事が無い限りは口をほとんど出さないんです。当社のスローガンである「考える仕事を」を実践しようとしているのだと思います。開発という仕事にはデザイナーや職人との打合せ、値付け、販促戦略など、お仏壇の企画だけではなく、最終的に販売するまでに長いプロセスがあります。当時初めての仕事ではありましたが、ほとんど上司から口を出される事は無く、それらの一連の業務を一人で全て任せて頂きましたね。専務からすれば初めてやっている訳ですから口出ししたい事が沢山あったと思いますが、私の考えた通りに業務を遂行させてもらった器の大きさにいまは感謝しています。職人との対話が上手くいかない事や販売が思うようにいかない等苦労はたくさんありましたが、「百聞は一見にしかず」と言う言葉がある通り、この経験が私を成長させてくれたと思っています。一つの製品がどのように市場に届いていくのか、初めてそれを理解出来ましたし、それが自分の目線を上げることにも繋がりましたね。
実は余談なのですが、時が経ち祖父と祖母が私の処女作に入りました。自分が苦労と共に創り上げたお仏壇に祖父母をお祀りする事が出来て、毎日感謝の祈りを捧げています。
◇開発内容について教えて下さい
開発を担当し数年が経ちましたが、お仏壇の開発は本当に難しいです。入社前はどの仏壇を見ても全て同じに見えましたが、じっくり見ると一本一本見た目はもちろん、木目も違いますし、それぞれの個性があります。また、その時々の流行もあります。どの素材を使うか、どの刃物で加工するかなど、職人に無理をお願いしながら、1mmの大きさにもこだわります。たかが1mmと思うかもしれませんが、この1mmで仕上った時のディテールに大きな差がでるのです。それこそが他メーカーとの差別化するポイントだと思います。
森正は国産という事にこだわり、品質とデザインの高さを追及していますが、その中でどこまでのレベルにこだわるのか、何を採用し、何を採用しないのか、何がユーザーにとって喜ばれるのか、どうやってそれをユーザーに届けていくのか、開発担当はそういった非常に様々な判断を積み重ねていく仕事です。1本の製品開発に半年近くを要しています。
新商品の開発は売上に直結するプレッシャーの掛かる仕事であり、難度も非常に高いですが、ようやく出来上がった新商品を展示会に出展し、受注が多いとそれまでの苦労が報われる瞬間でとても嬉しいものですね。
普段からこのお仏壇が欲しいと思って購入計画を立てている人は居ないと思いますが、お仏壇は亡くなった方の象徴であると思います。威厳の有った人?心優しかった人?様々な方がいらっしゃいますし、様々なストーリーがそこにはあります。ご購入時はじっくりと見ていただき、故人にピッタリのお仏壇に出逢える事を願っています。それが私たちの製作したお仏壇であれば尚更喜ばしいことですね。
「あの人にぴったりの仏檀だ」と感じてもらえる事こそ開発名利に尽きますね。
◇今後の目標を教えて下さい
今こうして生活ができているもの、命を繋いでくれているご先祖様達がいたからだと思っています。宗教観が薄れつつある現代ですが、ご先祖様への感謝の祈りを忘れてはいけないと思うのです。睡眠や食事などは他の動物でも行いますが、私たち人間だけが行う事ができる行動は「手を合わせ、祈る」事です。人間には心があり、それこそ人間たる所以だとも思います。これからも私たちが取扱うお仏壇を通じて祈る事の大切さを伝える事で、みなさまに心のやすらぎを提供し、ご協力いただいている業者様や地域社会への貢献を行いたいです。