戦略人事とは?意味、人事との違い、3つの役割、メリット、企業事例などを解説

人材不足の解消や組織力強化のために、自社の働き方改革を考えている企業の経営者や人事担当にとって、「戦略人事」というワードを目にすることが多いのではないでしょうか。この記事では「戦略人事とはなにか」という基本から、企業にとっての必要性や取り入れ方について詳しく解説していきます。

 

社会と市場の変化に伴い、働き方が多様化している今、人事部に求められる役割も変化してきました。戦略人事の考え方を知ることで、人事部門は大きな進化を遂げられるでしょう。採用活動につながるポイントもありますので、人事担当の方はぜひ最後まで読んでみてください。

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戦略人事とは?

戦略人事とは、経営計画や事業計画の達成を目的に、より戦略的な人事業務、人材マネジメントを行なうことや、それらの業務を行なう人のこと。これまで以上に人材に対する重要性を認識し、企業の経営戦略や戦術に深く関わりながら業務に携わり、経営目標や事業目標を達成させていく経営者のパートナーとも言えます。

従来の人事との違い

従来の人事は、給与計算や労務業務などの定型的な業務が中心になることが多く、経営戦略と密接に結びついている状態とは言えない部分がありました。一方で戦略人事は、企業の競争力を高めるためには人材が必要であり、人材をどのように採用し、どのように活用すれば経営計画や事業計画を達成できるのかという側面に重きを置かれていることが特徴です。

人事戦略との違い

戦略人事と似ている言葉として、「人事戦略」があります。人事戦略とは、採用や配置、育成など、人事全般に関する業務や仕組みを改善すること。人材面におけるあらゆる問題を解決する方法を考えていくことです。一方で、戦略人事は経営に近い人事の役割。

経営や事業の目的達成のために戦略を立てることを「戦略人事」、その戦略人事にもとづいてなされることが「人事戦略」というイメージです。

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戦略人事が担う3つの役割

戦略人事の役割は、自社の経営戦略に合わせて「人材」と「組織」を連動させていくこと。

労務管理や給与計算などのオペレーション業務をメインで行なっていた従来の人事部は、「人手が足りなくなったから採用する」「社員の給与を管理する」といったように、現存している組織の管理と労働環境の整備をすることが主な業務です。

一方で、戦略人事は人材を経営資源とみなして積極的に活用するなど、「攻め」の姿勢で未来の組織と企業の基盤を築いていくこと。そんな戦略人事が担う役割は次の3つです。

  • 人材戦略の策定
  • 組織文化の構築・醸成
  • リーダーシップ層の育成・強化
人材戦略の策定

戦略人事の役割のひとつが、組織が描くビジョンや戦略にふさわしい人材戦略の策定。具体的には、組織の目標達成に向けた、必要な人材の確保や、育成プランの立案です。組織のビジョンにもとづいた人材の戦略的配置・配置転換は、組織が長期的に成功し続けるために不可欠な要素です。

組織文化の構築・醸成

組織の文化や風土を築き、醸成していくことも、戦略人事の重要な役割。組織が大切にしている価値観や行動指針の従業員への浸透や、一体感の醸成において、大きく貢献します。文化や風土が醸成された組織においては、従業員のエンゲージメントやモチベーションが高まるため、組織全体の活性化や目標達成につながっていきます。

リーダーシップ層の育成・強化

優秀なリーダーが組織をけん引し、メンバーや部下を指導することで、より良いチーム運営や成果の向上を期待できます。そのような環境をつくるための戦略人事の役割が、リーダーシップ層の育成と強化。リーダーシップ層の育成・強化によって、組織全体の能力や競争力の向上が実現します。

企業にとって戦略人事が重要な理由

戦略人事が必要とされるようになった背景は、グローバル化の進展や技術・テクノロジーの進歩による市場構造の変化が関係しています。外部環境の変化が激しくなったことで、企業は事業存続のために競争力を高める必要が出てきました。

 

そこで企業は、競争力の基礎となる合理的な組織づくりに向けて、経営組織の見直しや人事面の強化を図るようになったのです。

 

しかし近年は、少子高齢化の影響から労働力不足が続いており、人材獲得競争も激化していく一方。さらに、働き方の多様化が進んでいることもあり、働き手が1つの会社に長く腰を据え続ける時代ではありません。

 

人材の流動性が高い中で、いかに人材を確保し、活用していくか。企業の競争力を左右する採用を戦略的に考えて実行する戦略人事の存在は、これからの企業成長に欠かせないものになっています。

戦略人事のメリットは、変化が激しい時代に対応する組織をつくれること

戦略人事を導入することで企業が得られる最大のメリットは、「変化が激しい時代に対応する組織をつくれる」という点です。

 

戦略人事は、経営戦略に深く関わり、経営者に近い視点から自社の状況や将来のビジョンを把握することができるポジションです。たとえば、採用活動で考えると、誰かがやめてしまったから採用しよう、人が足りないから採用しよう、という短期的な考えではなく、中長期的に会社を成長させるために、どういった人材が必要なのか考えていくのが戦略人事です。

 

また、組織のあり方、育成なども、経営視点をもって中長期的に考え、つくっていくことも求められるでしょう。

 

さらに、経営戦略と人材マネジメントを連動させる戦略人事は、外部環境の変化をくんだ経営計画、事業計画を把握することが可能。外的変化にもスピーディーに対応し、適材適所による人材の有効活用を実現できるようになります。

 

新しい技術の導入や新事業立ち上げなど、企業が変化する時期には社内が混乱しがちですが、従業員を熟知しつつ経営者目線からサポートする立場の戦略人事がいることで、スムーズに適応できることも少なくありません。社会の変化が激しい時代だからこそ、戦略的な人事施策を行なう戦略人事の迅速な調整力は、企業の競争力の向上と持続的な成長に欠かせません。

戦略人事を成功に導くポイント

従来のオペレーショナルな人事業務だけではなく、戦略人事という考え方を浸透させるために何をすればよいでしょうか。これから紹介する2つのポイントを抑えておくとよいでしょう。

  • 経営戦略、事業戦略を深く理解する
  • 現場とコミュニケーションをとり、組織の現状を正しく把握する

一つずつ説明していきます。

経営戦略、事業戦略を深く理解する

企業が経営戦略を実現していくうえで、採用活動は不可欠なもの。しかし、自社に必要な人材を見極めて採用することは容易ではありません。そもそも、人事担当が経営戦略を理解していなければ、「どういった人材を採用すれば良いのか」「どんな組織構成を目指すべきか」という目的が曖昧になり、適正な採用基準を導き出すことができません。

 

だからこそ、戦略人事は自社戦略への理解を深めることが何よりも大切です。経営戦略、事業戦略をしっかりと理解できていれば、実現するために必要な組織構成や人材像を明確に捉えることができます。経営戦略や経営陣の考えを良く知るためには、密にコミュニケーションをとり、自社の課題を洗い出しておくことが重要です。

 

また、人事戦略を練る際は短期ではなく、長期的な事業計画を視野に入れた状態で進めることもポイント。将来のビジョンを見据えた戦略的な人材採用と育成のためには企業全体だけでなく、部門ごとの目標や計画も把握しておく必要があります。

 

各部門から現状と今後の施策を具体的にヒアリングしておきましょう。その際は、各部門が掲げる計画や目指す方針が経営陣のビジョンとずれていないかを確認し、不一致の場合は目線を合わせた上で目標設定を行なうように調整してください。

現場とコミュニケーションをとり、組織の現状を正しく把握する

適切な人事を行なうには、人事担当が従業員を熟知できているかどうかが大きなポイントです。戦略人事が従業員の適性やスキルを把握していると、経営戦略に合わせた人材配置や教育がスムーズに展開できます。だからこそ戦略人事は経営陣だけでなく、現場とのコミュニケーションを深めることが大切なのです。

 

戦略人事は円滑な意思決定と計画的な組織運営ができるように、各部門の組織体制や従業員に関するデータベースを作ることをおすすめします。現場が抱えている不満や従業員の能力・適性・ストレス耐性といった資質を知るために、社員の評価と分析を行なう面談やテストを実施すると良いでしょう。

 

個人を深く知ることで、従業員の適性に合わせた教育機会を設定するなど、それぞれがスキルを十分に活かすサポートをすることも可能。従業員が自身の個性を発揮できる環境や、新しいチャンスを掴む機会を持ち続けることは、企業力の底上げにつながります。

 

また、戦略人事が従業員について知ることで、組織ごとの役割や能力を正しく把握できるという点もポイントです。新事業の立ち上げや組織の再編成といった経営判断が必要な場面においても、スピーディーな意思決定と実行ができるようになるでしょう。

戦略人事の事例

戦略人事を導入するポイントを抑えたところで、実際に戦略人事を導入している企業の事例を見てみましょう。今回紹介する事例は、日清食品株式会社と株式会社日立製作所の2社です。それぞれ「自社の強み」を活かした活動を行なっている企業となりますので、戦略人事をどのように取り入れればいいか悩んでいる人事部は、ぜひ参考にしてみてください。

日清食品株式会社

日清食品株式会社は、グループビジョン「EARTH FOOD CREATOR」の実現のため、人材育成の体制を強化。2020年度からは企業内大学「NISSIN ACADEMY」を設立し、全社員対象の研修はもちろん、次世代リーダーの育成や経営陣育成に取り組んでいます。

 

自社が目指す経営戦略の達成に向けて、従業員に必要なスキルやマインドを習得できる環境を用意することは戦略人事にとって重要なポイントです。

 

日清食品では新入社員研修のほか、2年次・3年次研修、新任管理職研修など階層別に研修の機会を設けることで、基礎能力を伸ばしながら個々のスキルを把握。中長期的なキャリアビジョンを形成できるようにサポートしながら、従業員の自律的なキャリア形成と人材育成に成功しています。

 

自社の経営戦略に対して、段階的な人材育成の手段を検討する際は、日清の研修方針を参考にしてみると良いでしょう。

参考リンク:https://www.nissin.com/jp/sustainability/social/employee/development/

株式会社日立製作所

社会イノベーション事業のグローバル展開を目指す日立製作所は、経営戦略と事業戦略に基づいて必要な組織と人材を考える人財マネジメントの基盤構築に力を入れています。

 

経営のグローバル化が進むと同時に、ビジネスモデルの転換が必要になった同社は、国や地域、また事業部門の枠組みを超えて業務を遂行する体制「One Hitachi」を推進。人財マネジメントの変革を行ない、各社・各国ごとに定めていた人事制度や施策をグループ・グローバル共通に変更しました。日立グループ・グローバル共通の「グローバル人財データベース」を構築し、各種人財施策のアプリケーションに活用しているのです。

 

今後は、人財マネジメント統合プラットフォームの展開を図り、人財に関する情報やプロセスをグローバルに一元化。プラットフォームの情報には、基幹となる人財データベース・パフォーマンスマネジメントのほか、組織編成・人財配置、キャリア開発・人財育成などが含まれます。

 

従業員一人ひとりの強みや多用性を活かしながら、グローバルに最適な人財配置や将来の経営リーダー候補が育成できるデータソースを築いていくことを目指しています。

参考リンク:https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2018/04/07a01/index.html

戦略人事とともに、重要になるCHROの存在

戦略人事を取り入れる際は「CHRO」の存在が重要になります。「CHRO」とは、「Chief Human Resource Officer」の略称で、和訳すると「最高人事責任者」という意味になります。

 

日本ではまだ認知度の高くない役職ですが、海外企業ではメジャーな役職として認知されています。人事に関する業務においては、経営者と同様の責任と権限を持つ立場です。CHROは経営陣の一員として、経営戦略の策定に関わりながら人事関係の業務全般を統括することで、事業計画の実現に向けた組織づくりを推進します。

 

つまり、CHROは戦略人事の実行において要となるポジション。人材資源の調達や配分といった人事施策の進捗管理をはじめ、社員育成や人事評価制度の見直しにも携わります。人事視点で経営をサポートする、いわば人事のプロフェッショナル。企業の成長に貢献する存在です。

 

戦略人事を運用する際は、リーダーシップを持つ優秀なCHROの存在が必要。CHROの導入によって、戦略的な人事施策を展開していくことができます。

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戦略人事を意識した採用活動を実現するには?

戦略人事を意識した採用活動を実現するためのポイント

戦略人事を意識した採用活動を実現するためには、下記3つのステップを抑えておくことが重要です。

  • 経営計画、事業計画を理解する
  • 経営計画と現状との差を理解する
  • 採用人数、人材の要件を定義する

経営者のビジネスパートナーとして経営に関わる戦略人事は、自社に必要な人材を明確に把握したうえで求職者を見極めることが求められます。計画的な採用活動を進めて「人材」と「組織」の将来設計を描きながら、経営を積極的にリードしていきましょう。

経営計画、事業計画を理解する

戦略的に人事体制を作っていくためには、人事部が経営目標や事業計画を把握し「どういった人材が必要なのか」を知っていることが大前提。目の前の計画だけではなく、中長期的な計画と経営ビジョンを理解することで必要な人事施策を構築し、事業計画を成功に導くことができます。

 

自社の経営戦略に合わせて必要な人材を獲得し、計画的に育成していくことは、戦略人事の腕の見せ所とも言えるでしょう。

経営戦略と現状との差を理解する

経営戦略を進めていくには、自社の現状を正確に理解していることも重要。現状と理想の差を知ることで、戦略に対する課題と改善点がより明確になります。

 

まずは、現状と理想を具体的に調査し、どの程度のギャップがあるのかを把握しましょう。自社の現状により、すぐに人材が必要になる採用もあれば、現状で人的リソースが十分ある場合は中長期的なところから採用することもあるでしょう。定期的に人事施策が予定通りに進んでいるかをチェックしながら計画的に採用と育成を行ない、経営戦略のサポートに努めてください。

採用人数、人材の要件を定義する

戦略人事は経営戦略と事業計画を理解し、現状を把握することで自社に必要な人材像を見出すことが可能です。

 

特に自社が目指すべき理想と現実とのギャップを知ると、その差を埋めるために「どのようなスキルをもつ人材が何人必要か」がはっきりと分かります。自社に必要な人材の定義と採用人数が明確であれば、採用活動はとてもスムーズに進みます。

 

採用後の配属先や育成計画など最適な人材配置を考え、求職者を見極めながら長期的な視点で人事戦略を考えることが大切。状況に応じて研修制度や評価制度を見直しながら、企業と従業員の成長に貢献できるようなバックアップ体制を整えましょう。

採用、組織開発、人材育成、評価…戦略人事の範囲は広い

もちろん、採用だけが戦略人事の手法ではありません。企業の現状によっては、人材を採用することが予算的に難しい場合もあるでしょう。戦略人事にとって大事なのは、人的リソースを有効活用し、経営と事業に貢献していくことです。そのためには、まず既存の従業員を有効的に活用し、パフォーマンスを最大化させることが大切になります。

 

組織をより強くするために、組織のカルチャーや従業員のエンゲージメントを高め、個々の能力を上げるなどの人材育成に注力することも重要です。さらに人材のモチベーションを高めるためには、正当な評価制度設計も必要になります。採用・組織開発・人材育成・評価面も考えながら人材を活用し、社会の変化と競争に打ち勝つ組織づくりを推進していきましょう。

まとめ

変化していく市場と社会情勢にあわせて、企業には多くの変化が求められています。なかでも企業の競争力向上の鍵となるのは「人材」を動かす人事部のあり方。人事部が戦略的な役割を担い、経営的視点を持つことで組織は大きく変化します。

 

戦略人事は組織のあり方や従業員のキャリアを左右する立場になるため、これから遂行していく人は、まずは自身の立場と課題をきちんと理解することからはじめてみてください。従来の人事としての考え方を一新し、前向きな人事戦略とマインドセットを自社内に伝播できる存在になれば、企業の変革に貢献できる戦略人事となれるでしょう。

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