テレワークの推進により、ビジネスの環境が大きく変化した昨今。以前なら問題なく機能していた人事評価制度も、労働環境の変化によって現場と合わなくなり、見直しを強いられることも増えています。人事の大切な仕事のひとつである、管理職への昇格・昇進の決め方も例外ではありません。
たとえば、同じ部署内であっても顔を合わせることが減った職場では、同僚の昇格をはじめとするポジションの変更があった際、「なぜあの人が管理職に?」「昇進の基準は?」と疑問視されるケースも増えています。人事決定への不満が強まると人材流出に繋がってしまうリスクもあるため、早期の対処が必要です。
今回は、そんな課題の解決策のひとつとして注目されている「昇格試験」についてご紹介します。昇格試験の概要や、管理職へ昇進・昇格させるべき人物像、昇格試験の具体的な進め方もあわせてまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
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- 昇格試験とは
- 組織運営に「昇格試験」が求められる背景
- 昇格試験前に知りたい「昇格させるべき人物像」とは
- 昇格試験の種類その1:適性検査
- 昇格試験の種類その2:人材アセスメント
- 昇格試験の種類その3:面接
- 昇格試験の結果は丁寧にフィードバックするのが大切
- まとめ
昇格試験とは
昇格試験とは、特定の人材が今より高い職位に昇格するに値するかどうかを確かめる試験のことです。面接や適性試験といった複数の試験から成ることが多く、この試験の合否によって、組織内で昇進・昇格できるかどうかが決まります。
なお職位とは、組織内における地位のことを指します。具体的な地位としては、会長・社長・専務・常務・監査役・本部長・部長・次長・課長・係長などが挙げられるでしょう。役職と同じようなニュアンスで使われることも多いです。
昇格と昇進の違い
昇格とよく似た意味で使われるワードに「昇進」があります。いずれも職場の立場があがることを指す言葉ですが、ニュアンスが少し異なります。まず昇進とは、「役職が上がる」ことを指しています。具体的には、一般社員から主任、主任から係長、係長から管理職、というように、組織内の指揮系統の中で、これまでより上の立場に就くことを意味します。役職の変化が周りからもはっきりとわかるところが特徴です。
一方、昇格とは「格が上がる」という意味です。具体的には組織が定める職能資格制度において、今までよりも上のランクになることを意味します。職能資格制度とは、従業員の働きぶりに応じてランクを付け、該当するランクに応じた報酬を支払う制度のことです。ランクと職位は必ずしも連動しないため、「昇格はしたが、職位は同じまま」ということもありえます。昇格は給与アップなどのメリットがありつつも、周りから認識されないこともあるところが昇進との大きな違いです。
組織運営に「昇格試験」が求められる背景
組織運営に「昇格試験」が求められる背景としては、以下の理由が挙げられます。
昇格への公平性や納得感を保つため
従業員の昇格を決める方法として、明確な評価基準を設けている企業は意外と多くありません。中には、上司や管理職の個人的な判断で部下の昇格や昇進を決めたりする企業もあります。しかし、明確な基準がないまま昇格を決めてしまうと、「なぜあの人が昇格を?」「どうしてあの人が管理職に?」と、他のスタッフから疑問視されてしまいかねません。昇格基準が不透明だと、今後のキャリアアップへの道筋も立てにくく、組織への不満も強まりやすいです。最悪、昇進・昇格した人への反発も起こってしまいます。これらを防ぐために、試験という明確な指針が求められているといえるでしょう。
リーダー候補としての適性を事前に見極めるため
昇格・昇進した人は、組織のリーダー的ポジションとして部下を率いることになります。ときには管理職として、経営方針そのものに関わる機会も増えてくるでしょう。よって、もし誤った人選をすれば他の従業員のモチベーションの低下や、最悪事業成長の停滞をも引き起こしかねません。一度誰かを管理職などに昇格・昇進させたあとで「失敗した」とわかっても、短期間で降格させることは難しいため、事前に吟味することが大切です。
「組織に必要な管理職」の人材要件を改めて考えるため
昇格試験に際し、組織側は管理職に昇格させる人物像についてきちんと考える必要があります。使い古された評価制度を見直し、現場の現状やこれからの経営方針に即した管理職を人選するために、有効な機会といえるでしょう。
昇格試験前に知りたい「昇格させるべき人物像」とは
昇格させるべき人の特徴は、組織が目指すありかたや、昇格させる職位によって異なります。ただ、人を率いる立場、特に管理職になる人材に持っていてほしい要素や、逆に懸念すべき要素には共通点があるのも事実です。具体例を見てみましょう。
昇格させるべき人物像の特徴
管理職に昇格させるべき人物像の特徴としては、以下が挙げられます。
- 現場で出した確かな実績がある
- 周りから「仕事ができる人」と認められている
- 周りから好かれているが、嫌われることを恐れない強さがある
- 組織のマインドやビジョンに共感している
まず前提として挙げられるのが、仕事ができる人であることです。昇格によって管理職を始めとするポジションに就く以上、部下が「自分より仕事ができる人だ」と一目置ける存在である必要があります。
次に、周りから一目置かれる人望がありつつも、周りに忖度しすぎない判断力があることも重要となります。昇格・昇進によって管理職になった場合、必要に応じて部下に厳しい指摘や、周囲から好ましく思われない業務改革なども行なわなければなりません。管理職として、組織のマインドやビジョンを踏まえた上で、適切な判断を下せる強さがあるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
また、実績や能力があってもインテグリティにかける人材を登用してしまうと後々大変なことになることもあるので、注意が必要です。インテグリティとは、「誠実さ」「高潔さ」「真摯さ」といわれるもので、管理職には重要な資質とされています。インテグリティが欠けた管理職が増えてしまるとどうなるでしょうか?組織として正義感、誠実さが失われ、不正などに手を染めてしまう可能性もあります。まずは管理職が誠実であること。これが大切な資質とされています。
組織を任せにくい人物像の特徴
一方、管理職として組織を任せにくい人物像の特徴としては以下の2つが挙げられます。まず1つめの特徴は、知的な傲慢さがある人です。知的な傲慢とは、自分の有しているスキルや知識を、他者のものより有益なものであると過信してしまうことを指します。かの有名な経営学者、ピーター・ドラッカーが著書「明日を支配するもの」で説いた「矯正すべきもの」であり、自分自身の強みを妨げてしまう考え方だとされています。知的な傲慢さがある人に組織を任せない方がよい理由としては、以下の理由が挙げられるでしょう。
- 周りの意見に耳を貸さないから
- 昇進または昇格したことによって今の自分に満足してしまい、今後の成長が期待しにくいから
- 成長しようとする周りの意欲を削ぎやすいから
2つめの特徴は、チームワークを乱す人です。悪態をついたり、不機嫌な態度を見せたり、すぐに相手を否定したり、多様性を認めなかったりするなど、チームワークを阻害する態度を取る人が該当します。このような態度を頻繁に取る人が管理職になれば、周囲に不要なストレスを与えてしまいます。その結果、部下のモチベーションを下げやすく、人間関係のトラブルも引き起こしかねません。
これら2つの要素を持つ人は、昇格・昇進させる前に改善が必要といえるでしょう。また、特定の個人に対して知的な傲慢やチームワークを乱す態度を諫めるのではなく、日頃から管理職を含めた社員全員に指導していくことも大切です。会社の方針として学びを推進し、チームワークを大切にする風土があれば、組織力の向上を促す人材が育ちやすいところがメリットといえます。
昇格試験の種類その1:適性検査
最後に昇格試験の具体例として、適性検査、人材アセスメント、面接という3つの手法をご紹介しましょう。まず適性検査とは、当人の適性をテスト形式でチェックする試験のことです。当人の様々な能力や指向を数値的に測ることができるため、客観的な評価を確認したいときに役立ちます。適性検査には主に、能力適性検査、性格適性検査、指向(態度)適性検査の3つがあります。それぞれの特徴についても見てみましょう。
- 能力適性検査
業務をスムーズに進める能力の有無をチェックする検査。作業の効率性をはじめ、課題解決能力を測ることも可能。
- 性格適性検査
当人の性格的な適性をチェックする検査。組織の風土への適性や行動様式、仕事のモチベーションの有無、メンタル的な健全さの有無などの確認に役立つ。
- 指向(態度)適性検査
当人が興味を持っていることや、キャリアへの向き合い方などを測る検査。昇格試験のほか、キャリア育成に向けた事前調査として実施されることもある。
適性検査の注意点
適性検査は、当人の適性を客観的に評価できるところがメリットですが、現場でのリーダーシップやとっさの判断力など、実践的な能力を測りにくいという弱点があります。また、適性検査でいい結果が出ても現場ではうまく指揮できない人もいるため、他の評価方法と組み合わせることが大切といえるでしょう。
昇格試験の種類その2:人材アセスメント
人材アセスメントとは、組織外の第三者に、組織内の人材を評価してもらう手法のことです。代表的な方法としては、「アセスメント研修」が挙げられます。アセスメント研修とは、実際の業務に似た状況を作ったうえで、対象者がどのような行動を取るのかを、組織外の第三者に客観的に評価してもらう方法です。擬似的な状況下ではありますが、実際の現場に似た中での判断力や対応力を見ることができる点や、人材に詳しい専門家の評価を参考にできる点などが導入メリットです。
人材アセスメントの注意点
アセスメント研修は擬似的な環境下での対応力を見ることから、評価判定がチェック担当者の主観に寄りやすい点に注意が必要です。また、あくまで擬似的な行動を評価するものなので、実際の現場での対応力については判断がつきにくいこともあります。適性検査などの昇格試験を組み合わせて行ない、昇進・昇格における評価の正当性を確保する必要があるでしょう。
昇格試験の種類その3:面接
面接は対象者とのコミュニケーションによって、相手の人格や、昇進・昇格への意欲などを確認する手法のことです。昇格試験や昇進試験のほか、採用試験などにも広く活用されています。面接の進め方は、組織の風土や試験対象者によって様々ですが、主に以下の4つのフローに沿って行なわれることが多いです。
1.挨拶と面接内容の説明
2.アイスブレイク
3.ヒアリング
4.質疑応答
まずは簡単に面接内容の説明を行ない、受験者が緊張しているようであればアイスブレイクなどの気軽な声かけを行ないます。面接の本番にあたるヒアリングについては、面接官からの質問によって進めたり、事前に対象者に課題を出した内容について論じたりなど、面接官の方針に合わせて進められることが多いです。面接の質問例としては、以下が挙げられるでしょう。
- とっておきの自慢話をしてください
- 今までどのような仕事をしてきましたか
- 仕事をする際、どのようなことを心がけてきましたか
- 仕事で苦労したことを教えてください。また、その際にどのような行動を取りましたか
面接の注意点
面接は、専門家が評価するアセスメント研修などよりも、さらに評価が主観に寄りやすいところが注意点です。たとえば面接官の好き嫌いによって昇進・昇格への評価が左右されたり、受験者のこれまでの経歴に評価が引っ張られたりする「ハロー効果」が起こりやすいです。また、面接官の質問によっては正当な評価を引き出せないこともあるため、事前に質問や昇進・昇格の評価基準を用意し、評価が面接官によってぶれないように配慮する必要があるでしょう。
昇格試験の結果は丁寧にフィードバックするのが大切
昇格試験を実施する際の注意点としては、結果を丁寧にフィードバックすることが挙げられます。特に昇格試験の不合格者については、ただ不合格であることを伝えるだけでなく、なぜ不合格だったのかをきちんと説明し、次回に活かせる内容があれば共有するようにしましょう。なぜなら、昇格という大きなチャンスを逃したスタッフは落胆からモチベーションが下がりやすく、最悪転職などを考えやすいからです。本来昇格試験は組織の管理職を増やすことではなく、組織力を強化し、人材を成長させるためのものといえます。受験者が合否に関わらず前向きな気持ちになれるよう、組織的にサポートしていきましょう。
まとめ
人事決定への公平性を保つことができる「昇格試験」の概要や具体的な進め方についてご紹介しました。昇進・昇格させる人材の選び方は、組織のこれからを担う管理職の選定基準にも繋がるため、慎重に決める必要があります。また不公平感が出ないように、周囲にも納得感のある評価をしていくことも重要です。ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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