人事異動とは?メリット、デメリット、正しい手順、退職防止策を解説

「人事異動を行ないたいけど、どのように進めればいいのかわからない」、「異動の旨を、本人にどのように伝えていいのか悩んでいる」そんな人事担当者にこそ、この記事をオススメします。

 

この記事では、人事異動の目的やメリット、デメリット、正しい進め方、本人への伝え方のポイント、最近話題の「オンボーディング」を活用した退職防止策などをお伝えしていきます。人事異動に失敗しないノウハウがたくさんあるので、ぜひ最後までお読みください。

 

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人事異動とは

一般的には、「社員の配置や地位、勤務条件を変えること」と認識されていますが、そもそも人事異動という言葉に明確な定義はありません。たとえば、人材の採用や社員の退職なども人事異動の一種です。人事異動は、時期を問わず、一年を通して行なわれるものですが、多くの日本企業においては、事業戦略、組織戦略が変わる年度末に実施されることが多い傾向にあります。

人事異動の種類

代表的な人事異動の種類とその意味は下記です。人的リソースをより有効に活用するために、下記の種類の人事異動があります。

  概要
部署異動 配属される部署が変わること。たとえば、営業部から人事部に変わるといったケース。
転勤 勤務する場所が変わること。たとえば、勤務地が本社から営業所に変わるといったケース。
昇進 社内での地位(役職)が上がること。たとえば、課長から部長になるといったケース
降格 昇進と逆の意味で、社内での地位(役職)が下がること。たとえば、部長から課長になるといったケース
出向 自社に在籍したまま、別の企業(関連会社など)に異動して勤務すること。異動先(出向先)は、親会社や子会社といった自社の関連会社であるケースが多い。
転籍 自社との雇用契約を解除し、別の企業(関連会社など)と雇用契約を結んで働くこと。出向と似ていますが、自社に在籍したままか、雇用契約を解除するかという点が異なる。
解雇 従業員の合意を得ることなく、企業が一方的な意思表示によって労働契約を解除すること。懲戒解雇、整理解雇、普通解雇といった3つの種類がある。
免職 国家公務員法や地方公務員法に規定されている懲罰のことで、公務員の強制解雇を示す。民間企業では「解雇」と表現される。

人事異動を行なう目的

続いては、人事異動を行なう目的をお伝えします。

人事異動の目的は下記の3つです。

  • 事業計画を達成させるため
  • 人材を育成するため
  • 組織を活性化させるため

では、1つずつ解説していきます。

事業計画を達成させるため

経営計画や事業計画を達成するためには、人的資源の有効活用が欠かせません。たとえば、営業部門の売上目標額を10億円増やしたい場合、一人当たりの売り上げ目標額をあげて達成を目指すのは現実的ではありません。そのため、10億円の売上アップを実現するための人的資源が必要になります。採用活動などを行なうこともありますが、部署異動などのほうが有効になる場合もあります。

人材を育成するため

より広い視野を持って自社の事業に関われる幹部候補人材を育成するために、人事異動を行なうこともあります。なぜなら、営業部や商品企画部、開発部といったさまざまな部署で経験を積ませることで、幅広いスキルや知識を身に付け、また、各部署の業務や実情などの理解を深めることもできるからです。

 

これは、終身雇用を前提とした多くの日本企業において、「ジョブローテーション」というかたちで行なわれています。数年ごとに部署異動をさせるのが一般的です。

組織を活性化させるため

部署のメンバーが長年にわたって固定されていると、「人間関係が広がっていかない」「新しいアイデアが生まれにくくなる」といったことが起こりやすくなります。その結果、組織が活性化せず、企業の競争力が下がってしまう恐れも。このような事態を避けるために、新しい人材をその部署に異動させることで、組織の新陳代謝を図っていくことが有効です。

人事異動のメリット

人事異動による主なメリットは次の4つです。

  • 部署や組織の活性化
  • 社員のモチベーション低下の防止
  • 優秀な社員の創出
  • 社員の定着率向上

では、1つずつ解説していきます。

部署や組織の活性化

異動者が異動前の部署で身につけたスキルや知識を異動先の部署で活かすことで、異動先の部署の既存社員がそのスキルや知識を手にできるなど、部署の活性化や組織の業績向上を期待できます。

社員のモチベーション低下の防止

異動先の部署で新しいミッションを担ったり、今までとは異なるスキルや知識を習得しようという意欲が高まったりすることで、仕事へのモチベーションアップにつながっていきます。

優秀な社員の創出

人事異動を通じて、異動者はさまざまな部署やミッションを経験することになります。それにより、幅広いスキルや知識を養うことができるため、社内のエース級人材に成長してくれることも期待できます。

社員の定着率向上

「さまざまな経験を積みたい」という理由で退職する社員は少なくありません。しかし、異動できる部署やポジションが社内にあれば、「転職しなくても、人事異動を通じてキャリアアップできる」と考えてもらえるため、社員の定着率向上も期待できるでしょう。

人事異動のデメリット

人事異動はメリットがある一方で、デメリットが生じる可能性もあります。人事異動の主なデメリットは次の2つ。

  • 社員の離職や体調不良につながるリスク
  • 異動後の業務に支障をきたす恐れ

では、1つずつ解説していきます。

社員の離職や体調不良につながるリスク

「左遷と感じた」「自分は必要とされていないと思った」など、仕事で成果を上げてきた社員が異動をネガティブに捉えるケースも少なくありません。その社員のモチベーションが低下し、最悪の場合、離職や体調不良につながってしまうこともあります。

異動後の業務に支障をきたす恐れ

人事異動が実施されると、異動者は後任者へ業務を引き継ぎ、また、異動先の部署では前任者から業務を引き継いでもらうことになります。しかし、引き継ぎのための期間が十分に確保されなければ、異動後も引き継ぎ業務に時間を割かれることになり、業務に支障をきたしてしまうでしょう。

人事異動を実施する時の伝え方

人事異動を社内で正式に発表する前に本人に伝えることを、「内示」と言います。そして、内示の伝え方を工夫することで、社員に人事異動を快く受け入れてもらうことができます。社員にポジティブに人事異動を受け入れてもらえるポイントは次の2つです。

  • ミッションを必ず伝える
  • 本人の目的に紐づけて伝える

1つずつ説明していきます。

ミッションを必ず伝える

まずは、その人のこれまでの経験を活かして、新しいポジションで期待することをポジティブに伝えましょう。異動先で担ってほしい役割を理解してもらうことで、「自分は会社から期待されている」という気持ちを持ってもらうことができ、モチベーションのアップにつながっていきます。

 

ここがきちんと説明されなければ、「なぜ自分は異動になったのか」「もしかして自分は期待されていないのではないか」という不安な気持ちが生まれる恐れがあります。

 

人事異動の目的は、その人に次の場所でも活躍してもらうこと。そのために、ポジティブな印象を持ってもらえるように伝えましょう。

本人の目的に紐づけて伝える

会社からの期待を伝えながら、本人にとってどのようなメリットがあるのかも伝える必要があります。人事異動によって新しく行なう仕事を通じて身につくスキルや経験はどのようなものか、その人が希望するキャリアにつながることをきちんと示すことで、人事異動をポジティブに受け止めてくれる可能性が高くなります。そのため、前もって本人のキャリア希望などについても把握しておくことが大事です。

人事異動の手順

人事異動の目的やメリット、デメリットなどを理解できたところで、人事異動の進め方を見ていきましょう。具体的には下記4つのステップに沿って進めていくことをオススメします。

人事異動のステップの図

各部門へヒアリング

事業戦略などが見直される時期が近づいてくると、どのように組織にしていくか検討が始まります。まずは、各部門の要望や意向を収集することから始めましょう。「人材を増やしたい」「退職意向がある人材を異動させたい」といった情報を集め、それらの情報を事業成長や組織運営の観点から精査していきます。

 

そして、人事異動を行なう部署を明確にし、その部署に必要な人材や、異動させる人材の活躍が期待できる部署などについて、各部門の責任者と話し合いましょう。

異動者を決めていく

異動者の決め方には、会社からの辞令というかたちで行なう場合や、社内公募で行なう場合があります。辞令の場合は、各社員それぞれの希望するキャリアや、最近の仕事ぶりなどをチェックし、異動が可能かどうか、異動先で活躍が見込めるかなどを判断していきましょう。

 

一方、社内公募の場合は、基本的には求人を行なう際と同じです。部署で担ってもらう仕事内容、求めるスキルや知識、志向性などを詳しく公開することで、社員からの応募を募りましょう。

異動候補者と面談

辞令で異動者を決める場合は、まずは本人が在籍している部署の上司に、その人を異動させたい理由や異動先で任せたいミッションなどを伝えましょう。そして、上司から異動を承諾してもらえたら、本人に異動の旨を伝えます。社内公募の場合は、応募者(異動希望者)を選考し、候補となる応募者がいれば、異動先の上司との面談を実施します。そして、双方の合意を形成できれば、人事異動を進めていきましょう。

関係部署へ通知&異動

異動者を決定したら、異動先などの関係部署に周知していきます。異動先の部署ではその人を受け入れるための準備などもあるので、時間的な余裕も含めて丁寧に進めていきましょう。また、たとえば転勤の場合は、引越しの支援も必要になります。しかるべきタイミングになれば人事異動を行ないましょう。ちなみに、会社全体に人事異動の旨を周知するか否かは会社によって異なります。

社員のデータベースをつくっておく

人事異動を進めるうえでは異動者を決める必要がありますが、事前に各社員の情報を把握できているほうが、異動者を決めやすいと思います。そのためにおすすめなのが、社員のデータベースをつくること。「データベース」というと大そうなものをイメージされるかもしれませんが、シンプルなものでOKです。

たとえば、Excelで作成してもいいでしょう。縦の列に社員の名前を、横の列に各社員について詳しくわかる項目を記載していきましょう。記載する項目は下記のような情報がおすすめです。

  • これまでに経験した業務
  • 保有しているスキルや資格
  • 興味を持っている仕事
  • キャリアの希望や目標

また、上記は変化することもあるため、定期的な面談や1on1などの場で確認し、必要であれば情報を更新していきましょう。

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人事異動による退職を防ぐためのポイント

「家族の理解を得られなかった」、「本当は現在の部署でキャリアを築いていきたかった」、「異動先では自分が希望する仕事ができない」。たとえばこのように、人事異動がネガティブに受け止められた場合、異動後のモチベーション低下や、最悪の場合、退職を招いてしまう恐れもあります。できるかぎりそのような事態を防ぐためには、次の4つがポイントです。

事前に十分ヒアリングを行なう

人事異動を検討し始めるタイミングに限らず、普段から定期的に、社員の希望するキャリアや仕事におけるやりがいなどをヒアリングしておくことが大切です。社員一人ひとりの要望を把握できていれば、各自の意向に沿ってスムーズに人事異動を行ないやすくなります。そして、意向に沿った人事異動をできることは、辞令による退職の防止に有効です。

人事異動の理由をしっかり伝える

もし、本人が希望していない人事異動であっても、理由などをきちんと伝えることで、退職の可能性を抑えることができます。人事異動の旨を伝える際は、異動してもらいたい理由や異動先で期待する役割などを丁寧に伝えることで、本人のモチベーションをアップさせることができます。モチベーションを醸成できれば、前向きな気持ちで人事異動を受け入れてくれるでしょう。

公募・立候補形式にする

そのポジションを希望する人に任せることが、モチベーションを持って仕事に取り組んでくれるので、退職を防ぐことには有効です。そのため、社内公募などの立候補形式もオススメです。社内で希望者を募る際は、任せる仕事内容や活躍が見込める人物像などをできるだけ詳細にし、社内に広報しましょう。新卒作用や中途採用と同じように、詳しい情報を提供することが、配属後のミスマッチを防ぐことにつながります。

活躍できる環境を整えること

最近では、新たに採用した社員の受け入れ、定着、戦力化を早期に行なうための施策として「オンボーディング」という言葉が注目されています。新卒採用や中途採用における施策だと思われがちですが、そんなことはありません。考え方としては、社内の部署異動にも活用できます。

 

たとえば、異動者がつまずきやすいポイントを本人に事前に伝えておく、疑問に思ったことを気軽に質問できる環境をつくっておくといった施策を講じることで、異動後の退職リスクを軽減することができます。

 

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明確な理由なく人事異動を拒否されたら

就業規則で人事異動についてルールが決まっていて、人事異動に業務上の必要性があれば、原則として、一般的には辞令は人事権の範囲と考えられています。そのため、もしも本人が辞令を拒否するなら、あくまでもたとえばの話ですが、「業務命令違反」による懲戒処分扱いにすることもできます。

 

しかし、その選択はオススメしません。まずはしっかりと本人に向き合い、人事異動を拒否する理由を丁寧にヒアリングしたうえで、再度、納得してもらえるようにコミュニケーションすることが有効だと思います。

人事異動命令が無効になる場合

就業規則に書かれている内容が合理的であれば、会社は人事異動を命じることができ、社員は人事異動命令を拒否することは基本的にできません。しかし、次のような場合は会社の権利の濫用となり、人事異動命令が無効になります。

  • 業務上の必要性が存在しない場合
  • 不当な動機や目的がある場合
  • 労働者の不利益が大きい場合

人事異動を検討・実施する際は、上記の点に十分注意を払うようにしましょう。

人事異動が多い時期

人事異動にはさまざまな種類があり、一年を通して行なわれます。しかし、部署異動や転勤、昇進などをはじめ、3月末や年度末に人事異動は行なわれることが多い傾向にあります。その理由は、事業戦略の見直しに伴う組織戦略の変更などが出る時期だからです。

 

また、節目やキリのよいタイミングで人事異動の旨を伝えられる方が、社員にとっても動きやすく、気持ちを新たにしやすいというメリットがあります。

 

ちなみに、人事異動の旨は決定した時期にもよりますが、約2~3ヵ月前には当人に伝えておくのがよいでしょう。人によっては家族への相談なども必要になるため、時間に余裕があれば、じっくりと考えてもらうことができます。

まとめ

今回は、人事異動についてお伝えしてきました。人事異動の種類はさまざまですが、基本的には、事業の発展と異動する本人のキャリア形成の両者が実現されることが望ましいです。なぜなら、社員の希望などを無視した人事異動は、退職リスクを高めることにつながるからです。

 

そして、実際に退職につながってしまえば、周囲の社員の業務上の負担が大きくなるなど、良いことはひとつもありません。人事異動を行なう際は、その異動が本人の希望するキャリアにどのようにつながっていくのか。その点をしっかりと考え、本人に伝えていくことが大切です。

 

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