嘱託社員とは?契約社員とどう違う?雇用前に知りたいQ&A


高齢化や平均寿命の延伸に伴い、一般的な定年である「60歳」を超えても引き続き働きたいという人が増えています。企業側としても人手不足などの観点から、経験豊富な人材を定年後も「嘱託社員」として再雇用するケースも珍しくありません。

 

今回は、そんな嘱託社員についてのトピックを網羅。「嘱託社員って何?」という基礎知識はもちろんのこと、契約社員・派遣社員との違いや、正社員との待遇の違いなどについて紹介します。

 

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嘱託(しょくたく)社員とは?

嘱託(しょくたく)社員とは、企業と有期雇用契約を結んでいる非正規雇用社員のことです。一般的には、定年を迎えたあとに企業と再雇用を結び、非正規雇用社員として働いている人のことを指します。嘱託職員という雇用形態について法的な定義はないため、待遇などについては企業と労働者の合意のもと、比較的自由に決めることができるのが特徴です。

嘱託社員と契約社員・派遣社員の違いって?

「有期雇用契約を結んでいる非正規雇用社員=嘱託社員なら、契約社員と同じじゃないの?」そう思われた方は大正解。「雇用主が就業先である」「雇用の契約期間が有期である」という嘱託社員の特徴は、契約社員やパートタイマーと同じです。つまり嘱託社員は、契約社員の一種ともいうことができ、企業によっては嘱託社員のことを契約社員と呼ぶこともあります。

 

嘱託社員と契約社員の違いをあえて挙げるとすれば、「勤務時間の違い」。嘱託社員は企業側との契約に応じてフルタイム勤務・パートタイム勤務双方に対応しますが、契約社員は基本的にフルタイム勤務がメインです。嘱託社員は、契約社員と正社員の中間的なポジションといえるでしょう。

 

なお、雇用期間が有期である働き方には「派遣社員」という形態もありますが、派遣社員は雇用主が派遣会社となる点が嘱託社員と異なります。あわせて覚えておきましょう。

嘱託社員が注目されている背景

次に、昨今「嘱託社員」というポジションの注目度があがっている理由についておさらいしてみましょう。まず前提として、現代の日本はいわずと知れた高齢社会。65 歳以上人口が総人口に占める割合である高齢化率は、国の調査によると平成 42 年(2030 年)には約31.6%になることが予想されています。つまり、将来的には労働力人口がさらに減ることが懸念されているのです。

 

そこで労働力人口の底上げ役として注目されているのが、「定年後でも仕事をしたいと考えているシニア世代」。当のシニア世代も、内閣府が実施した「平成 25 年度 高齢期に向けた『備え』に関する意識調査」によると、65 歳を超えても働きたいとする者が約 5 割(「70 歳くらいまで」20.9%、「働けるうちはいつまでも」25.7%など)を占めるなど、生涯現役に前向きな意見が挙がっています。「生涯現役社会」に向けて、嘱託社員へのニーズが高まっている理由がおわかりいただけるのではないでしょうか。

参考:厚生労働省 生涯現役雇用制度導入マニュアル

嘱託社員として働く労働者のメリット

では、嘱託社員というワークスタイルは、労働者にどんなメリットをもたらすのでしょうか。具体例を3つ見てみましょう。

慣れ親しんだ職場で引き続き働ける

嘱託職員は、定年前に働いていた企業でそのまま継続的に勤務するケースがほとんど。よって嘱託社員は慣れ親しんだ環境で、スキルを今までどおり活かしながら働くことが可能です。「定年後も働きたいけど、今から見ず知らずの環境に行くのは不安」「今から新しい職場のやり方に慣れられるか心配…」という労働者にとって、大きな魅力のひとつといえます。

労働時間を今の体力に合わせて調整しやすくなる

嘱託社員になる際には、一般的に労働条件の見直しが行なわれます。従来のフルタイム勤務のまま働くケースもありますが、企業と相談した上で時短勤務にしたり、週3勤務に変えたりなど、体調を考えたワークスタイルに変更することができます。

定年後も収入を得られる

嘱託社員になる大きなメリットとして挙げられるのが、「定年後も安定した収入を得られること」です。国民年金と厚生年金の支給は、原則的には満65歳から。60歳で定年を迎えた場合、向こう5年間は貯蓄を使って生活していくことになります。

 

経団連の調査によると、国民の退職金の平均支給額は2000万円ほど。退職までの貯蓄を合わせると余裕があるようにも思えますが、この支給額は新卒から定年まで一社に勤続し続けた場合の平均値です。新卒で入社した企業から転職をした場合はこれよりさらに退職金が下がり、場合によっては退職金がないこともあります。十分な貯蓄がなければ、定年後の生活が苦しくなってしまう可能性さえあるのです。

 

「60歳から65歳の間をどうしのぐか」という問題は、シニア世代の大きな課題。「働きたくても再就職先が見つからない」などの悩みを抱える方もいる中、見知った職場で定年後も働ける嘱託社員という選択肢は、シニア世代にとって魅力といえるでしょう。

嘱託社員を雇う企業のメリット

まだまだ働きたい労働者にとって魅力的なワークスタイルといえる嘱託社員ですが、企業側にも以下のようなメリットがあります。

ベテランの人材に引き続き自社で活躍してもらえる

1つめのメリットとして挙げられるのが、「ベテランの人材に引き続き自社で活躍してもらえること」です。嘱託社員は、すでに自社で起用したことがある人材を引き続き雇用するケースがメイン。よって企業側は、人材育成のコストを最小限に抑えながら、有力な人手を引き続き確保することができます。嘱託職員が周囲から厚く信頼されている場合は、たとえフルタイムでなくても「あの大先輩がまだ現場にいてくれる」という安心感があり、若手の支えになりやすいところも大きな利点です。

労働条件の見直しにより、人件費の削減もしやすくなる

2つめのメリットは、「労働条件の見直しにより、人件費の削減もしやすくなること」です。嘱託社員は一般的に、勤務時間の減少や業務責任の緩和などの理由から、正社員よりも給与が安くなる傾向にあります。人件費をうまくおさえながら、嘱託社員の退職前に近い戦力をそろえることも可能です。

嘱託社員を雇う際の注意点

嘱託社員は「今まで働いていた会社で定年後も働く」というケースがメインです。よって、新規に入社した方と比べて当人に大きな環境の変化もなく、スムーズに勤続しやすいところがメリットといえます。

 

ただし、環境の変化がまったく起こらないわけではないため、当人のメンタルの変化にも注意が必要です。たとえば嘱託社員は、正社員のときの部下が上司になったり、責任の重いポジションから外れたりなど、同じ職場内であっても社会的な立場が変化することがあります。この変化により、「かつての部下を上司と呼ぶことに抵抗がある」「定年前の立場なら口を出せた業務に、今はまったく関われなくなり、フラストレーションがたまる」といった不満を抱える人も珍しくありません。

 

このような変化を放置すると当人のモチベーションが低下しやすくなり、最悪退職にも繋がります。嘱託社員の評価制度やメンタルケアなどの制度については、必要に応じて新しく整備するとよいでしょう。

正社員時代とどう変わる?嘱託社員の待遇を学ぶ

嘱託社員の待遇については、給与も含めて会社がある程度自由に決めることができます。正社員時代の雇用形態と比べて、嘱託社員の待遇がどう変わるのかを見てみましょう。

給与について

総務省の調査によると、嘱託職員の給与は正社員の頃より2~5割ほど低下しやすくなります。さらに年収も、正社員時代と比べて100万ほど下がりやすいとのこと。やはり正社員と比べると、嘱託社員の給与はやや低めになるのが一般的といえます。

 

ただし、「一般的に嘱託社員の給与は正社員より低い」からといって、理由もなく給与を下げていいわけではありません。なぜなら、2021年4月に施行された同一労働同一賃金により、「仕事内容が正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と変わらないのであれば非正規雇用労働者であっても不当に待遇差をつけてはならない」ことが定められているからです。

 

ちなみに同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の雇用格差や、不合理な待遇差を改善するために設けられた取り組みのこと。企業がこの取り組みに反していても罰則は科されませんが、不当な給与の引き下げなどはスタッフとの軋轢を生みます。企業側の場合は、給与を始めとする待遇の設定を慎重に行なうようにしましょう。

 

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社会保険について

嘱託職員が加入条件を満たしている場合は、社会保険にも加入できます。ただし、嘱託社員の給与が正社員時代の給与よりも下がった場合、社会保険料も下げる手続きをしないと、当人の給与から保険料が余分に天引きされてしまいます。嘱託社員が社会保険に加入する際は、再雇用の給与額をもとに社会保険料を再計算する「同日得喪」と呼ばれる手続きを行ないましょう。

有給について

嘱託職員も有給の取得は可能です。また、正社員から継続雇用する場合は、正社員時代の勤務日数もカウントされます。有給日数については企業の取り決めに応じた設定が可能です。

「こういうときはどうすれば?」嘱託社員のQ&A

嘱託社員という働き方が注目されつつある昨今ですが、嘱託職員の雇用条件はそれぞれの会社に委ねられていることもあり、「こんなときはどうしたらいいの?」と人事担当が悩むことも珍しくありません。嘱託社員を起用する際に迷いやすいQ&Aをご紹介します。

残業をお願いすることは可能?

可能です。ただし正社員と同じく、雇用契約を結ぶ際に月々の残業時間などの取り決めを行なったうえで、残業代も支払うことが条件となります。

 

なお、厚生労働省が2019年から推進している「働き方改革」により、時間外労働には上限が設けられるようになりました。原則として、月45時間(1日約2時間)、年360時間を超える残業は好ましくないとされています。また、特別な事情がある場合であっても、年720時間、月100時間を超える残業をお願いすることはできません。もし違反した場合は懲役や罰金が科せられる可能性があるため、注意しましょう。

 

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退職金はいつ払うべき?

嘱託職員への退職金の支払いパターンは、以下の3つのケースに分かれます。

  • 定年時に支払い、最終退職時にさらに追加で支払う
  • 定年時に支払い、最終退職時には何も払わない
  • 定年時には支払わず、最終退職時にまとめて支払う

また、会社の就業規則によっては「退職金を支払わない」というケースもあります。退職金の有無や支払いのタイミングは会社の就業規則に準じるため、雇用契約できちんと取り決めておくことが大切です。

異動をお願いすることはできる?

可能ですが、嘱託社員の年齢や住まいのことも考え、転居を伴わない異動にするなどの配慮があると好ましいでしょう。

導入企業事例「大和ハウス工業」から学ぶ

最後に、嘱託社員というワークスタイルをうまく活用している企業「大和ハウス工業」の具体的な工夫を見てみましょう。

 

大和ハウス工業の大きな特徴として挙げられるのが、シニア社員の再雇用制度を段階的に増やしていったことです。2003年に「嘱託再雇用制度」を導入して以来、制度の見直しや変更を都度行ないながらシニア世代が働きやすいルールを整えていき、2011年には定年後も引き続き役職を担える「理事制度」を導入しています。さらに2013年には、定年の年齢を5年引き上げる「65歳定年制」も導入。さらに2015年には、新しい定年として定めた65歳以降も引き続き自社で働ける「アクティブ・エイジング制度」を採用し、シニア世代が長く活躍できる環境を整えました。

 

さらに、「従業員にはただ長く会社にいてもらうだけではなく、自分がどのように働きたいかをきちんと考えてほしい」という方針から、3つのコースを用意。組織を支える役職クラスで活躍する「理事コース」、後進の指導に力を入れる「メンターコース」、それぞれが自分のスキルを活かして働く「プレイヤーコース」という3つの指針を掲げることで、シニア世代が目標を持って働けるようにしています。「全社員生涯現役」の実現に向けて、着実な発展を遂げた企業の好例です。

まとめ

嘱託社員の概要や、注目されている背景、嘱託社員になる、もしくは嘱託社員を雇用するメリット、実際に嘱託社員を起用する場合のQ&Aなどをご紹介しました。

 

「生涯現役でいたい」と考えるシニア世代と、「有力なスタッフがほしい」と考える企業にとって、嘱託社員はwin-winなワークスタイルといえます。導入に際しては雇用条件の設定や働きやすい環境づくりなどの配慮が必要ですが、組織力の維持に大いに役立つことでしょう。嘱託社員の起用を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

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