ビジネスにおいて「組織文化」という言葉はよく使われていますが、なぜ組織文化が重要なのかを説明できる人は、多くはないでしょう。組織文化は単に組織のカラーやイメージを表すだけでなく、主体性を持って働く「自律型人材」の育成につながったり、採用活動の一助になったりと、企業としての価値や競争力を高める大きな鍵を握っています。自社の組織文化について考えるきっかけとして、この記事を活用していただければ幸いです。
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- 組織文化とは?
- 組織文化に注目が集まっている背景
- 組織文化が企業に根付くことのメリット
- 組織文化が根付くことのデメリット
- 組織文化を構成する7つの要素
- 組織文化の定着のために押さえておきたい4つのポイント
- 根付いた組織文化を変えるには?
- 組織文化の具体的な企業事例
- まとめ
組織文化とは?
組織文化とは、企業文化と呼ばれることもあり、組織のメンバー間で共有される行動原理や思考様式のことを指します。よりわかりやすく言い換えれば、従業員の「考え方」や「行動の指針」となっているもの。組織文化は、顧客への対応や提供するサービスなど、その組織のすべての行動に通じています。組織内だけでなく外部からの企業イメージにも直結するため、組織を形づくる上で非常に重要な要素と言えるでしょう。
組織風土との違い
組織文化について知る際、区別しておきたいのは「組織風土」。違いを明確に定義することは難しい部分もありますが、一般的に「組織文化」はコントロールしやすく、意図的に形成することが可能なものです。従業員が共有する信念や価値観のため、市場の変化や競合の状況をふまえ、必要に応じて変化させることもあります。
一方、自然に生まれ、いつのまにか定着した組織の習慣を「組織風土」と言います。組織風土は、会社のこれまでの伝統や取り組みから生まれたもののため意図的に変えることが難しく、時代の流れによる外部からの影響も受けにくい点が特徴です。
組織文化に注目が集まっている背景
前述のとおり、組織文化は企業の行動指針であり、従業員はそれをもとに業務に励み、顧客対応やサービスの提供を行なっています。組織文化が十分に醸成されていない企業は、変化への柔軟な対応や、問題が起こった際の迅速な判断を行なえないため、競争力や持続性を保つことができません。変化の激しい時代において企業として生き抜くために、組織文化の重要度は高まっていると言えます。
さらに、優秀な人材に長く活躍してもらうためにも組織文化は大きな役割を果たします。採用活動において、組織文化を魅力的なスローガンとして発信していくことができれば、同じ意識のもと仕事に臨める人材を集めやすくなるでしょう。魅力的で共感される組織文化があることは、企業としての価値を高め、よりよい採用活動にもつなげられるのです。
組織文化が企業に根付くことのメリット
では組織文化が企業に根付くことのメリットは何なのでしょうか。詳しく解説していきます。
従業員が同じ方向を向いて業務に取り組める
組織文化が浸透する大きなメリットは、組織に一体感が出ることです。会社が成長していく上で従業員の人数が増えたり、メンバーの入れ替わりが起こったりすることは自然なこと。そういった変化のなかで、それぞれが別々の方向を向き始めてしまうこともあるでしょう。そんなとき明確な組織文化があれば組織に一体感が生まれ、従業員は同じ方向を向いて進むことができます。共通の行動指針を持っていることで従業員同士の意思疎通が円滑になり、一丸となって業務に当たることができるでしょう。
スピード感を持って意思決定ができるようになる
急速なIT化や新型コロナウイルスの発生により、ライフスタイルや仕事をとりまく環境は大きく変化しました。VUCAとも言われる先の読めない時代において、状況に応じた迅速な判断ができない企業は競争力を保つことができません。予期せぬ事態に陥ったりトラブルが起こったりした際、意思決定するための重要な指標となるのが、組織文化です。企業のなかにしっかりとした共通認識があれば、あらゆるシチュエーションにおいて迅速に対応が行なえるでしょう。
従業員がより主体性を持って業務に取り組めるようになる
明確な共通認識があることで、従業員が主体的に業務に取り組めることも組織文化のメリットです。やらされ仕事やマニュアル通りの行動をする従業員ばかりでは、顧客やビジネスパートナーの期待に応えることができず、組織としての成長はありません。しかし自社の組織文化が従業員に深く理解されていれば「自分は何ができるか」を従業員自ら考え、実行することができます。
組織文化の醸成は、主体的にアクションを起こせる「自律型人材」の育成にもつながるのです。自発的に行動することで、自分の会社に対する貢献を実感できるため、仕事へのモチベーションも向上し、最大限のパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
社外にも企業イメージが定着し、ブランディングの一環となる
外部から自社に対する明確なイメージを持ってもらえることも、組織文化定着のメリットのひとつ。組織文化がしっかりと根付き、それを従業員自らの行動で外部に発信することで、企業イメージが形成されます。
たとえば「おもてなし」を組織文化としている会社が顧客対応でそれをしっかりと体現していれば、より企業のファンは増えるでしょう。組織文化は組織の中だけで完結するものではなく、顧客へのブランディングの一環となるのです。独自の文化があることは企業の広い認知にもつながり、さらに企業イメージが共感されれば、自社を応援してくれる存在が増えることにもなります。
組織で活躍する人材の確保がしやすくなる
組織文化の定着は、採用活動にも好影響をもたらします。採用活動において従業員が組織文化を体現する振る舞いをしていれば、求職者に組織文化がよりストレートに伝わるでしょう。実際、企業の採用HPだけで組織文化を伝えることは困難です。採用面接やインターンシップなどを実施する際、求職者に「この会社の人はこういう考え方で仕事をしているのか」と感じてもらうことで、組織文化への理解が深まり、企業への信頼度も増します。その結果、自社に合った人材を集めやすくなるのです。組織文化に共感する人材は、組織の愛着も湧きやすく、長く活躍することができるでしょう。
組織文化が根付くことのデメリット
前述の通り、組織文化の定着にはさまざまなメリットがあります。その一方でデメリットも存在するので、きちんと押さえておくことが大切。デメリットは以下のような内容です。
新しい発想が生まれにくくなることがある
組織文化が定着した従業員ばかりになると、考え方や行動パターンが互いに似通ってきて、新しいアイデアが生まれにくくなることも。多様な価値観が必要とされる現代においては、常に新たなアイデアを取り入れる余白を残しておくことも重要です。基盤となる組織文化は大切にした上で、価値観が偏りすぎないよう注意しましょう。そして採用を行なう際は、自社の組織文化になじめるかどうかを見た上で、新たな発想を生み出せるかどうかも判断基準にするとよいでしょう。
独自性が強すぎると、人材流出につながる恐れも
組織文化の独自性が強すぎると、その文化に馴染めない従業員が退職したり、新たな人材が入社しにくくなったりするデメリットがあります。組織で仕事をする上で共通認識を持つことは必要ですが、従業員一人ひとりはそれぞれ異なる考えや価値観を持っており、それを尊重することを忘れてはいけません。組織文化の独自性が強くなりすぎないよう、常に客観的かつフラットな視点を忘れないことが重要です。
組織文化を構成する7つの要素
では、組織文化はどのような要素によって形づくられているのでしょうか。理解を更に深めていただくために、ここでは7つの要素を挙げていきます。
- ビジョン
企業の理想の状態や目指すべき姿。明確なビジョンがあることは従業員の意思決定にも役立つほか、ビジネスパートナーや顧客など、外部からの共感も得られやすい - 価値観
企業が何を大切にしているかという評価基準 - 慣行
ビジョンや価値観を、具体的に日々の業務や行動に落とし込んだもの。ビジョンや価値観が浸透していれば、従業員は自発的に行動に移すことができる - 人材
ビジョンや価値観に共感し、行動する人材がいてこそ組織文化が成り立つ。「能力の高さ」だけで判断するのではなく、自社の組織文化にふさわしい人材を採用することが重要 - ストーリー
創業時のエピソード、商品やサービスを生み出した経緯などの歴史。従業員の間でストーリーが語り継がれ、そこに現代の価値観や文化が加わることで、組織文化はより根強いものとなる - 場所
オフィスがどんな場所にあり、どんな建物なのかによって、そこで働く従業員の価値観や行動を形成している。立地はもちろんのこと、デスクの配置や社内カフェなど、オフィス内の設備も含まれる - 外部からの影響
組織文化は、外部からの影響を受けながら変化していくもの。昨今の急速なIT化や価値観の多様化により、企業もそれに対応しなければ生き残れない時代である。社会の変化に応じて、必要な場合は組織文化を見直すことも必要
組織文化の定着のために押さえておきたい4つのポイント
組織文化は従業員に理解・共感されることはもちろん、日々の業務に落とし込んで初めて意味をなします。しかし、適切な方法を取らなければ、経営層や人事と従業員の考えに大きな食い違いが生まれることも。自社の組織文化が従業員にあまり理解されていないのでは、とお悩みの方もいるかもしれません。ここからは、組織文化を根付かせるために必要なポイントを解説していきます。
研修を実施し、組織文化を深く理解する機会をもうける
組織文化を言語化することで従業員がその全体像を理解することはできても「どんな背景でこうなったのか」「具体的にどういったことを意味しているのか」といった深い理解を得ることは難しいでしょう。そこで重要になるのが、社員研修の実施です。
研修を実施することにより、組織文化を理解し、その上で具体的にどんな行動をすればいいのかを、従業員が考えるきっかけにもなります。研修の際は、経営層や人事が一方的に説明をするのではなく、従業員同士で組織文化について話し合ったり、一人ひとりの意見を聞いたりする時間を設けてもよいでしょう。自社の組織文化について周知しているつもりでも、経営層と従業員の考えには大きなギャップがあることも。組織文化は上から一方的に押し付けてしまうと「やらされ感」が生まれ、本来の価値を発揮しません。実際に対話してみることでお互いの価値観や考えをすり合わせることも重要です。
まずはリーダーが率先して日常業務に落とし込む
組織文化を定着させる上で「自主性を持とう」「失敗を恐れず、挑戦しよう」となどと伝えるだけでは、あまりにも抽象的すぎると言えます。そこで重要になるのが、部署におけるリーダーの行動。まずはリーダーが組織文化を部署の日常業務に落とし込み、メンバーの理解や共感につなげることが大切です。リーダーが率先して組織文化を体現していくことで、メンバーはより自然と組織文化を受け入れることができるでしょう。
組織文化に即した行動をとっているメンバーを褒めることや、メンバーが組織文化を体現するための充分なサポートも必要です。日々の業務を振り返る際、組織文化に即した行動ができたか、どういった点が良かったかなどフィードバックをすることで、より深い定着につなげることができるでしょう。
組織文化に沿った行動をした従業員を評価する
組織文化に沿った言動をしても、それがきちんと評価されなければ従業員から納得されず、文化の浸透が難しくなります。そのため、評価制度や評価する際に重要視するポイントを見直すことも必要です。組織文化に沿った言動が直接的な評価につながれば、より組織文化を体現する従業員が増えるでしょう。たとえば「数値的な結果を見るだけでなく、そこに至るプロセスも重視する」「従業員同士で相互評価をし合うサンクスカードを導入する」といったことが挙げられます。
組織文化を体現できるオフィス環境を整備する
組織文化は、言葉や行動で示すだけでは定着が不十分になることも。そこで重要なのが、組織文化を体現するためのオフィスの環境づくりです。毎日仕事を行なうオフィス環境を整備することは、より本質的な文化の浸透につながります。
たとえば業務効率を重視する組織文化であれば、周囲を気にせず集中しやすい「個人ブース」を配置する、アイデアを重視する組織文化であれば、ほかの従業員とラフに意見交換がしやすい「フリースペース」を導入するといった方法が挙げられます。オフィスのスペースやかけられる予算には限りがあるため難しいこともあるかもしれませんが、大切なのは、些細なことでも従業員が組織文化を体現しやすい設備を整えることです。
根付いた組織文化を変えるには?
時代によって価値観や働き方は大きく変化していくものです。一度根付いた文化も、時代にそぐわなくなってくることがあるでしょう。しかし、組織文化の浸透にはそれなりの時間がかかるため、一度社内に浸透した文化を変えることは容易ではありません。
まずは前述した「組織文化を構成する7つの要素」をもとに、その組織文化を形づくっている要素を明確にし、変更できる箇所がないかを検討してみるとよいでしょう。コントロールができない「外部からの影響」や、すでに根付いている「価値観」「慣行」を変えるのは容易ではないため、まずは今後目指すべき「ビジョン」を決め、「人材」の育成・採用方針の見直しや「場所」となるオフィス環境の整備などから始めることもひとつの方法です。
その際従業員に、改革を行なうことになった背景や今後の展望を丁寧に伝えていくことも忘れてはいけません。従業員からの理解がないままでは、組織文化の定着は不可能。改革を進めていくなかで、まずは影響力をもつ社長・経営陣の思考や言動を変えていき、それをリーダーが率先して業務に反映させ、徐々に浸透させていくといった流れが必要です。従業員の納得や共感を得ることを第一に考え、時間をかけて丁寧に向き合っていきましょう。
組織文化の具体的な企業事例
ここからは、実際の企業事例を挙げ、組織文化の具体例を紹介していきます。
ファーストリテイリング
ファーストリテイリングが大切にしているのは「従業員の成長」と「自己実現」です。従業員自身が一人の経営者としてビジネスを考えて実行する「グローバルワン・全員経営」をかかげ、それを実現するためにさまざまな教育プログラムを実施しています。
プログラムでは、同社が重視している「商売・経営・仕事」における原理原則を身につけている経営者から、直接学ぶ機会を設けています。同社では一方的に押し付けるのではなく、従業員がきちんと共感して取り組めることを大切にしながら、ファーストリテイリングの一員としての在り方を教育しています。
メルカリ
メルカリは、リモートワークの増加やライフスタイルの多様化が進むなかで、意思決定やコミュニケーションを円滑におこなうためには、土台となる「カルチャー」を確立させることを重視しています。
「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションの達成を目指し、創業1年目にGo Bold(大胆にやろう)、All for One(全ては成功のために)、 Be a Pro(プロフェッショナルであれ)の「3つのバリュー」を策定しました。メルカリは自社の組織文化を自社内だけでなく社外にも発信することによって、どんな働き方の選択肢においても多様な人材が活躍できる環境の実現を目指しています。
参考:メルカリ、社員同士の「共通の価値観」をまとめた社内向けのドキュメント「Mercari Culture Doc」を公開
トヨタ自動車
トヨタは自社の企業理念を「トヨタウェイ2020」として公表しています。「だれかのために」「誠実に行動する」「ものをよく観る」「競争を楽しむ」など、10の理念を提示。このトヨタウェイは2001年版もあり、時代に合わせて内容をアップデートしていることがわかります。さらに、トヨタの従業員が業務上や社会生活で行動を起こす際に、指針とする心構えや注意すべき点を示した「トヨタ行動指針」も公表しています。
まとめ
優秀な人材をどれだけ多く集めても、それぞれが違う方向を向いて業務に当たっては、理想的な結果を生み出すことはできません。従業員が組織文化をしっかりと理解し、それを日々の行動に落とし込んでいれば、成果の向上はもちろん、他社との差別化に繋がり、企業としての大きな強みとなります。強い組織づくりには、組織文化の定着が不可欠。そして経営側の思いだけでなく、従業員一人ひとりが組織文化を作るということを忘れてはいけません。
自社の組織文化はどんなものか、そしてそれは従業員に誤解なく伝わり、根付いているといえるか。今一度考えてみる価値はあるのではないでしょうか。
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