変形労働時間制とは?導入のメリット・デメリットを解説!


「変形労働時間制という言葉は知っているが詳しく説明はできない…」

「自社の仕事は、変形労働時間制を適用できるのだろうか?」

「変形労働時間制の導入を検討しているが詳しい条件や導入方法は知らない…」

 

そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで今回は、人材ビジネスに携わり15年以上の経験を持つ筆者が、変形労働時間制のメリット・デメリット、向いている業界や職種、導入方法、フレックスタイム制など他の労働時間制との違いなどについて、詳しく解説します。

 

表も用いて分かりやすく説明していきますので、変形労働時間制の理解を深めたい方、導入を検討されている方にピッタリの記事となっています。

 

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変形労働時間制とは?

変形労働時間制とは、事業所の繁忙期と閑散期がある程度決まっている場合、労働時間を週単位・月単位・年単位で調整することで、柔軟に働けるようにする勤務時間制度のことです。

 

労働基準法において、労働時間は「1日8時間・週40時間」が原則となっており、これを超えると時間外労働(残業)となります。とはいえ、繁忙期にはやるべき仕事が集中してしまい、勤務が1日8時間を超えてしまうケースも出てきます。

 

そんなときでも、変形労働時間制を導入している場合は、一定期間で見たときに労働時間の合計が調整できていれば、時間外労働として扱わなくてもよくなるのです。たとえば、月末に業務が集中する企業の場合、月末の忙しい時期には1日10時間働き、月初の閑散期は6時間に抑えるといった調整が可能になります。

 

変形労働時間制

特に最近では、日本全体で働き方改革への注目度が高まっていることもあり、変形労働時間制の導入を検討する企業も増えてきています。そこで次の項目では、変形労働時間制のメリット・デメリットについて詳しく見ていきたいと思います。

フレックスタイム制度との違いは?

続いて、変形労働時間制とフレックスタイム制の違いを解説します。

 

フレックスタイム制は、1ヶ月以内に設定した精算期間の総労働時間内で、従業員自らが出退勤時間を決めて働けるという制度です。1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制が「労働時間があらかじめ決められている」のに対し、フレックスタイム制は日々の始業時間・終業時間を自分で決められるというのが大きな違いです。

 

なお、フレックスタイム制には“コアタイム”という必ず勤務する時間帯を設定するのが一般的ですが、これは必須ではありません。より従業員の自由度を高めたい場合は、コアタイムなしを選択することも可能です。

 

フレックスタイム制

出典:厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

 

またフレックスタイム制には、対象となる業務や労働者の制限はありません。3ヶ月以内の一定期間を「精算期間」と定め、その期間を平均し、1週間あたりの労働時間が40時間を超えない範囲内で働きます。

 

労働時間は精算期間内で算出し、実際の労働時間が過剰だった場合は時間外労働として精算し、不足があった場合は次の精算期間に繰り越したり、賃金をカットしたりして精算することになります。

 

労働者が自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を調整できるというメリットがあるため、ライフスタイルや価値観が多様化する中、またワークライフバランスを重視する人が増えている中、フレックスタイム制への注目度も高まっています。

 

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シフト制の違いとは?

シフト制は、法定労働時間を超えないよう、複数人であらかじめ決められたシフトパターン(例/9:00~19:00、12:00~21:00など)ごとに従業員が交替して勤務するという制度です。

 

シフト制は、勤務時間が1種類のみではなく、日ごとや一定の期間ごとに複数のパターンの勤務時間を用意することができ、特定の曜日や時間帯に合わせて柔軟に人員を配置することができます。

 

また、シフト制とフレックスタイム制は同じ労働者には両立しない制度ですが、シフト制と「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」はしばしば併用されます。

 

たとえば、1ヶ月単位の変形労働時間制の場合、月の前半に余裕があり、後半が忙しい場合の会社を想像してみましょう。シフト制でも1日8時間労働であれば、月の後半に時間外労働や深夜労働が多くなり、割増賃金がかさんでしまう可能性があります。

 

しかし、変形労働時間制を導入することにより、月の前半は短い勤務時間でのシフト、後半は長い勤務時間でのシフト、といったように労働力をうまく分散することができるのです。

 

なお、シフト制を導入する場合も労働基準監督署への届け出が必要となります。ただし例外があり、従業員が30人未満の場合は届け出る必要がありません。

変形労働時間制を導入するメリットは?

変形労働時間制を導入するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。企業と従業員、それぞれの立場でメリットを解説します。

変形労働時間制を導入する企業のメリット

 変形労働時間制を導入する企業のメリット

 

繁忙期・閑散期のある業界・職種の場合、残業時間・残業代を抑える効果が期待できます。

 

たとえば、図のように閑散期の月末は「週30時間」働くだけで良いものの、繁忙期である月初は「週50~60時間」働く必要がある企業のケースで考えてみましょう。通常、労働時間は原則として1日8時間・週40時間までとされており、これを超える労働は時間外労働として扱われます。

 

しかし変形労働時間制を導入することで、「閑散期の労働時間を法定労働時間より短くする代わりに、繁忙期の労働時間を法定労働時間より長くする」といった調整が可能に。これにより、繁忙期に1日8時間・週40時間以上勤務したとしても残業にならなくなり、残業代を抑制することができるのです。

変形労働時間制を導入する従業員のメリット

閑散期は早く退社することができます。通常の「1日8時間・週40時間勤務の場合」は、たとえ仕事が少ない日であっても1日8時間の勤務をしなければなりません。

 

しかし、変形労働時間制で閑散期の勤務時間が短く設定されている場合は、「やることがなくても会社にいなければならない」というムダな居残り時間をなくすことができます。メリハリのある働き方を実現できることで、休息やプライベートの充実など、ワークライフバランスも実現しやすくなるでしょう。

 

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変形労働時間制の種類

変形労働時間制は、3種類にわけられます。繁閑のサイクルなどに合わせて導入を検討しましょう。

 

【変形労働時間制の簡易比較表】 

変形労働時間制の簡易比較表

1週間単位の「非定型的」変形労働時間制

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、これを予測した上で各日の労働時間を特定することが困難であると認められる事業において、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができる制度です。

 

分かりやすく言うと「従業員30人未満」の「小売・旅館・料理・飲食店」の事業でしか使用できない、導入できる企業が非常に限られた変形労働時間制です。

 

1週間のなかで直前にならないとどこが忙しいか分からないときに、特に有効な制度となります。1週間の労働時間が40時間以内に収まるように、1日10時間を限度に毎日の労働時間を定めることができます。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の一定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以下の範囲内において、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

 

具体的には、月末や月初、特定週など1ヶ月のなかで繁閑の差が出やすい業種・職種に適した変形労働時間制となります。1ヶ月単位でシフトを組むような業種、特に店舗や介護業界などでの導入が多く見られます。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間の起算日などの必要事項を定める必要があります。労使協定、就業規則は所轄労働基準監督署長への届け出が必要です。

 

※特例措置対象事業場について 常時使用する従業員数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業は、特例により、「一定期間内の平均労働時間が週44時間以下」となります。

■労働時間の計算方法
1ヶ月単位の変形労働時間制の「上限時間」を計算する方法は、以下の式になります。

【計算式】上限時間=1週間の労働時間(40時間/特例は44時間)×対象期間の暦日数÷7

対象が1ヶ月の上限時間

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制とは、労使協定を締結することにより、1年以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が40時間以下の範囲内において、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

 

具体的には、1年のなかで特定の月や季節が忙しいなど、年間を通して繁閑の時期がハッキリしている業種・職種に向いています。例えば、中小企業の事務職、建設業などでの導入が多くなっています。

 

繁忙期には週6日勤務する分、閑散期は出勤日数や就労時間を減らすなど、1年間という長いスパンで労働時間を調整することができます。労使協定において、対象労働者の範囲、対象期間および起算日などの必要事項を定め、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

変形労働時間制の残業代について

変形労働時間制を導入していない場合、1日8時間を超えた場合は残業となり、残業手当が支払われます。しかし、変形労働時間制を導入している場合、1日8時間を超えたからと言って、残業手当が支払われるとは限りません。

 

基本的には、「就業規則に記載された所定労働時間を超えたら残業」となります。例えば所定労働時間が1日10時間の場合、10時間働いたとしても残業手当はつきません。逆に所定労働時間が8時間以内の日は、8時間を超えて働いた時間のみ残業としてみなされます。

 

ここで、1ヶ月単位の変形労働時間制で考えてみましょう。

【1日単位】
8時間を超える労働時間が定められている日は、その時間を超えた分が残業時間
8時間を超えない労働時間が定められている日は、8時間を超えた分が残業時間

 

【1週間単位】
40時間を超える労働時間が定められている週は、その時間を超えた分が残業時間
それ以外の週は、40時間を超えた時間が残業時間

 

【1ヶ月単位】
変形労働時間制の対象期間の法定労働時間(週平均40時間)を超えた分が残業時間

 なお、1年単位の変形労働時間制でも、1日単位と1週間単位の残業時間の考え方は同じです。そのほか、月単位ではなく、年単位で所定労働時間を超えていた場合は残業とみなされます。また、22時から5時の深夜労働に対しては、就業規則で決められた所定労働時間内であっても割増賃金が発生します。

 

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守らないとダメ!1年単位の変形労働時間制の労働時間に関する限度

当然のことですが、変形労働時間制を導入したからといって無制限に残業ができるようになるわけではありません。変形労働時間制には、様々な制限があります。特に、「1年単位の労働時間制」には細かな規定がありますので、順に解説していきます

対象期間における労働日数の限度

変形労働時間制の「対象期間(1ヶ月以上~1年以内)」とは、平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えない範囲内で労働させる期間のことをいいます。このとき「対象期間」を何日に設定するかによって、「労働日数の限度」が変化します。

■対象期間が3ヶ月以内

労働日数に制限はありません

 

■対象期間が3ヶ月以上

労働日数の限度は、原則として1年間に280日。対象期間が3ヶ月以上・1年未満の場合は以下の計算式で、労働数の上限が決まります。

【計算式】280日×対象期間中の暦日数÷365日
1日及び1週間の労働時間の限度

1年単位の変形労働時間制では、「1日の労働時間の上限は10時間」「1日の労働時間の上限は52時間」という定めがあります。ただし対象期間が3ヶ月を超える場合は、限度時間を設定できる範囲に次のような制限があります。

■対象期間が3ヶ月以上

①対象期間中に、週48時間を超える所定労働時間を設定するのは「連続3週以内」とすること。

②対象期間を初日から3ヶ月毎に区切った各期間において、週48時間を超える所定労働時間を設定した週の初日の数が「3位内」であること。

※上記の「週」については、対象期間の初日の曜日を起算とする7日間で考えます。

【例:対象期間が3ヶ月以上で週48時間を超える場合】

        

※職種における例外 積雪地域における建設業の屋外労働者などには、上記①②の制限はありません。その他、隔日勤務のタクシー運転者の1日の限度時間は16時間になるなど、一部例外もあります。

連続して労働させる日数の限度

1年単位の変形労働時間制の場合、連続労働日数の上限は、原則として「6日」です。

 

【特定期間を設けた場合の例外】

「特定期間」とは、労使協定により対象期間のうち特に業務が繁忙な時期として定められた時期をいいます。この「特定期間」を設けている場合、1週間に1日の休日を確保できれば、連続「12日」労働させることが可能です。 

 

 

変形労働時間制はどうすれば導入できるの?

最後に、変形労働時間制の導入方法を解説していきます。

 

まず最初に行なうべきは、従業員の勤務実態を把握するところから始めましょう。残業が多い時期・少ない時期がいつなのかを正確に知ることで、より効果的に制度を運用することができます。

 

1週間単位・1ヶ月単位・1年単位の変形労働時間制の中で一番適した制度が判明したら「労使協定の締結」と「労働基準監督署への届け出」を行ないます。

労使協定を締結する

週単位・年単位の変形労働時間制の場合は「労使協定」を締結する必要があります。また、1ヶ月単位の変形労働時間制の場合は「労使協定」を締結するか、「就業規則」もしくは「就業規則に準じたもの」に決まった事項を定める必要があります。

■労使協定で定める内容

①対象労働者の範囲
②対象期間と起算日
③特定期間
④労働日と労働日ごとの労働時間
⑤労使協定の有効期間

労働基準監督署へ届け出る

労使協定を締結したら、「労働基準監督署」に届け出る必要があります。残業や休日出勤が発生する場合は、「36協定」も提出しましょう。 全国労働基準監督署の所在案内 

全国労働基準監督署の所在案内 |厚生労働省

必要な書類について

変形労働時間制の種類によって、提出する書類が異なります。以下ページを参照してください。

【参考URL】厚生労働省│労働基準・主要様式ダウンロードコーナー 

分からなければ労働基準監督署に問い合わせをしよう

労使協定は、労働者と使用者(会社側)の間でかわされる大事な約束事。締結して書類を提出することで、はじめて法的義務の免除や免罰の効果があります。間違った運用をすると効果を得られないこともあるため、不明点があれば、労働基準監督署に問い合わせをしましょう。 

 

 

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