【上司には言えないことも…】社員定着に効果的なメンター制度とは?

 多くの経営者や人事担当者の方が、日々採用について考え、応募数、内定者数などを気にされていると思います。しかし、注意したいのは、採用はゴールではないということ。採用ばかりに目が行きがちですが、大事なのは、定着し、早期に活躍してもらうこと。だからこそ、入社後の企業の対応は非常に大切です。

 

近年、入社後の教育や定着に効果的な取り組みとして注目を集めているのが、「メンター制度」です。この制度を導入することによって定着や早期の活躍が期待できます。今回は、メンター制度の特徴やメリット、導入のポイントなどについてご説明します。

 

この記事を通じて、自社の入社後教育や定着について考えてみてはいかがでしょうか?貴社の採用活動のお役に立てれば幸いです。

 

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メンター制度とは

メンター制度とは、上司ではない先輩社員が、新人・後輩から業務、業務外のことについて話を聞き、アドバイスをすること制度です。話を聞く先輩は、別の部署の人が担当するケース一般的です。同じ部署、直属の上司だと言いにくいことも、別部署の先輩社員なら気軽に話すことができるので、心理的安全性が確保でき、前向きに働いてもらうために有効だと考えられています。

 

メンター制度とは

このメンター制度ですが、様々な企業が導入を検討するなど、近年注目を浴びています。厚生労働省も導入に際してのパンフレットを作成するなど、積極的に推奨をしているのです。なぜメンター制度が注目をされているのでしょうか?それは、多くの企業が課題を感じている早期離職を防止でき、定着や活躍を促せるためです。

 

早期離職を防止する取り組みは、今までにも様々にありました。類似の取り組みや制度もたくさんあります。それらの取り組みや制度と、メンター制度の違いについて、また、メンター制度が特に効果のある取り組みとして、注目をされている理由について、順に見ていきましょう。

 

参考:厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」

OJTとの違い

まず、入社者に対してのアプローチとして真っ先に挙げられる取組みが、「OJT」ではないでしょうか。「OJTなら、自社でも取り入れている」こういった声も多いと思います。

 

改めて用語の意味を説明をしますと、 OJTとは「On-The-Job Training」の略称で、「実務を通した教育」になります。OJTの一番の目的は、早く業務に慣れ、早期に成果を出せるようにすること。そのため、同じ部署の上司、もしくは教育担当者が、実務を通じて、業務内容について教えます。

 

メンター制度も、早期の活躍という点は同じですが、業務の進め方にとどまらず、広くキャリア開発を目的としているのが異なる点。新入社員が、どのようなキャリアを歩んでいきたいのか、そのために、今の部署で何をしたり、そもそも会社に慣れるためにはどうすれば良いかなどを話していきます。また、OJTのように、業務を通じて随時行う形式ではなく、定期的に時間を取り、面談形式で行なうのもメンター制度の特徴です。

 

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ブラザーシスター制度の違い

もう一つ、メンター制度と似た制度として、「ブラザーシスター制度」があります。ブラザーシスター制度とは、同じ部署の先輩が、定期的に面談を通じて、業務や悩みごとなどを相談する取り組みです。

 

ブラザーシスター制度では、業務を覚えてもらうことに加えて、会社に馴染めているか、人間関係に不安はないかなど、悩みを解消したり、キャリア面について相談したりもするので、メンター制度と似ていますが、ブラザーシスター制度は同じ部署の先輩が担当するケースが一般的。

 

OJTに業務外の悩み事相談もプラスされているようなイメージです。メンター制度の目的と近く、中長期的な観点でキャリア開発や定着・活躍を促すことができます。結果的に、悩みの解消が進み、定着や活躍につながると考えられています。

 

比較表

メンター制度の目的 

ここまでメンター制度について、OJTやブラザーシスター制度と比較をしながら説明してきました。次にメンター制度がどのような目的で導入されるのかを見ていきましょう。

入社後の定着率を高めるため

まず挙げられるのが、入社後の定着率の向上です。近年、多くの企業が定着に課題を感じています。実際にエン・ジャパンの調査によると、中途入社者の定着率について37%の企業が「定着率が低い」「定着率がとても低い」と回答しています。

定着率についてのアンケート

 

 

離職につながりやすい時期についてのアンケート

 

出典:人事のミカタ 採用難時代!中途入社者の定着・活躍が重要に!オン・ボーディング入門

 

また、24%の企業が、入社後3ヶ月以内に中途入社者が退職につながっていると回答しています。採用や教育をした社員が早期に活躍せずに退職してしまうことで、会社側に大きな損失が起きます。入社後3ヶ月での早期離職による、企業への損失は「187.5万円/人」といわれています。ここまで見ていくと、入社後の定着の重要性を感じるのではないでしょうか?

 

この定着を適切に実施できるのが、メンター制度なのです。メンター制度が社員の定着率をあげるのに適切な理由は、早期対象の要因となる下記観点を未然にフォローすることができるからです。 

・ギャップ(Gap):転職者が入社前に会社に抱いていた「期待」と「現実」との乖離

・リレーション(Relation):相談しやすい、話しかけやすいレベルでの関係性が築けているか

・キャパシティ(Capacity):仕事量がその人のキャパシティを超えて多い、もしくは少ないこと

上記3点は頭文字を取り、GRCと呼びます。実際に退職者の理由を分析すると、上記のいずれか、もしくは複数が大きな要因を占めています。メンター制度を通じてGRCのどの部分に問題が起きていることが把握できるので、早期に対策を立て、定着を促せるのです。こういった定着率をあげるための施策を、オンボーディングと言い、最近注目を集めています。

 

en-gage.net

上司との面談よりもメンター制度が有効な理由

入社後の定着を高めるために、入社後の定着が重要なことが分かりました。一方で「定期的に上司の面談を実施している」「上司との面談も、GRCを早期に発見することにつながるのではないか」そのような声もあると思います。

 

しかし、入社後の定着の促進のためには、メンター制度の方が上司との面談より、有効と考えられています。なぜなら、上司は指導者であると同時に評価者でもあるためです。たとえば、上司に業務内容の質問や相談はできても、部署の雰囲気や人間関係などの悩みはしにくいかもしれません。そもそも、評価につながるかもしれないと考えることで素直に相談がしにくくなり、結果、悩みなどを抱え込んでしまいます。

 

また、上司に対して信頼関係が築けていない場合も多くあります。エン・ジャパンの調査では、85%の部下が、「困った上司のもとで働いたことがある」と回答しています。また、19%の社員が、「直属の上司との人間関係が転職のきっかけになったことがある」とも回答しています。

困った上司についてのアンケート

出典:1万人が回答!「上司と部下」意識調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―

 

人間関係についてのアンケート

出典:1万人に聞く「職場の人間関係」意識調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート

信頼関係があまり築けていない上司に対して、相談や悩みをしづらいことは想像できるでしょう。一方で、メンターの場合、評価者ではない、別部署の先輩が担当するのことになります。またメンターも適切な社員を厳選して選出するため、構造的にも人間関係の面でも、考えていることを比較的オープンに相談ができやすい環境になるでしょう。そのうえで客観的な視点で回答を得られるため、結果的に悩みや不安をため込まずに、解消につながるのです。 

メンター制度を導入する会社側のメリット

メンター制度を導入することで、会社、新入社員にとって、具体的にどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。会社側のメリットとしては、下記三点があります。順に見ていきましょう。

メンター制度のメリット

優秀な人材の定着率向上や活躍人材に育てることができる

経験が豊富な人材を採用しても、その人が能力を発揮できるかは別問題。環境が合わなかったり、前述したように能力を発揮できる環境がなければ壁にぶつかってしまいます。そのため、活躍できる環境を整える必要があります。

 

メンターが、業務内容やメンタル、キャリアなどの相談に乗ってくれれば、すぐに悩みの解消ができ、早期に会社に馴染むことができますし、業務にも集中できるようになります。結果的に早い段階で活躍人材に育てることができるのです。

会社の人を育てる環境づくり、風土醸成につながる

メンター制度では、先輩社員が後輩社員のサポートを行なうことを説明しました。そのため、先輩社員にとっても、新人にとっても人材育成に力を入れている認識を作ることができます。

 

「毎週手厚くフォローしてくれる良い会社だ」「自社ながら人を大切にする会社だな」と双方に思ってもらうことで、会社へのエンゲージメントが高くなります。人材育成は企業にとって重要な事項です。言葉だけでは無く、実際に制度として導入し、運用することで人材を大切にしている風土醸成につながります。

アドバイスによってメンター側のキャリア形成にも役立つ

新人社員だけではなく、メンターになる社員にも良い影響があります。メンターとして悩みを聞き、解消していくことは簡単なことではありません。知識や業務経験がしっかりしていないと正しいアドバイスができず、新人の不安を解消することはできないのです。そのため普段からメンターとして相応しい適切な行動を心掛けたり、自己研鑽に励む必要があると自覚し、自然と身が引き締まっていきます。

 

また、悩みや相談事項に適切に返していく過程で新人だった頃を思い起こすこともあり、メンターにとって自身のキャリアについて再考していく機会にもなるでしょう。

メンター制度の新人側のメリット

心理的安全性を獲得でき、前向きに仕事に取り組める

メンターがいることで、新人社員は何か悩みを抱えても相談ができ、すぐに解決できるとても安心できる環境がつくられます。悩みを一人で抱え込むことで、ネガティブな思考になっていくことがありますが、その思いを吐露することで、解決策が生まれ、余計な心配をしなくてよくなるのです。結果として、心理的安全性を獲得でき、職場に早くなじむことができ、早期の活躍につながります。

 

また、メンター期間が終了してもメンターとの関係は続きます。他の部署にいつでも相談できる人がいる状況は、今後会社で中長期的に業務をしていくうえでも心強いでしょう。

メンター制度の会社側のデメリット

メンターが忙しくなり、業務負荷があがる可能性がある

メンターを担当する社員は、もちろんメンター専業でありません。普段の様々な業務に加え、定期的にメンターの面談を行っていくことになります。特に繁忙期と重なった際など、業務負荷がかかってしまいます。1週間に30分程度の時間を取って話を聞いていくことが一般的ですが、こうした時間の捻出などが難しくなったり、その分残業をしなければいけなくなるなど、業務負荷がかかってしまいます。あまりに大きな負荷になっているようでしたら、面談のペースを減らすなど、対策を講じる必要があります。

メンター制度の新人側のデメリット

属人的なので、サポートに差を感じる

会社が制度やマニュアルなどをいくら完璧に準備したとしても、結局はメンターを行なう社員次第で、サポートの質は大きく変わってしまいます。具体的には、面談への意欲や、悩み事項に対する適切な回答ができるかなど、メンター社員間で差が出る可能性があります。

 

意欲や能力が不足しているメンターの指導を受けた新入社員側が、「このメンターに相談をしても、有意義な回答を得られない」と感じてしまい、あまり相談をしなくなります。結果的に、メンター制度自体が機能しなくなり、悩みや不安を一人で抱え込み、早期離職につながる可能性があります。

 

メンター制度導入を失敗させないポイント

メンター制度を導入するうえで、特に注意するポイントを説明します。

導入のポイント

メンターの選出を適当に行なわず、性格・志向性で選出する

メンターと新入社員のマッチングが大切です。たとえば、年齢が近い同士、性格が似ている人同士をマッチングすることで、話が弾み、信頼関係を築け、相談や悩み事項を抱えずに解消につながっていきます。場合によっては、あえて違うタイプの人をマッチングするのもよいかもしれません。

 

大切なのは、良い影響が得られるようにマッチングに意図を持つことです。先ほどメンター選出は各部門に依頼するのが最適と述べましたが、マッチングは人事部門などの制度の推進者が行なう必要があります。そのために、制度を推進する担当者自身がメンターに関わる社員について深く知る必要があります。既存社員の場合、部門の責任者に聞いたり、新人社員の場合、面接官に聞くなどして、性格やタイプ、志向性などを把握するようにしましょう。

メンター制度の目的をメンターに周知する

適切なメンターの選出、マッチングを行なえた場合、次に考えなくてはいけないのが、メンターの協力を得ることです。メンターにとって、メンター制度に費やす面談などは、本来の業務とは別に行うことになります。そのため、協力を得られない場合、忙しいなどの理由で熱意を注いでくれないなどの事態が起きてしまいます。

 

協力を得るために必要なことは、目的を説明をすることです。目的から説明をすることで重要な取り組みであることの理解を得られ、協力体制を築いていけることでしょう。具体的には、なぜメンター制度を導入することにしたのか、どのような課題が社内であり、どのような状態にしていきたいのか、その際にメンター制度の果たす役割などを説明するとよいでしょう。

 

また、目的と併せて、メンター社員の新人時代と絡めて訴えることも効果的です。たとえば、メンター社員が新人の際に、悩みや不安を相談したいと思ったことはないか?このような制度があればよいと思ったことはないか?などと伝えるとよいでしょう。

メンター期間を決め、集中的に取り組む

期間を決めないと、「漠然と開始して、なんとなく取り組んでいる」状態になります。そして、次第に、ただ単に続けることが目的のルーチン作業になり、本来狙った効果を出せなくなってしまう可能性があります。「●年●月入社までの人を対象に●ヶ月間行う」など、いつから、いつまでの取り組みなのかを具体的に決めていきましょう。また、その終了期間までの、理想、目標状態も設定することで、メリハリのあるプロジェクトになっていきます。

面談の頻度・時間を明確に決める

具体的な運用面として、面談の頻度や一回あたりの時間なども事前に決めておきます。
多すぎる場合、メンター社員の負担になり、逆に少なすぎると狙っていた効果を得られません。1週間に1回、30分程度などが適切でしょう。

面談後のフォロー・報告のルール化

面談の後に、メンターより、誰に対して、どのような内容を、どのように連絡してもらうかを事前に決めておきます。誰については、まずはメンター制度の推進者である人事がよいでしょう。いきなり部門の上司などに報告が届くと、メンターを他部門の社員が担当している意味が無くなってしまいます。まずは人事が情報を把握し、適切な内容を、適切なタイミングで、該当部門にフィードバックするのがよいです。

 

内容については、どのような質問や相談があったのか、メンターがどのような回答を行い、それに対して、どのような反応があったのかを簡単に教えてもらいます。ただし、全ての質問を詳細に記載してもらうのは時間がかかってしまいます。

 

まず全体観として、どのような状態だったのか、つまりネガティブなのか、ポジティブなのか、を把握するようにしましょう。具体的には、新入社員の状態と、そのように判断した理由、要因をピックアップして報告してもらえるようにするのがよいでしょう。連絡手段は、メールなどで簡単なフォーマットを用意して、それに沿って送ってもらいます。社内でアンケートフォームなどが作れる場合、書く方も集計するが側も楽になるため、検討してみてもよいでしょう。

 

このように、新入社員の大まかな状態をなるべく早くに掴むことで、必要に応じて、迅速に、適切な打ち手を取ることができます。結果、離職の防止、定着につながっていきます。

振り返り・改善をしっかり行ない、次に活かす

実際に制度がスタートして運用を始めてみると、上手くいかないこと、想定外のことが様々に起こるでしょう。しかし、焦る必要はありません。初めての試みなので、最初から完璧な状態にならないことは当然です。大切なのは、メンターや新入社員の声を聞きながら、改善を重ねていくことです。

まとめ

メンター制度の特徴やメリット、導入の際のポイントなどについて、理解は深まりましたでしょうか?最後に、お伝えしたいのは、会社側が入社後の活躍について考えて、制度として用意をしてくれているのは、新入社員にとって、とても嬉しいということです。

 

本記事を執筆している私自身、転職をして、ガラリと働く環境が変わった経験をしているため、実感をします。今まで馴染んでいた環境を変えることは、たとえ経験が豊富でスキルに自信のある中途入社の社員にとっても、不安はあります。新入社員なら、そもそも仕事自体が初めてのため、尚更不安に思うことが多いでしょう。

 

そのような状態で、不安や悩みを相談できる機会があることは、とても助かるのです。一方で、「大掛かりな制度を導入する予算も人員も、自社にはない…」そのように思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大切なのは、制度を導入することではありません。なぜなら、メンター制度も、OJTも、ブラザーシスター制度も、全てあくまで制度であり手段、重要なのは目的だからです。

 

その目的とは、企業側が、入社者の入社後の活躍や定着を実現すること。入社後の活躍や定着を考えた際に、最適な方法がメンター制度の場合導入を検討してみるのもよいでしょうし、異なる場合もあるかもしれません。まずは、自社の入社後教育や定着の課題を把握して、どういう状態にしたいのか、その上で、現状の人員や予算など限られたリソースの中で、何ができるのかを考えてみてはいかがでしょうか。

 

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採用ガイド編集部

engage採用ガイド編集部は、人材業界で長く活躍している複数のメンバーで構成されています。人材業界で営業や求人広告ライターなどを経験したメンバーが、それぞれの得意領域を担当し、専門的な知識に基づき執筆を行っています。

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