マトリクス組織とは?メリット・デメリット、成功例、注意点を解説!

戦略によって変わっていく組織形態。たとえば、「機能別組織」「プロジェクト型組織」が有名です。機能別組織とは、組織のリーダーを頂点として、人事・営業・販売といった各機能を受け持つ部署が下に控える組織形態のこと。プロジェクト型組織とは、プロジェクトごとにチームを編成する組織形態のことを指します。しかし近年、「機能別組織」や「プロジェクト型組織」に代わる新たな組織形態「マトリクス組織」が登場し、注目を集めているのをご存知でしょうか。そこで、この記事ではマトリクス組織の概要やメリット・デメリット、導入企業例などをご紹介します。貴社の組織運営でお役に立てれば幸いです。

 

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マトリクス組織とは

マトリクス組織とは、製品、職能、事業、エリアなどの複数要素を組み合わせて構成される組織です。この説明では少しイメージがしづらいので、図を見ながら詳しく説明していきます。

マトリクス組織の例の図

 たとえば、家電メーカーで考えてみましょう。縦は洗濯機、エアコン、冷蔵庫、電子レンジという製品別に分れていて、横は開発、生産、マーケティング、営業、カスタマーサポートという職能で分けられているとします。たとえば、開発のAさんの場合。一般的には開発のAさんは洗濯機だけの開発に集中しますが、マトリクス組織の場合、洗濯機だけでなく、エアコン、冷蔵庫、電子レンジの開発にも携わります。

 

つまり、人材を1つの部署だけでなく、複数に所属させるところが大きな特徴です。具体的には、「Aの商品を手掛ける部署に属しつつ、Bの商品を手がける部署にも所属している」などの例が挙げられます。人材が複数の仕事を持つことで、組織全体で柔軟に業務を進められるようになる点が魅力といえるでしょう。

「機能別組織」と「プロジェクト型組織」とは

ここで、マトリクス組織の理解を深めるためにも、従来の組織形態である「機能別組織」や「プロジェクト型組織」について掘り下げておきましょう。

機能別組織とは、人事や営業、販売といった「組織の機能」ごとに部署を作り、その部署内に専門の人員を配置する形態のことです。

機能別組織の図

 

一方、プロジェクト型組織とは、特定の目標達成(プロジェクト)のために一時的に組織内外の人員を集め、プロジェクトの終了とともにチームも解散になる形態のことです。

プロジェクト型組織の図

 

「機能別組織」や「プロジェクト型組織」の共通点として挙げられるのは、基本的に人材が属するチームは一つという点です。たとえば人事に属する人材は、人事の仕事を主に担当します。プロジェクトAチームに属する人材は、プロジェクトBチームの仕事には基本的に関与しません。従来の組織形態では、各部門・各プロジェクトは独立しているといえるでしょう。 

マトリクス組織の種類について

マトリクス組織には、バランス型、ストロング型、ウィーク型という3つのタイプがあります。それぞれの大きな違いとして挙げられるのが、「リーダーの選び方」です。

 

バランス型

バランス型の大きな特徴は、プロジェクトの責任者を同一のプロジェクトチーム内から選ぶところです。メリットとしては、従来の機能型組織と同じく「責任者が同じプロジェクトチーム内にいる」ため、仕事の状況を把握しやすいところが挙げられます。必要に応じて的確な指示を出せるほか、現場の統率も取りやすいでしょう。

 

ストロング型

ストロング型は、組織の中にプロジェクトのマネジメントを主に担う専門チームを作り、そこから各プロジェクトの責任者を選出します。マトリクス組織は1人のスタッフが複数のリーダーの指示を受けることが多く混乱を招きがちな面があるため、専門のマネジメントチームを作ることで組織の方針をスムーズに共有できるところが強みです。

 

ウィーク型

ウィーク型では、プロジェクトの責任者を設けません。プロジェクトの方針や決定はチームメンバーの判断力に委ねられるため、リーダーの決定を待たずに現場の連携でプロジェクトを進められるところが強みといえます。

マトリクス組織の3つの種類の図

なぜ組織形態が重要なのか

「機能別組織」や「プロジェクト型組織」、そして「マトリクス組織」。多様化しつつある組織形態ですが、これらを使い分ける意義についてもチェックしておきましょう。

 

「組織は戦略に従う」というチャンドラーの言葉をご存じでしょうか。ビジネスにはまず事業があり、事業の発展を目指すために事業戦略が設けられます。その理想を実現するために、人員や組織の形のありようの指針となるのが、組織形態です。軍師が戦に挑むとき、勝利に近づきやすい陣形を決めるのに似ている、と考えるとイメージが湧きやすいのではないでしょうか。

 

たとえば、「商材Aの売上を大幅に上げよう!」という事業戦略を立てた場合、売上アップにはたくさんの営業人員が必要になります。この際、商材の扱いが難しくレベルの高い専門知識が求められる場合は、営業人員一人ひとりの専門性の底上げが大切となるため、「機能型組織」が向いていることになります。

 

逆に、商材の売り方などに専門的なスキルがいらない場合は、営業に特化した部署を作るより、「営業」と「地域へのプロモーション」を両立させやすいマトリクス組織が機能するかもしれません。「組織は戦略に従う」のが、企業経営をする上では大切といえるでしょう。

マトリクス組織のメリット

ビジネスにおいてより柔軟な対応ができるようになるマトリクス組織ですが、どんな企業にも有用というわけではありません。マトリクス組織のメリットは大きく3つ挙げられます。

組織力の底上げができる

マトリクス組織は、従業員が複数の製品や事業領域を兼任し、多岐にわたるミッションを遂行するので、組織の事業全体への理解が深まりやすいメリットがあります。たとえば、1つのエリアを担当するよりも、複数のエリアに携わっている方が、エリアごとの特性、商品ごとの傾向などを把握できます。そうすると、各領域で改善できるポイントなどを見つけやすくなるのです。また、複数の事業、領域に携わり、ミッションを遂行していくことで、視野が広がり、従業員のスキルアップにつながりやすくなると言えます。結果的に組織力の底上げになるでしょう。 

事業の効率化につながりやすい

マトリクス組織は従業員が複数の事業に関わるため、従来の組織形態よりも様々なビジネスを展開しやすくなります。たとえば、「マーケティングチーム」に属している従業員がA製品だけではなくB製品、C製品にも携わることで、A製品でヒットした手法を他の製品にも展開することができるようになります。複数のチームに属することで従業員の専門性が幅広く発揮され、事業の効率化につながるところが強みです。

新しい事業の立ち上げのたびに人材を雇う必要が薄くなる

マトリクス組織では、「新しい事業を立ち上げたい」「こんなプロジェクトをやってみたい」というムーブメントが組織内で起こった際に、組織内の人員を異動させることなく新プロジェクトチームを作ることができます。組織内でリソースが余っているところから新しい事業に割り当てる、という柔軟な采配をしつつ、新規事業の立ち上げに伴う大幅な人事異動や新規採用を減らすことができるところが強みです。たとえば、一般的な組織だと、新たにD製品のマーケターを見つけなければなりませんが、マトリクス組織ですと、これまでA、B、C製品に携わっていたマーケターが、新たにD製品にも携わるようになるというだけで済むのです。

マトリクス組織のデメリット

続いて、マトリクス組織のデメリットも3つ見てみましょう。 

リーダーを誰にするのか、対立が起こる場合がある

マトリクス組織は、一人の従業員が複数のチームに属する関係上、上司(リーダー)も複数存在するところが特徴です。理想はリーダー同士が協力しあい、お互いのプロジェクトがよりよく進むよう連携しあうことですが、ときには「こっちの仕事をもっとやってほしい」「いや、こちらの方が急いでいる」というように、双方の意見が対立してしまうことがあります。最悪の場合は、複数のリーダーが異なる方針の指示を出し、部下を板挟みにしてしまうケースも。対策としては、リーダー同士のミーティングを定期的に設けるなどして、双方のプロジェクトの進捗や緊急度、優先度などを共有しておくことが大切となります。

人的資源の分け方が難しい

組織の持つリソースは「ヒト・モノ・カネ」の3つといわれていますが、マトリクス組織はこれらのリソースのうち、「ヒト」のリソースを増やしやすい組織形態です。しかし、いくらリソースが増えやすいといっても、一人の従業員がこなせる仕事量は有限です。よって人材を流動的に動かしやすいとはいえ、組織内の人的リソースの配分については従業員一人ひとりに負担がかかりすぎないように組む必要があります。

誰が指示伝達するのか決めるのが難しい

マトリクス組織には「絶対的なリーダー」というものは存在しません。ことウィーク型においては、リーダーそのものを設けずに仕事を進めていきます。この組織形態は個々が臨機応変に判断して仕事を進められる強みもありますが、一方でコミュニケーションが不足した途端チームの連携が取りにくくなり、進捗確認も難しくなるというデメリットもあわせもっています。

 

このように、マトリクス組織は組織の機動力を上げる反面、運営が難しいという特性があります。すべての組織の活性化に効く万能薬ではないことは把握しておいた方がよいでしょう。

マトリクス組織の導入企業事例「トヨタ自動車」から学ぶ

導入が難しいことで知られるマトリクス組織ですが、成功例ももちろん存在します。マトリクス組織の導入を通して組織改革を行なった企業としては、大手車メーカーであるトヨタ自動車が有名です。

 

トヨタ自動車がマトリクス組織を導入したのは、2013年のこと。今までよりも迅速な意思決定を促すため、自動車部門の改革を行ないました。従来の機能別組織である開発チーム、調達チーム、生産チームなどはそのままに、新たに「新興国チーム」「先進国チーム」「高級車チーム」などを設け、1従業員に複数のチームを兼任させるようにしたのです。

 

この組織改革により、トヨタ自動車はグローバル展開において、「各ターゲット層に即した車づくり」をローコストで行なうことに成功。各チーム間の情報共有も活発になり、組織内のリソースを最大限に活用できる組織に一段と飛躍を遂げました。 

マトリクス組織が失敗する主な理由

続いては、マトリクス組織が失敗する理由を見ていきましょう。主な理由は次の2つ。

・人的資源の配分を誤る
・リーダー同士の対立が生じる

では、一つずつ紹介していきます。

人的資源の配分を誤る

マトリクス組織は複数の要素が組み合わさって構成される組織のため、複雑性が高いと言えます。そのため、人的資源の配分も複雑になりがちです。気づいてみたら、ある特定の人に業務が集中しすぎていて、パフォーマンスに著しい影響を及ぼしていた。そのようなケースに陥ることもあります。

リーダー同士の対立が生じる

一人の従業員が複数のチームやプロジェクトに属するマトリクス組織では、チームやプロジェクトごとにリーダーが異なります。たとえば、各々のチームのリーダー同士の関係性が良くない場合、一人の従業員は複数のリーダーから「自チームの仕事を優先してほしい」と依頼され、業務の負担が大きくなりすぎることもあります。また、リーダー同士の考え方や意見が異なると指示も異なり、指示を受けたメンバーは戸惑ったり、大きなストレスを抱えることにもつながりかねません。

「機能しないマトリクス組織」を防ぐための注意点とは

では、もしマトリクス組織を導入する場合は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。特に気をつけたいポイントを見てみましょう。

 

まず従業員については、以下の2点をチェックします。

  • 従業員の一人に負担が集中していないか常にチェックする
  • 従業員に過度なストレスがかかっていないか注視する

マトリクス組織は従業員が複数の事業に関わっているため、所属するチームによっては一人の仕事量が過度に増えてしまうこともありえます。上司が部下の仕事量をチェックし、必要に応じてメンタルケアを行なえる体制づくりが必要です。

 

次に、リーダーについては「複数のリーダーがしっかり本音を伝え合い、関係性を作れる場を設ける」ことが大切となります。リーダー同士の対立によってプロジェクトが立ち行かなくなるのは、マトリクス組織の導入における大きな弊害のひとつ。もしリーダー同士の対立がなくならない場合は、早めに従来の組織形態に戻すことも視野に入れるとよいでしょう。

新しい人材を採用する際に重要なこと

事業戦略が決まれば、組織形態も決まってきます。マトリクス組織なのか、プロジェクト型組織なのか、機能別組織なのか。ここまで決まったら、いよいよどんな人材を採用するのかを決めていくフェーズになります。マトリクス組織であれば、様々な領域に関わることがあるので、「フットワーク軽く動ける人材のほうが活躍できそうだ」というように条件を設定できるかもしれません。このように人材を採用するうえでも、どのような組織形態なのかは非常に重要になってきます。改めて、事業戦略と組織戦略、採用活動はすべて紐づいていることを認識し、組織に適した人材を採用することが重要です。

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まとめ

マトリクス組織の概要や、導入メリット・デメリット、実際の導入例などについてご紹介しました。

 

マトリクス組織は従業員の機動力を上げる画期的な組織形態ですが、今までの組織形態に慣れていた人にとって、混乱しやすい形でもあります。よって導入の際には組織内にいる全員の行動規範やルールなどを今一度、共通認識として改めることが大切です。

 

マトリクス組織の運営において特に重要となるのは、組織に属する「人」の器量やバランス感覚です。「マトリクス組織を導入すれば会社がよくなる!」と安直に判断するのではなく、導入は従業員の理解を得た上で慎重に行なうことをおすすめします。

 

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