従業員の長時間労働を削減したいと思っていませんか?この記事では、長時間労働の原因や、効果的な長時間労働防止策、企業がすべきことなどをわかりやすく解説しています。明日から使えるノウハウもあるので、ぜひ、自社の労働環境の改善に活かしてください。
働き方改革の推進により、昨今、ますます注目を集めている「長時間労働」。長時間労働があたり前になれば、従業員の過労死などを引き起こしてしまうリスクもあります。
この記事では、長時間労働が起こる原因、効果的な長時間労働防止策、企業がこれからすべきことなどをやさしく解説していきます。「従業員の労働時間を削減したい」「残業しない風土をつくりたい」とお考えの経営者や人事担当者のみなさんは、必見です。
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- 長時間労働とは?
- 長時間労働が注目される背景
- なぜ長時間労働は起きてしまうのか?
- 日本人の生産性は低い
- 長時間労働による企業側のデメリット
- 長時間労働を防ぐ方法
- 長時間労働を改善するために企業が行なうべきこと
- 人材の流出は企業にとって大きな損失である
- まとめ
長時間労働とは?
長時間労働とは、決められている労働時間よりも長く働くことです。労働時間は企業や雇用形態、職種などによって異なるため、「○時間以上働くと長時間労働にあたる」という絶対的な定義はありません。しかし、36協定(サブロク協定/正式名称:時間外労働協定)で定められた労働時間を超えると、長時間労働と捉えられる傾向があります。
36協定とは、企業と労働者の間で労働基準法第36条にもとづいて結ぶ協定のことです。法定労働時間(1日に8時間/1週間に40時間)を超えて労働させる場合、36協定を結ぶことが義務付けられています。
そして、36協定は時間外労働が月45時間を超えない範囲で締結されなければならず、月45時間を超える時間外労働が発生していれば、企業は労働基準法違反となります。ちなみに、厚生労働省は、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まるとし、下記2点に留意すべきだとしています。
- 1週間当たり40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること。
- さらに、 1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間又は2~6か月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていること。
長時間労働が注目される背景
労働時間が長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性は徐々に強まるとされています。そして、脳・心臓疾患に係る労災認定の件数は下記の図の通りです。労災認定の件数が依然として高いままであることが、世の中で長時間労働が注目される大きな理由だと考えられます。
出典::厚生労働省 STOP過労死
また近年では「ブラック企業」という言葉が普及し、長時間労働についての国民の風当たりも厳しくなっています。こうした背景から、求職者は仕事を探すうえでも長時間労働にならないかを心配するように。企業はこれまで以上に、働く環境に力を入れていく必要が出ているのです。
なぜ長時間労働は起きてしまうのか?
長時間労働が発生してしまう大きな理由は下記の3つです。
- 人手不足による従業員への業務負担が増加
- 労働時間の管理やマネジメントができていない
- 成果ではなく、働く時間で評価される雰囲気がある
では、1つずつ解説していきます。
人手不足による従業員への業務負担が増加
時間外労働が起こる最も大きな理由と言っていいのが、人手不足です。現在の日本では、労働人口は減少傾向にあり、賃金は上昇傾向にあります。そのような背景から、業務量や業務内容を担える人員を確保できない企業が増えています。十分な人員を確保することができないため、一人あたりの業務負担が大きくなっているのです。
労働時間の管理やマネジメントができていない
2つめの理由は、管理職が部下の労働時間や業務のマネジメントをできていないことです。経済産業省が株式会社日本経済新聞社に委託して行なった「働き方改革に関する企業の実態調査」によれば、長時間労働の原因については、「管理職の意識・マネジメント不足」が44.2%でトップです。
部下の業務の進捗や業績の管理をはじめ、部下の勤怠や業務量を管理することも、管理職には求められます。しかし、期日までに終えられる適切な業務を与えることができない、部下の長時間労働を改善しようとしないといった管理職が多いことが、長時間労働を引き起こしている理由のひとつです。
成果ではなく、働く時間で評価される雰囲気がある
夜遅くまで残業している社員が、上司から「あいつは頑張っている」と評価される。このように、長く働くこと(≒残業をすること)がよしとされる風土が根付いている企業が、日本には少なくありません。残業がよしとされる環境では、たとえば、「みんなが残業しているから自分だけが早く退社しづらい」と思う社員が増えがちです。仕事の成果ではなく、労働時間の長さのほうが評価される環境も、長時間労働が起こる理由のひとつです。
日本人の生産性は低い
労働者一人当たりの付加価値を表すものとして、労働生産性がありますが、日本の労働生産性は高いのでしょうか、低いのでしょうか。下記は、OECD 諸国における労働生産性の推移のグラフです。
出典:厚生労働省 第2章 労働生産性の向上に向けた我が国の現状と課題
左の図は2005年を100とした場合の名目労働生産性ですが、日本は2005年以降、常に100を下回っており、ほとんど上昇していません。一方、右の図は2005年を100とした場合の実質労働生産性ですが、日本はほぼ真ん中に位置しており、2005 年以降、OECD諸国の中では、平均的な上昇を示しています。以上から、日本の労働生産性は、決して高くない、むしろ低いということができます。
長時間労働による企業側のデメリット
職場での長時間労働があたりまえになると、企業はどのようなデメリットを被るのでしょうか?ひとつずつ見ていきましょう。
従業員の退職につながりやすい
労働時間が長いと、仕事以外の時間、つまりプライベートが少なくなっていきます。そうなると、ワークライフバランスを保つことが難しくなり、従業員の不平不満は大きくなっていくでしょう。会社に対する不満が大きくなれば、「より良い労働環境で働きたい」という従業員が増え、退職につながっていくリスクが増大します。
従業員の疲労により生産性が下がる
長時間労働が続くと心身ともに疲弊していき、仕事へのモチベーションや集中力の低下を引き起こします。そして、ミスが発生しやすくなり、仕事の生産性は下がってしまうのです。また、そのような状態が続くと、生産性はさらに下がっていき、負のスパイラルに陥ってしまうでしょう。残業が続く→生産性が低くなる→残業になってしまうという悪循環が続いてしまいます。
退職により採用・育成コストがかかる
長時間労働は、従業員の退職の可能性を高めます。もし退職者が発生すれば、新たな人材を採用しなければならず、求人広告の出稿や応募者対応など、費用や時間などにおけるコストがかかります。また、採用した人材への教育なども必要になってくるため、育成に関するコストも発生します。ちなみに入社後3ヶ月以内で退職になってしまうと、200万近い損失額になると言われています。
36協定違反により罰則を受ける
36協定に違反した長時間労働を常態化させていると、たとえば、自社の従業員が労働基準監督署に通報するケースもあります。その場合、労働基準監督署による調査が実施され、36協定に違反していることが確認されれば、是正勧告がなされます。
そして、是正勧告に従わなければ、労働基準法32条に違反したとして、「企業および現場の労務管理を担当する責任者」に対して、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の刑罰が科されます。また、労働基準監督署は毎年、労働基準法違反について送検事例を公表しているため、書類送検されると企業名を公表されることがあります。企業名が公表されれば、企業イメージの悪化につながる恐れがあります。
長時間労働を防ぐ方法
常態化させるとさまざまなデメリットがある長時間労働。では、長時間労働を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、具体的な方法を紹介していきます。
有給休暇の推奨
長時間労働があたり前になっている企業では、多くの従業員が有給休暇を取得できていない傾向にあります。有給休暇は心身のリフレッシュという効果が期待でき、取得を推奨することで労働時間の削減にもつながっていきます。
従業員が有給休暇を取得しやすいように、たとえば、
- 企業が計画年休を指定する
- 他の休日や休暇と合わせて連休での取得を推奨する
といった打ち手を通じて、有給休暇の取得を推奨していきましょう。
ノー残業デーの設置
「残業を減らそう!」と言っても、これまで残業が常態化していたのであれば、すぐに変えるのはカンタンではありません。「残業=頑張っている」という空気感が出てしまっている場合は、一人だけ早く帰るのが気まずいというのは当然です。
そこでオススメなものが、「ノー残業デー」の設置です。会社から「残業をしてはいけない」と決められているため、他人の目を気にすることなく定時に退社することができ、従業員の労働時間の削減が期待できます。また、ノー残業デーは仕事をできる時間が決まっているので、従業員が効率的に業務をこなしてくれるということも期待できます。
評価方法を変える(生産性の高い社員を評価)
日本の企業では特に、たくさん残業をしている人や休日出勤する人が評価される風土があるのではないでしょうか。これまでの企業風土を簡単に変えることは難しいかもしれません。しかし、このような風土が根付いたままでは、長時間労働はいっこうに解消されないでしょう。抜本的に変えていくためには、そもそも評価方法を変えていく必要があrます。労働時間が長い従業員が評価されるのではなく、生産性の高い従業員が評価される人事評価制度の構築が、長時間労働の防止には有効です。
PCの強制シャットダウン
先ほどお伝えした「ノー残業デー」の設置と似ていますが、従業員が業務で使っているパソコンを強制的にシャットダウンする方法も、長時間労働を防ぐ策としては有効です。この施策は、民間企業だけでなく、多くの自治体でも取り入れられています。また、ノー残業デーの設置と同じく、従業員が限られた時間で効率的に業務をこなしてくれることも期待できます。
一定の労働時間を超えた社員にヒアリング
残業時間が多い従業員に、残業が多い理由をヒアリングすることも有効です。直接ヒアリングすることで、具体的にどんな業務にどれぐらいの時間がかかっているのかなどを的確に把握しやすいからです。残業が多い複数の従業員からヒアリングすれば、長時間労働の原因をおおよそ特定できるでしょう。そして、その原因を解消するための施策を考えていきます。
定期面談で業務状況、労働状況を把握・改善
長時間労働を防ぐには、特に管理職層を中心に、業務を改善する意識を持ち続けることが必要です。そして、そのためには、部下の業務量や仕事の状況を常に把握しておくことが欠かせないでしょう。部下の状況をキャッチアップするためには、定期的に面談を実施することが有効です。面談で危険信号をキャッチすれば、事が重大になる前に手を打つことができます。
長時間労働を改善するために企業が行なうべきこと
長時間労働を防止するための方法をいくつか紹介しましたが、施策を講ずる前に、現状の把握や長時間労働が発生しない風土づくりが重要です。では、具体的に説明していきます。
労働時間を把握する
まずは、自社でどれぐらいの長時間労働が行なわれているのかを把握しましょう。部署や役職、職種ごとなど、細かく確認することで、状況を的確に把握できます。
2017年1月、厚生労働省によって、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定されました。このガイドラインでは、長時間労働の実態を把握するために、下記の7つが必要だとしています。
- 始業・終業時刻の確認及び記録
- 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
- 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
- 賃金台帳の適正な調製
- 労働時間の記録に関する書類の保存
- 労働時間を管理する者の職務
- 労働時間等設定改善委員会等の活用
参考:厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
従業員に対して36協定の周知徹底
長時間労働をよしとしない風土をつくっていくためには、働くうえでのルール、つまり、36協定の内容を従業員に周知することが有効です。周知することで従業員の意識が変わり、それが風土をつくっていくからです。
ちなみに、厚生労働省によれば、下記3つのうちいずれかで36協定を周知する必要があります。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
人材の流出は企業にとって大きな損失である
最後に、人材の流出は企業にとって大きな痛手となることを改めてお伝えします。長時間労働が常態化し、人材流出が止まらない…もしこういう状態であれば、企業は成長するのが難しくなってしまいます。
せっかく時間をかけて育て即戦力になったのに、辞められてしまえば、またイチから採用活動を行ない、入社後に育てなければなりません。また会社にもノウハウが溜まっていかなくなるので、会社としての成長スピードも落ちてしまうでしょう。人材は会社を成長させるためには不可欠な存在。長く定着してもらい、活躍してもらうことが、会社を成長させてくれることにつながります。
ただこれは残業をゼロにしようという話ではありません。もちろん売上をあげるために、社員に一生懸命働いてほしいと考える方は多いでしょう。また残業をただ減らすことが良いことかというと、一概にそうとも限りません。ビジネスでの競争で勝ち残るため、またグローバルな舞台で戦っていくためには、残業をしてビジネスを成長させることも重要です。
ただ、長時間労働によって人材が流出しているのであれば、企業にとっても大きな損失になるので、仕組みを変え、社員が意欲的に、生産性を高めて働ける環境を整えていく必要があるということです。
まとめ
今回は、長時間労働についてお伝えしました。働き方改革の推進などにより、労働時間への注目が集まっている昨今、長時間労働に対する世間の目はいっそう厳しくなっていくでしょう。また、長時間労働を常態化させてしまうと、従業員の退職につながるリスクが高まり、ひいては企業力の低下を招いてしまいます。そのような状態を避けるためにも、従業員を定着させていくことが、企業においてはますます重要になっていきます。この記事に書かれているノウハウが、少しでも貴社の現状の改善につながれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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