障害者雇用促進法とは?雇用義務以外に企業が取り組むべきこととは

障害者雇用促進法は、ある程度の人数の労働者を雇用している企業にとっては、果たすべき義務や推進されている事項などが多い、重要な法律の1つです。

 

一方で、同法律は規定されている内容が多岐にわたり、また、複数の別の法律や制度とも結びついているため、全容を把握するのはなかなか難しいところがあります。

 

だからこそ、当記事ではあえて、事業主(企業側)や人事に携わる方が特に把握しておくべきポイントに絞って内容をまとめました。「企業側が特に意識して取り組むべきことはどんなことか」「人事に関わるものとして、やるべきこと・できることは何か」を考えるヒントとして活用していただければと思います。

 

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「障害者雇用促進法」とは?

障害者雇用促進法とは、一言で表現すると、「障害者がより安定して社会で活躍できるようにする」ための法律です。この法律は、事業者(企業)を通じ、障害者一人ひとりが能力・特性を活かせる環境を整えていくことで、

  • 障害者が希望や能力に応じて活躍できる機会
  • 企業の生産性向上
  • 社会全体の活性化

に繋げることを目的としています。

障害者雇用促進法のポイント

障害者雇用促進法では様々な規定がされていますが、事業者(企業)が知っておくべき特に重要なポイントは、大まかに下記の4点です。

  • 障害者の雇用義務
  • 障害者雇用納付金制度
  • 障害者への差別禁止、合理的配慮
  • 障害者雇用に関する報告義務

とはいえ、これだけでは分かりにくいはず。それぞれを、もう少し具体的な表現に言い換えてみましょう。

  • ある程度の数の従業員を雇用している事業者が、一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用しなければならない義務
  • 障害者を雇用する際の経済負担を軽減するための制度
  • 障害者を差別することなく、障害者とそうでない者が均等に働けるようにするための配慮
  • 年に1度、ハローワークに障害者の雇用状況を報告しなければならない義務

各詳細については当記事で解説していきますので、今は概要が掴めていれば大丈夫です。

義務を果たせなかった場合は罰則も

障害者雇用促進法で定められた義務の一部は、達成できない場合に罰則が適用されるケースもあります。先ほどご紹介した中から、「障害者雇用に関する報告義務」を例に挙げてご紹介しましょう。障害者雇用促進法では、雇用義務が課される条件(従業員が43.5人以上)を満たしている企業は、「毎年6月1日時点の障害者の雇用状況をハローワークへ提出しなければならない」と定められています。

 

まずこの時点で、ハローワークへの提出をしなかったり、虚偽の報告をしたりすると、30万円以下の罰金刑が課されます。また、正しい報告をしたとしても、それにより雇用義務が果たせていないことが分かった場合、ハローワークから行政指導が入ります。さらに、行政指導を受けてもなお改善が見られなかった企業は、企業名が公表されることになっているのです。

 

万が一こうした形で企業名を公表されてしまった場合、社内外からのイメージや信頼が大きく低下する事態は避けられないでしょう。企業としての信頼を保つためにも、法律を理解し、義務を達成する重要性は高いと言えます。

直近の障害者雇用促進法改正による変更点

障害者雇用促進法は、1960年に制定された前身の法律「身体障害者雇用促進法」から現在に至るまで、しばしば改正が行なわれています。実は直近でも、2020年4月と2021年3月に改正が実施されました。2020年と2021年の改正により、義務の基準が変更になった点もありますので、知らずに法律違反してしまわないためにも、ここで改正点について確認しておきましょう。

短時間労働者として障害者を雇用することへの給付金

以下の3点に該当する障害者を雇用する事業主に対して、新たに特例給付金が支給されるようになりました。

  • 雇用義務対象である(障害手帳を持っている)
  • 1年以上雇用される予定がある
  • 週の労働時間が10時間以上20時間未満

支給額は、従業員101人以上の事業主の場合は、対象の障害者1人につき月7000円。従業員100人以下の事業主の場合は、対象の障害者1人につき月5000円です。これにより、企業側は、障害者を短時間労働者として雇用する選択肢を取りやすくなったと言えるでしょう。

中小企業への認定制度が新設

障害者雇用促進法に関連する制度として、「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」が新たに定められました。こちらは、法定雇用率を達成できている従業員300人以下の事業主が、特定の評価基準を満たすことで、障害者雇用に積極的に取り組んでいると国から認定される制度です。評価基準を満たし、国から認定された企業は、下記のようなメリットを享受できます。

  • 専用の認定マークを使用できる
  • 日本政策金融金庫の「働き方改革推進支援資金」を低金利で利用できる
  • 厚生労働省のホームページやハローワークの求人票に認定された旨が記載される
2021年の改正では法定雇用率が変更に

2021年3月より、法定雇用率が変更。民間企業の場合、2.2%から0.1%アップし、「2.3%」になりました。この引き上げに伴い、障害者雇用の義務が生じる企業の条件も「従業員が43.5人以上」に変わっています。実質的に、44人以上の従業員を雇用している企業は、法定雇用率を達成する必要が出てきたということです。

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障害者雇用促進法を守るために企業が取り組むべきこと

ここまで、障害者雇用促進法の内容について確認してきました。では、これらを前提として、企業はどのようなことを行なえばいいのでしょうか。

雇用義務の対象を把握する

障害者雇用促進法の対象となっている障害者と、同法律内で雇用義務対象である障害者の範囲は、実は異なります。雇用義務の対象となるのは、一言でまとめると「障害手帳を持っている障害者」。一方で、障害者雇用促進法での障害者の定義は、「身体障害・知的障害、発達障害を含む精神障害により、長期間職業生活に支障が出ている者」もしくは「統合失調症、そううつ病(そう病・うつ病)、てんかんの症状が安定して就労できるようになっている者」とされているのです。

 

要約すると、「雇用義務が生じるのは障害手帳を持っている障害者だが、同法律が定める障害者の定義自体は、障害手帳を持っているかどうかを問わない」ということになります。企業が取り組むべきことを理解するためにも、まずは、「法律が定義する対象者」と「法律内での雇用義務対象者」との違いを押さえておきましょう。

障害者雇用率を計算して計画を立てる

先述の通り、2021年4月時点で、民間企業の法定雇用率は2.3%に設定されています。この数字を踏まえて、義務で雇用する必要のある障害者の数は、「常用雇用している労働者数×法定雇用率」で計算可能です。たとえば、常用雇用している従業員が255人の企業の場合、

255人×0.023(2.3%)=5.865人

小数点以下は切り捨てることになっているため、「従業員255人中5人以上が障害者である必要がある」という計算結果になります。ただし、これは分かりやすくなるように簡略化した例です。実際には、雇用者の障害の程度や労働時間、業種によって設定されている除外率などで計算方法は異なります。

 

したがって、雇用する必要がある障害者の数を計算する際には、厚生労働省や専門家(社労士など)からの情報をしっかりと確認し、自社の状況と照らし合わせながら行なってください。その上で、計算した結果の数字を念頭に置きながら、雇用計画を立てていきましょう。

納付金と調整金の仕組みを理解する

障害者雇用促進法に関連する重要な制度の1つに、企業間の経済的負担のバランスを取り、障害者雇用を社会全体で促進するために設けられた「障害者雇用納付金制度」というものがあります。このように表現すると具体的なイメージが掴みにくいかもしれませんが、事業主(企業)側から見れば、「法定雇用率を上回る人数の障害者を雇用している事業主は調整金を受け取れ、法定雇用率を満たしていない事業主は納付金を徴収される」制度だと言ってもいいでしょう。調整金は、法定雇用率を超えた人数1人あたり、月2万7000円(従業員101人以上の場合)。納付金は、法定雇用率に足りない人数1人あたり、月5万円です。

 

先ほど例に挙げた従業員255人の企業でご説明しますと、たとえば、雇用義務の対象となる障害者を7人雇用していれば、月5万4000円の調整金を受け取ることができます。逆に、従業員255人中、雇用義務の対象となる障害者を3人しか雇用していなければ、月10万円の納付金を納めなければならなくなるわけです。障害者雇用促進法では、法定雇用率を達成できないこと自体に対して、罰金などの罰則が課されているわけではありません。しかし、その場合は同制度によって納付金が徴収されるため、雇用義務を果たせない場合の実質的なデメリットとなっています。

必要に応じて助成金や支援を活用する

障害者雇用に力を入れたいと思っていても、「資金面で少し厳しいところがある」「障害者を雇用した後、どのように対応していけばいいのか分からない」といった課題があるかもしれません。実は、そうした場合に活用できる助成金や支援がいくつか存在します。

 

助成金の例としては、ハローワークなどを経由して、障害者を一定の期間中トライアル雇用(試行雇用)する事業者が受け取れる「トライアル雇用助成金」や、ハローワークなどの紹介から障害者を継続雇用した事業主が受け取れる「特定求職者雇用開発助成金」が挙げられます。また、希望する事業者は、障害者を雇用した後にジョブコーチによる支援を受けることも可能です。事業主と障害者の双方にアプローチするサポートをしてもらえるので、助成金と合わせて上手く活用すると良いでしょう。

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障害者雇用促進法を踏まえて人事が意識すべき4つのポイント

障害者雇用促進法を踏まえて人事が意識すべき4つのポイント

人事担当者にとって、障害者雇用促進法で考慮すべきなのは雇用義務だけではありません。同法律内には、「障害者への差別禁止、合理的配慮」という重要な項目が含まれており、ここにも人事が大きく関わってきます。この「障害者への差別禁止、合理的配慮」に基づいて、障害者を雇用するにあたって人事担当者が意識しておきたいポイントを紹介していきます。

1.障害者の採用時に合理的配慮を行う

採用シーンにおいて、障害を持つ人は、そうでない人と機会が均等にならない場合があります。把握できる情報量・内容などが不均等になってしまうことで、障害者が選考上不利になってしまう可能性などが考えられるのです。しかし、こうした不均等は、事業主(企業)側が下記のようなちょっとした配慮を行なうだけでも、大きく改善できるケースがあります。

  • 視覚障害者に募集内容を伝えるために、音声や点字などを用いる
  • 聴覚障害や言語障害を持つ人に対し、面接を筆談で実施する

また、採用シーンで適切な対応を行なうためには、「何が支障となっているのか」を障害者側から話してもらうことも大事です。面接時に、「選考過程において何か困ることはないか」と事業主側から尋ねるなどして、障害者が正直に話しやすい雰囲気をつくることも意識しましょう。

2.障害者が入社した後も合理的配慮を考える

障害者への合理的配慮は、業務上で障害者に負担がかかり過ぎることのないよう、入社後も継続して行なうことが求められています。たとえば、下記のような配慮が想定されます。

  • 体の一部(手足など)が不自由な人が使用する机の高さを調節できるようにする
  • 聴覚障害を持つ人のために手話通訳者や要約筆記者の力を借りる
  • 体調や通院状況などを考慮し、出勤・退勤時間や休憩時間、休暇などを柔軟に変更する

ただし、上記は一例であり、自社、あるいは自社で働く障害者にとって適切な対応であるとは限りません。重要なのは、「合理的配慮は、事業主と障害者の相互理解が前提となっている」こと。配慮の方針は、事業主(企業)の立場だけで決定するのではなく、障害者一人ひとりと話し合い、その人に合った形を定めていくべきです。

3.差別が生まれない職場環境づくりを意識する

同法律では、「『障害者だから』という理由で不当な差別的扱いをしてはならない」とも定められています。具体的には、単に障害を持つことを理由に、障害者に対して以下のようなことを行なうのが「不当な差別的扱い」に当たります。

  • 応募や採用を拒否すること
  • 車椅子や人工呼吸器など、障害者にとって必要な機器の使用を否定すること
  • 賃金を下げたり、昇給を拒んだりすること
  • 研修や実習を受けさせないこと
  • 食堂などの社内設備の利用を認めないこと など

不当な差別的扱いを防止するためには、「どのような扱いが不当な差別的扱いに該当するのか」を正しく把握した上で、合理的配慮をより円滑に行なえるようにするための雰囲気をつくっていくことが大切です。そのためには、経営層や人事・労務などの担当者の間ではもちろん、障害者が実際に働く職場環境においても、適切な形で周知していく必要があります。

4.差別禁止・合理的配慮は障害手帳所持者に限らない

すでに述べましたが、障害者雇用促進法においては、「雇用義務は障害手帳を持っている障害者が対象である一方、障害者の定義自体は障害手帳の有無を問わない」ことになっています。そして、差別の禁止・合理的配慮の対象は、雇用義務の対象者に限った話ではありません。すなわち、同法律では「事業主は、雇用した全ての障害者に対して差別の禁止や合理的配慮を行なうべき」としているのです。

 

メリット・デメリットが分かりやすいということもあり、雇用義務の達成は企業にとって優先度の高い事項かもしれません。ただ、その義務だけに囚われすぎることなく、様々な障害者に対して柔軟な対応を行なえるよう、社内の意識や制度などを整えていくと良いでしょう。

障害者雇用促進法を活かして従業員がより働きやすい環境をつくる

障害者雇用促進法を理解し、同法律に基づいた取り組みを行なうことは、障害を持つ従業員だけでなく、従業員全体の働きやすさにも繋がります。例を挙げると、

  • 職場環境のバリアフリー化が進むことで、障害者ではない従業員の作業効率もアップする
  • コミュニケーションを今まで以上に意識するようになることで、より良い人間関係が構築される

といった効果が期待できるのです。また、中小企業の場合、積極的な取り組みによって国から認定を受けられれば、活躍する人材の多様性をアピールでき、幅広い人材を採用しやすくもなるはずです。障害者雇用促進法の義務を果たしつつ、上手く活用することで、自社内を多様な人材が活躍できる環境にしていくことも可能でしょう。

まとめ

障害者雇用促進法の主たる意図は、「障害者がより安定して希望や能力を活かし、活躍できる社会を実現する」ことです。しかし、同法律が目指す最も重要な目標は、「法律として制定したり、義務付けたりする必要なく、全ての人が均等に活躍できる機会を持てる社会」であるように思います。特に、不当な差別的扱いや合理的配慮については、同法律において義務を果たす条件に該当しない事業主であっても、今一度参考にすることで、よりよい職場環境づくりのきっかけになるのではないでしょうか。

                          

なお、最後に重ねてお伝えしますが、当記事の内容はあくまでも、障害者雇用促進法の一部から要点をまとめてご紹介しただけに過ぎません。同法律に基づいたチェックや見直しは、厚生労働省からの情報を得たり、専門家に相談したりしながら行なうことをおすすめします。

 

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