【やさしく解説】裁量労働制とは?制度の概要や働き方、メリットを解説

各企業で働き方の見直しが進む中で、「裁量労働制」が注目される機会も増えてきました。この記事をご覧の方の中には、「新たに採用しようとしている職種で裁量労働制の導入を検討している」「裁量労働制という言葉をよく聞くが、実はあまりわかっていない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

この記事では、裁量労働制の概要や働き方、メリット・デメリット、導入の際のポイントなどをわかりやすく解説しています。知識を深めたい方、自社への導入をお考えの方にオススメです。

 

CHECK!

無料で求人を掲載したい方は、engage(エンゲージ)に無料登録を。Indeedをはじめ、求人ボックス、Googleしごと検索の求人サービスにも自動で掲載されます各社の掲載条件を満たした場合

 

engage(エンゲージ)の導入社数は、40万社を突破。東証一部上場のエン・ジャパンが手掛けるサービスですので、安心して利用いただけます。(無料)

 

裁量労働制とは?

裁量労働制とは、働く時間や配分などの労働時間について、会社から指示されるのではなく、労働者本人が決めることができる制度です。従業員は、決められた時間に出勤し、決まった時間まで働くというルールはありません。時間に縛られず働くことができます。また実際の労働時間が何時間であろうと、労使協定で定めた時間分は労働したものとみなし、賃金計算が行なわれます。

 

長い時間働くも、逆に短く働くこともできる働き方です。何時から勤務を始めてもOKですし、何時に勤務を終えても問題ありません。始業時間を自分で決められるので、「遅刻」という概念もありません。かなり自由度の高い働き方を実現できるでしょう。

 

なお、適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されていて、「企画業務型裁量労働制」と「専門業務型裁量労働制」の2種類に分かれます。導入にあたっては、「労使双方の合意」と「事業場所轄の労働基準監督署長」への届け出が必要です。

裁量労働制の目的

もともと労働基準法では「1日8時間、週40時間」という勤務時間が決められているため、企業に雇用されて働く場合、勤務開始時間と勤務終了時間が決められたルールの中で労働することになります。

 

しかし、たとえば新製品の研究開発や建築士など特定の業務においては、勤務時間が決まっていることで逆に効率が悪くなり、仕事がやりにくくなるといったケースがあるのです。こういった問題を解決するために設けられたのが「裁量労働制」という制度です。

 

業務の具体的遂行方法については大幅に労働者の裁量に委ね、比較的自由に時間を使えるようにすることで、より高い仕事の成果を生み出せるようにすることを目的としています。

裁量労働制の目的

 

少子高齢化の進行により労働人口が減少している日本では、「生産性」をより高めていくことが必要と言われています。その点、裁量労働制は労働者の自由度を高めることによって、より多様な働き方ができるようにもなります。

 

自分のペースで働きながら、生産性を高めていくことにもなるでしょう。こうした背景からも、今の日本において裁量労働制への注目度が高まっていっているのです。

裁量労働制の種類について

「働き方の自由度を高められるなら、自社でも導入を検討したい」とお考えになった方もいるかもしれませんね。しかし、裁量労働制は決められた仕事にしか適用することができません。裁量労働制は「企画業務型」と「専門業務型」の2種類に分かれますが、それぞれどのような仕事が対象になるかを見ていきましょう。

 

裁量労働制

企画型裁量労働制

「企画業務型裁量労働制」は、事業運営上の重要な決定が行なわれる事業場において、企画、立案、調査、分析を行なう職種が適用の対象となります。

 

具体的には経営企画や営業企画、人事・労務担当など、主に本社や管理部門での業務に適用されます。企業経営に直結する企画・分析などの業務は、世の中の動き、自社、競合他社など多岐にわたる調査を必要とし、仕事の成果もレポートや計画書の作成などさまざまです。時間単位での成果が見えにくいため、裁量労働の対象となっています。

 

専門業務型のように対象業務が限定されてはいませんが、どの事業場でも導入できるわけではありません。企画、立案、調査、分析の業務であることに加え、その業務をいつ、どのように行なうかなどについて、大きな裁量が労働者に委ねられていることが求められます。

専門型裁量労働制

「専門業務型裁量労働制」は、研究開発など業務の性質上その業務方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、その遂行の手段や時間配分などについて具体的に指示することが困難な業務を行なう職種が適用の対象となります。

 

具体的には、以下の業務に限って認められています。

【1】新商品・新技術の研究開発または人文科学・自然科学に関する研究
【2】情報処理システムの分析または設計
【3】新聞・出版・包装における取材・編集
【4】衣服・室内装飾・工業製品・広告などの新たなデザインの考案
【5】放送番組・映画などの政策におけるプロデューサー・ディレクター
【6】以上のほか、厚生労働大臣の指定する業務

 
(1)コピーライター
(2)システムコンサルタント
(3)インテリアコーディネーター
(4)ゲーム用ソフトウェアの創作
(5)証券アナリスト
(6)金融商品の開発
(7)大学の教授、准教授、講師の研究業務
(8)公認会計士
(9)弁護士
(10)建築士
(11)不動産鑑定士
(12)弁理士
(13)税理士
(14)中小企業診断士

企画型裁量労働制と専門業務型裁量労働制をまとめると下記の表のようになります。

 

  企画業務型裁量労働制 専門業務型裁量労働制
概要 事業運営上の重要な決定が行なわれる事業場において、企画、立案、調査、分析を行なう業務であり、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない業務 業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難な業務
対象事業場 主に本社や本店など事業運営上の重要な決定が行われる事業場
(企業全体の事業運営に影響を及ぼすもの)
対象業務のある事業場
対象労働者 対象業務に従事する労働者であって、この制度によることに同意したもの 対象業務に従事する労働者
対象職種 【1】経営企画担当部署
【2】人事・労務担当部署
【3】財務・経理担当部署
【4】広報担当部署
【5】営業企画担当部署
【6】生産企画担当部署

※以下の業務は対象外。
○経営に関する会議の庶務等の業務
○人事記録の作成・保管・給与等の計算及び支払い・各種保険の加入及び脱退・採用・研修の実施の業務
○金銭の出納・財務諸表・会計帳簿の作成及び保管、租税の申告及び納付、予算・決算にかかる計算の業務
○広報誌の原稿の校正等の業務
○個別の営業活動の業務
○個別の製造業の作業、物品の買い付け等の業務
【1】新商品・新技術の研究開発または人文科学・自然科学に関する研究
【2】情報処理システムの分析または設計
【3】新聞・出版・包装における取材・編集
【4】衣服・室内装飾・工業製品・広告などの新たなデザインの考案
【5】放送番組・映画などの政策におけるプロデューサー・ディレクター
【6】以上のほか、厚生労働大臣の指定する業務
(1)コピーライター
(2)システムコンサルタント
(3)インテリアコーディネーター
(4)ゲーム用ソフトウェアの創作
(5)証券アナリスト
(6)金融商品の開発
(7)大学の教授、准教授、講師の研究業務
(8)公認会計士
(9)弁護士
(10)建築士
(11)不動産鑑定士
(12)弁理士
(13)税理士
(14)中小企業診断士

 他の勤務形態との違い

ここまで、裁量労働制の概要や目的、その種類などを解説してきました。では続いて、フレックス勤務や他のみなし労働時間制との違いについて見ていきましょう。

フレックスタイム制との違い

裁量労働制は「みなし時間労働制」のひとつですが、フレックスタイム制は「変形労働時間制」のひとつです。

 

フレックスタイム制とは、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決められる制度のことです。その名の通り、フレキシブルに、柔軟に時間を決めて働くことができます。

 

たとえば、フレックスタイム制を利用すると、9時~18時まで会社にいる必要はなく、予定がある場合は、9時~16時まで勤務し、16時以降はプライベートにあてる。その代わり早く帰った分、他の日に多く働き、定めた総労働時間におさめるという働き方になります。

 

2つの違いは、フレックスタイムが、月で総労働時間を決めて、その総労働時間内で働く時間を自由に決めて働けることに対して、変形労働時間制は、労使協定で定めた時間分は労働したものとみなすということ。1日8時間労働とみなすと決めたら、多くても、少なくても8時間働いたことになります。

en-gage.net

 

変形労働時間制との違い

変形労働時間制とは、事業所の繁忙期と閑散期がある程度決まっている場合、労働時間を週単位・月単位・年単位で調整することで、柔軟に働けるようにする勤務時間制度のことです。

 

労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められており、これを超える時間を労働させる場合、時間外労働となるのが原則です。しかし業態によっては、法定労働時間が業務にそぐわない場合があるために設けられました。

 

たとえば「月の前半は忙しいが後半は暇、夏は忙しいが冬は暇など、時期によって反感の差が大きい場合」や「24時間をカバーする交替制勤務で、1日の勤務時間が8時間を超えることが必要不可欠な場合」などは、この制度を利用すれば、当番制で1日14時間働き、翌日は休日にする、といった働き方も可能なのです。

 

変形労働時間には1ヶ月単位や1年単位で適用するものがあり、制度に応じて就業規則の変更や労使協定書の締結が必要になることがあります。

 

裁量労働制には、規定労働時間や残業時間の考え方がありませんが、変形労働時間制の場合、所定労働時間を超えて制度の対象者を労働させる際に36協定の範囲内とすること、割増賃金を支払うことなどが必要となります。労働者の裁量の大きさにも違いがあります。

 

en-gage.net

裁量労働制を導入するメリット

裁量労働制を導入するメリットは、生産性の向上です。たとえば、専門型裁量労働制の対象となるコピーライターの仕事で考えていきましょう。

 

コピーライターはアイデアなどで勝負する仕事です。アイデアが出るまでに時間がかかる場合もあるため、通常の勤務時間で考えると、どうしても融通が利かないことが出てしまいます。たとえば、勤務時間を超えたので業務を終えたり、業務時間を超えると残業が発生してしまうと、働く側にとっても、会社側にとっても、うまく業務を進めることができません。

 

こうした場合に裁量労働制を導入すれば、もっと柔軟に働くことができます。アイデアが出ない日は、遅くまで仕事ができ、すぐにアイデアが出る日はすぐにその分早く帰れるようにする。成果次第で、柔軟に働き方を選ぶことができれば、より働きやすくなるのです。

裁量労働制の会社向けデメリット

裁量労働制を導入するデメリットは、導入にあたって、複雑な手続きを行わなければならないことです。後述しますが、制度を導入するにあたって、原則として

・制度の対象とする業務

・業務を遂行の手段や方法

・労働時間としてみなす時間

・対象となる従業員の健康を確保するための措置内容

・対象となる従業員の苦情を処理のために実施する措置内容

上記などを労使協定で決め、指定のフォーマットで所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要になります。すぐに導入しようにも、こうした手続きを負担に感じ、導入をためらっている企業も少なくないでしょう。ただし、一度導入すれば、社員にとっても会社にとってもメリットは十分あるので、検討してみるのが良いと思います。

裁量労働制でも手当を払わないといけないケース

裁量労働制は、1日の勤務時間が8時間以上になっても、みなし時間分だけ働いたことになるため、原則として時間外労働に対する残業代(割増賃金)が発生しません。しかし、裁量労働制でも手当を払わないといけないケースがあります。そのケースについてここから見ていきましょう。

休日手当、深夜手当

まずは、休日手当や深夜手当です。裁量労働制を導入していても、休日に関する規定や深夜勤務に関する規定は適用されます。

 

休日手当については、法定休日(週1日の休日)に労働をした場合には、休日の割増賃金が発生することになります。また、所定休日(完全週休2日の会社の場合、法定休日ではない休日)に労働をした場合には、週の労働時間が40時間を超えた場合に割増賃金が発生するケースがあります。

 

深夜手当については、夜22時から朝5時までの間に労働をした場合、深夜の割増賃金が発生することになります。たとえば、時間外労働と深夜労働、または休日労働と深夜労働が同時に行なわれた場合には、それぞれの割増を合算した金額を手当として支給しなければなりません。

時間外手当が発生するケース

また裁量労働制の場合でも、法定労働時間(1日8時間、週40時間)は適用されます。つまり、労使で取り決めをした「みなし労働時間」が1日8時間以上となる場合、休憩時間を除く労働時間が8時間を超える分には時間外割増賃金が発生することになります。つまり、みなし労働時間が1日9時間の場合、8時間を超える1時間については時間外割増賃金が発生することになるのです。

裁量労働制の導入の流れ

最後に、裁量労働制の導入の流れを見ていきましょう。「企画業務型」と「専門業務型」では導入の流れに違いがあります。

「企画業務型裁量労働制」を導入するステップ

当該事業場に労働者と使用者が結成する労使委員会を設置し、その委員全員の一致で、以下事項について決議しなければいけません。

□対象業務の範囲
□対象労働者の範囲
□みなし労働時間
□労働時間の状況に応じた対象労働者の健康・福祉確保のための措置
□対象労働者からの苦情処理に関する措置
□労働者の同意の取得および不同意者の不利益取り扱いの禁止
□決議の有効期間
□記録の保存について(3年間保存しなければならない)など

 

この労使委員会を設置したときおよび決議については、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。また制度がスタートした後は、定期的に所轄の労働基準監督署に実施状況を報告する必要があります。

「専門業務型裁量労働制」を導入するたステップ

当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合と、ないときは労働者の過半数を代表するものと、労使協定を結ぶことが必要です。その労使協定では、以下について定めなければなりません。

□対象業務の範囲
□業務の遂行手段、時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしない旨の記載
□労働時間の算定については協定によることの記載
□みなし労働時間をどれだけとするかについての記載
□有効期間についての記載

この労使協定は、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

裁量労働制を導入する際の注意点

ここまで、裁量労働制について解説にしてきましたが、ご自身の会社での導入是非について悩まれる方も多いのではないでしょうか。ここで注意点についてお話しします。


裁量労働制を取り入れることで起こりがちなのが、対象者・非対象者との摩擦です。制度の性質上、一見すると「自由度が高い働き方」と捉えられてしまいがちです。そのため、非対象者から見たときに「あの人は、いつも午後から出社している」「仕事もそこそこに帰ってしまった」などと捉えられ、社内での不満につながってしまうケースもあります。

 

導入にあたっては、こうした社内理解も大切です。裁量労働制は朝が遅い分、夜遅くまで働いていることもあるので、上記でお伝えしたように、「なぜ裁量労働制が適用されているのか」を社内でしっかり伝えるなどの動きが必要になります。

まとめ

「裁量労働制」について解説してきました。導入までの手続きなどはやや複雑な部分はありますが、働き方改革などで生産性向上への意識が高まっている今、「裁量労働制」にはいろいろなメリットがあり、よりフレキシブルに働いていくためには欠かせないものです。もし裁量労働制の対象となる職種が社内にいる場合、その特徴をしっかり理解したうえで、「裁量労働制」を導入して生産性の高い組織をつくっていくのが良いのではないでしょうか。

 

CHECK!

無料で求人を掲載したい方は、engage(エンゲージ)に無料登録を。Indeedをはじめ、求人ボックス、Googleしごと検索の求人サービスにも自動で掲載されます各社の掲載条件を満たした場合

 

engage(エンゲージ)の導入社数は、40万社を突破。東証一部上場のエン・ジャパンが手掛けるサービスですので、安心して利用いただけます。(無料)

 

 

en-gage.net

 

 

engage

採用ガイド編集部

engage採用ガイド編集部は、人材業界で長く活躍している複数のメンバーで構成されています。人材業界で営業や求人広告ライターなどを経験したメンバーが、それぞれの得意領域を担当し、専門的な知識に基づき執筆を行っています。

engage採用ガイド編集部は「採用に悩む経営者・人事担当者の頼れる相談先」としてこれからも日々情報をお届けしていきます。 ※engage採用ガイドはエン・ジャパン株式会社が運営している情報サイトです。