不況などの情勢に加え、終身雇用が崩壊している昨今では、社会人は今まで以上に「どう働き、どのように生きていくか」をしっかりと考えることが求められています。「一度会社に入れば、教育もキャリアアップも会社が面倒を見てくれる」という時代が終わりを迎えつつある以上、個々が自らの人生について考え、能動的にキャリアを積んでいく必要性が増しているといえるでしょう。
このような世情を受けて、社員の「キャリアデザイン」の形成を支援する企業も続々と増えています。今回はキャリアデザインの概要や、似ている言葉である「キャリアプラン」や「キャリアパス」との違い、キャリアデザインの構築方法などについてご紹介しましょう。
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- キャリアデザインとは
- キャリアデザインが注目されている背景
- 企業がキャリアデザインの作成を支援するメリット
- キャリアデザインを構築する4つのステップ
- 企業が社員のキャリアデザイン構築をサポートする方法とは
- まとめ
キャリアデザインとは
キャリアデザインとは、簡単にいうと「人生設計」です。自分の理想の人生を思い描くとともに、理想の実現に向けた計画を立てることを指します。就活中の学生はもちろんのこと、社会人として働き始めたばかりの人や、結婚や子育てといったライフイベントを迎える中年層など、様々な年齢層の方が見つめ直すべきものとして注目されています。
キャリアプランやキャリアパスとの違い
キャリアデザインとよく似ている言葉としては、キャリアプランやキャリアパスが挙げられます。それぞれとの違いも見てみましょう。
まずキャリアプランは、自分が考える「理想の職歴」を辿るための計画のことです。職歴を含めた人生のすべてを包括的に考えるキャリアデザインとは異なり、職歴のみにフォーカスするところが特徴といえます。
一方、キャリアパスは企業が社員に提示する、「目標の職位になるための道筋」のことです。キャリアデザインは主に自分自身で考えるものですが、キャリアパスは企業側が主導して、社員に道筋を示すためのプランであるところが特徴です。
「誰が考えたプランか」「人生のどんなジャンルについて考えたプランか」などの点に違いはありますが、いずれも「その人の生き方」について考えるものであり、人生を考えるにあたって役に立つ行動指針です。キャリアパスやキャリアプラン、キャリアデザインをそれぞれ連動させながら、今後の人生について考えていくのが好ましいといえるでしょう。
キャリアデザインが注目されている背景
キャリアデザインが注目されている背景としては、「見通しが不透明な時代を生き抜くため」という理由が挙げられます。昨今は市場のニーズが多様化していることに加え、海外からの事業参入も多く、企業間競争が激しくなりがちです。そんな時代を勝ち抜くために、企業も自社内のすべての人材に「よりよい戦力になってほしい」と考えています。よって目的意識もなく「なんとなく働くだけ」の人材は、会社の中で生き残りにくくなっているのが現状です。キャリアデザインを通して仕事や人生の目標をしっかり立て、成長していく大切さが求められている時代といえます。
加えて近年の日本は人生100年時代に突入しており、従来の「20歳前後で就職し、60歳で定年。その後は年金生活」という人生設計が実現しにくくなっています。自分の人生を見つめ直す意味でも、キャリアデザインが注目されているといえるでしょう。
企業がキャリアデザインの作成を支援するメリット
キャリアデザインは本来、社会人一人ひとりが自分で「理想の自分の生き方」について考えるものですが、周囲がキャリアデザインの作成に手を貸してはいけないわけではありません。むしろ企業が社員のキャリアデザインの作成を支援することで得られるメリットも多くあります。
社員のキャリアビジョンを人事に活かしやすくなる
1つめのメリットは、社員のキャリアビジョンを人事に活かしやすくなることです。社員と共にキャリアデザインを考えることで当人の希望を詳しく知ることができるほか、今後の社内人事を当人の希望に沿った内容にしやすくなります。
ただキャリデザインの作成をサポートする過程で、会社が社員のキャリアデザインの内容を強制的に決めたり、会社の意向に添う内容に誘導したりするのは控えた方がよいでしょう。会社の要望を混ぜたキャリアデザインは社員のためにならないだけでなく、離職などのトラブルにも繋がってしまいます。あくまで企業側は「どうやってキャリアデザインを考えたらいいのかわからない」と悩んでいる人の手助けをするのみに留め、過度な干渉はしないように気をつけましょう。
社員の成長を手助けしやすくなる
2つめのメリットは、社員の成長を手助けしやすくなることです。企業が社員のキャリアデザインの作成を支援すれば、キャリアデザインを持てずに不安を抱いている社員のサポートもできるようになります。
特にキャリアデザインをうまく思い描けない社員の中には、「周りの社員は目標を持って毎日頑張っているのに、自分にはやりたいことがない」とストレスを感じていることも多いです。もし「やりたいことがない」と悩んでいる社員がいた場合は、今すぐキャリアデザインをする必要はないことや、「一緒に考えていこう」と声かけするだけでも支えになります。社員の心の機微に気づき、メンタルをケアしやすくなるという点でも、企業がキャリアデザイン形成を支援するメリットは大きいといえるでしょう。
早期離職の予防にも繋がる
3つめのメリットは、早期離職の予防にも繋がることです。キャリアデザインの作成を支援することで、社員が今抱えている不満も紐解きやすくなります。「この会社では希望するキャリアを積めないのでは」と考えている社員の存在にも気づきやすくなり、早期離職の予防がしやすくなる点もメリットです。
キャリアデザインを構築する4つのステップ
企業が社員のキャリアデザイン形成を支援する方法としては、キャリアデザインの立て方をレクチャーし、社員が自主的にプランニングできるように手助けするのがおすすめです。キャリアデザインを構築するための4つのステップをご紹介します。
1.これまでの人生から「自分が譲れないこと」を洗い出す
最初のステップは「人生を振り返ること」です。これまでの人生を見つめ直し、自分がどういう価値観や生き方を大切にしていきたいのかを改めて認識していきます。たとえば、下記のような具合です。
- 自分はどんな仕事をしてきたか
- どんな技術や知識を身につけてきたか
- どんなことにやりがいを感じてきたか
- どんな困難に立ち向かってきたか
この過程で心理テストや適性検査などを受け、自分を客観的に見直すのもよいでしょう。また、周囲から他己評価を受けることも人生の振り返りに繋がります。企業側のフォローとしては、「会社から見た社員の姿」などをフィードバックしたり、適性検査を紹介したりなどのサポートが可能です。
2.「これからどうなりたいか」を思い描く
次のステップは、理想の将来をイメージすることです。これからどんな仕事をし、年収はどれくらいで、どんな家に住み、誰とどんな風に過ごしていたいのかなど、人生の「理想のこれから」を具体的に考えていきます。なおキャリアデザインは仕事だけでなく、交友関係や趣味、恋愛といった、人生にまつわる様々な要素を包括的に考えるものです。1年後、3年後、5年後、10年後というように区切りながら、理想の自分の姿をイメージしてみましょう。
ちなみにキャリアデザインをはっきりと描けない場合も、方向性だけはなんとなく決めておくことが大切です。「なんとなくだけど、こういう仕事に興味がある」「はっきりと決めてはいないけど、こんな自分になれたらいいな」というふわっとしたイメージを持っておくだけで、偶発的にやってきたチャンスを掴みやすくなります。
「こういう仕事があるのだけど、やってみる?」と偶然聞かれた際に「興味があるのでやります」と答えるだけで、キャリアが大きく変わることも珍しくありません。チャンスを見逃さないように、おおよそのキャリアイメージだけでも持っておきましょう。
3.「今の自分はどういう状況か」を見つめる
3つめのステップは、現状の整理です。思い描いた理想に対し、今の自分がどのような状況にあるかを洗い出します。1つめのステップ「人生を振り返る」で整理した内容を踏まえて、現状の自分が抱えている課題や評価を見つめ直してみましょう。
自分自身ができる仕事内容や、所持している資格、貯金、強み、上司からの評価、友人からの評価など、自他の評価から総合的に見直すことが好ましいです。
4.「これからどうすべきか」を計画する
最後のステップは、目標の設定です。理想の人生と今の人生を比較したうえで、これからどのような目標を立てれば理想に近づくのかをデザインします。漠然とやることを書き出すというよりは、目標一つひとつに期限を与え、着実なステップアップができるようにするとよいでしょう。
もちろん目標は絶対である必要はなく、都度ブラッシュアップしたり、変更したりしても構いません。一度目標を立ててみることが大切だということを念頭に、自由にプランを立てるようにしましょう。
企業が社員のキャリアデザイン構築をサポートする方法とは
企業が社員のキャリアデザイン構築をサポートする方法としては、上記でご紹介した「キャリアデザインの作成フローを教えること」のほかに、次のようなやり方があります。
キャリアデザインの構築そのものを支援する
1つめは、「社員一人ひとりがキャリアデザインを考えやすくなるよう支援すること」です。具体的には1on1ミーティングや、eラーニングでのキャリアデザイン研修などの実施が効果的といえます。
たとえば1on1ミーティングは、上司などのマネージャー職と部下が一対一で話す機会のことです。週1~月2回程度の比較的短いスパンで、部下が感じている業務上の困りごとやキャリアの悩み、業務を通して感じた達成感などを共有してもらいます。上司が部下を評価するために行なう時間というよりは、部下の成長を支える時間というイメージで行なわれることが多いです。
この1on1ミーティングを定期的に実施することで、キャリアデザインの構築支援はもちろんのこと、部下のスキルアップ支援やメンタルケアも同時に行なうことができます。
「社員のキャリアデザインを実現しやすい制度」を整備
2つめは、「社員のキャリアデザインを実現しやすい制度」を整備することです。具体的には、以下のような制度が挙げられます。
・社内FA(フリーエージェント)制度
社内FA制度とは、優秀な社員に対して希望の部署に異動できる権利を与えることです。社員の自発的なキャリア形成や、社員のモチベーション維持に役立つとして注目を集めています。
・異動自己申告制度
社員が他部署や勤務地への異動希望を出せるようにし、会社との経営方針や人事方針に沿ったものであれば辞令を出すという制度です。社内FA制度と同じく、社員のモチベーションアップや自発的なキャリア形成に役立ちます。
・出戻り採用制度
一度転職した社員を、もう一度再雇用する制度です。既に自社のことを知っている社員を即戦力として迎え入れることができるため、企業側にとってもメリットがあります。ただし、出戻り社員のことを他社員が受け容れないなどのトラブルも起こりうるため、出戻り社員と元々いた社員双方へのケアが大切といえます。
そのほか、社内教育や研修を充実させて、多くの人材が会社や部署を移らなくても成長しやすい環境を作ることも有効な手段です。「どんな制度や研修があれば嬉しいか」と社員の希望をヒアリングし、少しずつ職場環境を整えていくとよいでしょう。
まとめ
キャリアデザインの概要や、似ている言葉である「キャリアプラン」や「キャリアパス」との違い、キャリアデザインの構築方法、企業が実施できるキャリアデザイン形成支援の方法などについてご紹介しました。社員のキャリアデザイン形成をサポートすることで、企業は貴重な人材を効率的に成長させやすくなるだけでなく、社員一人ひとりとよりよい関係性を築きやすくなります。ぜひ参考にしてみてください。
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