成果主義とは?結果主義との違い、メリット、導入のポイントなどを解説

人事評価制度は、企業にとって重要な要素です。適正な人事評価制度を導入・運用することで、業績にも、社員の活躍にも、よい影響を及ぼすことができます。だからこそ、この人事評価制度について、悩まれている経営者や人事担当の方も少なくないのではないでしょうか?

 

「ずっと年功序列型を取り入れているものの、合わなくなってきているのではないか…」「人件費が高騰するが売上はあがっていかない…」もしこのような悩みを抱えている方は、人事評価制度を見直す機会かもしれません。年功序列型ではなく、成果主義を取り入れるチャンスです。

 

成果主義は、正しく導入することで、会社や社員にとっても、大きなメリットを与えられる制度です。しかし、あやまった導入、運用をしてしまうと、思わぬ影響が起きてしまう可能性もあります。そこで、この記事では成果主義について、特徴や、メリット、導入の際に注意するポイントなどをイチからご説明します。成果主義を正しく知ることで、評価制度について見直す機会になれば幸いです。

 

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成果主義とは?

成果主義とは、業務の成果、プロセスを評価し、従業員を評価していく制度です。年齢や学歴、人付き合いなどは関係なく、仕事で成果を上げたかどうかで、評価、給与が決まっていく仕組みです。ですので、成果が芳しくない場合、降格や減給なども発生します。

 

成果主義と並べて話されることの多い制度に「年功序列」があります。この年功序列は、終身雇用や企業別組合と併せて、「日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)」と呼ばれ、多くの企業で導入されてきました。高度成長期にはこの雇用システムが合理的で、機能しました。年功序列では、在籍年数や年齢に伴って、昇進や昇給が決定。そのため、高い成果を出した場合でも、直接的には評価には結びつかないことが多いです。

 

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結果主義との違い

また、成果主義と似た制度として、聞く機会が多いのが、結果主義です。「成果主義と結果主義は、同じ意味ではないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、両者には違いがあります。

 

その違いとは、最終的な結果のみを評価対象にするか、プロセスまで含めて評価対象にするかどうか。たとえば、業績があまり芳しくなかった社員がいた場合、結果主義は、最終的な業績だけを評価対象にします。そのため、該当社員の評価は高くならないことが考えられます。

 

一方で、成果主義の場合、もちろん最終的な業績結果は評価対象になりますが、そこに至るまでのプロセスも評価対象になります。プロセスとは、業績目標を達成するために、どのような計画を立てて、どのように業務を遂行していったのか、という部分。そのため、成果主義においては、結果は芳しくなかったものの、プロセス次第では、よい評価を受けることも十分に考えられるのです。成果主義、年功序列、結果主義の違いについてまとめましたので、参考にしてみてください。

 

  成果主義 年功序列 結果主義
評価対象 仕事の成果とプロセス 勤続年数や年齢 仕事の成果のみ
人件費 適切な再配分や削減が可能 社員の高齢化に伴い増大 大幅な削減が可能
定着率 やや低くなる傾向 高くなる傾向 低くなる傾向
チームワーク 個人主義がやや強くなる傾向 チームワークが尊重される 個人主義が非常に強くなる傾向

成果主義の現状

ここまで、成果主義の特徴を年功序列や結果主義と比較をしながら説明をしてきました。次に実際に成果主義が日本国内・海外で、どの程度導入・浸透されているのか見ていきましょう。

国内における成果主義の現状

国内における成果主義の現状を把握するために、企業がどのような賃金形態を導入しているのかを見ていきます。厚生労働省によると、「定期昇給制度がある企業」は、85.1%に及び、大半の企業では、未だ成果に関わらず、賃金の定額支給を導入していることが分かります。

 

定期昇給制度を導入している企業数

出典: 厚生労働省 平成 30 年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況 

 

また、このような現状に対して、評価制度を見直しを図る動きも、まだまだ積極的ではありません。実際に、内閣府の調査で、「多様な人材の活用のために実施していること」の質問に対して、「評価制度の見直し」と回答した企業は、23.4%にとどまったというデータもあります。日本において、成果主義ではなく、従年功序列型の傾向が強いことは、私たち自身、体感する部分も強いのではないでしょうか。

 

出典:内閣府政策統括官(経済財政分析担当) 『企業における多様な人材の活躍』

海外における成果主義の現状

一方で、海外では成果主義を導入している国は少なくありません。代表的な国として、アメリカやイギリスが挙げられます。アメリカやイギリスの場合、担う仕事内容が変わらない限りは給与は上がりません。つまり、給与を上げるためには希望の給与を得られるだけの職につく必要があります。そのため、日本と比較して、短い期間で転職を繰り返し、キャリアアップ、スキルアップを図っていくことが一般的です。

 

実際に、平均勤続年数について、アメリカは4.2年、イギリスは7.9年になっており、これは、日本の平均勤続年数12.1年と比較しても、短いことが分かります。ちなみに、日本の平均勤続年数は、調査された14カ国の中で2番目に高い数値です。

国別の平均勤続年数

このことからも、年数と共に自動的に給与が上がっていく傾向の強い日本と、自身で給与の上がるスキルを身に着けたり、環境を求めていく必要のある、アメリカやイギリスなどの諸外国の違いが分かります。

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構『データブック 国際労働比較2019』

今、日本で成果主義が注目されている背景

ここまで見てきたように、日本では長らく年功序列型が中心で、成果主義は、積極的には検討されてきませんでした。では、なぜ近年、成果主義は注目を浴びているのでしょうか?その背景には、経済状況の変化があります。

 

そもそも、年功序列が日本で浸透した理由も、経済状況が影響しています。年功序列は、かつての高度経済成長期において、企業、労働者、双方にとって、メリットの強い雇用制度だったのです。当時、企業側は、経済成長に伴う業績拡大により、人材の安定的な確保を必要としていました。

 

経済成長と共に、企業も成長していくことを見込んでいたので、一度採用した人材を自社で育て、長く働いてもらうことは、安定的な業績拡大につながり、メリットが大きかったのです。

 

労働者にとっても、一度企業に入社をすれば、生活の安定と保証を得られるため、大きなメリットでした。しかし、1990年代のバブル崩壊以降、GDPも落ち込み、経済状況は停滞。企業側も雇用を維持していくことが難しい状況になっています。実際に、経団連も2019年12月の定例会見で、日本型雇用制度を見直す方針を発表しています。

  

また、直近では、新型コロナウイルスの影響で、様々な企業で業績が落ち込んだり、見通しが立たなくなっています。このような状況の中、人件費の削減・最適化を図ることができる成果主義は、メリットが大きいと言えるでしょう。

 

最近、資生堂や日立、富士通などの大企業が相次いで成果主義型の「ジョブ型雇用」の導入を決めています。また、花王では2000年ごろより、他社に先駆けて、成果主義の制度の運用がされるなど、日本でも少しずつ成果主義が取り入れられてきています。

 

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生産年齢人口が減少し、経済の成長が難しくなっている日本においては、終身雇用、年功序列などの日本型雇用システムを維持するのは難しくなっています。そのため、今後は成果主義の制度を導入していく企業が、益々増えていくでしょう。

成果主義のメリット

ここまで海外で主流だった成果主義が、近年、日本でも導入され始めている背景を説明してきました。次に成果主義を導入することで、どのような具体的なメリットがあるのか、見ていきましょう。

 

成果主義のメリットは主に次の4つです。

  1. 従業員一人ひとりの生産性アップにつながる
  2. モチベーションアップ、不公平感の解消
  3. 成果で評価されたい優秀人材の獲得につながる
  4. 年功序列ではないので、人件費を抑えられるようになる

1つずつ解説していきます。

従業員一人ひとりの生産性アップにつながる

まず挙げられるのが生産性の向上です。終身雇用や年功序列などの日本型雇用の場合、生産性が向上しにくいと考えられています。その理由は、成果を出さなくても、給与をもらうことができ、年数経過とともに、その額も向上していくため、一生懸命働く意欲を抱きづらいためです。

 

実際、日本の労働生産性水準は高くありません。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの中で、一番低いという調査もあります。成果主義の場合、目標を立てて成果を出すことが評価に直結します。成果を出した分だけ評価されますし、逆に成果が出なければ給与は上がらないので、自ずと生産性の向上が期待できます。

 

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構『データブック 国際労働比較2019』

モチベーションアップ、不公平感の解消

年功序列の場合、成果を出しても、年齢が若いからなどの理由で、給与や昇進に直接的に反映されにくいでしょう。成果と評価が直結しないので、社員に不満が溜まってしまう可能性もあります。

 

しかし成果主義の場合、年齢などに関係なく、評価をされ報酬も上がるため、社員のモチベーションアップにつながりやすいです。「年次が高いあの人より、自分の方が仕事をしているのに、待遇がよくない」という事態もなくなり、不公平感の解消に繋がります。

成果で評価されたい優秀人材の獲得につながる

優秀な人材ほど、年齢に関係なく、仕事の成果で正当に評価して欲しいと考えています。成果が正当に評価に反映される環境を整備することで、優秀な人材から積極的に選ばれる会社になっていきます。つまり、採用活動において優位に立てるので、優秀な人材の獲得にも直結するでしょう。

年功序列ではないので、人件費を抑えられるようになる

終身雇用や年功序列の場合、成果と給与の相関が薄いため、「あまり成果を出していない社員であるものの、年齢が高いから」という理由で、高額の給与を払う場合もあります。結果、人件費が高騰になる傾向があります。成果主義の場合、成果を出す人に高い給与を出し、そうでない人に対しては、現状に応じた給与を出すため、人件費の最適化ができ、抑制に繋がるでしょう。

成果主義のデメリット

このように多くのメリットのある成果主義ですが、デメリットもあります。ここでは、成果主義のデメリットをお伝えします。

 

成果主義のデメリットは主に次の4つです。

  1. 個人の評価を気にする人が増えていく
  2. 評価されない仕事をやりたがらなくなる懸念がある
  3. 結果がすべてという考え方になり、プロセスを軽視してしまうリスク
  4. 厳しい競争が生まれるので定着率が低くなる

1つずつ解説していきます。

個人の評価を気にする人が増えていく

成果主義は、成果が評価に直結します。そのため、自然と個人の評価を気にする人が増えていく可能性があります。結果、個人での動きが活発になり、年功序列や終身雇用では重視されていたチームワークが希薄化してしまいます。たとえば、ノウハウやナレッジを周囲に共有せずに、一人で抱え込んでしまう社員も出てきてしまうかもしれません。

評価されない仕事をやりたがらなくなる懸念がある

社員が、高い評価を出すことに目がいき、評価に直結する仕事のみに注力してしまう可能性があります。組織である以上、成果に直結はしないけれど、重要な仕事は多々あるでしょう。成果主義が行き過ぎた結果、成果に直結しない仕事に、社員が消極的になってしまう場合があります。

結果がすべてという考え方になり、プロセスを軽視してしまうリスク

結果にこだわることで、プロセスが重要視されなくなる可能性もあります。「結果さえ出せばよい」という大義名分の元、無理矢理な業務を行い、ユーザーや顧客に迷惑をかけたり、クレームが多々起きてしまう事態も考えられるでしょう。

厳しい競争が生まれるので定着率が低くなる

昇給や昇進をするためには、成果を出すことが必要です。一方で、成果を出せない場合、会社に居づらくなり、離職に繋がってしまいます。また、たとえ成果を出せている場合であっても、会社からの要求も比例して高くなっていくでしょう。

 

会社からの要求についていけなくなることによる離職も、発生してしまう可能性があります。離職が発生することで、残された社員のモチベーションに影響します。結果、また新たな離職が出てしまうなど、対策なしに導入すると、負の循環に陥ってしまう可能性もあります。

日本に成果主義が根付かなかった理由

実は成果主義が日本で注目を浴びるのは、ここ数年のことではありません。たとえば、1990年にも、多くの企業で導入を検討する動きが起きました。しかし、ほとんどの企業では、定着しませんでした。なぜ、定着しなかったのでしょうか?長らくの年功序列から、急に変更しようとしたため、社員に馴染まなかったこともありますが、他の要因もあります。

 

大きな要因は、成果主義を結果主義と捉えて、プロセス評価をしてこなかったことです。プロセスを見ずに、結果だけを評価してしまい、息苦しさを感じる社内環境になってしまったのです。またノウハウやナレッジを抱え込むなどの個人での動きも増えてしまい、社内の雰囲気もよくありませんでした。結果的に、成果主義は定着せずに、年功序列型に戻していった企業が多くありました。

成果主義を導入するポイント

上手に活用することで、社員にとっても、会社にとっても、大きなメリットのある成果主義。一方で、導入の方法をあやまるとデメリットも大きくなってしまいます。だからこそ、導入する際のポイントを押さえておくことが重要。成果主義を導入する際のポイントは次の2つです。

  1. 評価基準を明確にする
  2. 事前に社員に伝える

では、1つずつ解説していきます。

評価基準を明確にする

具体的に、どのような項目で、どの程度達成すると、どのような評価になるのかを考えていきます。その際は、結果だけでなく、プロセスも評価基準に組み込むことが大切。というのは、仮に結果が出なかった場合でも、「プロセスは達成できた」と評価することができ、社員のモチベーションアップにつながるからです。

実際に、成果主義が定着している海外諸国においても、成果とプロセスを見ることが主流になっています。

事前に社員に伝える

成果主義を導入する前に、評価基準を社員に伝えましょう。社員が評価基準を把握することは、成果を出すための正当な努力の方向性が分かり、納得感を持つことで、更にモチベーションが出てくるからです。

なお、成果主義を導入することを伝える際は、「なぜ導入するのか?」「何のために導入するのか?」も説明することをおすすめします。たとえば、長きにわたって年功序列の評価体系に慣れ親しんだベテラン社員に納得してもらうには、より丁寧な説明が求められることもあるでしょう。

評価制度を見直す時期が来た

ここまで成果主義の仕組みやメリット、デメリット、導入する際のポイントなどを見てきました。日本において主流の年功序列型は、高度経済成長期に最適とされたものであり、今の時代に即した評価制度に見直していくことが求められています。

 

しかし、ただ単に成果主義を導入すればよい、という訳ではありません。成果主義も、結果主義も、年功序列型も、全ての評価制度はあくまで「手段」です。大切なのは、「目的」。目的とは、企業にとっては、掲げているビジョンの達成であり、業績向上です。評価制度とは、あくまでその目的を達成するために、社員が活躍できる環境を整える手段。つまり、最適な評価制度とは、目的や現状・社風などによって、会社ごとに異なってくるのです。

 

新型コロナウイルスの影響もあり、社会全体として変わることが求められている状況下で改めて目的を考え、自社にとって最適な評価制度を考えてみるのがよいと思います。

 

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