企業活動を行なううえで重要になってくるのが、どこに向かって走っているのかという方向です。多様な価値観を持っている人材が集まっている会社だからこそ、従業員の考え方や価値観を統一し、進むべき方向性を示しておくべきです。
そこで大事になってくるのが、ビジョン、ミッション、バリューです。会社の目指すべき理想を言語化し、チームを一つにする考え方です。こうしたものを策定しているかどうかで従業員のモチベーションや行動も変わってきます。
この記事では、人材ビジネスに携わって15年以上の経験を持つ筆者が、ビジョン・ミッション・バリューの意味や作り方などをわかりやすく解説しています。ぜひ参考になさってください!
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- ビジョン・ミッション・バリューとは?それぞれの違い
- ビジョン・ミッション・バリューはなぜ必要なのか?
- ビジョン・ミッション・バリューをつくるメリット
- ビジョン・ミッション・バリューの作り方と注意点
- ビジョン・ミッション・バリューの組織浸透方法
- ビジョン・ミッション・バリューが策定できたら、engageで採用しよう
ビジョン・ミッション・バリューとは?それぞれの違い
最初に、ビジョン・ミッション・バリューのそれぞれの意味や違いを見ていきましょう。
ビジョン・ミッション・バリューは、経営学者として知られるピーター・F・ドラッカーが提唱した「企業の経営方針」です。ビジネス環境の変化がますます激しくなっている現代においては、経営という航海の道しるべとなる経営方針の重要性がさらに高まっています。そのため、経営方針を定めることは、従業員に対して会社が目指す方向性を示すうえでも重要な役割を果たします。
企業の経営方針を示していくうえで欠かせない「ビジョン・ミッション・バリュー」ですが、ここからはそれぞれの言葉の意味について説明していきましょう。
ビジョンとは
「ビジョン」とは、「目指す理想の姿」です。将来的にどのような姿、存在になりたいのかを示すことで、未来を具体的にイメージさせ、社員を同じ方向に向かせることができます。また、未来のイメージを共有することで、事業や組織へのコミットメントを強化することができます。
ただしビジョンは、未来永劫に目指す目標を指すものだけではありません。将来なりたい姿は経験を重ねていく中で変化することもあるため、中長期的な目標を指すものでも問題ありません(もちろん、頻繁に変わりすぎると形骸化してしまう恐れがありますが)。中長期的な視点での「目指す理想の姿」になることもあるので、周辺環境や経営状態の変化など状況に応じて変更されることもあります。
ここで、より理解を深めるために、LINE株式会社のビジョンを見てみましょう。
Life on LINE
私たちのビジョンは、24時間365日生活のすべてを支えるライフインフラになることです。
彼らの目指す理想とする姿がわかりますね。このように自社が将来的にどのような姿になりたいのかをわかりやすく伝えることができれば、従業員もどこに向けて頑張れば良いかが分かるので、組織としての一体感も生まれやすくなります。そして一致団結して、未来へ向かっていくことができるのです。磨き抜かれたビジョンに社員は魅力を感じます。
ミッションとは
「ミッション」とは、果たすべき使命、存在意義、自社が存在する目的のことを言います。言い換えれば、ミッションとは、企業が大事にする変わらぬ価値観のこととも言えるでしょう。たとえば「事業を通じて、〇〇といった価値観を広げていきたい」「世の中を〇〇に変えていきたい」「社会の××の課題を解決し、△△のような社会をつくる」というようなものがこれにあたります。
ここでまたLINE株式会社のミッションを見てみましょう。
CLOSING THE DISTANCE
私たちのミッションは、世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めることです。
こう見るとLINEが提供するサービスの意義がより理解できると同時に、ミッションの意味が良く分かると思います。働いている人も、なぜ自分がこの会社で働くのか、なぜサービスを広めようとしているのか、考えた時に立ち戻れるような言葉です。
つまり、企業や組織で働く人たちがミッションを正確に理解できれば、自分たちの仕事に意味を見つけ、実現したい正解のために、ゴールを設定して仕事に取り組めるようになるのです。自社の使命はそう簡単に変わるものではありません。そのため企業にとっては非常に大切なものになります。つまりミッションを見れば、その企業が事業を通じて成し遂げたいことや基本的な考え方、最も優先的となる事項を読み取ることができると言えるでしょう。
ミッションの浸透は、従業員の統率やモチベーションの向上、社外へのPR効果などさまざまな効果が期待できます。そのため、作成しただけでは意味がなく、社内外への周知、社内への浸透が重要になります。採用ホームページ、社内のイントラネットでの公開、カードのようなものにして従業員に配布するなど、様々な形で可視化しておくことが大事です。
バリューとは
「バリュー」とは、ビジョンやミッションに近づくための社員の行動基準のことです。行動をする際の判断基準になるわけですから、抽象度の高い、ビジョン、ミッションとは違い、具体的なものになったほうが機能します。たとえば、「切磋琢磨しよう」というような言葉よりも、「自分だけ良ければいいという精神を捨て、仲間が困っていたら助け合おう」という言葉のほうがより具体的になり、行動しやすくなります。あまりに抽象的な言葉だと、行動をとる時に参考にならなくなってしまい、形骸化してしまいます。
ここでもLINE株式会社の例を見てみましょう。彼らは、「LINE STYLE」「LINE CODE」という2つのバリューに沿って行動しています。ここではLINE CODEについて紹介します。
Respect
多様性を認め互いを尊重し信じあう
Collaboration
謙虚な姿勢で社会やパートナーと一体となって協力し合う
Fairness
公平で健全、正直な行動をとり、透明性をもって誠実に向き合う
行動をするときの基準が分かりやすく言語化されていますね。さらに「LINE STYLE」では、価値基準が複数策定されていて、非常に行動しやすいものになっています。
いかがでしょうか。バリューの重要性が少し理解できましたか。これらがしっかりと言語化されていると、会社をどのように進めていくのか明確になり、判断しやすくなります。
ビジョン・ミッション・バリューの関係性を図に表すと以下のようになります。説明によっては、ビジョンとミッションが入れ替わるケースもありますが、言葉の意味するところは変わりません。
ビジョン・ミッション・バリューはなぜ必要なのか?
ビジョン・ミッション・バリューが必要な理由は何でしょうか。ビジョン・ミッション・バリューとは、事業における「羅針盤」とも言えるもの。自分たちがどこへ行こうとしているのか?何のために行こうとしているのか?どうやって行こうとしているのか?…それがわからないと、会社という船の乗組員である社員たちもどうすればいいかわかりませんよね。つまり、ビジョン・ミッション・バリューがあることで、従業員全員が同じ方向へまとまって向かっていくことができるようになるのです。
事業に勢いがあるときは、ベクトルが揃っていなくてもそれなりに成果は出るかもしれません。しかし事業が大きな壁にぶつかったとき、大きく舵を取る必要がある時、ビジョン・ミッション・バリューがなければ企業は空中分解してしまいます。
特に現代では、商品やサービスそのもので差別化することがだんだん難しくなってきています。また新型コロナウイルスによって、大きな打撃を受け、困難な状況にある会社も少なくありません。こういったときに羅針盤となるものがあると、進むべき道が見えてきます。だからこそ、何を実現したいのか?なぜ実現したいのか?どういう価値を提供するのか?ということを明確に言語化することが求められるようになってきているのかもしれません。
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ビジョン・ミッション・バリューをつくるメリット
企業に明確なビジョン、ミッション、バリューを作るメリットは何でしょうか。
従業員のエンゲージメントが高くなる
1つは、従業員の忠誠心や愛着、つまりエンゲージメントが高くなることが挙げられます。企業の目指す理想の姿や、世界観、価値観が確立されていれば、社員も行動しやすくなり、結果として企業への愛着がわいていきます。結果的に、企業に対しての忠誠心も高くなるので、定着率向上にもつながります。ただし、言葉だけが掲げられていて、実際は形骸化している場合は別。策定した言葉と行動が一致してはじめて、社員のエンゲージメントは高くなります。
自分たちの価値観に合った人材を採用できるようになる
会社のビジョン、ミッション、バリューが抽象的すぎず、イメージできる言葉で言語化されれば、そこから自社らしい価値観が醸成されていきます。採用活動においても、応募者が自分たちの価値観と合うかどうかを確かめやすくなるので、入社後のギャップを防ぎやすくなるでしょう。スキルはあるものの自社の価値観とは合わない人材を採用してしまうと、早期退職につながる可能性もあり、こうなると採用コストも高くなってしまいます。こういった早期離職を防ぐためにも有効です。
採用活動で、自社の魅力を伝えることができるようになる
採用活動で自社をアピールする際に、給与や待遇、福利厚生などを訴求する企業は少なくありません。たしかに「休みがとりやすい」「ワークライフバランスが整っている」「ホワイト企業」といったイメージを前面に出せば、求職者が魅力に感じてくれるでしょう。しかし、条件が良い企業だけではありません。「給与は相場と比べると少し低い」「福利厚生は整っていない…」という場合もあるでしょう。
こういったときに、機能するビジョン、ミッション、バリューがあれば、企業の考え方、価値観を魅力として伝えることができます。「面白そうな会社」「こういう考え方をする会社で働きたい」と思ってくれる人がいるはず。ワクワクするようなビジョンを掲げて、会社をアピールしていくのも有効です。
ビジョン・ミッション・バリューの作り方と注意点
ビジョン・ミッション・バリューの意味や必要な理由については理解していただけたでしょうか?ここまで読んできて、「うちの会社でも改めて考えてみよう」「経営理念や行動指針を見直してみよう」と考えた方もいらっしゃるかもしれませんね。ここからは、ビジョン・ミッション・バリューの作り方や注意点について見ていきましょう。
まず、創業時にビジョン、ミッション、バリューを策定してあるのが理想ですが、考えられている企業はそう多くないでしょう。しかし、ビジョン、ミッション、バリューを策定するのに遅すぎることはありません。本気で会社を良くしたいと思った瞬間に動き出せばよいと思います。
つくり方ですが、ビジョン・ミッション・バリューは、一人ではなく、経営に関わる人全員で決めるのが良いでしょう。会社の未来、そして従業員の行動基準を決めるものなので、勝手に決めてしまって反発が起きてしまっては、意味がありません。みんなで納得したものを作り上げていくことが重要です。そのため、経営幹部で集まって何度も議論するのが理想です。
すぐに完成させるのは難しいかもしれません。そのため、それぞれが考えているビジョン、ミッション、バリューを洗い出すところからスタートし、そこから議論すると前に進みやすいでしょう。幹部で合宿などを行なってまとまった時間で議論するのもおススメです。複数名のグループでワークを進めたうえで、最終的にまとめるというやり方も有効でしょう。とにかく何度も議論して納得感をもって言語化していくことが大事です。
ビジョン・ミッション・バリューの組織浸透方法
ビジョン・ミッション・バリューは作って終わりではありません。せっかく完成させても従業員一人一人に浸透していなかれば意味がありません。そこで、ビジョン・ミッョン・バリューを組織に浸透させるための方法をまとめていきます。
具体的には以下の方法がおすすめです。
- 経営幹部からの情報共有
- 定期的にミッションをもとに業務を進めているかMTG
- 情報サイト・掲示板で広報
一つずつ確認していきましょう。
経営幹部からの情報共有
ビジョン・ミッション・バリューは「企業が進むべき指針」です。ビジョン・ミッション・バリューの考え方・価値観をもとに事業方針や戦略立案まで徐々に落とし込んでいきます。
つまり、ビジョン・ミッション・バリューは企業の意思決定すべてに通ずる根幹的な考え方と言っても過言ではないのです。そのため、会社を方向を舵取りしている経営幹部からビジョン・ミッション・バリューについて広報する場を持つ必要があります。
半期や四半期ごとに全社的にミーティングを設定し、ビジョン・ミッション・バリューのもとに会社がどこを目指しているのか広報しましょう。従業員は日々の業務に忙殺されるとビジョン・ミッション・バリューについて考える時間が無くなっていきます
「何回も伝えているから大丈夫」と考えず、定期的に経営幹部からビジョン・ミッション・バリューの考え方について広報しましょう。
定期的にビジョンをもとに業務を進めているかMTG
前述したように、従業員は日々の業務に集中しているとビジョン・ミッション・バリューについて意識する時間が無くなっていきます。そのため、目の前の目標を達成することばかりに意識が向いてしまいます。
- 「今月の目標売上を達成するために後10件商談に行きます」
- 「今月のKPIを達成するために、今の施策を改善しました」
- 「業務効率化して生産性が15%上がりました」 など
目の前の目標達成ばかりに目が行ってしまいます。
もちろん目の前の目標数値も大事です。しかし、企業が目指す姿に近づくためには、ビジョン・ミッション・バリューをもとにしたアクションが取れている必要があります。そこで、ビジョン・ミッション・バリューを浸透するために「定期的にビジョンをもとに業務を進めているかMTG」を実施をおすすめします。
- 何のためこの業務をおこなっているのか
- 何を実現したくてこの事業を展開しているのか
- 事業を通じて達成したい理想像とはなにか など
目の前の目標・行動がビジョン・ミッション・バリューに向かって行動できているか定期的に直属の上司がMTGで確認してあげましょう。
情報サイト・掲示板で広報
ビジョン・ミッション・バリューの浸透には、継続的な情報の浸透が必要です。
そのため、イントラの掲示板サイトや掲示板など社内広報を常時展開できていつでも見られる場所にビジョン・ミッション・バリューを掲示しておきます。
この「いつでも見れる」が大事です。業務に集中していると、ビジョン・ミッション・バリューに触れる機会はめっきりなくなります。
そのため、組織の根幹となるビジョン・ミッション・バリューを忘れないようにいつでも見れるようにしておくとよいでしょう。
ビジョン・ミッション・バリューが策定できたら、engageで採用しよう
ビジョン・ミッション・バリューを実際に作ってみようと考えている経営者の方、人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。ビジョン・ミッション・バリューができたら、無料で採用HP・求人情報を掲載できるツール『engage(エンゲージ)』を利用し、採用活動をスタートすることをオススメします。
『engage(エンゲージ)』を使えば、無料で採用ホームページをつくれるだけではありません。たくさんの情報量を盛り込んだページを作成できるため、企業のビジョン、ミッション、バリューについても丁寧に説明することができます。
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