21世紀型スキルとは?変化する時代でも活躍できる人材育成を解説

特定分野の知識や技術、判断力、リーダーシップ…。従業員の持つスキルを伸ばすことは業務の質を高め、企業の競争力を向上させる上で必要不可欠な取り組みです。しかし、ビジネスに必要とされるスキルは常に一定ではなく、時代の変化によって大きく変化を遂げていることはご存知でしょうか。

 

今回紹介する「21世紀型スキル」とは、そうしたスキルの中でも、この先の時代において特に重要性が高まっていくと考えられる能力のこと。つまり、今のうちから21世紀型スキルをいかに育成するかが、将来的な企業の競争力を大きく左右することになるのです。

 

よってこの記事では、そんな21世紀型スキルの分類と育成のための方法について紹介しています。ここで得られた情報をヒントに、ぜひあなたの企業でも21世紀スキルの概念を社内のスキル教育に取り入れてみてください。

 

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「21世紀型スキル」とは?

「21世紀型スキル」とは、アメリカを始めとした各国の企業や教育機関などによって構成される国際団体「ATC21s」が提唱した、これからの時代を生き抜く上で特に必要とされるスキルのことです。

 

21世紀に入った今、世界ではグローバル化やインターネットの普及といった社会を取り巻く環境の変化により、これまで存在しなかった新しいスキルがいくつも誕生しています。一方で、近年ではコロナ禍によってビジネスモデルや人々の価値観にも変化が見られ、逆に既存のスキルが通用しなくなってしまうといったケースも珍しくありません。

 

こうした状況を踏まえ、21世紀型スキルは主にコミュニケーション能力や論理的思考力、情報リテラシーといった、この先も価値を発揮すると考えられる普遍性の高い能力によって構成されています。また、これらのスキルの中にはビジネスだけでなく、日々の暮らしの中で活かされるものも数多く含まれています。

これまでのスキルと、21世紀型スキルの違い

一般に、人間が持つスキルは具体性の高い「ハードスキル」と、抽象的な「ソフトスキル」の二つに大きく分類することができます。その中でも、既存のスキル教育ではハードスキル、つまり特定分野の専門知識や各種資格といった可視化しやすいスキルの育成が重視される傾向にありました。

 

もちろん、これらのハードスキルは業務の遂行において前提となっているものも多く、決してその必要性や価値が失われた訳ではありません。しかし、時代の変化が激しく仕事のシステムが複雑化した現代においては、ハードスキルの力だけでは十分に対応しきれない場面が増えていることと思います。

 

そのため現在、ビジネスシーンにおいては分析力や柔軟さといった、可視化は難しいものの幅広い用途に活用できる「ソフトスキル」の存在に大きな注目が集まっています。そして、そのソフトスキルに重きを置いている点こそが、「21世紀型スキル」がこれまでのスキルと大きく異なるポイントでもあるのです。

21世紀型スキルが求められている背景

現在、刻々と変化する時代の流れに伴い、スキル教育は大きな転換点を迎えています。なぜなら近年、数多くの研究者により「現存している職業の大半がこの先AIや機械に代替されてしまい、同時に現在はまだ存在していない職業が新たに生まれていく」との未来予測がなされているためです。

 

例えば、英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士の研究結果によると、米国における労働人口の47%が10~20年以内に機械への代替が可能になるとされています。つまり、仮に既存のスキルをどれだけ向上させたとしても、そのスキルを発揮する場が今後も存在し続けるとは限らないのです。

 

以上の点から、これからの時代に本当に役立つスキルとは、情報化社会の中でも機械での代替が難しく、幅広い場で活かすことのできる「人間ならではの能力」であると考えることができます。よってそれらを中心に構成される21世紀型スキルは、ただ今の時代に必要というだけでなく、むしろこの先の未来を生き抜くための能力として求められているのです。

21世紀型スキルの種類

21世紀型スキルは国際団体「ATC21s」によって確立された考え方ではありますが、実はその定義や内容に関しては、同団体が定めたもの以外にもいくつかの種類があります。代表的なところでは、アメリカで誕生した非営利団体「21世紀型スキルパートナーシップ」が、独自に21世紀型スキルの内容を大きく三つに分類し体系化しています。もちろん、こうした中からどの考え方を教育に取り入れるかは企業の自由です。しかし、いずれのものを選ぶにせよ、まずはその定義について理解を深め、伸ばしたい能力をしっかりと見定めることが大切です。

「ATC21s」が定める21世紀型スキルの分類

前述した通り21世紀型スキルにはさまざまな定義が存在しますが、ここではまず「ATC21s」が提唱する4つの分類にもとづいて21世紀型スキルの内容を紹介していきます。

①考え方(Ways of Thinking)

21世紀型スキルの特徴のひとつに、考えることや学ぶことそのものに関する能力が多いという点があります。これまでのスキル教育では学習・思考する具体的な「内容」が焦点になっていたのに対し、21世紀型スキルではむしろその「過程」に目を向けているのです。

 

この点が強く表れている「考え方」というカテゴリには、「創造力とイノベーション」「批判的思考力・問題解決力・意思決定力」「学ぶことへの学び、メタ認知」といったスキルが含まれます。ちなみにメタ認知とは、自分自身が何かを知り考えるまでのプロセスを、自ら客観的に分析する能力のことを指します。これらのスキルは特定分野の知識・技術などと比較すると、抽象的で育成が難しい能力に思われるかもしれません。しかしその分、いかなる業種でも確実に役立つ機会のある、極めて普遍的なスキルであるともいえます。

②仕事の方法(Ways of Working)

多様性が重視される21世紀の社会においては、人と接する上でも一定のスキルが問われます。特に重要となるのが、周囲の人々をいかに尊重し、連携を築いていくかという点です。このことに関する能力をまとめた「仕事の方法」のカテゴリは、「コミュニケーション」と「コラボレーション」の二つのスキルよって構成されています。

 

なお、この場合のコラボレーションとは、周囲との協力時において必要となるチームワークのことを指しています。他者と良好な関係性を構築するためにはコミュニケーションだけではなく、時に相手を思いやり、自分を抑える能力が必要となります。よって人材の連携を高めたい場合には、上記のスキルをなるべくセットで育成するのが良いでしょう。

③仕事のツール(Tools for Working)

ビジネスにおいて大きな利益をもたらす情報・IT技術の存在は、21世紀を生き抜く上でのキーとなるツールの一つです。しかし、それらのトラブルを回避しつつ効果的に活用するには、使い方に関する正しい知識を手に入れておかなくてはなりません。

 

こうした情報化社会や先進技術への向き合い方に関するスキルは、ATC21sの定める分類では「情報リテラシー」「情報通信技術(ICT)リテラシー」として、「仕事のツール」のカテゴリに位置づけられています。具体的には、SNSやインターネット、それらを利用する機器を扱う上で必要となる知識が該当します。なお、情報やIT技術を取り巻く環境は現在も激しく変化を続けているため、これらのスキルは一度身につけたからといって安心せず、絶えず新しい知識を取り入れてその都度アップデートしていくことが大切です。

④社会で生きる能力(Skills for Living in the World)

最後となる「社会で生きる能力」のカテゴリは、具体的には「ローカルとグローバル両面の市民性」「人生・キャリアの設計」「個人的・社会的責任」を主な内容としています。また、個人的・社会的責任には「異文化についての理解・適応」もそのひとつの要素として含まれています。

 

上記の内容からも分かる通り、このカテゴリはビジネスに関するスキルよりも、主に一人の人間としての生き方や社会に向き合う姿勢によって構成されています。一見企業の利益追求とは遠いように思えますが、これらのスキルの育成に取り組むことで従業員に生活の向上をもたらし、結果として業務の質を向上させることにもつながるでしょう。

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文科省が定める21世紀型スキルの分類

21世紀型スキルの三層構造

21世紀型スキルについては国外の団体の他に、文科省の国立教育政策研究所もその内容に関する指標を公表しています。この指標の大きな特徴は上記の図のように、21世紀型スキルを「基礎力」「思考力」「実践力」の三層構造によって解釈している点にあります。よってここでは、それぞれの層が内包する能力を詳しく説明していきます。

①基礎力

三層構造は内側から順に「基礎力」「思考力」「実践力」の同心円状に構成されており、そのうち最も内側に存在する「基礎力」には言語・数量・情報といったツールを正しく使いこなすスキルが含まれます。具体的には、地図や数式を理解する力や、インターネットを扱う際に必要となるリテラシーなどがこの基礎力に該当します。

 

これらは言い換えれば、思考の支えやヒントを得るための能力と表すこともできます。また、基礎力に含まれるスキルの多くは可視化しやすいハードスキルとしての側面が大きく、育成に向けた計画が比較的立てやすい能力でもあります。よって21世紀型スキルの育成に会社として取り組む際は、まずこの基礎力の向上から取りかかるのもよいでしょう。

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②思考力

基礎力を核としてその外側に存在する「思考力」は、基礎力によって手に入れた情報をもとに自ら課題を見つけ出し、その解決法を探っていく能力のことです。いわゆる抽象的なソフトスキルが多く、用途が限定されないスキルを中心として構成されています。

 

内容としては、学ぶべきことを見つけ出す適応学習力やアイデアを生み出す創造力、筋道を立てて考える論理的思考力などがその例として挙げられます。また、思考の過程を振り返り、そこに問題がなかったかを検証・分析する批判的な考え方やメタ認知の能力も思考力の一部といえます。情報を得る基礎力の価値は、その情報を活用する思考力によってさらに高まります。したがって従業員の基礎力を十分に育成できたら、ぜひ思考力に関する教育にも積極的に取り組んでみてください。

③実践力

基礎力、思考力を経た三層構造の最も外側に存在するのが、「思考力」によって頭の中で発展させた内容を実際の業務やコミュニケーションを通じてアウトプットし、自分や社会のために役立ていく「実践力」です。

 

この「実践力」にはキャリアや人生を設計する能力の他、他者と円滑にやりとりを行なうコミュニケーション能力、自らの責任を自覚する力や主体的に社会に参加する力など、日々の暮らしの中で活用できるスキルも数多く含まれています。そのため、中には企業という立場から育成を行なうにはハードルの高い能力もありますが、そうした一歩進んだ21世紀型スキルについてもフォローすることができれば、従業員の価値をさらに高めることができるでしょう。

21世紀型スキルの育成に向けた取り組み

ここまで紹介してきた21世紀型スキルの内容を踏まえ、ここからは実際に従業員の21世紀型スキルを育成する方法を解説していきます。とはいえ、伸ばしたい能力や企業の規模・状況に応じて最適な育成の方法は異なるため、導入の際はそれぞれの企業に合った形で取り入れることが大切です。

情報通信技術の活用

ATC21sの分類における「仕事のツール」、国立教育政策研究所の指標での「基礎力」に該当する情報やICTなどの使い方やリテラシーなどは、座学で講習を行なうだけでは完全に定着しません。よって、これらのスキルをより実践的なレベルまで高めるためには、実際に対象となるサービスやシステム、機器などを実際に使う機会を用意する必要があります。

 

加えて、情報通信技術をスキル教育として導入することは、生徒同士や教える側と教わる側のコミュニケーションを活発化させるといった効果ももたらします。その他にも、社会参加への意識や創造力など、さまざまな21世紀型スキルの育成に情報通信技術を役立てることができるでしょう。今後、ビジネスにおいて情報通信技術の存在は今以上に大きなものとなっていくはず。そのための備えとしても、早い段階からその活用をスキル教育に取り入れることは有効な取り組みだといえるでしょう。

双方向型の研修への移行

コミュニケーションやコラボレーションなどといった、人と関わる上で必要となる能力の育成に取り組むのであれば、教育カリキュラムそのものを双方向型のものへと転換することも効果的です。なぜなら、21世紀型スキルは主に経験の中で身についていく「ソフトスキル」を中心として構成されており、一方的な指導では身につけることが難しいものも珍しくありません。

 

このため、ハードスキルの教育を想定した既存の研修スタイルは、21世紀型スキルの育成にはあまり適しているとはいえないのです。したがって、21世紀型スキルの育成を進める上では、座学にプラスしてディスカッションやグループワークといった、多くの人と互いにやりとりを交わしながら学べるカリキュラムを取り入れることが望ましいでしょう。

論理的思考力を問う問題の導入

これまでのハードスキルを重視したスキル教育においては、テストは主に「知識がきちんと身についているかどうか」を問うことが目的であり、問題の形式も正解・不正解がはっきりと分かれた○×問題などが中心でした。しかし、そうした暗記によって回答できる問題では、論理的思考力などの21世紀型スキルは育ちにくい傾向にあります。

 

そこで導入すべきなのが、回答を単語や選択肢ではなく、回答者自身の言葉で答えを説明させる「記述式問題」です。こうした問題は、筋道を立てて説明するというプロセスを通じて従業員の思考力が刺激される上、正解が複数ある問題も作りやすいため、アイデアを生み出す創造性の育成にも役立てることができます。

 

その他の方法としては、教育の内容に「プログラミング」を盛り込むといった取り組みも、受け手の自発的な思考を活性化させ、論理的思考力を鍛える大きな助けとなることでしょう。「考える」力を育てるためには、研修やテストの中でも実際に「考える」機会を設けることが大切なのです。

21世紀型スキルの育成環境を整備するメリット

上記のような取り組みを教育制度に導入し、会社として21世紀型スキルの育成環境を整えることは、従業員の能力向上以外にもさまざまなメリットを企業にもたらしてくれます。以下では、それらのメリットを解説していきます。

採用時のアピールになる

従業員の21世紀型スキルが高まることは、企業にとって競争力の向上につながるだけでなく、従業員自身の市場価値を高めることにもなります。そのため「会社が21世紀型スキルの育成に積極的に取り組んでいる」という事実は、採用活動において人材を引きつける大きなアピールポイントとしても活用することができます。

 

特に、優秀な人材は自らのスキル開発に積極的な傾向が強いため、転職するのであればより自分を高めてくれる環境で働きたいと考えることでしょう。そうした向上心に働きかけ、より成長意欲の強い人材を獲得する上でも、21世紀型スキルの育成に関する体制や実績をつくっておくことは効果的な取り組みといえます。

従業員の定着につながる

従業員の市場価値は、本人にとっては主に転職の際などに有利に働くステータスです。よって、その市場価値を高めることとなる21世紀型スキルの育成は、一見すると離職を促進してしまうようにも思えるかもしれません。しかし、育成を通じて従業員に「自分に長く使えるスキルを与えてくれる職場である」という印象を与えることができれば、従業員は結果として「この企業で今後も働き続ければ、もっと自分を成長させることができる」と感じるようになるでしょう。つまり21世紀型スキルの積極的な育成は、むしろ定着にこそ効果を発揮するのです。

 

また、一人ひとりの人材の21世紀型スキルが高まり、高い柔軟性を得てこの先も長く活躍してくれれば、時代の変化に応じてその都度新たな人材を募集するよりも採用にかかるコストを大きく抑えることができます。こうした「末永く働ける人材が形成される」ことが生むメリットも、21世紀型スキルの育成によって狙える効果のひとつとなっています。

まとめ

既存のスキルがこの先も価値を発揮し続けるとは限らないに現代において、幅広い場面で長く活用できる「21世紀型スキル」の育成に力を注ぐことは、企業とそこで働く従業員の今後を大きく左右する重要な取り組みです。

 

とはいえ、21世紀型スキルにはさまざまな分類方法が存在しており、そこからどの能力をどういった方法で伸ばしていくかは企業の判断に委ねられています。そのため、導入にあたってはいきなり既存の制度を全て刷新するのではなく、まずは自社に負担の少ない取り組みからスタートして徐々に教育制度をアップデートしていくことが望ましいでしょう。この記事の内容が、あなたの企業のこれからにとって少しでもプラスに働けば幸いです。

 

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